第16話 白井瑠璃の気持ち、坂田楓の気持ち
「今日こそは必ず、幸三さんを誘惑するんだから」
「白井さん、私負けませんよ」
「私も負けないわよ」
幸三さんと行動を共にするようになってから数日が経った。
以前から彼は、両親、教師、同級生たちよりも私を気遣ってくれて、優しくて、頼りがいがあって、なにより私をゾンビが溢れる学校まで助けに来てくれた。
そんな幸三さんのことが私は大好きだ。
幸三さんは父よりも年上だけど、夫婦の年齢差なんてこんな世の中になったら関係ないと思う。
以前なら強く批判してきた人たちも、その大半がゾンビになっているからだ。
いつゾンビに殺されるかわからないのだから、それまで私と幸三さんと愛し合っても問題ないはずだ。
「(なんなら、この村で死ぬまで幸三さんと仲良く暮らしても……)」
子供が生まれて子孫繁栄すれば、人間は滅びずに済むかもしれないし。
幸三さんの子供……いいかもしれない。
私、子供が好きだから。
そんな私には、強力なライバルがいた。
私を助けてくれる前に、幸三さんが助けた坂田さんだ。
彼女は親や教師に反抗するためにギャルの格好をしている私とは違って、黒髪がよく似合うお淑やかなタイプで、おっぱいもお尻も私より大きい。
なにより、私よりも先に幸三さんが助けた子というのが重要だと思う。
幸三さんはこれまでの人生経験から、世の中に対して冷めた視線を持っている。
そう簡単に他人を助けないからこそ、わざわざ私を助けに来てくれた時は嬉しかったけど、まさか先に坂田さんを助けていたなんて……。
「(もしかしたら幸三さんは、坂田さんのことが好きなのかもしれない……)」
あきらかに坂田さんも、幸三さんのことが好きっぽいし……。
だから昨日は、突然お風呂に乱入してみた。
幸三さんって常識的だから、こちらから押さないと女子高生の私に手を出してくれないと思ったから。
まさか、坂田さんも同じことを考えていたとは思わなかったけど。
そんな事情があったので、今日も引き続き幸三さんと一緒にお風呂に入るつもりだ。
間違いなく坂田さんもそうするだろうし、坂田さんにはおっぱいの大きさでは勝てないけど、スタイルは悪くないと思っている。
「(幸三さんがいなければ私たちは生活できないんだから、強引に押し倒してもいいのに……)」
こんな時にもそれをしないから幸三さんは素晴らしい男性なんだけど、今は逆にもどかしく感じている。
とにかく、坂田さんには負けないようにしないと。
まあこんな状況だから、両方を選んでも問題ないんだけどね。
※※※※
「幸三さんって、あんなに可愛い子から好かれているんだ」
幸三さんは、私にとってヒーローだ。
伴龍高校の生徒会長たちと一緒に、周辺の町に食料を集めに行った時、ゾンビの群れが出現したので、私は彼らが逃げるための囮にされてしまった。
私は一人でどうにか逃げようとしたけど、その時にゾンビに噛まれてしまって……。
このまま私も、町でゾンビに食い殺された人たちと同じくゾンビになるんだと絶望していたら、幸三さんが颯爽と車を乗り入れて助けてくれた。
もう自分はゾンビになってしまうので、助けてくれなくてもいいって言ったんだけど、幸三さんは私を車に乗せたばかりでなく、アンチアンデッド薬まで飲ませてくれた。
おかげで私は、ゾンビにならずに済んだ。
幸三さんは私を他の人たちが避難している場所に連れて行こうとしたけど、私は幸三さんがいなかったらゾンビになっていた。
だから私の残りの人生は、幸三さんのためにあるんだと思っている。
私はこれまで男性とお付き合いしたことがないけど、幸三さんと一緒にいると安心する。
ゾンビと戦っているところを見ているとドキドキした。
かなり年上だけど、世の中にそんなカップルは珍しくもない。
そんな風に思っていたけど、まさかライバルが現れるなんて……。
幸三さんが嫌っていた伴龍高校にわざわざ出向いてまで助けた白井さんは、ダサい私とは違って可愛らしくて垢抜けている。
幸三さんが好きになっても仕方がないけど、私は白井さんに負けたくない。
だから彼女が幸三さんが入っているお風呂に乱入しようとした時、無意識に私も服を脱いでいた。
その結果は、こんな時でも紳士で常識的な幸三さんに上手くかわされてしまったけど……。
「(でも、さすがに毎日続ければ……)」
お湯を沸かすガスは貴重なので、お風呂は一緒に入った方がいいという大義がある。
これからも幸三さんと一緒にお風呂に入っていれば、いつか幸三さんも誘惑に負けるはず。
白井さんもいるけど、もし幸三さんが二人とも選んだとしても、私は特に問題ないと思っている
私たちがこうやって快適に暮らせているのは幸三さんのおかげなんだから、もっと強気で押し倒してくれてもいいのに……。
でも、それができないのが幸三さんのいいところだから、ここは私の方が押していかないと。
ちょっと恥ずかしいけど、できるかな?




