第47話 目覚め
「私はちゃんと生きているな。作戦成功だ」
「幸三さん、丸一日寝ていましたよ」
「元から疲れていたし、超人薬の副作用ってやつだよ。ここは朝山駐屯地かな?」
「はい。剣崎たちのリッチーを倒したあと、しばらく歩いて撤退していたんですけど、先に生き残った隊員たちを乗せて出発したトラックが戻ってきたので、そのあとはトラックに乗って」
「とにかく、無事に撤退できてよかった」
目を覚ますと、私はベッドで寝ていた。
その隣で、椅子に座って私が目覚めるまで看ていてくれていた楓さんが、私が気絶したあとの詳細を説明してくれた。
残った二体のリッチーたちは、なんと戸高さんと大島一尉も協力して倒すことに成功したそうだ。
そして、瑠璃さんと楓さんがレベリストの資質を得た時と同じく、戸高さんと大島一尉もレベリストの資質を獲得したと。
「あの二人も、レベリストになったのか……」
多分、私とパーティを組んで特別個体と戦って倒したからだろう。
私は途中で気絶してしまったけど死んだわけじゃないから、参戦した二人は私とパーティを組んだと判定された。
対アンデッド部隊の人たちは後方で待機していただけで戦闘に参加していないから、パーティを組んだ扱いにならなかったのだと思う。
私が寝てしまったあと、レベリストの資質のない二人は命を懸けて瑠璃さんたちを助けに行った。
そのご褒美と見るべきか?
レベリストはアンデッドと戦わされる可能性が高いから、ご褒美とはいえない?
こんな世界になってしまった以上アンデッドの脅威からは逃れられないので、レベリストの資質があった方が生き残りやすいという考えもあるのか。
「幸三さん、お腹が空いてませんか?」
「そういえば……」
「食堂に食事が用意してあるそうです」
「じゃあ食べに行こうか?」
「はい」
私は気絶してから丸一日寝ていて、その前も夜の間ずっと戦っていたのだ。
それを意識した瞬間、お腹が『グゥーーー』と鳴った。
私はベッドから起き上がり楓さんの案内で食堂へと向かうのだが、朝山駐屯地の中にいる隊員の数が随分と減ったような……。
水無月市に向かう前は松代から移動してきた国防隊員とレベリストたちでごった返していたはずなのに……。
「生き残ったレベリストたちと、対アンデッド部隊は松代に戻ったんです」
「虎の子だから、最前線でこれ以上数を減らしたくないんだろうなぁ……」
「現在の朝山駐屯地は、戸高陸将補が司令に、大島三佐が副司令に任じられています」
「安城陸将の後任として朝山駐屯地は任せるけど、負け戦だったから昇進はナシ? あれ? でも大島一尉は……」
「私はたまたま戦時昇進したんです。今回の作戦では犠牲者が多く出たので、余計に人員不足になって昇進速度は早まるらしいですけど。国防隊の将校不足は深刻ですから。そのうち国防隊でも、戦時昇進をする人が出るかもしれません」
食堂に入りながら楓さんに気絶したあとのことを教わっていると、先にテーブルに座っていた大島三佐からも話しかけられた。
彼に促されて座ると、今度は大島三佐の隣に座っていた戸高さんが言葉を続ける。
「水無月市の解放に成功していたら昇進があったかもしれないけど、負けてしまったからね」
私と楓さんの前にも食事が置かれ、私は一緒にリッチーと戦ったメンバーで食事をとることになった。
「幸三さん、無事にリッチーたちを倒したよ」
「瑠璃さんも楓さんも、もうベテランだな」
この世界にも、レベルが上がる人、レベリストが徐々に出始めているが、先行してレベルを上げている私、瑠璃さん、楓さんが日本でも世界でもトップ3のはずだ。
とはいえ、この半年みっちりレベルを上げたのに、特別個体の中で一番弱いリッチーにも苦戦する有様だったけど。
「伊作さん、私と大島三佐もリッチーとの戦いに参加したらレベリストになってしまったんだ。そのせいか、今回の作戦では朝山駐屯地所属の隊員たちにも少なくない犠牲者が出たのに、補充もナシで私は司令に。松代から派遣されていた大島も副司令として残留することになった。大島の昇進は定時昇進ってことになっているが、実際には副司令にするための昇進だろう」
「安城陸将が水無月市解放に成功していたら、彼の後輩がここの司令になる予定だったんですけど、残念なことに安城陸将と一緒に殉職したので」
「なんとも、前途多難といいますか……」
朝山駐屯地と水無月市はそんなに離れていない。
こちらが先に攻め込んで刺激したので、ここに水無月市のゾンビたちが攻め寄せる危険もあった。
「今はこの朝山駐屯地を守ることで精一杯ですよ。今回の作戦では犠牲者が多くて、上はこちらに応援を寄越す余裕もないのでしょう。本当に余計なことをしてくれました」
アンデッド相手に勝てない戦いを挑んで無駄な犠牲者を出してしまい、それ以前よりも少ない戦力で朝山駐屯地を守らないといけない。
大島三佐は防衛大出のエリートらしいけど、国防隊上層部批判を隠さなかった。
安城陸将たちとは違って、常識のある将校なのだろう。
そのせいで最前線送りになってしまったのは、不幸としかいいようがなかったけど。




