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第十六話 「宙魔術」

 故郷シュミットを旅立ち今日でちょうど30日目。


 目的地のチコレットまでは約1ヶ月って言ってたからぼちぼち到着する頃なんだろうか?


 道中、数々の魔物と戦って経験は積んだが、その中身はと言えばウォーグ以上の魔物に遭う事も無く良くも悪くも順調に旅路を進んできた。


 思い起こせばあのある意味センセーショナルと言うかエキセントリックなブルーノの側面を見て幕を閉じたデビュー戦も今となってはいい思い出だ。


「森が見えてきたぞ」


 ブルーノが右手をかざしながら遠くを見ているその先にはうっすらとだが、見渡す限りの森が見えてきた。


「ようやくチコレット領か」

「あの森を越えればチコレットですか?」


 俺とデュークさんも御者席に移動する。


「いや、あの森の中にチコレットはあるんだ」

「へぇ~何か珍しいね?森の中に街があるなんて」


「そうだな、普通は平原とか山の麓とかにあるからな、獣人族とか尖耳族(エルフ)でもない人族の街としては珍しいな」

「そうですよね?人族がわざわざ森の中に街を作るメリットより魔物の襲撃とか考えればデメリットの方が大きい気がします」


 何で森の中に街を作ったんだろうな?まあ行けば分かるさ、かな?


「だから俺が左遷…じゃなかった赴任させられたって訳だ」


 ブルーノが自虐的に言う。


「つまりブルーノがチコレットに来たのは魔物退治がメインの仕事って事か」

「ああ、そう言う事だ」

「そういう事なら僕もお手伝いします!」


 魔物が多いって事は絶好の訓練になる。まあ魔物の種類にもよるんだろうけど街の安全を守りながらも俺はレベルが上がる。まさに一石二鳥だ。


「バカ言うな、魔物を退治するのは仕事で俺に与えられた任務だ、それを子供にやらせる親がどこにいる」

「言い間違えました、お手伝いでは無く修行の一環として連れて行ってください」

「同じだ」


「ちぇ…」


 ダメか。まあその辺はおいおい様子を見てだな…。


「まあ、ヴィンスよ、お前は街にいて街を守ると思えば退屈しねーだろ」

「まあそういう考え方もありますけど…そうそう街に魔物が攻め入りますかね?」


 街に魔物が出現したりするのか?前の街ではそんな事は無かったけど森の中だし有り得るか?


「デューク、バカな事吹き込んであんましヴィンスをその気にさせんなよ?ヴィンスはまだ子供だ」

「だがただの子供じゃねーだろ?何せウォーグを狩っちまうぐれーだかんな」

「そりゃあ、まあ、そうだが…」

「それにケリーとソフィーちゃんにも言われたろ、サンクルーズ魔法学校に入学出来る様に腕を磨いとけってよ」


「あ、ああ…」


 ブルーノがデュークさんに言いくるめられそうだが、俺としてはデュークさんに頑張ってほしい。


「大丈夫ですよ、父様。無理はしませんから、デュークさんだって付いていてくれるでしょうし、ね!デュークさん」

「ああ、どうせ俺も暇だろうからヴィンスと一緒に訓練と街の自衛に精を出すぜ」


「ちっ、好きにしろ」


 渋々なのか、とりあえず親の立場として反対してみたのか分からないがデュークさんのお陰で魔物狩りは容認と言うか黙認に近いがとりあえずは認められたみたいだ。


 そうこう言っているうちに馬車は森の入り口へと差し掛ろうとしたがブルーノが馬車を止める。


「ようし、今日はここで夜を明かし、明日の日の出と共に森に入るぞ」

「おう」


 ん?どうやら今日はここまでって事?

 デュークさんも同意してるしな、でもまだ昼になったばかりだよ?


「まだ陽も高いですし、行った方が良くないですか?」

「ヴィンス、チコレットは森の奥の方に位置しているからここからまる一日は掛かるんだ、夜の森ん中ぁ進む危険を冒すほど急ぐ旅じゃねーからな、余裕をもって行くって事だ」


「なるほど」


 リスクを負うべきと負うべきでない所の分別が付くって事は冒険者としての経験からなのかな? これが俺みたいな素人集団だったら何も考えないで森に入ってたな。


「じゃあデュークはここでクラリスと野営(キャンプ)の準備しておいてくれ、俺はヴィンスと夕食の手配に行ってくる」


 ブルーノがリーダシップを発揮して仕切る。


「わかった、肉を頼むぜ肉、ウォーグの肉切らして以来植物ばっかだからな」

「任せておけ、ヴィンス行くぞ」

「はい」


 今日はブルーノと晩飯の仕入れだ。

 ここ最近、魔獣との遭遇率が悪く植魔系の魔物ばかりだったからデュークさんじゃ無いけど俺も肉が食いたい。


 俺とブルーノは整備さえた道から外れた獣道を見つけ森に入っていく。


「まあ、この辺じゃ森の入口付近だし大した魔物は出ないと思うが、油断はするよ?」

「はい、父様」


 森へと入っていくが思ったより明るい。


 何か魔物が出る森って聞くと昼なお暗い、みたいなイメージだったが拍子抜けする位爽やかだ、何なら森林浴と洒落込もうかって言う位に。


 木々の間からは木漏れ日が溢れ、小鳥達が囀りながら優雅に舞っている。


 この世界の鳥は前世で言えば南国にいそうなカラフルな羽で覆われて目にも鮮やかだ。


「ヴィンス!!構えろ、|小片舞鳥(ビットバード)だぞ!」


 っ!?

 どこ!?

 ブルーノの警告に俺は辺りを見回す。


「上だ!!ヴィンス!」


 っ!?


 慌てて空を見る!!

 すると先程まで優雅に舞う小鳥達だなぁなんて思っていた鳥達が激しく不規則に舞いながら俺とブルーノ目掛け突進してくる!


「くおっ!?」

土壁(アースウォール)!」


 俺は何とか横っ跳びに避け、ブルーノは土壁(アースウォール)で防御するが|小片舞鳥(ビットバード)はギリギリのところで避ける。


 その数、20匹はいるだろうか?


「ヴィンス、俺と背中合わせになれ!」

「はい!」


「いいか、奴らはすばしっこい、だがそれだけだ!火を吐く訳でも毒を持つ訳でも無い!ただ突っ込んでくるだけだ」

「とは言え、なかなかの速さですよね?!」


「ああ、その早さと反射神経こそが奴らの武器だ、あの速さであの鋭い(くちばし)で突っ込まれれば場所によっちゃあ致命傷になるから気をつけろ!」

「はい!!」


 体は小さいが嘴だけ妙にデカいな…体より嘴の方が長いんじゃないか?


 そうこうしてる間も当然、奴らは攻撃してくる訳だがブルーノはギリギリのところまで引っ張り自分に衝突する寸前で真っ二つに切り裂いてその数を徐々にだが減らしている。


 俺はと言えば、そこまでの剣術はなく目の前で火弾(ファイヤボール)を放つのがやっとだが当たらない。


「ヴィンス、魔術はどうしても魔力を具現化して射出と若干とは言えタイムラグがあるから奴らには当たらないんだ!」

「なら、予め魔術を用意しておけば?」


 俺は両掌に火の玉を作り出し奴らが来るのを待つ。


「無駄だヴィンス!」


 ブルーノが無駄だと言っている隙にも小片舞鳥(ビットバード)は俺目掛け突っ込んでくる!


「今だ!!」


 小片舞鳥(ビットバード)の軌道に合わせ手のひらを向け射出する!!


 が、躱される!


 なるほどブルーノが無駄だと言った理由はこういう事か。


 魔術を用意しておいてもターゲットに照準操作(エイム)しなければ射出できない。


 ターゲットに一瞬でも手を向ければ、今からこの魔術を射出しますよと言っているも同じだ。

 そうすれば当然、小片舞鳥(ビットバード)の反射神経と機敏性をもってすれば避ける事は容易い。


 これが剣でしか小片舞鳥(ビットバード)を狩る方法が無いと言う所以か。


「ヴィンス!当たらなくてもいいからそうやって躱していろ!俺の方で狩ってやるから!」

「……いえ、それならこれで!!」


 照準操作(エイム)するから避けられるなら照準操作(エイム)しなければ良いんじゃないか?


 俺は両手を下げ手のひらだけ空に向け土魔術で弾丸を作り出す。


 弾丸の回転速度は早めにして射出速度はギリ、目で追える速度で射出する。

 ホントの弾丸の速度じゃ流石にどこを飛んでいるのか目視できないからな。


 何とか見える程度の速度で射出された弾丸は照準操作(エイム)無しだから当然、小片舞鳥(ビットバード)に命中しない。


 命中せずに小片舞鳥(ビットバード)の脇を通り抜けたのを確認した。


「はぁあぁぁぁ!!」


 小片舞鳥(ビットバード)の脇をスルーした弾丸を(そら)魔術を使って急反転させ小片舞鳥(ビットバード)の死角である真後ろから攻撃する!


 流石の小片舞鳥(ビットバード)も死角からの攻撃には気づかず弾丸をモロに食らい錐揉み状態で落下し地面へと落ちた。


「やった!!」


「やるなヴィンス!!(そら)魔術か!!」

「ええ、死角からの攻撃なら避けられないかと思ってやってみました!」


「おっとぉ!俺も狩ったぞ、これで残り5羽だぞ!」

「任せて下さい!」


 残り5匹も土弾丸を(そら)魔術で操って小片舞鳥(ビットバード)を全滅させる事に成功した。



「しかし、まさかこんな森の入口付近で小片舞鳥(ビットバード)に遭遇するとはな…いや、そんな事よりお前の(そら)魔術の方が驚いたがな」


「いやぁ、思いつきでやってみましたけど、一度に射出して操れるのは左右1発ずつなのでもう少し数を増やすか何か改善したいですね。それにしても小片舞鳥(ビットバード)って見かけによらず凶暴な小鳥、じゃなくて魔鳥でしたね」


「ああ、その見かけに騙されると厄介な魔鳥だ。だけどなヴィンス小片舞鳥(ビットバード)は焼いて食うとなかなか美味なんだぞ」

「おお!そしたら今夜は焼き鳥パーティーですね!」


 俺達は撃墜した小片舞鳥(ビットバード)を残さず回収しデュークとクラリスが待つ野営場まで戻った。


「ただ今戻りました!」

「おう、ヴィンス!ちゃんと肉確保したか?」


 キャンプ地に戻るとデュークさんが肉を焼く用の焼き場を作っていた。と言ってもただ石を円形状に積み上げているだけだが。


「はい!バッチリです!」


 俺は誇らしげにとりたてほやほやの小片舞鳥(ビットバード)を掲げて見せる。


「え?それって小片舞鳥(ビットバード)か?!」

「こんなトコに小片舞鳥(ビットバード)なんかいるの?」


 デュークさんにクラリスも小片舞鳥(ビットバード)を見て驚いている。やっぱレアキャラなんだろうか?


「俺もまさか森に入ってスグんとこで小片舞鳥(ビットバード)に遭遇するとは思ってなかったから焦ったがな」

「僕なんか可愛い小鳥だなぁなんてすっかり騙されましたよ」


「そりゃヴィンスは初めて見る魔鳥だろうから騙されるわな。で?ブルーノ、これ全部お前が狩ったのか?」

「いや、俺も狩ったがほとんどがヴィンスが狩ったやつだ」


「何ぃ?ヴィンスが?確かに魔術は大したもんだが剣術はそこまでじゃねーだろ?」


 ちょいと失礼じゃないかいデュークさん?とも思うが確かに子供の俺にそこまでの剣技は無いな。


「魔術で狩ったんだよ、小片舞鳥(ビットバード)をよ」

「どうやって?小片舞鳥(ビットバード)に魔術は通用しねーだろ?普通はギリギリんとこまで我慢して剣で真っ二つにするのが定石じゃねーか」


「例の|(そら)魔術だよ」

「あ、ああ…なるほど…それなら普通の魔術じゃねーわな」

「でも(そら)魔術とは言えどうやって狩ったの?ヴィンス」


 デュークさんとクラリスが興味津々な顔な顔をしている。


「えーっと、小片舞鳥(ビットバード)に照準を合わせてるから魔術を避けられるので、照準を合わせずに射出して逸れた弾を(そら)魔術で死角から攻撃したんです」


「でも、あのすばしっこい小片舞鳥(ビットバード)に追いつく速度の魔術って何を使ったんだ?」

「そうよね、小片舞鳥の死骸だって焼けている訳でも凍っている訳でもなく綺麗だしね」


 デュークさんとクラリス更にが聞いてくる。


小片舞鳥(ビットバード)って小さくって素早いじゃないですか、だから僕も小さい弾が良いと思って土魔術で弾丸を作りました」

「弾丸にしたら見えないんじゃないか?見えなくても(そら)魔術は使えるのか?」


「1発だったら勘で出来るかもしれませんが複数になると無理です」

「だったら目に見える速度の弾丸って事か?まあ、ギリギリ見える速度の弾丸でも当たりゃ痛てーだろうし下手すりゃ死ぬだろうけど確実に殺るまでの威力になるか?」


「ええ、ですので弾丸の回転速度を限界まで上げてスピードを落とした分、回転速度で殺傷力をあげました」

「なるほど……」

「な、何だか信じられないわね……」


「おいヴィンス、百聞は一見にしかずだ。コイツらにもさっきのみせてやれよ」

「え?あ、はい」


「おう、頼むぜヴィンス」


「じゃあ、ただ空に向かって打っても分かりずらいかと思うのでデュークさん空に2発火弾(ファイヤーボール)を打ってくれますか?」


「お、おう、行くぜ……複数火弾(ファイヤーボールズ)!」


「はぁあ!!」


 俺は両手から土魔術の弾丸を2発射出して追いかける。


 先に射出された中サイズの火弾を極小の土弾丸が追い抜く!


「はぇあぁ!!」


 追い抜いた土弾丸を(そら)魔術で急旋回させそれぞれ火弾(ファイヤーボール)に正面から衝突させ空中で消滅させた!


「うぉおぉぉ…スゲーな!」

「信じられない…何あの動き…?!」


 デュークさんもクラリスも改めて宙魔術を目の当たりにして驚いている。


「もっと練習すればコントロール出来る数もスピードもアップするかも知れないな」

「そうですね、時間を作って練習したいと思います」


 ブルーノの言う通りだ、質と量のバランスは重要だからな、当面の目標は左右3発ずつ制御出来る事を課題として訓練に励むとしよう。


「まあ、ヴィンスの(そら)魔術には驚いたが、とりあえず飯にするか、腹減っただろ?」


 デュークさんが飯の用意をしてくれる。


「で?、小片舞鳥(ビットバード)が10……何羽?」


 クラリスが調理しようと小片舞鳥(ビットバード)を数えるが戸惑っている。


「正確には20羽だ」

「…これって切ってあるのがブルーノで、綺麗に始末してんのがヴィンスが狩ったって事だよな?」


 デュークさんが半身の小片舞鳥(ビットバード)と一匹丸々の小片舞鳥(ビットバード)をそれぞれ両手に持って聞いてくる。


「ああ、そうだ…仕方ねーだろ?普通は(そら)魔術なんか使えないんだからよ」

「ま、まあ…そうだよな」


 これにはデュークさんも納得だ。


「それよりデューク、焼き鳥にするんだからよ、適当な枝集めてこい」

「ああ、そうだな分かった」


 直ぐにデュークさんは枝を集めてきて、器用に枝を串にして石の上で小片舞鳥(ビットバード)を捌き前世の焼き鳥そのものに仕込んだ。


 後は火魔術で焚き火を起こし周りに串を突き刺せば焼き鳥の完成だ。


 と言っても前世の様なタレがある訳も無く、塩すら無いからただ焼いただけだが。


「うっま!?」


 ただ焼いただけの鳥だが物凄く美味い!


「だろ?デューク様特製焼き鳥だかんな!」

「何が特製だ、ただ焼いただけじゃねーか」

「バッカ、おめーこの微妙な火加減と肉の捌き方に手間ヒマ掛かってのが分かんないかね〜」


「いや、ホント美味しいですよ!」

「そうか、そうか、ドンドン食え!何しろお前さんが取ってきたんだからな」


 なんて言うか…ただ焼いただけなんだけど甘いっていうか、ジューシーで美味しい。

 想像ではパッサパッサで獣臭いんじゃないかと思ってたが良い意味で予想外だった。


 これにタレ、せめて塩を振って食べたいなぁ。


 今度暇を見つけて調味料について研究してみるか!


 いや、(そら)魔術の訓練もあるしな…色々とやる事が多いが……嫌じゃない。


 前世の仕事の様に次から次へと仕事が降って掛かってくる忙しさとは根本的に違うからだろうけど俺は今生きる忙しさを確かに楽しんでいる!


 夜は更けていきそんな事を考えながら就寝した。




 ~翌朝~



 予定通り日の出と共に出発した。


 昨日も森に入ったが朝は朝で爽やかな森だ。

 チュンチュンと鳥が囀っているが騙されないぞ、どうせ魔鳥なんだろ?


 森は適度に木と木の合間があり不気味な感じはしないし、一応チコレットまでの道は整備というか均してあるから馬車でも問題は無い。


 昨日の内にクラリスが馬車の屋根に魔除けの魔法陣を書いておいてくれたおかげでいちいち魔物が襲ってこないから順調だ。


 但し、この魔法陣の効力はどんな魔物にも効く程に万能と言う事でもなく、魔法陣の効果より強い力を持つ魔物であれば襲撃してくるらしい。


 とは言えいちいち雑魚キャラ相手にして、いざ強敵に襲われても困るからやはり魔除け効果があるならそれに越した事は無いだろう。


 森に入って2時間位経ったろうか?未だ魔物の襲撃も無く順調だ。


 デューク曰く、この調子なら休憩挟んでも日が落ちる前にはチコレットに着くとの事。


「おかしいな…」

「お前もそう思うか?」


 御者席にいるブルーノとデュークが神妙な面持ちだ。


「どうかしたんですか?」

「ヴィンス、気付かない?周りの気配」


 クラリスも感じている様だが何の事だ?と思い俺も御者席に移動し周りの気配を感じ取ろうと集中してみる。


 っ!?


 俺達の馬車の周りそこいら中に魔物が潜んでいる!


「クラリスの魔法陣が効いているから襲っては来ないが数が多過ぎないか?」

「確かに下級クラスばっかだが、ちょっと異常だぞ」


 ひしめき合っている訳じゃ無いが4〜50m間隔に単独であったり徒党を組んでたりと様々な魔物が息を潜め俺達の様子を伺っている。


「襲い掛かって来ないとは言え気持ちのいいもんじゃありませんね」

「ああ」


 俺達と魔物達がお互いが警戒しつつ沈黙を保ちながら進む。


 っ!?


 そんな静寂の森に突如魔獣の雄叫びが響き沈黙を切り裂く!!


「上だ!!ブルーノ!」


 デュークさんがいち早く察知した!


 俺達は一斉に上を見る!

 木の上から両手を広げ猿の様な風貌の魔物が降ってきた!

 それは俺の知っている猿と違って手が4本、尻尾が2本生えて体毛は赤い。


赤四手猿レッドクアッドモンキーだ!!」


 デュークさんが叫ぶ!


火複数弾(ファイヤボールズ)!」


 ブルーノが4つの|火弾(ファイヤボール)を射出する!


 赤四手猿レッドクアッドモンキーは2本の腕で火弾(ファイヤボール)2つをはたき落とすと同時に尻尾で近くの枝を掴み体を素早く回転させ残り2発も回避した!


「ちっ!生意気なエテ公だ!」


 赤四手猿レッドクアッドモンキーは2本の尻尾を巧みに使い枝から枝へと不規則に飛び移りながら馬車へ飛び移って来た!


「うぉらぁあ!!」


 デュークさんが御者席から馬車の上に飛び上がると同時に剣を抜き横払いする!


 っ!?


 赤四手猿レッドクアッドモンキーはデュークさんの動きを読んでいたかの様に素早く屈んで横払いされた剣を躱す!!


 空振りしたデュークさんの隙を突いて赤四手猿レッドクアッドモンキーが飛び掛かる!


「キェーーーッ!!」


 が、デュークさん目掛け飛びかかった赤四手猿レッドクアッドモンキーが左にすっ飛び馬車から転げ落ちる!


「ヴィンス!!」


 俺だって黙って見ている訳じゃ無い。

 無詠唱からの土弾丸を(そら)魔術で半円を描く様に射出して赤四手猿レッドクアッドモンキーのコメカミにヒットさせてやったのだ。


「デューク!トドメだ!」


 ブルーノは馬車を急停車させる!


「分かってる!」


 赤四手猿レッドクアッドモンキーが馬車から転げ落ちると同時くらいにデュークさんは赤四手猿レッドクアッドモンキーを追っかけていた。

 側から見れば一緒に落ちたんじゃ無いかっていう位に間髪置かずにだ!


「ぅおらあぁぁあ!!」


 転げ落ちる赤四手猿レッドクアッドモンキーが地面に落ちるのと同時にデュークさんの抜き身になった剣が赤四手猿レッドクアッドモンキーの心臓あたりを串刺しにする!


「キェアァァアァァァア!!!」


 高周波にも似た様な断末魔が森に響き渡る。


 その声に身を潜めながら一部始終を見ていた魔物達が逃げ出した。


 クラリスの魔法陣による効力が効かない魔物だったがデュークさんと(そら)魔術のコンビネーションで何とか瞬殺出来たが、これが単体でなく複数だったらヤバかったかも知れない。


「ヴィンス、助かったぜ」

「いえ、無事で良かったです」


 赤四手猿レッドクアッドモンキーから剣を抜きデュークさんが馬車の所まで戻ってくる。


「クラリスは大丈夫か?」

「私は大丈夫だけど今ので屋根に書いた魔法陣が消えたわ」


 ブルーノはクラリスに声をかけ、クラリスは御者席から馬車の屋根を見ながら答える。


「とりあえず今の騒ぎで近くにいた魔物も退散したみてーだからいいが、このまま魔法陣無しじゃ後々メンドクセーな」


 デュークさんは周りを警戒しながら剣に付いた赤四手猿レッドクアッドモンキーの血を拭う。


「デューク、チコレットまで後どれ位で着く?!」

「ざっと4時間、いや5時間ってとこか?」

「ちっ、まだ結構ありやがんな」


 ブルーノとデュークさんは渋い顔をしている。


「どうする?ここでまた魔法陣書き直す?」


 クラリスがブルーノに聞く。


「魔法陣書き直すのにどれ位の時間が掛かるんですか?」

「集中して2時間ってとこね」


「ブルーノ、どうするよ?」


 リーダーであるブルーノに決断を仰ぎ皆がその決断に注目する。

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