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エルフ王――四百年後、死んだはずの妻が帰ってきた  作者: 忘却セミコロン
第一章 沈黙を解く迷宮

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第二話 噛み合う刃

最初の数回の戦闘は、様子見だった。


魔物が現れるたび、アークとシャンテは最短距離で処理しようとし、カイリは待ちきれずに前へ出て、少年――シオンは、常に一歩引いた位置から全体を見ていた。


噛み合わない。


アークの聖火はカイリを気にして範囲を絞りすぎ、カイリの一撃は狙いすぎて外周を逃す。シャンテはタイミングを計りかねていた。


互いのやり方に、まだ慣れない。




「――そっちじゃない」


三戦目、初めてシオンが口を開いた。短く、迷いのない声。


指し示す先は、ヴァイル・ピクシーの群れの後方。逃げようとしていた一匹。


「放っておけば、仲間を呼ぶ」


アークは半信半疑のまま、示された方向に剣撃を向けた。結果は、シオンの言う通りだった。以降、追撃を受けることはなくなった。


四戦目では、カイリが単独で突出し、多眼《アルゴス》ワームに囲まれかけた。


「カイリ、右」

シオンの声に、カイリが半瞬遅れて剣を返す。小さな個体が、彼の喉を食い破る寸前だった。


「いちいち口出すんじゃねーよ」

「ごめん」


素っ気ないやり取り。慣れた掛け合いなのは、アークにも分かった。


五戦目には、明確な変化があった。


シオンがクラグドレイクの脚を斬り、体勢を崩させる。その隙に、アークが聖火で牽制し、視界を奪う。逃げ場を失った獲物へ、カイリの一撃が入る。焼き切れなかった残りは、シャンテの風刃が静かに刈り取っていく。


誰かが号令をかけたわけではない。ただ、動きの隙間に、次の一手が自然と収まるようになっていた。


「――ほう」

シャンテが感心したように呟く。


「息が合ってきたのう」


アークは内心驚いていた。数刻前まで初対面だった相手と、まるで長年組んできたパーティのように、隙がなくなっている。


その要にいるのは、間違いなくシオンだった。


戦況の全体を見て、次に何が起こるかを先に読み、必要な言葉だけを最小限で放つ。派手さはない。だが、彼が声を発するたびに、四人の動きが噛み合っていく。


ふと、視線を感じた。

顔を上げると、布の隙間から覗く目が、こちらを見ていた。


「治癒、頼む」

短い一言。


彼の目線を追うと、カイリの二の腕がわずかに裂け、血が滲んでいた。


本人はまるで気にした様子もなかったが、シオンは気になるようだ。


アークは黙って頷き、光を灯した掌をカイリへ向けた。


戦いの中で、少しずつ。

四人の間に、言葉にならない呼吸のようなものが、静かに生まれ始めていた。


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