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第44話 新たなる特別個体

「これ以上死者を出したら、損害が大きすぎるかぁ」


「ええ……」


 戦力になってほしいが、レベリストたちは偶然才能が現れたので国防隊に徴兵されたような境遇だ。

 仲間を含めて大勢の死を間近で目撃して心に傷を負ってしまったので、無理強いはできないと、戸高さんは判断したようだ。


「一人くらい残った人はいないんですか?」


「いない」


「前途多難ですね」


「……」


 瑠璃さんにそう言われて、戸高さんは黙り込んでしまった。

 レベリストは世界を救う希望というが、いくら才能があっても、向き不向きがある。

 今回の作戦に参加したレベリストたちは、みんな大人しくて剣崎の言いなりだった。

 戦いには向かなかったのだろう。


「しばらく休んでから、復帰できるといいですね。おっと始まった!」


 若くていかにも鍛えられているように見える自衛官……彼が大島一尉なのかな?

 対アンデッド部隊を道路の横幅いっぱいに整列させ、追いかけてきたゾンビを火炎放射器で焼き払った。


「ガソリンは節約して使ってくれ。交代だ!」


 火炎放射器を背負った自衛官たちが決められた時間火炎放射器を放つと、後ろの列の隊員と交代した。

 

「種子島の三段撃ちみたい」


 長篠の合戦だったかな。


「対アンデッド部隊の損害もバカにならないし、火炎放射器もかなり失った。ガソリンも残り少ない。幸いゾンビたちは道路を歩いて追いかけてくるから、いくつも列を作り、交代で火炎放射器を使わせて、夜明けまで時間を稼がないと」


 追撃してくるゾンビは、焼き払っても焼き払っても減らない。

 数を減らすよりも、常に最前列のゾンビを燃やして後方のゾンビたちの足を止めて、時間を稼ぐ方が大切だ。

 さすが、戸田さんと大島一尉は剣崎たちとは違って本物のエリートだ。

 その指揮ぶりは堂に入っていた。


「ですね。おっと!」


 スケルトンも混じり始めたので、私たちも前に出てスケルトンを倒し始めた。

 必要な魔力は、倒したゾンビとスケルトンから拾った魔石を魔法の腕輪に嵌めて回復させる。

 魔法の腕輪は美空さんにも装備させ、彼女も銀のボクシンググローブでスケルトンを砕いて倒していた。


「美空さん、やるよね」


「でもやっぱり、いくら倒してもキリがないですね。強い個人が数人いても、数十万体のゾンビには勝てない」


「……アンデッドに占拠された町の解放は、まだ早かったということだ」


 私たちがいても、水無月市の解放作戦には失敗した。

 こうなることはわかっていたが、非正規待遇の用務員がそれを口にしたところで意味なんてないことはわかっていた。

 日本政府も、国防隊の上層部も、国防大学出のエリート将校だった安城陸将が語った『世界初のアンデッドに占拠された町の解放』という快挙に酔いしれ。その結果五百人近い自衛官と二十三名の貴重なレベリスト、大量の精製できなくなったガソリン、貴重な食料と物資を失ってしまったのだから。


「伊作さん、追撃してくるゾンビとスケルトンが見えなくなりましたね」


「そろそろ終わりかな?」


「ガソリンが尽きる寸前なので助かりました」


 もうすぐ日が昇る時間になり、空が明るくなり始めると、ゾンビとスケルトンの追撃がやんだ。

 火炎放射器を背負った戸高さんと大島一尉が私たちに近づき声をかけてきたが、その表情は決して明るくはない。

 彼らは私たち三人のレベルが高くても、日本だけで一億体以上いるアンデッドに勝つことが難しいのがわかってしまったからだ。

 いや、最初から戸高さんと大島一尉は、強い個人だけでは数に勝てないと理解していたはず。

 それでも無謀な作戦が強行されてしまい、国防隊の一員であるがゆえにそれを止められなかった。

 日本政府と国防隊の上層部がそれを手痛い教訓とする過程で、多くの犠牲者を出してしまったことが無念だったのだと思う。


「日の出まで粘れたので、一秒でも早く補給部隊と合流できるように歩きますか」


「そうですね」


 『アイテムボックス』に入っている車や食料、水を提供することも考えたが。それをすると国防隊と日本政府から無限に助けろと言われかねない。

 今回の作戦でわかったのは、最悪日本政府や国防隊が全滅してしまう未来もあり得ることだ。

 その際、私たちは個々に生きていく必要がある。

 だから、命がけで拾ってきた食料、燃料、物資はなるべく秘匿しておかなければ。

 もし私が若者だったら、『アイテムボックス』に入っているものをすべて国に差し出したかもしれない。

 だがその結果、また無謀な作戦が実行されてしまうかもしれないと考えると、そんな気になれなかった。

 そんなことを考えながら行軍していたら……。


「……戸高さんは下がってください」


「イザクゥーーー!」


「ニクイ! シュウショクヒョウガキノクセニィーーー!」


「クラッテヤルゥーーー!」


「シライィーーー! ワガコウノハジサラシガァーーー!」


「特別個体のリッチか……」


 ゾンビとスケルトンの追撃はなくなったが、四体のリッチが姿を現した。

 しかもその顔には見覚えがありまくるというか……。


「しかし、伴龍高校の生徒はリッチになるケースが多いよね。それにしても、そんなに私が嫌いかね?」


 それだけ、私に対する憎しみが強いのか。

 この世への未練が強いのか。

 そのしぶとさだけは感心してしまう。

 生きてさえいれば、こんな世の中になったので生き延びるのに役に立っただろうに。


「剣崎じゃん。往生際が悪いよね」


「戸高さんたちは下がっていてください」


「こいつらは強い個体なんですね。自分も戦います」


 日の出まで粘ってゾンビとスケルトンの追撃がなくなったと思ったら、リッチになった剣崎たちが追いかけてきた。

 対アンデッド部隊では歯が立たないので、彼らを下げて私たちが戦うことになった。

 特別個体は強さが不明であり、はたして勝てるかどうか。

 とはいえ、剣崎たちのリッチなら全力で倒しても罪悪感は湧かない。

 全力で倒させてもらおうじゃないか。

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― 新着の感想 ―
戸高さんには悪いが、今の日本政府がこんな認識では考え直した方が・・・。そして三下どもが。
対アンデッド部隊にもちまちま攻撃してもらって一気にレベリスト入り出来ないものかなぁ。
お約束となってる逆恨み劇の始まりデース♪
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