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202.二周目RTA開始


 魔鳥車の窓から平野を見下ろす。

 久々の空の旅は、遊覧気分という訳にはいかなかった。


「魔物が王都つく前に間に合うか?」


 ヒスイのパーティメンバーのうちの一人が問う。

 魔鳥車に乗っているのはリゼルパーティ三人、ヒスイパーティ三人の計六人。大侵攻という大規模な魔物の群れに立ち向かうにしては、誰一人として緊張も高揚もなかった。

 むしろ平常心のままに見える。それが各々の実力の高さ、経験の豊富さを裏づけていた。


「どうだかな。群れを見ねぇことには何とも言えねぇよ」

「僕たちがサルスから真っ直ぐに来てるんだから、王都に近づかないと見えないかな」


 ヒスイたちパーティの会話に耳を傾け、リゼルは思索の参考にする。

 彼らは今回の大侵攻が迷宮由来だとは考えていないようだった。それは知らせを受けた時からそうらしいが、リゼルがライノマジロの目撃証言を出したことで、より確信を深めたように見受けられる。

 それもそうだろう。迷宮由来の大侵攻が自然発生するのは、百年に一度あるかないか。

 そもそもが、あまりにも長く放置された迷宮が憂さ晴らしとでもいうように魔物を大放出する現象だ。冒険者ギルドによって徹底的に管理されている現状、支配者のように意図して隠し、人為的に引き起こしでもしない限りはまず起こりえない。

 それでも、迷宮のことなので“絶対”とは言えないのだが。


「リーダーなんか見える?」

「いえ」


 ふいにイレヴンも隣から窓を覗き込む。

 リゼルは手元に落ちてきた赤髪を指先でなぞりながら、柔らかく微笑んだ。


「相変わらず安定飛行だな、と思いまして」

「あーね」


 頷いたイレヴンが、ふと空を見上げる。

 その目元に、大きく広げられた魔鳥の翼が濃い影を落とした。


「コレ持ってくんなら必要だけど、その“要請を受けに行く”っつうのに四人……匹? 組? そんなにいんの? 本当なら好き勝手に行けねぇから要請貰いにいくんじゃん」

「そこはイレヴンの言うとおりです」


 風に揺られて頬をくすぐる髪を耳へとかけながら、リゼルは可笑しそうに告げる。


「そうですね、本当なら一騎で十分だと思います。王都に使者として留まらないといけないなら、サルスに取って返す伝令役としてもう一組つける必要があるかもしれませんけど」

「じゃあ四騎いると不味いんじゃねぇの?」

「そこはほら、逆転の発想というか。魔鳥車には四人必須なので」

「ん?」

「しかも乗せてるのが即戦力になりすぎるSランクと一刀なので」

「何それ、ヒント?」


 理解できなかったイレヴンが熟考を始める傍では、ジルが呆れたように天井を見上げている。

 ついでにヒスイらも今更ながら疑問に思ったのか、一緒に考え始めたようだ。その中でもヒスイだけは釈然としない顔をしているので、自分の同行が思ったよりあっさりと許可された理由を悟ったのだろう。

 そんな彼らを尻目に、イレヴンが何かを思いつく。


「Sランク届けてやったぞって恩売りたい?」

「それはオマケです」

「じゃあ、あー……あ、待って。理由あって四人、の逆だからァ」


 イレヴンは思考に耽るように首を反らしながら、軽くつま先で床を叩く。

 それが伝わったのだろうか。外から「床を蹴るんじゃない」という声が微かに届いた。

 やがてイレヴンがパッと笑みを浮かべてリゼルを見る。


「分かった。『魔鳥車運ぶのに必要なんだから四人でもしょうがねぇだろ』ってやつだ」

「多分そうだと思います」

 あくまでリゼルの想像の範疇なので正解とは言いきれない。

 だが、恐らくそうなのだろう。魔鳥騎兵のことを知っていれば、尚更そう思える。


「俺たちは口実ですよ」


 リゼルは苦笑した。


「魔鳥騎兵団は一組でも多く、早く、王都の危機に駆けつけたい。でも要請が出ないと動けない。だから冒険者を送るという名目で、魔鳥騎兵を送り込んだんでしょうね」

「それ合法?」

「法の抜け穴っていうのは意図して作られてるんですよ」


 明言を避けたリゼルに大人しく撫でられつつ、イレヴンは何だかなという顔をしている。

 それを見て、数多の違法行為に手を染めた癖に何を引っ掛かることがあるのかとジルは思った。


「副隊長としてナハスさんが要請を引き出して、あとの方は戦線に出るんだと思います」


 二騎、三騎の魔鳥騎兵で何が変わるのか。

 もちろん変わりまくる。詳細な伝令が即座に回るようになり、偵察効率は格段に上がる。その武力にこそ注目されがちだが、彼らは戦場の情報戦においては圧倒できるような稀有な存在だ。


「ところでリゼル君、犯人の目星ついてる?」


 そこでヒスイが会話に加わった。


「そこ押さえて終わるなら、捜索に力入れてみても良さそうだけど」

「現場で探せるかは、実際に状況を見てみないと分かりません」

「商業国の時は? 何とかの支配者どうやって捕まえたの?」

「煽っておびき出しましたね」


 やるね、という表情をしたヒスイに、リゼルは少し誇らしげだ。

 ちなみにヒスイ側の残る二人は、信じがたい真実を知ってしまったかのような顔をしていた。


「ただそれは、主犯が支配者さんだって確信があったので」

「煽る材料が分かってたってことだね」

「探すよりもおびき寄せるほうが楽なんですけど」

「じゃあ逆に好きなもの用意するとか?」


 なんか虫捕りみたいな話してるな、という周囲の視線が集まるも気にしない。

 リゼルとヒスイは、ああでもないこうでもないと話し合いを続けている。


「難しいですね。主犯を押さえて大侵攻が止まるのかは賭けですし」

「あ、そうなんだ」

「支配者さんは迷宮産の魔物を操ってたんですけど、大侵攻は大侵攻なので。支配者さんを真っ先に排除しても、従来のとおりに魔物はマルケイドを襲い続けたでしょうね」

「まぁそれが普通の大侵攻だしね」

「ただ今回の大侵攻は、発端が魔物の異常行動だと思うので」


 そこまで口にしたリゼルに「えっ」と魔鳥車内の視線が集まった。

 真っ先に口を開いたのは、珍しく目を丸くしているヒスイだった。


「操って連れてきてるんじゃないの?」

「支配者さんの方法だと、操るための範囲指定があるんです。マルケイドの周りに魔力の増幅装置を置いて、大侵攻の群れがその範囲内に入ったら使役魔法を発動してました」


 リゼルの言葉に、思い出したようにジルとイレヴンも口を開いた。


「あー、そっか。わざわざ近くの迷宮使ったんだっけ」

「王都の周りだけで大侵攻作んのは無理だろ」


 犯人が何を目的としているのかは不明だが、王都に用事があるのは確かだ。

 ならば王都の周り、恐らくさほど遠くない森の中に装置を置く。その範囲内の魔物をすべて集めたとして、多くても十匹や二十匹を集めるのが関の山だろう。

 そもそも魔物たちは王都に進行中。つまりはある程度の遠方から搔き集めてきているのだ。


「使役魔法だけで広範囲から魔物を搔き集めて、遠距離を移動させるのはまず無理なので」

「“まず”って何?」

「すみません、ややこしい言い方をしましたね。ここでは気にしないでください」


 エルフが何人か集まればいけそう、という程度だ。

 美しい生を過ごす彼女たちのことを知るのは、あの日のマルケイドの一室にいた数人とレイのみ。それ以上に広める意思はリゼルになく、ヒスイから向けられる胡乱な眼差しにもにこりと笑って返す。


「で」

「あ、そうでした」


 異常行動だとした何なのだと促すジルに、リゼルも話を元に戻す。


「魔力の増幅装置を壊せばいいかなと」

「犯人放置すんの?」

「莫大な魔力がなければ、そもそも大侵攻の使役なんてできませんし」

「ああ、魔道具から魔石を抜くみたいなものか。機構だけあっても動かないから」

「そう、使役魔法さえなくせば魔物も散り散りになると思うので」


 大の男六人を乗せた狭苦しい車内で、リゼルは手本のような姿勢を保ったまま告げる。

 流石に魔物がすべて綺麗にいなくなることはないだろうが、多くは王都に興味をなくすはずだ。

 魔物は野生であり、野生では数が脅威になる。本来であれば、国という“巨大な人間の群れ”に攻め込むような真似はしない。そこからはぐれた人間を、普段の彼らは狩っているのだ。


「リゼル君は、散った魔物が近くの村を襲うと思う?」

「予想でいいですか?」

「うん」

「日常で村が魔物に襲われる確率では、あると思います」


 つまりは魔物が近づいた時にちょっかいを出したり、露骨に視線を合わせてたりなど。

 そういったことをしなければ大丈夫だということだ。王都ほどの厳重な城壁を持たない村では、住人たちも魔物を避ける術を身につけている。冒険者ギルドに討伐の依頼が出るのは、排除する必要が出てようやくといった具合だった。


「魔物たちも何か理由があって大移動してるみたいですし、使役魔法で無理に王都に留めなければ自然と元の流れに戻ると思います。わざわざ村を狙い直す理由もないので、運が悪ければそういうこともあるかも、くらいですね」

「うん、有難う。リゼル君の予想、信憑性高くていいね」

「うちのリーダーは凄ぇから」

「分かってるよ」


 自慢に見せかけて煽るイレヴンに、ヒスイが軽く眉を寄せる。

 SランクとBランクのパーティだ。どちらの頭が必要な時にまとめ役となるかは明確だろう。

 実力主義の冒険者世界では、それを基準にものを決めたほうが不満は出にくい。それも「相手が嫌いだ」などという理由で簡単に噴出するのだが、それでも考え得るかぎりもっとも揉め事が起きにくい決め方だ。

 リゼルもそれを重々承知している。よってこれまでの道中、都度ヒスイに主導権を託したが、それがイレヴンには面白くない。

 とはいえ彼も冒険者なので、こうして支障のない範囲で絡む程度に留めているが。


「イレヴン」

「はァーい」


 彼はリゼルに諫められ、にんまりと笑った。


「すみません、ヒスイさん」

「別にいいよ。乱闘にならないだけ良心的だから」


 やはりSランクともなるといろいろ経験してるんだなと、リゼルは感心した。

 ヒスイたちが喧嘩を売った側か買った側かは気になるが。両方経験済みでも不思議ではない。


「じゃあ最優先はそれだね。魔力増幅の魔道具」


 話を切りかえるように、ヒスイが折りたたんだ弓を指先でノックする。


「ギルドに報告して壊して、残った魔物蹴散らすのが冒険者の仕事。あとは知らない」


 異議なし、という言葉がヒスイの仲間二人から上がる。

 割り切った結論だが、冒険者は本来こういうものだ。基本的に目の前の魔物しか見ていない。

 感心したように頷くリゼルを、また変なことを考えていそうだなとジルとイレヴンが眺める。


「魔道具って前に森にあったでっかい魔石?」

「そうじゃねぇの」

「リーダーどうやって探すんだろ」

「知らねぇ。なんかは考えてんだろ」


 こうしてリゼルたちは、大侵攻での初動を定めたのだった。



 その定めた初動が初っ端から消えた。

 地平線に王都が現れると同時に、リゼルたちは魔物の群れを視界に捉えた。マルケイドの大侵攻の際に見られた統率はなく、魔物たちは無秩序に地の果てから王都へと迫っていた。

 上空からは、その様子がよく見えた。

 我を忘れたかのように押し寄せる群れ。目的も何もないかのような狂走は、王都に差し掛かると急にはっきりとした意思を示す。魔物は敵意を露わに、城壁へと襲い掛かっていた。

 迎え撃つのは無数の弓矢。大侵攻の知らせを受けてから速やかに防衛体制を整えたのだろう。

 城壁の上には憲兵と冒険者がひしめき、絶え間ない風切り音が大きな唸りをあげている。

 ――そこに、彼女はいた。


「……は?」


 真っ先にその姿を見つけたのはヒスイだった。

 彼は魔鳥車の窓から身を乗り出し、目を凝らす。己が見たものに間違いはないと確かめた。


「姉さん……?」


 城壁の上で他の冒険者たちをまとめ上げていたのは、彼の敬愛する“姉さん”だった。

 忌むべき過去からヒスイを掬い上げてくれた人。自分を厳しく、何より優しく育て上げてくれたひと。冒険者を辞めると聞いた時は心が痛んだ。だがそれ以上に、ただ彼女の幸せな生を願っていた。

 願ったとおりに、最愛のもう一人と愛しい日々を送ってくれていたはずだ。

 だって彼女は、新たな幸せをその身に宿して――、


「ッにさせてんだオイ!」


 絶叫にも似た怒声と共に、ヒスイは魔鳥車の扉を蹴り開けた。

 車体が大きく揺れる。頭上から魔鳥騎兵らの切迫した声が聞こえた。同じく憤怒を露わにしていた仲間たちが反転、息を荒げるヒスイを押さえつけにかかる。だが止められない。

 ヒスイが扉から身を乗り出し、弓を広げる。

 彼は矢をつがえた途端、魔力の奔流が車内を襲った。吹き荒れる魔力の流れが弓へと向かう。

 引き絞る彼の手の中で、収束した魔力が空気を切り裂く音を立てながら爆ぜた。激情に支配されたヒスイが、制御を離れようとする魔力を無理やり抑え込んでいるのだ。限界まで引き絞られた弓が、それを知らせるように鈍い音を立てていた。

 そして、射る。

 風を切る轟音は、一拍遅れて聞こえた。


「(綺麗だな)」


 まるで落雷のようだと、リゼルは思う。

 揺れの落ち着いた車内で地表を見下ろせば、魔物の群れの真ん中に大きな空白ができていた。



 魔鳥騎兵らにしこたま怒られたヒスイは、懲りずに一人魔鳥車を降りていった。

 騎兵が城壁ぎりぎりを旋回しるのに合わせ、大きく笑う“姉さん”のもとへと飛び移ったのだ。


「何を思って『まずギルドに』とか言ってたんだよ」

「すまん……」


 誰にともなく呟いたジルに、ヒスイの仲間たちが力なく謝る。

 仲間たち二人は、ヒスイが瞬時に限界を突破して激怒したせいで怒り損ねるし、得意ではない対上層部の対応をすべて押し付けられるしで散々だ。彼らだって本音を言えば今すぐにでも元リーダー夫婦のもとに駆けつけたかったが、現リーダーが全てにおいて行動が早すぎたので後手に回ってしまった。

 あの決断力こそ冒険者パーティのリーダーたる所以だ。それを目の当たりにした瞬間だった。


「参考になりますね」

「すんなよ」

「リーダーはもう決断力あるからだいじょぶ」


 独り言のように呟いたリゼルには、優秀なパーティメンバーがすかさず軌道修正を図る。


「貴族さんもすまねぇな」

「大丈夫ですよ。気持ちは分かるので」


 ふいに向けられた謝罪に、リゼルは微笑んだ。

 本当に怒ってなどいなかった。何を捨てても唯一人を想う気持ちがよく分かるからだ。

 それはリゼルに限らず、ジルやイレヴンも同様に。よく魔鳥車であれだけ好き放題できるなと呆れはしても、ヒスイの感情的な行動については一切の疑問を覚えていない。


「お二人はギルドに行くんですか?」

「まぁ、それが一番確実だな。魔鳥騎兵のこと上に繋いでもらわねぇと」

「ヒスイさん、直接上に伝手があるって魔鳥騎兵の責任者に伝えたみたいですけど」

「あるにゃああるが、このまま中心街に突っ込む訳にはいかんだろ」

「都合よくそこらへんにいてそのまま魔鳥騎兵に指示出せる貴族いりゃいいのになぁ」


 そんなことを話していた時だった。


「あ、リーダー見て」


 窓から顔を出していたイレヴンが、ふいに進行方向を指さした。

 リゼルは促されるままに外を覗く。手だけ外側に残したイレヴンの指先を視線で追ってみた。

 魔鳥車は緩やかに城壁の上を旋回している。そのため、城壁の上に詰める人々がよく見えた。

 それほど高度を上げていないこともあり、眼下からの声も微かに聞こえてくる。


「貴族さんかアレ」

「空飛んでる……」

「リゼルさーーーーーん!」


 見知った顔が大きく手を振るのに振り返し、そして視線を前方に向けた。

 城壁の上、いかにも司令部だというように作られた陣地で、金の髪が日の光を反射してそよぐ。

 子爵位を持ちながら憲兵を管轄する貴族――レイの姿がそこにあった。

 そして、その隣にはスタッドが立っている。冒険者と憲兵の連携を協議しているのか。

 彼のガラス玉のような瞳は、ただ真っ直ぐにリゼルを捉えていた。


「ナハスさん、ここで降りますね」

「なんだと、待て、魔鳥車を下ろせる場所が」

「飛び降りるので大丈夫です。ナハスさんたちは近くで待機をお願いします」

「無茶を……いや、お前らなら大丈夫か。足を痛めるなよ!」


 風の音に負けないように声を張って、頭上のナハスと会話を交わす。

 その間にジルもまた外を窺い見て、納得したように腰を持ち上げた。大剣を腰に帯びる。

 徐々に魔鳥車が高度を下げた。不思議そうなヒスイの仲間らを、急かすように扉側に追いやる。


「ほら、降りましょう。早くしないと通り過ぎちゃいますよ」

「は?……は?」

「貴族さん? 何?」

「いいから降りろってぇ」


 二人は訳が分からないまま扉の外に押し出されていった。

 リゼルもまた、扉の前に立つ。足元を、城壁の石材の幾何学模様が流れていくのが見えた。

 隣からイレヴンが気軽に飛び降りていく。


「行くぞ」

「はい」


 リゼルはジルの小脇に抱えられて降りた。

 腕を巻きつけられた腹にさほど衝撃が来なかったのは、ジルの技量の高さがゆえか。

 石造りの床に下ろされて周りを見渡せば、流石はSランクとイレヴンだ。先立って支障なく着地した彼らが駆け寄ってくるのが見えたので、リゼルもジルと共に目的の相手のもとへと向かう。

 それも、たった数メートルの距離なのだが。


「貴族さん俺らなんで落とされた?」

「ちょうど良いかなと思いまして」


 あっさりと告げたリゼルに、Sランク二人が軽い絶望を浮かべた。

 彼らの脳裏には今、優雅に処刑を告げる王族的なリゼルと、処刑を告げられた無実の俺たちという情景が広がっていた。それほどの罪をいつ犯してしまったのか。そう途方にくれていた二人だが、ふと足を止めたリゼルに気づいて妄想を止める。

 目の前には、王都で活動したことのある冒険者ならば誰もが知っている、絶対零度の姿。

 そしてその隣にいる人物に、彼らは目を見開いた。


「ああ、リゼル殿。久しぶりだね」

「お久しぶりです、レイ子爵」

「君たちが参戦してくれるなんて何とも心強い」


 更に平然と歩み寄って挨拶を交わしているリゼルを二度見した。

 Sランク冒険者はお偉方と懇意にしているとよく言われるが、冒険者業ありきの交流だ。依頼があれば受ける。基本的な前提はそれであり、個人的に仲が良いなんて相手はいない。

 よって気安く話しかけるような真似など一度も経験がなかった。やけに違和感がないせいで何故かリゼルは見逃されているが、本当ならば今すぐにでも傍にいる憲兵にしょっ引かれてもおかしくない所業だ。


「それと、魔鳥騎兵について話を聞いたほうが良さそうかな」


 レイが黄金の瞳を細めて笑みを浮かべる。

 この大侵攻の襲撃を受けている場において、彼はあまりにも平素と変わりがなかった。冒険者たちの高揚感とも違う、憲兵たちの緊張感とも違う。ただ瞳の奥に日々のルーティーンを壊されたことへの楽しみと、これまで丁寧に維持してきた王都の安寧を害されたことへの不快感、それだけが微かにある。

 この場にいるのは、そのどちらの感情によるものなのだろうか。

 リゼルは何となしに考えながらも微笑み、彼の視線を通すように半身で振り返った。


「それについては、こちらのSランクのお二人が」

「おや、頼もしいことだね。気を抜いてしまわないように気をつけないといけない」


 役者のように腕を広げ、歓迎の意思を示すレイにSランクの二人が礼をとる。

 流石は冒険者ギルドによる対お偉方講座を受け、実践を積んできた冒険者だ。その姿は堂に入っており、言葉を交わす姿は落ち着いていた。どうやら何度か顔を合わせたこともあるようだ。

 そんなことを考えながら、リゼルは数歩だけ歩を進める。


「スタッド君」


 目の前には立ち尽くすスタッドがいた。

 表情には一切の感情が浮かばず、目はリゼルのみを映して透き通っている。こうして動かずに立っていると、透明感のある雰囲気も相まって人間味を一切失ったようにも見える。

 だが、リゼルは知っている。スタッドは意外にも、期間を置くことで人見知りが発動するのだ。


「君の、君たちの手助けがしたくて来ちゃいました」


 リゼルが悪戯っぽく告げれば、彼はようやく頷いてその口を開いた。


「つかギルド長いねぇじゃん」


 だが間髪いれず邪魔をしたイレヴンに、スタッドの周囲の気温がやや下がる。


「ギルド長は国と協議を重ねていますが何か」

「わざわざ喧嘩売ってんじゃねぇよ能面」

「空気の読めない馬鹿に言われたくありません」


 こういうやり取りも久しぶりだなと、リゼルはほのほの微笑んだ。

 幸いにもスタッドの人見知りは早々に薄れたようだ。人見知り状態の彼も、新たな一面を見られるようでリゼルとしては好ましいが、惜しむことは一切ない。普段どおりに思ったことをすべて口から出すスタッドが見られたことへの喜びが勝る。


「スタッド君、今はどういう感じですか?」


 話し合うレイたちを横目に、リゼルは現状を問いかけた。

 城壁から国の中を見下ろしても、国民の姿は見えない。駆け回っているのは冒険者が憲兵、あるいは物資を載せた馬車などの後方支援を担当する人間ばかりだった。

 目に見える範囲の一般家屋は、窓や扉が厳重に閉め切られている。住人がいる気配はない。


「まずは国の方針から説明させていただきます」


 険悪だった雰囲気を瞬時に散らし、スタッドがリゼルへと向き直った。


「住人は中心街に避難しています。外周の守護と避難民の保護は騎士が担当しています」

「守りの戦いは彼らの本領ですからね」


 納得の配置だとリゼルは頷く。

 中心街には商業施設も多い。避難場所には事欠かず、物資に不足することもない。

 懸念があるとすれば避難民に犯人が紛れている可能性だが、マルケイドの大侵攻で起こったことは王都の上層部も把握している。リスクを承知で避難を優先させたうえで、可能なかぎりの対策が打たれているのだろう。


「冒険者ギルドは迎撃に終始します。しばらくは城壁から弓で攻撃を続ける予定です」

「王都の城壁はマルケイドよりも堅牢ですしね」

「ある程度数を減らしてからは打って出ることもあるかと」


 今は様子見なのだろう。

 いまだに魔物の数は増え続けている。ある程度の目途がつくまでは大掛かりな作戦は無理だ。

 とはいえ冒険者たちは今にも飛び出して行きそうではあるが。安全圏から一方的に攻撃するのが性に合わないのか、それとも戦果という名の特別報酬に胸を躍らせているのか。

 そうして暴走しそうな冒険者は、各地区に割り当てられたまとめ役に尻を蹴り飛ばされている。

 リゼルが見るかぎり、まとめ役には上位の冒険者が多い。マルケイドではギルド職員がその役割を担うことがあったが、活動しやすいという理由で冒険者層が厚い王都だけあって、上手いこと荒くれ者を制御できるベテラン冒険者が多いからだろう。

 ヒスイの敬愛する二人も、恐らくその役割についているはずだ。


「元Sランクの冒険者にも声をかけてるんですか?」

「要請はしました」


 スタッドもまた、ヒスイの“リーダー”と“姉さん”の参戦を把握しているらしい。

 一切強制力のない要請で、良かったら頼めないかという程度だったという。冒険者に言うことを聞かせられる人間は少ないが、こういった状況では一人でも多く確保したい。

 つい最近まで現役だった元Sランク冒険者、しかも人格に優れているとなっては、真っ先に要請候補に挙がってくるだろう。引退を進める際にも、こういった時に声をかけていいかの打診は受けているはずだ。

 そして向かった職員は、要請の了承をもらってから“姉さん”の妊娠を知らされた。


「要請に向かった職員はその場で要請の撤回を告げましたが、当人曰く『そろそろ軽い運動を始めてもいいと産婆に言われたからちょうど良い』と」


 これが何十年も戦いの場に身を置きつづけた人間かと、感心していいかは不明だが。

 確かに今回必要とされるのは指揮能力。実際に剣を振り回すことは十分に避けられるだろう。

 とはいえ“リーダー”は慌てて止めたのだろうなと想像がつく。


「紆余曲折あってギルドから一人、女性職員が付き添うことで決着したそうです」

「そういや一人いたな」

「ギルド長の妹だっけ?」


 王都の冒険者ギルドの紅一点、ギルド長の妹はすでに立派に育った子供がいるという。

 妊娠・出産経験者を傍につけて万が一に備える、という形で両者は合意したらしい。


「ならヒスイさんも今頃落ち着いてますね」

「あいつあんだけぶっ飛ばしといて魔力残ってんのか」

「来た途端使いモンになんなくなるとかウケんだけど」

「大丈夫ですよ。降りる時も元気でしたし」


 リゼルたちの会話が聞こえたのだろう。

 レイの指示を受けて魔鳥騎兵団に合図を送っていたSランクの二人が、古傷が痛んだかのようなしょっぱい顔を浮かべていた。合図を受けた騎兵たちは、門の内側にゆっくりと下降して魔鳥車を下ろしている。

 魔鳥と騎兵も地面に降り立った。城壁を見上げるナハスに、リゼルは手を振ってみせる。


「それでは私は一旦失礼するよ」


 そんなリゼルの姿を興味深そうに眺めながら、レイは告げた。


「勇ましい隣人たちを案内しなければね」

「はい。ナハスさんをお願いします」

「おや、君の友人か。頼めば魔鳥に乗せてもらえないだろうか」


 冗談めかして言ってはいるが、恐らく本気だろう。

 彼は憲兵長に諫められながら笑い、返答代わりの指示を残して城壁の上を歩いていく。

 だが、その歩みはすぐに止まった。振り返ったレイが、何てことなさそうに告げる。


「ああ、そういえば」


 その唇は、隠すことなく弧を描いていた。


「私の独断で援軍の要請は出しておくよ。それと、魔鳥騎兵の防衛参加も許可しよう」

「後々問題になりませんか?」

「何、折角この場にいるんだから現場判断として押し通すとも」


 好きに使えと、そう言いたいのだろうか。

 リゼルはレイの黄金の瞳を見つめた。他国の軍に対する裁量を、よりによって冒険者に与えるという。更には有効に使えるだろうと、ある種の確信をもって告げているのだ。

 そこには過度な期待も圧力もない。友人に手を貸すかのような気軽なやり取りだった。


「とはいえ、だ」


 彼は快活に笑い、今度こそ城壁を下りるための階段へ向かう。


「君たちは遠慮なく大侵攻を終わらせるといい。援軍を待たなくともね」


 魔鳥騎兵団の援軍が間に合っても間に合わなくても、どちらでも良いとレイは告げる。

 それは騎兵団をないがしろにしている訳ではなかった。彼らは自分たちの到着前にすべてが終わっていようが、面子を潰されたと不満に思うことはない。早く終わったのなら何よりだと、そう言って喜ぶような人間ばかりなのだから。

 魔鳥騎兵団が恥じるのは、援軍に出向いて功績を上げられないことではない。

 助けられる距離にいながら、そうすることができない自分たちをこそ恥じる。

 それをレイはよく理解しているようだ。似たところがあるしなと、リゼルは見送りながら思う。


「憲兵は広く役割をこなしているようです」


 金の髪が視界から消えると同時に、スタッドが現状説明を続けた。


「逃げ遅れた民がいないかの見回り、いれば捜索。物資輸送の誘導から運搬補助。各城門の強化や警備を行っています」

「おかげで俺たちは迎撃に集中できますね」


 だからといって最前線に来るな、というのはジルとイレヴンの談。

 以前もシャドウが城壁にその身を晒したが、あれは必要に駆られたからに過ぎない。

 だが恐らく、レイは率先して現場に足を運んだのだろう。憲兵の総括として十分な自衛の腕を持つうえ、そのほうが圧倒的に効率が良いとはいえ、レイに関してはただの好みでそうしているという疑惑が拭えない。


「フットワーク軽いおっさん」

「今更だろ」

「そうだけどさァ」


 ジルの言葉に、イレヴンもまた同意した。

 普段からお忍びを自称して冒険者ギルドに顔を出しているレイだ。なんだったら超高級とはいえ娼館でも顔を合わせたことがある。ようは出歩くのが好きで、リゼル曰くの「自分の目で見ることをもっとも重要視する性分」ということなのだろう。

 城壁から見下ろせば、魔鳥騎兵たちに膝をつかれるレイの姿が見える。


「よう一刀、俺らも散らばるな。リーダー……元リーダーんとこ行ってくるわ」

「ああ」


 Sランク二人も軽く言葉をかけ、去って行く。

 人手不足が理由で元リーダーが駆り出されているのなら、交代しようというのだろう。

 引退した彼らが引っ張り出されることを面白く感じていないのはヒスイだけではないのだ。


「そういえば、ジャッジ君の居場所って分かりますか?」


 ふいにリゼルがスタッドへと尋ねる。


「しばらく前にギルドで見たのが最後です」

「冒険者ギルドですよね。まだいればいいんですけど」

「必要ですか」

「はい、とても」


 挨拶もしたいしと付け加えるリゼルに、スタッドの視線が横へとずれる。

 そこにはちょうど通りがかった他のギルド職員がいた。王都の冒険者ギルドの受付で、よくスタッドの隣に座っている職員だ。彼は魔物怖い魔物怖いと愚痴のように零しながら、持てるだけの矢筒を抱えて駆けていた。

 そんな彼の目前に、突如氷の壁が出現する。


「おわッ、スタッドお前普通に声かけ……リゼル氏だ!」

「お久しぶりです」

「え、ジル氏もイレヴン氏もいる……勝ちじゃん……なんでか戦わないで突っ立ってるけど」


 ちなみにリゼルたちが城壁に下りてから、絶えず魔物の咆哮と弓の音が鳴り響いている。

 冒険者たちが時に怒号を上げ、時に煽るように笑い、我先にと魔物を討伐している真っ最中だ。

 よってリゼルたちには何度も「なんかのんびりしてるな」という視線が向けられている。


「暇なら人を探してきてください」

「どう見ても忙しいだろうが。誰?」

「ジャッジ君です」

「あ、リゼル氏案件っすか。優先順位高そう。さっき門の近くで見たんで呼んできます」

「門の近くですか?」

「商業ギルド関係が物資大放出してくれてんすよ。避難前に有志だけ、みたいな感じで」


 成程、とリゼルは頷いた。

 先程スタッドが言っていた憲兵による“物資輸送の誘導”はこれを指していたのだろう。

 ジャッジもまた商業ギルドに登録している商人だ。さらには冒険者向けの道具屋を営んでいる。

 冒険者ギルドで入用な品を確認し、荷台に積みこんで城壁まで運んできたところらしい。


「じゃあジャッジ氏にここに来るよう言っとくんで!」

「よろしくお願いいたします」


 抱えていた矢筒を放置し、駆け出した職員を見送る。

 放置された矢筒は、近くの冒険者が速やかに回収していった。矢は幾らあっても困らない。


「あと何か必要なことはありますか」

「いえ、少しだけ待ちます。スタッド君も有難うございました」

「私もあなたと行動を共にしたほうがいいですか」

「それは俺にとって贅沢すぎますね」


 リゼルは微笑み、じっとこちらを見つめるスタッドの髪に一度、二度と手櫛を入れた。

 大侵攻が観測されてから働きどおしだったのだろう。やや乱れた髪を丁寧に整えてやる。


「ギルド長が協議中で不在の今、現場ではスタッド君が最高責任者代理でしょう」

「はい」

「君が一番、活きるのはここなので」


 各々が最善を行うこと、それこそリゼルがもっとも望むものだ。

 だからスタッドは疑わない。己の価値を示し続けることで求められたいのだから。


「分かりました。このまま各地の連携を調整します」


 納得して頷くスタッドに、リゼルは頬を緩めて告げる。


「スタッド君こそ、俺が必要になったら呼んでくださいね」

「必要です」


 一瞬だった。

 大前提として必要とされるとは思わず、リゼルは一度だけ瞬きを落とした。



 やがて何処からかヒスイがやってきた。

 各所に指示を出すスタッドを眺めつつ、弓矢で魔物の数を減らし中の三人へと歩み寄る。


「お待たせ」

「お帰りなさい」


 お待たせじゃねぇよ、というジルとイレヴンの視線も今の彼は意に介さない。

 顔を合わせた“姉さん”に随分と構ってもらったようだ。いつもの少しばかり不貞腐れたような顔を溌溂とさせている。冒険者ギルドへの冤罪が晴れたようで何よりだった。


「お姉さん、どうでした?」

「元気そうだったよ。『血と土埃の匂いはつわりに効く』って満足そうだった」


 鍛え上げられた腹筋につつまれる赤子にも、戦士の血が流れているのだろうか。

 リゼルはふと考えたが、何はともあれ子を宿した本人が楽なようにするのが一番だ。戦場には場違いなほどのギルド職員の献身もあって、心配するようなことはなにもなかったという。


「良かったですね」

「うん」


 ドン引きするジルたちを尻目に祝福すれば、ヒスイが嬉しそうに頷いた。

 彼は一度だけ大きく周囲を見渡し、己のパーティの姿がないことを確認する。


「あいつらは魔鳥騎兵についていった?」

「いえ、お二人はヒスイさんのリーダーのところに」

「は、じゃあ誰が騎兵団のこと案内したの?」


 お前が言うな、というジルとイレヴンの視線をまたしても彼は意に介さない。


「ちょうど見つけた子爵にお願いしました」

「は?」

「レイ子爵です。ほら、冒険者が招待されたパーティにもいた」

「個人を特定したくて聞き返した訳じゃないんだけど」


 ヒスイは胡乱な眼差しでリゼルを一瞥したが、すぐに「まぁ良いか」と話を変える。

 彼の仲間たちもそうだったが、とにかく切り替えが早い。仲間二人も最初こそレイの登場に度肝を抜かれていたが、数秒後には平然と会話していた。これこそが迷宮に幾度となく振り回され、精神力が鍛えられきった冒険者の姿だった。


「魔鳥騎兵は?」

「ナハスさんは使者として子爵と。一人は援軍要請を受けてサルスに戻って、残り二人は偵察中です」

「偵察?」

「魔物の群れの到着にバラつきがあるので、最後尾を探しに行ってくれてます」

「ああ、大事だよね」


 その時だ。

 ひと際目立つ長身が城壁の上を駆けてくるのが見えた。


「リゼルさん!」


 ひしめき合う冒険者たちの波を避け、ジャッジは思わずとばかりに大きな声で呼んだ。

 魔物と冒険者が競り合う怒号にそれはほとんど搔き消されたが、リゼルには届く。


「ジャッジ君」


 呼びかけた声に、ジャッジの表情が安堵に緩んだ。

 冒険者を相手に商売をしようが、基本的には荒事とは無縁である彼だ。自らの商品を役立てようと積極的に駆け回っていたようだが、不安な気持ちがなかった訳ではないのだろう。

 本当ならば、そんな彼を今すぐに中心街に向かわせるのが正しいのかもしれない。


「お、お久しぶりです……?」

「そうですね。遊びに来てくれたので、そんなに久々な感じはしませんね」

「ですよね……っ」


 可笑しそうに告げるリゼルに、ジャッジは照れたように笑った。

 彼はジルたちにも控えめながら嬉しそうな挨拶を向け、そして改めてリゼルへと向き直る。


「それで、僕のこと呼んでるって聞いたんですけど」

「はい、そうなんです」


 リゼルは真っ直ぐにジャッジを見つめ、柔らかな口調で言った。


「君に、協力してほしいことがあって」

「それは勿論ですけど、何か必要なものとかありましたか?」

「いえ」


 冒険者が使いそうなものはあらかた運んでしまったがと。

 不思議そうなジャッジに首を振り、リゼルは一歩下がっていたヒスイへと視線を送った。

 そして手招き、紹介するようにジャッジの前に立たせる。顔見知りだったようだが。


「今から二人に、魔力増幅の魔道具をすべて壊してきてほしくて」

「え……」

「それはいいけど」


 まさか自分がと放心状態のジャッジと、そんな彼を見てただただ疑問に思うヒスイ。

 そんな二人を尻目に、リゼルは良かった良かったと頷いた。これならば早く終わりそうだ。


「有難いことに、レイ子爵に許可も貰えたので」


 振り返れば、呆れたような顔をするジルと、面白そうに嗤うイレヴンがいる。

 遠くの空には偵察に出ていた魔鳥騎兵が二騎、こちらへと向かっているのが見えた。


「大侵攻も二回目です。折角なのでさくさく終わらせましょう」


 草むしり大会でも始めるのかとばかりの穏やかな声に、言い方を考えろとジルは溜息をついた。


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― 新着の感想 ―
お忙しい中更新して頂き、ありがとうございます!最新話もとても楽しく読ませて頂きました。(ㅅ´ ˘ `)♡ ヒスイさん、パルテダに行くまでの道中は冷静に作戦会議に参加していたのに、安全な場所にいるはず…
ヒスイさんが大好きです。至って温度低そうな彼が突沸したのがたまらなくて……何度も何度も読んでます。ジャッジくんとの活躍が楽しみです!
前回からの流れで今ジャッジが必要って、もしかしてそういうこと……?  本来なら絶望感漂うスタンピードでもこの話だと軽快で楽しい。 あと有能な人ばかりなことも、話の展開にストレスがないよなと思います。 …
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