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第十五話 「父親の威厳」

 俺の記念すべき異世界での…いや前世でもケンカなんかした事ない俺にとっては完全なるデビュー戦だ。


 森の入り口付近で弱った()()をしているウォーグへと近づき間合いを詰める。

 気が付いてない訳無いくせに気付いていないフリするとはなかなかウォーグ(ヤツ)も役者な魔物だな。


 ……やばい、近づけば近づく程ヤツのデカさが嫌と言うほどに分かる。

 そして俺の緊張度もMAXだ…!

 膝も笑い出してきたし、手汗もびっしょりだ…。

 やっぱ無理かな…?


 いや、あの3人のお墨付きだぞ?大丈夫なはずだ!!

 何かあれば直ぐにフォローしてくれるし、即死しない限りは治癒魔術で復活できるんだ!!


 よし覚悟を決めろ!!俺!!


 ウォーグとの距離が30m位になったところで白々しくウォーグが俺たちに気づいた振りをすると、慌ててるけど体が弱っていて逃げられない、みたいな演技をしている。

 役者な魔物だが演技は大根だな、なんて思いながらも進むとヤツとの距離は10mを切る位になりお互いの間合いに入った。


 困った表情から一変、ウォーグ(ヤツ)の目が笑った、ように見える。


「ヴィンス、油断しないで」

「はい、母様」


「アォオォォォォォ……!!」


 ウォーグは空を仰ぎ狼特有の遠吠えをする。

 すると次の瞬間、ウォーグの周りの木々が一斉に俺とクラリスを取り囲んだ!


 ナニコレ?!どういう事?!聞いてないよ!!


「っ!?母様!!」

「しまった!トレントの群れよ!!」


 取り囲んだ木々の幹に不気味な顔が現れ、その表情はせせら笑っている。


「おい!ブルーノ想定外だぞ!!」

「ちっ、行くぞ!デューク!!」


 まさかウォーグの周りの樹が魔物のトレントとは思いもしなかった俺たちだった。

 ブルーノ達が慌てて馬車から飛び降りこっちへ向かって走っている!


 ワサワサと枝を触手の様に揺らす様は俺達を値踏みしているのか、そのニヤついた表情と相まって不気味だ。


火複数弾(ファイヤーボールズ)!!」


 俺は複数のトレントに向け火複数弾(ファイヤーボールズ)をぶっ放す!


 大きな音を立てトレントに命中する!!

 が、燃えないでスグに火は消滅する。


「え?何で木なのに燃えないの?!」

「ヴィンス!トレントは弱点である火に対して長い年月をかけて耐火性を持つ様に進化したの」


 何だそれ?!そんなんありかよ!?


「それなら、これでどうだ!!」


 今度は火弾(ファイヤーボール)ではせせら笑って無防備なトレントの口に照準を合わせを発射する!


「ギィヤァアァァァァ……!!!」


 思った通り、外皮は耐火性あっても内側には有効だった。


「よく弱点に気付いたわねヴィンス!」


 トレントは口や目からは激しく、節や幹の裂け目からも炎が噴出しもがいている。


 トレントに仲間意識があるのか分からないが仲間が火を噴きだしもがき苦しむ姿を見て他のトレント達は慌てて口を閉じる。


火弾(ファイアーボール)!!」


 口がだめなら目だ!


 が、流石に目は閉じれば無効だから狙っても無駄だった。


 ふむ……どうするか?


 口を開けさせれば良いんだよな……それなら、


雷弾(スパークボール)!」


 火に耐性があっても感電はどうだ?


「ギャアァァァ!!」


 電気の玉が着弾すると流石に耐火性はあるから燃えはしないが電気ショックに堪らず声を上げる。

 よし!有効だな。


「はぁっ!!」


 俺は左手から雷弾(スパークボール)、続けて右手から火弾(ファイヤーボール)を射出する。


「ギィィヤァァァァアァ……!!」


 感電して口が開いたところに火の玉が入り込み燃え上がるトレント。


「はぁぁ!!」


 残りのトレント達を順に雷弾(スパークボール)からの火弾(ファイヤーボール)コンビネーションで次々と狩る。


 トレントは全て目や口、節、幹の裂け目から炎を噴き出し燃え盛りながら倒れる。


「やるわねヴィンス!私がフォローするまでもないわね!」

「いえ、まだウォーグが残ってます!」


 肝心のウォーグはと言えば慌てている様子も無く、余裕の笑みすら浮かべてる様にも見える。

 トレントが魔術でやられているのに慌てないって事は耐魔術性が高いのか?

 それともトレントがやられるのは想定内って事か?


「ぅおらぁ!!」


 俺はウォーグへと一足飛びに距離を詰め剣を抜く!


「アォオォォォォォ!!!」


 耳を劈く様にウォーグが雄叫びを上げる!

 空気が振動する様な音量と周波で鼓膜に直接響く!!


 が、そんなの関係ねーとばかりにウォーグの眉間に狙いを定める!


 と次の瞬間!俺の両脇から突如2つの影が入ってきた!!


 更に2匹のウォーグだ!!

 マズイ!!

 はじめのウォーグに狙いを定め宙を飛んでいる俺は無防備だ!!


雷矢(サンダーアロー)!!」


 クラリスが援護射撃を撃ってくれた!


 俺同様、飛びかかって宙に浮いた状態の2匹のウォーグはクラリスが放った雷矢(サンダーアロー)を躱す事が出来ず直撃し撃沈した。


 不意打ちを喰らわしたはずの2匹がやられて流石に残る1匹も焦っている様だ。


「喰らえぇ!!」


 俺は空中から上段でウォーグの眉間に剣を振り下ろす!!

 が、ウォーグも必死に避け切先は眉間に当たらずとも避けたウォーグの肩口にヒットした!


「ギャイン!!」


 堪らずウォーグも悲鳴をあげる。


 が子供用の剣ではウォーグの硬い毛と筋肉質の肉を切断するまでは及ばず致命傷とまではいかなかった。


「ガアァア!!!!」


 俺の着地を狙った動物的反射能力でウォーグはすかさず反撃に打って出る!


「くっ!!」


 俺は着地と同時に側転する様に何とか躱すが転げまわる形になり体制が整わない!


「ヴィンス!!」

雷弾(スパークボール)!!」


 駆け付けたブルーノと魔術を射出するデュークさん。


「ギャアィィィィン!!!」


 俺の与えた傷が効いたのか、着地の俺を狙った際に隙が出来たのか、またそこを逃さす狙ったデュークさんの魔術の精度のおかげか、いずれにしてもウォーグは避ける事も出来ずデュークさんの放った雷弾(スパークボール)が直撃し断末魔を上げる。


「ヴィンス大丈夫か!?」


 ブルーノが慌てて駆け寄ってくる。


「大丈夫です!」

「っ!?土壁(グランドウォール)!!」


 俺の返事を聞くか聞かないかのタイミングでブルーノが咄嗟に俺の後ろに土壁(グランドウォール)を作る!!


「ギャイィィン」


 壁の向こう側で魔獣が衝突する音と声が聞こえた!


「ヴィンス!ブルーノ!一度こっちへ戻れ!!」


 デュークさんが叫ぶ!

 俺は言われるがまま急いで戻り体制を整える。


 すると俺が倒したトレントの燃え盛る炎と煙の影から数匹のウォーグが飛び出してきた。


「おいおい、まさかウォーグとトレントが組んでたとでも言うのか?」

「種族が違う魔物同士が連携するなんて聞いた事ないぞ!?」

「たぶん、初めのウォーグの遠吠えはトレントを動かしたんじゃなく仲間を呼んだのよ、とは言え共存はしてたって事ね」


 歴戦の3人が驚くって事は初めてのケース何だろう。


「何だか随分と賑やかなデビュー戦になりましたね」


 ふと俺は楽しんでいることに気付く。

 初めに感じていた不安やビビる感覚が無くなっている、なんだろうこの感覚……。


「ハッ!言うじゃねーか、ヴィンス!!ブルーノ泣けてくるだろ?」

「けっ、バカ言うんじゃねーよ」

「そうよね、ギャレット家長男なんだからそれ位言ってもらわないとね」


 3人も当然ビビる事は無くむしろ楽しげだ。


「ウォーグは残り全部で6匹か、まあ標準的なウォーグの群れってとこだな」

「ようし、ならチャッチャと全員で片付けちまうか」


 ブルーノとデュークさんは大手を振って参加できる事に喜びを感じているみたいだが……


「ちょっと待って下さい父様、デュークさん」


 そんな二人に水を差すようにストップをかける。


「どうした?何だ?ヴィンス」


 早く戦いたいデュークさんはそわそわしている。


「ここは僕のデビュー戦なんで取りあえず僕に()らせてくれませんか?」


「…ハ!だってよブルーノ、どうする?」

「……()れんのか?ヴィンス、お前一人で」


 一瞬、間が空きデュークがブルーノに、ブルーノが俺に聞いてくる。


「たぶん、()れると思います、ていうか()ります」

「危険だと判断したらお前に断らずに加勢するぞ?」

「はい、その時はお願いします」

「かっかっか!やっぱホントに生まれ変わったみてーだなヴィンス!」


 っ!?

 ホント心臓に悪いな、生まれ変わったとか言われると。ホントはバレてるんじゃないかとさえ思えてくるよ。


「ようしヴィンス!来るぞ!!構えろ!!」


 ブルーノに言われウォーグを見れば奴等唸り声を出し前傾姿勢になっている。


 次の瞬間!!!


「「「「「「ガアァアア!!!!!!!」」」」」」

 一斉にウォーグは飛び掛ってきた!!

 今度は低く駆ける様に低空でだ!


稲妻鞭(ライトニングウィップ)!!」


 俺の掌からウォーグの数と同数に分かれた稲妻の鞭が射出される!


 それぞれの稲妻がウォーグと捉えようとするもウォーグも流石魔物と言ったところか、野生的反射で低空飛行の体勢を着地させ横っ飛び、または大きく上へジャンプとその攻撃軌道を変化させる!


 さっきまでウォーグ達がいた場所に虚しく稲妻が空を切る……


「うん、計算通りだな。ハァア!!」


 俺が例によって奇声を発し手を振り上げると稲妻は軌道を変化させ避けたはずのウォーグ達を追従する様にして背後から下からと不規則な動きでウォーグ達を捉える!


「「「「「「ギャイーーーーン……」」」」」」

 ウォーグ達は断末魔を上げ次々と落下する。


「おお!スゲーな(そら)能力!」

「これが(そら)魔術?!」


 デュークさんが感心してクラリスが驚いている。何とかデビュー戦は白星かな。


「それにウォーグの弱点が雷だってよく気付いたな」

「はい、さきほどから母様もデュークさんも雷属性で仕留めてましたから。それより何とかデビュー戦は白星を飾れたみたいですね」


 褒められたり驚かれたりは嬉しいけど、それより無事勝てた事にホッとする。


「スゲーなヴィンス、まさかデビュー戦で魔物10匹以上瞬殺なんてよ!」

「そうだな、まさか5歳の子供が魔物の群れを全滅させるとは驚いた」


「いえ、全滅させてはいないですよ。実際勝てたのは皆のフォローがあってからこそですし」


「かっかっか、分かってるねぇヴィンス!流石俺の弟子だけあるな」

「はあ?ちょっと何偉そうに言ってるのよデューク!あんたのは不意打ちに放っただけでしょ」

「な!?ちょ姉ちゃん…でもそれを言うならクラリスの雷矢(サンダーアロー)だってそうじゃねーかよ」


 高くなりかけた鼻を折られるデュークさんだけど言い返す。


「だから私が仕留めたウォーグの事を誰かみたく得意げに言わないでしょ」


「無傷に済んだのは皆さんのおかげですけど、確かにデュークさんが助けてくれた場面ははっきり言って怖かったですよ、あれだけ間近にウォーグが迫っていたのでデュークさんの魔術が無かったら僕もウォーグ相手に無傷じゃ済みませんでした」

「な!聞いたろ?」

「確かにあの場面はデュークのおかげだ、感謝しなきゃな」


「ちょっと、あなたまで……でもまあ確かにデュークのおかげね、ありがとうデューク」

「な、なんだよ…そ、そうやって改めて言われるとくすぐってーじゃねーかよ…」


 素直に褒められるとリアクションに困るのか、ならいつもの様に突っ込まれる方が性に合ってるって事か。

 でもここは本当に助かったしお礼を言わないとな。


「改めてありがとうございました!デュークさん!」

「お、おぉう……い、いいって事よ」


「あら、デューク、あなたの子供の時を思い出すわね、その恥ずかしがった姿!」

「な、なに言い出してんだよクラリス!」


「ほう、デュークにもそんな可愛げのある時もあったとはな」

「う、うるせーブルーノ、テメーとは違ってそりゃ可愛かったぜ」

「デューク!!」


 何だ?何でクラリスはデュークさんを一喝したんだ?

 そんなに怒る事じゃないだろうに、いくら旦那の事言われたからって。

 よし、ここは俺も参戦して盛り上げてやるか!


「いやぁ、ホントに今の父様の見た目からは努々信じられませんよ。いくら子供の時でも父様に可愛い時があったなんてまっっったくもって信じられませんね!」

「「っ!?」」


 一瞬でその場の空気が凍り付くのが分かる…。


 ん?何だ?何かマズイこと言った?

 こんな輩に可愛いなんて言葉は似つかわしくないからな、はっきり言って突っ込んでやるのも有りだろう。


「ばっか!ヴィンス!お前…」

「ヴィンス!?あ、あなた、ヴィンスはまだ、ほら、その、子供だから…!」

「そ、そうだぜ、ブルーノ…ヴィンスは今の勇ましくて格好いいブルーノしか知らねーから、な?!」


「いえ、僕は…モガモガモガ………」


 慌てるようにデュークさんが俺の口を力いっぱい塞ぐ。

 何だ?何をそんなに慌ててる?!


「…いいんだ…お前ら…どうせ俺なんて、(いか)つくてまるでただ真っ直ぐ突っ込むしか能の無い岩狂猪(マッドロックボア)みたいだもんな……」


「な?!だ、誰も厳ついとか猪みてーとか言ってねーよ…!」

「そ、そうよ、あなたはあんな単細胞の魔物と違って知性があって品位も兼ね備えた上に、ワイルドで頼りになる人よ」


「ど、どうしんですか?二人とも急に(おだ)て…モガモガ……」


 ちょ、デュークさん?!何をそんなに必死になって俺の発言を押さえつける?!


「ヴィンスの言うとおりお前らも取ってつけた様に煽てなくていいんだぜ…」


 どうやらブルーノは落ち込んでいる様だ。


「だ、誰もお、煽ててなんかい、いねーよ、な、なぁ姉ちゃん…?」

「そ、そうよ、私達はいつも思っている通りに言ってるだけで、あ、あなたが何か変に誤解してるんじゃないかと思って改めて言い直しただけで…ね?!ヴィンス!?あなただってお父さんを尊敬してるでしょ?!」


「はい。確かに僕は父様を尊敬してるし、格好良いと思っているのは事実です」


 これはこれで事実だし否定する理由は無い。あれ?それとももう一発ボケた方が良かった?


 っ!?

 ブルーノがチラッとこっちを見た。


 その風貌に似合わない弱気な目線で。


「な、な!?ブルーノ!やっぱヴィンスだってお前を格好良いって思っているってよ!な?言った通りだろ?!」

「よ、良かったじゃない誤解は解けて、改めて息子からも格好良いって言われて、これこそ父親冥利に尽きるんじゃない?」


「…そ、そうか…?俺は父親として格好良いか…?」


「はい、強くて頼りになる父親だと思っています!」


 こっちだな?!正解の答えは…。


「な、な?!聞いたろ?!ブルーノ?!」

「ま、まったくあなたってば、早とちりするんだから…も、もう…」


「そ、そうか!そうか!わっはっはっは!格好良いか!!」


「か、かっかっか…」

「あ、あは、あはははは…」


 …ここまで来れば流石に分かったぞ。

 ブルーノはあの厳つい風貌に反して見た目の事を気にしているんだな…

 ったく、どう見てもそんなの気にするタイプじゃないだろ?


『おい、ヴィンス…だいたい分かったろうけどブルーノのヤツ見た目を違って見た目を気にするタイプなんだよ…いちいち繊細で自虐的になってメンドクセー事になるから気ぃつけろよ…』

『はい…ようく分かりました…』


「ん?何だお前ら男同士でこちょこちょ何内緒話なんかしてやがんだ?」


 ブルーノはホクホク顔だ……引くなコレ……


「いや、ヴィンスのヤツにちゃんと格好良いと思ってんなら普段から言葉にしろよってアドバイスを…な?な?ヴィンス!?」

「は、はい!そ、その様にアドバイス頂きました…!」


「そうかそうか!だが別にいちいちいつも誉めてくれなんて良いんだぜ?なはなはなはなははは!!」


 正直キツイ……この厳つい(おとこ)が鼻の下伸ばしてデレデレしてる姿は…ましてやこれが父親かと思うとイタイ…


「ようし!お前ら出立するぞ!!俺に付いて来い!!」


 その内、ヒャッハーとか言い出しかねないな……


「お、俺はヴィンスとこの魔物の残骸片付けてから行くからよ、先クラリスと馬車に戻っててくれよ」

「え?!わ、私?!私も後片付け手伝うわよ?」


 この状況では流石に夫とは言え二人きりになるのは御免って感じなんだろうな…分かります…が、すみません母様…。


「クラリスいいんだ、こう言うのは若い衆の仕事だからな!じゃ後始末しっかり頼んだぞ!デュークよ!」

「は、はいよ…」


「何だぁ!その覇気の無い返事は?!それでも男かぁ?」

「は、はいよ!!ったく…調子良いぜ…」


「ん?何か言ったか?」

「言ってねーよ!ヴィンス行くぞって言っただけだよ!」


 ブルーノは勇ましくズンズンと肩で風を切り馬車へと戻っていく。

 クラリスはと言うと何度も何度も恨めしそうにこちらを睨みながらブルーノの後に続いて行った…。


「はぁあ…!疲れた…!ったくあの野郎はメンドクセーったりゃありゃしねーな!」

「本当ですね…悪い意味で父様の意外な面を見ました…」


「昔っから何故か外見に関しては繊細なんだよなぁ」

「人は見かけによらないって言う良い例ですね…」


「まあ、そういうこった…野郎の風貌に関する事だけは気をつけろよ」

「はい…」


 何だか魔物狩りより正直疲れたな……。


「よっし!んじゃあ気を取り直してこいつ等を片付けなきゃな」

「はい、それじゃあ僕が土魔術で穴を掘り埋めましょうか?」


「いや、その前にウォーグは牙を抜く。これは結構いい金で売れるからな、ホントは毛皮も取りてーとこだが焼け焦げちまってるからしかたねー」

「ウォーグは部位が売れる魔物だったんですね?それと分かっていればもう少し考えて攻撃したのですが、すみません」


「いや、別に謝る事じゃねーさ。何しろデビュー戦だったし予想外の戦いだったんだから倒しただけでも立派すぎるくれーだぜ」

「次からは考えて戦います」


「いいんだって、お前はまだそんな事まで考えなくて。それより強くなる事を考える方が先だ」

「分かりました」


 そういってデュークさんはウォーグの残骸から牙を抜き取り比較的焼け焦げが少ないウォーグは解体して氷魔術で凍らせ、それを土魔術で作った保存ケースの様な入れ物にしまった。


「デュークさん、ウォーグの肉は保存食にするんですか?」

「ああ、結構イケんだぜ。旅の途中はこうして食料も確保しながら行くのが鉄則だ」

「なるほど」


「よし!んじゃヴィンス、土魔術で穴掘ってトレントを穴へ落として燃やすんだ、死んだトレントは簡単に燃えるからな、で、燃え盛るトレントの上にウォーグを乗せて焼却だ」

「はい!」


 俺はトレント、ウォーグの順に積み重ね火魔術の火力を上げ一気に焼き尽くす。

 何だか木の焼ける匂いと肉の焼ける匂いでBBQを思い出す。


「じゃ、馬車に戻るか」

「はい」


 そういって牙と肉を抱え馬車に戻る。


「お~やっと戻ったか、時間掛かりすぎだぞ?男なら仕事はテキパキとこなしてなんぼだぞ?」


 ホクホク顔のブルーノ……ったく…この男だきゃあ……


「ようし!いざしゅっぱ~つ!!」


 こうして俺の華麗なる?デビュー戦というより一人のメンドクセー男の印象しか残らなかった出来事を後に上機嫌の男一人と戦い以上に疲れ果てた3人を乗せた馬車は目的地へ向け走り出すのであった…。

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