第42話 撤退戦
「大島一尉、部隊の損害は?」
「二割近いです」
「レベリスト部隊は?」
「半数近くが殺されました」
「……思っていたよりも犠牲者が少ないのが幸いか……。それでも酷い有様だが。こうもゾンビとスケルトンに入られてしまっては、なにかを持って逃げるのも難しいか。追加の補給部隊は明日の夜、ここに到着する予定だった。彼らとの合流を目指しつつ、今は徒歩で逃げるしかない」
「トラックは使わないのですか?」
「元々数が足りなくて、全員を乗せられないからな。それに……」
トラックは常に不足しており、この野営陣地に人と物資を下ろしたら多くが任務に向かってしまったため、元々この野戦陣地に置かれているトラックの数は少なかった。
全員を乗せて逃げるなど不可能であり、元から無謀な作戦だったのだ。
そして、伊作さんが首を振っている。
私がその理由を問い質すと……。
「この野営陣地を襲った先陣のスケルトンが少ないと思ったら、遠回りしてトラック置き場を囲んでいるようです。トラック置き場に数百体ほどの気配を感じます」
高レベルの伊作さんは、周辺のアンデッドの気配を高精度で『探知』できるようになっていた。
トラックで逃げるためにトラック置き場に向かうと、スケルトンに襲われるということだ。
「対アンデッド部隊の火炎放射器はスケルトンに効かないし、まさかガソリンを積んだトラックの近くで火炎放射器は使うわけにいかない。みんな疲労困憊しているが、ここに残って戦えば死だ。徒歩でこの野営陣地を放棄して逃げるしかない」
「足りない食料と物資は、補給部隊から手に入れるんですね。泥縄だけど、この野営陣地から持ち出そうとすれば、また犠牲者が増えてしまう。体調不良者が出たら、補給部隊のトラックに乗せるしかないですね」
「そういうことだ。大島一尉、部隊の先頭で指揮を執ってくれ。生き残ってる士官、下士官を集めてやってくれ」
「わかりました。戸高陸将補は?」
「伊作さんたちと殿を務める。もし私が死んだら、大島一尉が部隊を統率するんだ」
「そうならないことを祈ってますよ」
レベリストでない私がゾンビとの戦いで役に立つとも思えないが、これは部隊で一番偉い人間としてのケジメだ。
安城陸将たちはそれを放棄して死んでしまったので、誰かがやらなければな。
もっとも、伊作さんたちと一緒にいれば死ぬ可能性は低いと思うが。
火炎放射器は重たいし、私も年なので疲れてはいるが、一人でも多く生かして松代に戻さないとな。
後日、軍法会議で国防隊をクビになるかもしれないが、それでも生きていればいいこともあるはずだ。
私も、伊作さんの生き方を見習わないと。




