第17話 欲しいもの
「ふう、今日も疲れたなぁ。残っていた生鮮食品は腐り始めていて駄目だったけど、日持ちする保存食品や米がかなり回収できたし、使えそうな物や生活物資もかなり集められた。沢山ゾンビとスケルトンを倒してレベルも上がったし、魔石も回収できたから、いざという時の魔力回復に使える」
「それはよかったですね、幸三さん」
「まだ学校周辺の町には、そんなに食料と物資が残っていたんですね。結局私たちはあの時、なにも回収できなかったので……」
「アンデッドがいるから、レベルが上がる人じゃないと無理だと思う」
「結局私たちはなにも得られず、逃げるしかなかったですしね」
今日も三人で一緒にお風呂に入っているけど、私は冷静さを保てている。
自然に、二人の胸、お尻、大切なところに視線が集まらないようにもなった。
人間とは環境に慣れる生き物なのだ。
どうしてもチラリと見えてしまうけど、気にせず風呂を楽しめるようになった。
今日からは手に入れた入浴剤を使っており、温泉気分も味わえて最高の気分だ。
入溶剤はお湯が濁るやつにして、なるべく浴槽に浸かる二人の裸が見えないように配慮もしたからだろう。
おじさんに、女子高生の裸は刺激的すぎる。
「(やはりレベルは偉大だな)」
レベルが上がったことも大きいと思う。
二人の裸を見ても、冷静にお風呂を楽しめているのだから。
これからも定期的に、アンデッドを倒してレベルを上げていかないと。
「(おかしい……。幸三さんは、私の裸を見てもなんとも思っていないの? さすがにそろそろ手を出してくるはず)」
「(男性って、若い女性の裸を見ると興奮するのでは? そして押し倒したくなるのでは?)」
「どうかしたの? 二人とも」
「なんでもないよ」
「なんでもないです」
無事に、文化的な生活を送るために必要なお風呂の確保ができた。
これからも、生活改善のための作業を進めていかないと。
「幸三さん、一つお尋ねしたいことが……」
「私もいいかな? ちょっと大切なことがあって……」
「急に改まってなに?」
三人での生活にも慣れてきた気がする。
残念ながら、村の外の状況はまったくもって不明だけど、私がもっとレベルアップしないと遠方に偵察にも行けないのだから仕方がない。
それでも三人で頑張った結果、家での生活はかなり普段に近いものとなり、この世界がゾンビで溢れているなんて思えないほどだ。
そんな日々のなか、朝食のテーブルで二人が私に改まって聞いてきたのだ。
「(なんだろう? もしかして、そろそろご両親の探索に行きたいとか? でもそれはなぁ……)」
この暮らしを始めてみて気がついたのだが、二人が他の場所で多くの人たちと普通に暮らせるようになるのかがわからない。
なぜなら、今の日本政府や自治体、警察、国防軍などが、秩序を守って存続しているのか、正直怪しいものだからだ。
最初は、『ゾンビが出現して大変だ!』、『人が食われている! 警察は?』、『国防軍が出動して、ゾンビを駆除すべきでは?』などと、SNSにメッセージや写真をあげて大騒ぎしていたが、すでにネットのみならずテレビ、ラジオ、電話とすべて維持できなくなって途絶えた。
これまで文明的な世界を支えていたインフラ網がなくなり、我々人間は他者と連絡すら取れなくなって孤立を余儀なくされ、それが余計にアンデッドの跳梁を許している。
残念ながら私は、通信、ネット関係に詳しくなく、三人だけの村生活が続いているわけだ。
「幸三さんって、『アイテムボックス』に色々な物を持っているよね?」
「そうだね」
完全に窃盗だが、無人の町中で回収できるものはすべて回収したからだ。
どんなものがいつ役に立つかわからないし、私の『アイテムボックス』の容量はまだ満タンになっておらず、それならばと、ありとあらゆる使えそうな物も回収していた。
いつどこで、どんな物が役に立つかわからないからだ。
「その中には、下着はないかなって」
「下着?」
「はい、女性用のです」
瑠璃さんに続き、私に返答する楓さん。
顔を赤らめてモジモジしている様子が、二人とも可愛い。
彼女たちは、下着が欲しかったのか。
私は男性なので、そこに配慮が及ばなかった点は反省しないと。
だけど、女性用の下着はさすがに……。
「あります」
「あるんだ!」
「あるんですね」
なぜならショッピングモールで、漏れなく大量の商品も回収したからだ。
店舗の中にはランジェリーショップもあって、下着を大量に回収したのを思い出した。
男性用も回収してあり、今は自室から持ってきた服や下着を使っているが、駄目になったら新品と交換する予定だ。
「さすがに、唯一着けていた下着だけだともう限界だよ」
「毎晩洗って部屋に干すんですけど、毎日洗っているし、元々新品じゃないから、そろそろヘタってきたといいますか……」
「そうだったんだ。早く言ってくれれば……」
私は気が利かないおじさんだから。
反省はしているけど。
「ええと……それは……」
「すみません、言いづらくて……」
ああっ。
恥ずかしいから新しい下着をくれと言えなかったのか……。
その割には、私と一緒に裸でお風呂に入るのは不思議なんだけど。
そういうところは年頃の女の子なんだなって思いつつ、私はもう一つ大切なことに気がついた。
「(下着は沢山あるんだよ。でも……)」
この『アイテムボックス』というスキル。
収納した物は決して忘れないし、任意の物を取り出すのも自由自在だ。
なので、ショッピングモールから手に入れた大量のランジェリーはあるのだけど、全部家に出したら溢れてしまうだろう。
それに下着には、ある問題があった。
「サイズを教えてくれたらそれを取り出せるけど、サイズが合わないと意味がないから、教えてほしいな」
一応念のために言っておくが、これはセクハラではない。
この家の中で、手に入れた女性用下着をすべて『アイテムボックス』から取り出すわけにいかないからだ。
家中が下着で溢れるどころか、下手をすれば下着で家が崩壊しかねない。
かといって外で取り出せば、せっかくの新品下着が汚れてしまうのだから。
「……あのね……」
「……あのですね……」
二人が顔を赤くさせながら下着のサイズを教えてくれたので、様々な種類の下着と、服なども出すことができた。
女子高生二人に、大量のランジェリーを贈るおっさん。
普段ならただの変態オヤジだな、これ。
そして図らずして、二人のスリーサイズを知ってしまった。
わかってはいたけど、今時の女子高生はスタイルがいいんだなぁ。




