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庭園の国の少女  作者: ぎじえ・いり
大地の魔獣
17/25

栗毛のリリアンヌ

部屋に戻ると、リデルとリックは既に戻っていた。


「おかえりなさい」

「ただいま」


出迎えてくれたリデルはそのまま私の肩に止まる。

部屋に戻ってまず目に入ったのは、リックがベッドにしているそれだった。


「なに?それ?」

「良いでしょう!結構探すのに苦労したんですよ」


竹か何かを編んで作られた籠でリックが丸くなって寝ていた。

決して小さくは無い。


「どうするの?それ?」


洗濯するのにでも使うのだろうか?

尋ねると、リデルは再びふわりと宙に浮き、私の顔の前へと移動する。


「分かりませんか?ヒント。これから必要になる物です」


必要。

今までにリデルが買ってきた物を思い浮かべる。

不思議と無駄遣いしている印象ばかりが思い出された。


「本当に必要なの?それ?」

「あ、モリーアンが何を考えたのかは何となく分かりました。でも、これは絶対に必要ですよ!」


リデルが胸を張って答えた。


「自信満々ね」


しかし、皆目検討が付かない。


「降参。何に使うつもりなの?」

「リリーに付けるんですよ」

「リリアンヌに?」


聞けば、リックを馬に乗せられるようにするために探して来たようだった。

なるほど。

リデルはともかく、確かにリックは馬には乗れない。


実際に馬を全力で走らせたら、リックは付いてこれないだろう。

そう考えれば、確かにリックを馬に乗せる方法が必要だった。


「気が利くわね」

「もっと褒めてくれても良いんですよ」

「ありがとう。確かに考えてなかったわ」


わざわざ馬車を買う程、大荷物でも無いし、それにそれでは機動力が落ちる。

リデルが考えた案は良かった。


えへへー、とリデルは満面の笑みを浮かべた後、尋ねてきた。


「モリーアンの方はどうだったんです?何か良いのありました?」


ベッドへと腰を下ろし、巻いていたベルトをナイフごと外す。

リデルは向かいのベッドへとふわりと舞い降りた。


「ええ。もう研ぎに出したから遅くとも明日の夕方までには手元に来るわ」

「へぇー、それは良かったです。モリーアンの事だから、結局見つからないんじゃないかなぁ、って心配してましたよ」


散々、探すのに付き合わされて、もう無理なんじゃないかと思っていたのか。


「そうならなくて良かったわ。明日、牧場に顔を出して、その籠を鞍に取り付けられるか聞いてみましょうか」

「そうですね。そっかぁ。もうこの街出るんですよね。来たばっかりなのに何だか随分長く居たような気がします」


それはこの街がどこか最初の街に似ているから、というだけでは無いだろう。


リデルにとっては、今までとは違う自分を見いだした街だ。

これからリデルがどんな自分を目指し、そしてどう成長していくのかは分からない。

それでも、この街はその最初の一歩を踏み出した街として、きっとこれから何度も思い出すのだろう。


「って、しんみりするのも変な話ですね。どうせまた帰ってくる時に通るんですから」

「そうね」


簡単に答える。

そう、西の街に行って、そこから何も無ければまた戻ってくるのだから。

私の家が東にある以上、そうなるのが自然だろう。


漠然とした予感がある。


もしかしたら、この街も最初の街や湖の街のように何度も訪れる事になるかもしれないな。


リックの穏やかに上下するお腹を見ながら、そんな事を思った。






牧場に訪れると、今度は鳥女はいなかった。

どうやらいつも居るという訳ではないらしい。

既に何度か話をしている犬頭の男に籠の事を頼んで、取り付けてもらう事にした。


それほど大した手間ではないらしく、今日中に出来ると言われたが、どうせ今日出る訳では無い。

明日までには出来れば良いと伝え、頼んだ。


せっかく来たのに、それだけで帰るのは勿体ないので、籠を付けてもらうのとは別の鞍を借りて牧場の中をリリアンヌに乗って走り回った。


「リック!ほら頑張って!」


リデルが私の背中から声援を飛ばす。

栗毛の馬、リリアンヌの疾走は力強い。

さすがに犬と馬では比べるべくもないだろう。


リックは追い、走り回っていたが、やがて諦めたようにとぼとぼと歩き出した。


「リックー!走りなさーい!」


リデルが檄を飛ばす。

しかし、リックはそのうちにその場でお座りして、こちらを眺めているばかりになる。


「もう!」


リデルはリックの元へと飛んで行く。

私は自分の身体を慣らす意味も込めて、その後もしばらくリリアンヌと共に走り続けた。


その日の夕方、剣を預けていた工房へと向かい、無事に剣を受け取った。

研いだ剣は銀色に、そして薄く金色に輝いている。

改めて美しい剣だと思った。


「さて、これでみんな片付いたわね」


やらなくてはいけない事は全て片付いた。

そして必要な物は全部揃っている。


「そうですね。では、行きますか」

「ええ。西へ」






翌日、朝早くに牧場へと向かい、リリアンヌを受け取った。


籠は鞍の後ろ側に固定されている。

試しにリックを乗せて走り回ってみる。

さすがに全力で走ると、リックが不満そうに吠えた。

それでも外れて転げ落ちたりはしない。


どうやら色々と工夫をしてくれたようだ。

これなら急な斜面を駆け下りたりしない限りは大丈夫だろう。


「これからよろしくね」


リリアンヌに声を掛けると、リックも一声吠えた。


「よろしく!」


リデルがリリアンヌの声を代弁するように、一際大きな声で叫んだ。






一度、街まで戻る。

リックは籠の中で丸くなっている。

リデルはその上で寝そべっていた。


弓工房へと向かい、載せられるだけの矢を買う。


「またいつでも来な」

「ええ。本当に色々ありがとう」

「ああ。また会えるのを楽しみにしてる」


職人との別れの挨拶はあっさりとしたものだった。

いや、また会えるのだから、これで良いのだろう。


最後に必要な食料を買い、私たちは牧場の街を出た。


西へ。


西へ。

合成弓ビフォア・ザ・ウィンド

冒険者の矢籠ビフォア・ザ・ウィンド


祭儀用の剣

スルゲリのナイフ


左手:黒水牛の小手

右手:黒水牛の小手

積層鎧

牛革のベルト

鹿革のブーツ


パーティーにリリアンヌが加わった!


さて、またしばらくお休みです。

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