第38話 剣崎の自信
「スケルトンだぁーーー!」
「次々とここに押し寄せてくるぞ!」
「レベリストたち! 前に出てスケルトンを倒すんだ!」
「わっ、わかりました!」
「本当に骨が動いてるぅーーー!」
仮眠を取っていたら夜警をしている国防隊員に叩き起こされ、急ぎ装備を着けて野営陣地の外縁部を覆うバリケード前に集合させられた。
レベリストたちは全員眠い目を擦りながらも、ちゃんと全員が集合していた。
無能な用務員も寝坊はしていないようだ。
サーチライトで野戦陣地の外が照らされると、数十体のスケルトンがこちらを目指して走ってくるところが照らし出される。
スケルトンは松代に避難する最中何度か目撃したが、骨だけなのでやはり不気味だ。
レベリストたちの中には、骨だけなのに動くスケルトンを見て悲鳴をあげる者も少なくなかった。
スケルトンは、対アンデッド部隊の火炎放射器では倒せない。
俺たちレベリスト部隊は、国防隊から支給された銀の剣や槍を構え、骨の化け物たちを待ち構える。
「へへへっ、ここで活躍すれば美味しい思いができるってもんだ」
俺は県会議員の息子で、水無月市解放作戦の司令である安城陸将とも父を通じて親しい。
安城陸将の派閥に属するレベリスト部隊の指揮官からは、他のレベリストたちの管理を任されているし。この作戦に成功すれば、正式に国防軍のレベリスト部隊を任されることになっていた。
「(俺は、底辺の用務員とは違うんだ!)」
エリート高校に通い、将来は有名大学に進学。
大学を卒業後は政治家である父の跡を継ぐべく、秘書になる予定だった。
ゾンビたちのせいでその予定が大幅に狂ったが、このまま国防軍のレベリスト部隊を指揮して出世し、退役後は国会議員も狙えそうなので問題ない。
「(用務員と白井たちが、稲美基地で活躍したって? 戸高の言っていたことなんて嘘に決まっている)」
それなら、稲美基地が放棄されるなんてことは有り得ないだろう。
今日もコソコソと動いてゾンビをちょっとばかり倒したと言い張っていたが、どうせ対アンデッド部隊が倒した分をチョロまかしたに決まっている。
なぜなら、非正規の用務員如きが優秀なわけがない。
就職氷河期を言い訳にしている無能な用務員は、まともなところに就職できず。うちの学校で掃除や草むしりなどの雑用をこなすしか、能がないおっさんなのだから。
「だいたい、骨しかないスケルトンがゾンビよりも強いわけがない。スケルトンはゾンビの骨なんだから」
いわば抜け殻みたいなもので、肉を失って身体も軽くなっている。
だから素早いが、力はないはずだ。
俺はこれから初めてスケルトンと戦う予定だが、きっとそうに決まっている。
優秀な俺の推察が間違っているわけがないのだから。
「みんな、この銀の武器があれば楽勝だそ! 誰が沢山倒すか競争だ!」
「剣崎さん、負けませんよ」
「そうだ、その意気だ!」
今日倒されたゾンビがスケルトンになって数が増えたらしいが、俺たちだけで楽勝だろう。
昼は対アンデッド部隊が火炎放射器でゾンビを焼き、夜は俺たちレベリスト部隊がスケルトンを銀の武器で倒していく。
「完璧な作戦だ!」
水無月市の解放に成功したら、俺たちは英雄だ。
待遇も今より格段に良くなるはずだから、頑張ってスケルトンを倒さなければ。
「お前たち! 気合を入れて戦えよ!」
そしてレベリストたちを率いる俺は、選ばれしエリートに相応しい人生を送るのだ。
落ちこぼれで用務員にしかなれなかった、就職氷河期のおっさんとは違ってな。




