第29話 旅立ち
「よーーーし、結界は問題なしだな」
「幸三さん、車に荷物を積み込んだよ」
「家にもちゃんと鍵をかけました」
「では出発だ」
国防軍基地での戦いを終えた私たちは、旅に出ることにした。
その理由はいくつかある。
戸高司令は、私たちがアンデッドを倒せる力についてあちこち言い回るとは思えないが、部下たち経由で市ヶ谷や日本政府に知られてしまったと思う。
廃村に居続けると望まないアクセスがあると思うので、一旦この廃村を出て、私たちが旅に出たと思わせるためだ。
他にも、私たちだけで日本各地に一億体以上いるゾンビを倒せるとは思えないが、とりあえず今生き残るためにレベルアップが必要だと考えた。
廃村や学園付近のアンデッドはかなり倒してしまったので、遠征してレベルアップをすることにしたのだ。
あとは、すでに食料は少ないと思うが、ゾンビがいる都市部から生活に使える物を可能な限り集めて回収しておこうかと。
どうせこのまま朽ちるのであれば、『アイテムボックス』の容量に余裕があるうちは、できる限り回収しておこうと。
今後、私たちが安全に楽しく暮らすために。
「幸三さん、これってキャンピングカーだよね? こんなのあったんだ」
「アウトレットモールの中に展示されてて、ガソリンを入れたら動いたから」
このあと可能な限り日本全国を回る予定なので、寝る場所の確保は大切だと思ってキャンピングカーを用意した。
道が悪いところは別の車で対応する予定だけど、これも『アイテムボックス』のおかげだ。
「日本一周をするとなると、一年くらいかかるかな?」
「そんなにかかるかな?」
「ゾンビやスケルトンとの戦いもあるので、そのくらいかかるかもしれません」
「そっか。でも、一年経てば私も十八歳で成人だね。これで幸三さんと結婚できるよ」
「私も十八歳になるので、幸三さんと結婚できますよ」
「楓さん、重婚は法律で禁止されているじゃん」
「こんな世界になってしまったのに、瑠璃さんはまだそんな常識に拘るんですか? 私は絶対に幸三さんの奥さんになりますから」
「楓さん、初めて会った頃とイメージ違うなぁ。私も幸三さんの奥さんになる!」
「それは成人してからってことで、出発します」
最近の女子高生は大胆だな。
私たちはキャンピングカーに乗り込み、廃村をあとにした。
まさか異世界で魔王を倒して戻ってきたら、世界中にゾンビが溢れ出ていたなんて想像すらできなかったし、就職氷河期の独身おじさんが女子校生二人に結婚を迫られるなんて。
今後、私の人生がどうなるのか?
この世界の行く末と共にまったくわからないが、今は自分のやりたいようにやっていこうと思う。
少なくと今の私は、色々な面で自由にはなったのだから。




