第74話 神明町解放
「臨時で作った銀の銃弾はすべて使い尽くす!」
再び機関銃と銃、弓による攻撃が始まった。
一部私にも当たってしまうが、『マジックバリヤー』のおかげでノーダメージだ。
町長のリッチーがダメージを受ける度に落とす魔石は、未来さんが私の魔法の腕輪に使って魔力を回復させ続けてくれた。
「フンッ! サキニ、オマエラ ノ ホウ ガ チカラ ツキル ニ キマッテイル」
「そんなことを言い始めた時点で、お前の方が余裕がないように思えるがな。こちらは攻撃で手は抜かないけど」
私が羽交い絞めにしたせいで動けない町長のリッチーは、瑠璃さんたち以下レベリストによる攻撃でダメージを受け続け、その体に吸収したスケルトンが次々と倒され、地面に大量の魔石を落としていく。
「その魔石で私は魔力を回復させることができるので、『マジックバリアー』を展開し続けられる。そしてお前は、一切反撃できないままみんなに袋叩きにされるんだ。いくら神明町からゾンビとスケルトンを引き寄せて回復できるにしても、ずっとこれを続ければ、じきに神明町からアンデッドがいなくなってしまうだろうからな」
「……ハナセェーーー!」
「離すものかよ」
さらにそれから半日ほど。
みんな疲労困憊の状態にあったが、いまだ町長のリッチーと戦い続けていた。
楓さんの他に、レベリストの中にも治癒魔法使いがいるので、魔石で魔力を回復させながら治癒魔法を使わせる。
町長のリッチーは、神明町にいるアンデッドを引き寄せてからその身に吸収することで無限に近い体力を誇っていたが、完全に融合したわけではないからダメージを与えると倒されて魔石を落とす。
つまり町長は、わざわざ我々のレベルアップを手伝ってくれているのと同じであった。
おかげで大勢のレベリストたちが効率よくレベルアップを繰り返し、町長のリッチーに与えるダメージを増やしていた。
レベルアップによる最大体力と魔力が増加を続け、それを治癒魔法と魔石によって回復させることで、さらに戦いを有利にしていく。
回復魔法で、HPは減っていないのに疲労感が増す状態も少しだが回復させ、長時間戦えるようにするためだ。
だが、さすがに長時間の戦闘で蓄積する精神的な疲労は消すことはできないので、そろそろ決着をつけたいところだ。
そんな風に考えていたら、総指揮を執る戸高さんのところから伝令がやってきた。
「新明町のアンデッドは残り僅かです!」
「「「「「「「「「「おおっーーー!」」」」」」」」」」
ほぼ丸一日、町長のリッチーを攻撃し続けたおかげだろう。
私がずっと羽交い締めをしていたのでただの的と化しており、みんなのレベルが上がって攻撃力が大幅に増したのも大きい。
町長のリッチーが次々と新明町にいるアンデッドを回復の材料にしていたせいで、その数を一気に減らしてしまったことも確認できた。
すでに町長のリッチーが誇る一番の長所がなくなり、こいつは大して強くない特別個体になりつつある。
「クダラヌ ウソ ヲ ヨクゾ マァ、ワシ ㇵ ムテキ ダ!」
「お前こそ、そんな嘘をつくなんてよほど追い込まれているんだな。こちらはすでに、新明町を偵察済みなんだ。町の中に沢山いたゾンビとスケルトンがほぼいなくなっていることはわかっているんだぞ」
「ソレコソ ウソ ダ! シンミョウ チョウ ニ ニンゲン ノ ケハイ ナンテ ナイ ゾ!」
町長のリッチーは、神明町にいるアンデッドを介して町の中の状態を知ることができるのか。
だから神明町に、こちらの偵察部隊が入っていないことを知っていた。
それは事実なのだが、偵察隊を送る以外に神明町の様子を探る方法なんていくらでもある。
「嘘じゃないさ。こっちにはドローン偵察機があるんだ。新明町のアンデッドの様子は、総司令部で正確に把握しているよ」
「ドローンダト!」
国防隊は世界でも、ドローンの運用が遅れている軍隊だと聞いたことがある。
ゾンビが出現したせいもあり、ドローンを装備している国防隊の部隊と駐屯地はほとんどなかった。
戸高さんのところもそうだったが、偵察に便利なドローンをなかなか補給してもらえないと聞き、私が町中のお店で拾ってきた民間用ドローンを渡すと、奈津子さんが改造した。
元は玩具なので稼働時間などに制限があるが、同じ新明町内を偵察するくらいならできる。
新たにドローンに搭載したカメラで、上空から町を撮影してアンデッドの数を調べる。
戸高さんはそれを偵察部隊に命じて行わせ、もう新明町に残っているアンデッドの数が少ないことを把握していたのだ。
「覚悟はいいか?」
「ワシハ、シンミョウ チョウ ノ チョウチョウ ナンダ!」
「だからもう違うって。死んだんだから!」
「ワシハーーー!」
「早くあの世に行け!」
それからさらに一時間ほどで、新明町からアンデッドの姿が一体残らず消えてしまい、町長のリッチーは回復手段をなくしてしまった。
私は羽交い締めを解くと、すぐさま町長のリッチーの背中に向けて『業火』を連射する。
レベルアップのおかげでまた使えるようになった中級魔法だが、数発重ねればかなりの威力になる。
「「「「「食らえ!」」」」」
続けて、火魔法に長けた瑠璃さんと、レベリストの中で魔法を習得できた人たちが『火炎』、『聖光』、『治癒』を連続にて放つ。
「カイフク デキナイ! ワシ ヲ シジ スル ユウケンシャ ハーーー!」
「いない。わずかにいたのかしれないが、お前が回復するために消してしまったじゃないか。諦めて倒されろ」
「イヤダァーーー!」
大ダメージを受けた町長のリッチーは最後に断末魔の悲鳴をあげながら、全身が色とりどりの炎に包まれ、口や鼻の穴からも炎を吹き出して崩れ去った。
そしてそのあとには、一体分の骨と魔石が残される。
「吸収した多数のゾンビの骨は消えてしまったのか……」
町長のリッチーに吸収されるとアンデッド三段活用が発生せず、奴が受けたダメージの身代わりになって倒されてしまう。
だから町長のリッチーに攻撃を加える度に、魔石がパラパラと落ちたのだ。
それを考えると、町長のリッチーのおかげで数万体分のスケルトンやレイスを倒す手間が省けたというか、そのせいで町長たちのリッチーと丸一日戦う羽目になってしまって非常に眠たかったけど。
「なんとか倒せた。ガソリンも、銀の矢と弾丸もほぼ残っていない。明日はこの辺で銀の矢と弾丸を拾わないとなぁ。薬莢も銀製ではないけど貴重なんだ。なるべく拾わせて再利用しないと」
本当にギリギリのところで勝てたと思う。
その方法も全然格好良くなく、なるべく早く全盛期の力を取り戻したいけど、あまり無茶をすると死んでしまうし、特別個体以外はゾンビ、スケルトン、レイスだけなので、なかなかレベルが上がらないから困りものだ。
「あっ! 俺にも頭上にレベルの表示が出た!」
「私もだ!」
「幸三さん、私もレベリストになれました」
「奈津子さんも? ああっ!」
嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる奈津子さんもレベリストになったと聞き、私はどうして戸高さんが伴龍高校駐屯地に町長のリッチーを呼び寄せたのか理解できた。
伴龍高校駐屯地にいる全員を戦闘に参加させて町長のリッチーを倒し、レベリストにして戦力を強化するつもりだったのだ。
伴龍高校駐屯地への増員が期待できない以上、すでにいる人間を強くすることで伴龍高校駐屯地の戦力を強化する。
無理だと思われていた神明町の解放にも成功したので、今後余計に戦力が必要なのだから。
「とはいえ、戸高さんは明日から大変だろうけど」
「本当に大変だろう。明日から早速、残敵の確認と掃討をしないと。レイスの出現がランダムなのは困りものだ。町の各所にレベリストを配置するのは難しい。通報ですぐにレイスを倒せるレベリストを派遣する仕組みを作らなければ」
アンデッドから取り戻してしまった以上、アンデッドがいなくなった新明町は確実に守らなければいけないのだから。
もし避難していた生き残りの住民が戻ってくるとなると、彼らの安全も守らなければいけない。
神明町からゾンビとスケルトンは一体もいなくなったが、これからは多数倒したアンデッドがレイスになってランダムに復活する。
突然町中に現れることもあるので、それに対する備えも必要だった。
「戸高司令は、アンデッドに占拠された町を初めて取り戻しましたよ。さすがに昇進するのでは?」
後方で指揮を執っていた戸高さんが私たちを労うために顔を見せると、大島三佐が彼にそう問いかけた。
私もこれだけの戦功を挙げれば、戸高さんは昇進するはずだと思っていた。
「そんなもの、してもしなくても同じだと思うけどね。交代で休みつつ、しっかりと後処理をしないと。みんな、疲れていると思うけど、もう少し頼むよ」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
私たちと戸高さんたちによる特別個体の討伐作戦は見事に成功し、町長のリッチーと数万体のアンデッド軍団によって占拠されていた新明町は無事に解放された。
色々と偶然が重なった結果だが、これは日本初の快挙であり、アンデッドに占拠された多くの町の中のたった一つだ。
果たしてこの世界は、アンデッドの殲滅に成功するのであろうか?
とにかく疲れたので、今は寝て体力と気力を回復させることにしよう。




