第73話 総力戦
「(伊作さん)」
「(新しい作戦ですか?)」
町長のリッチーを倒すため、対アンデッド部隊とレベリストたちに連続攻撃を続けさせていると、後ろから大島三佐が小声で話しかけてきた。
どうやら次の作戦を戸高さんが決めるために、私の意見も聞きたいようだ。
「(どうにか火炎放射器部隊を使えないかって? しかし……)」
「(火炎放射器部隊は非レベリストで構成されているので、彼らを有効に使えれば戦いを有利にできます。火炎放射器の炎でも、ゾンビの一種であるリッチーを倒せるはずなので)」
「(倒せますよ。ですが……)」
いくら町長のリッチーが特別個体の中では弱いとはいえ、非レベリストが攻撃を受ければよくて重傷、下手をすれば即死してしまう。
できれば前に出したくないが、出さないと戦力が足りない。
どうするべきか考えている、あるアイデアが浮かんできた。
「(レベルが上がったおかげで、あの魔法が使えるようになったから、これを使えば……。大島三佐。ここはですね……)」
「(はい。……了解しました。私が直接指揮を執ります)」
「(お願いします)」
大島三佐に私の作戦を伝えると、彼はすぐさま通信機で戸高さんに報告。
どうやら採用されたようで、私に笑みを浮かべてきた。
「ならば、あとは動くのみ!」
私は全力で町長のリッチーに攻撃を繰り返し、向こうに反撃の隙を与えなかった。
その間に、隊員と傭兵レベリストたちが大きく下がり隊列を再編。
瑠璃さんたちも攻撃に加わって、町長のリッチーが隊列を再編中の味方に攻撃しないようにする。
「ムダ ナ コトヲ!」
自身の回復力に絶対の自信がある町長のリッチーが人をバカにしたような表情で悪態を吐くが、私たちは黙々と攻撃を続けてその気を逸らさせ、次の作戦の準備を進めていく。
瑠璃さんたちが前に出て、全力で町長のリッチーと戦い続ける。
そして、町長のリッチーの視線が私から外れた瞬間全速力で奴の背後に回り、そのまま背中から羽交い絞めにした。
「どうだ動けまい!」
「ハナセ!」
「離すかよ。大島三佐!」
「準備万端です!」
町長のリッチーが、今度は自分の背中を羽交い絞めにした私に注意を傾けている間に、大島三佐が指揮する火炎放射器部隊が奴を半円形に取り囲み、火炎放射器を発射した。
町長のリッチーは火炎の集中砲火を浴び、あっという間に黒焦げとなった。
「ミカタ ト イッショ ニ ヤキハラウ ナンテ、アタマ ガ オカシイ ノカ?」
この火炎攻撃が回避されないのは、私が町長のリッチーを羽交い絞めにして動けなくしているからだ。
つまり私ごと燃やしているため、町長のリッチーは国防隊員たちを味方殺しだと思ったのだろう。
大島三佐たちに罵詈雑言をぶつけた。
「残念だが、私はノーダメージだ」
なぜなら私は、『マジックバリヤー』で全身を覆っているからだ。
レベルが上がったおかげで再び使えるようになったが、この魔法は物理的な炎にも効果があるので使わせてもらった。
「ハナセェーーー!」
「離すものかい」
『このまま骨の芯まで燃え尽きてしまえ!』と言いたいところだが、そうは甘くない。
黒焦げになっても活動を止めない町長のリッチーは、またも神明町から大量にゾンビとスケルトンを引き寄せて回復し続ける。
その間にも町長のリッチーからポロポロと魔石が落ちていくが、火炎放射器攻撃だけでHPをゼロにして倒すのは無理だった。
町長のリッチーが吸収したスケルトンには、火炎放射器の火炎が効かないからだ。
「ムダ ダ。カエン ホウシャキ ダケ デ、ワシ ノ カイフク リョク ヲ ウワマワル コト ハ デキナイ」
「だからといって、お前を動けるようにしてやる理由はないな」
私は町長のリッチーを羽交い絞めにし続け、奴が動けないようにし続けた。
「あとのことを考えるな! 燃やせるだけ燃やせ!」
大島三佐の命令で、火炎放射器による攻撃は続く。
確かにガソリンの在庫のことを考えて全滅したら意味がないし、実はいまだ試作品段階の銀の矢、弾丸の在庫の方が怪しく。戦闘中である今、奈津子さんたちが新しく作っているほど泥縄な状況だったのだ。
「……トマッタ? ガハッ!」
火炎放射が止まり、一瞬安堵する町長のリッチーであったが、正面から瑠璃さんたちがガラ空きの正面から連続攻撃を開始した。
「ムダ ダ ト イッテ イル!」
「それはどうかな?」
「あなたも永遠に回復するわけではないでしょうから」
「この至近距離なら、おじさんに当たることなく命中させられるね」
「イマイマ シイ! アレ? モウ ヒトリ ノ コムスメ ハ?」
「気がついていたか。意外と間抜けじゃないね」
実は未来さんは町長のリッチーの背中側に回り、拾った魔石と私の腕に嵌めた魔法の腕輪を使って魔力を回復させていく。
素早さがパーティで一番である、未来さんだからこそできる芸当であった。
火炎攻撃を続けるため、私は定期的に『マジックバリヤー』に使う魔力を回復させる必要があったからだ。
「つまりは、これを繰り返せば何度でもお前を火炎放射器で火達磨にできるって寸法だ」
「グヌヌ……」
再び町長のリッチーが、火炎放射器から発射された火炎に包まれた。
そしてその後も、限界がくる前にゾンビとスケルトンを呼び寄せて回復させていく。
これで、神明町のゾンビはかなり減ったはずだ。
「ハナセェーーー!」
「だから離すかっての」
私は、時おり疲労した腕に治癒魔法をかけながら、町長のリッチーを羽交い絞めにし続けた。
「(こいつだからできる芸当なんだけど……)」
こいつは回復力のために力を犠牲にしているから、私の羽交い絞めで簡単に動けなくなってしまうのだ。
以前戦った他のリッチーなら、そうはいかなかっただろう。
そしてそれから半日後。
残念なことに、火炎放射器に使うガソリンが完全に尽きてしまった。
「ワシ ノ ネバリ ガチ ダ!」
「そうかな?」
せっかく羽交い絞めにして動きを封じているのだ。
このまま最後まで削って倒すに決まっているじゃないか。




