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第13話 生活改善行動

「この家に残っていた古い布団は、もう捨てても問題ないか。ここにはもうゴミ収集車は来ないから、ゴミ捨て場を……。リサイクルできるかな?」


「すでにここは廃村になっているので、ゴミ収集車が回ってきませんし、この状況でゴミ収集車に乗っている人たちが出勤できるわけないですからね。天然素材なら、自然に戻せませんか?」


「化繊も使ってあるから無理っぽい」


「なにか別の用途に流用しましょう。勿体ないですよ」


「今は『アイテムボックス』に仕舞っておいて、あとで用途を考えるか」


「幸三さん、坂田さん、朝ごはんできたよ」




 夜が明け、私はいつもどおり六時に起きた。

 用務員の仕事が始まる時間の関係で、毎朝この時間に起きてしまうのだ。

 私が起きると、別の部屋で寝ていた二人も起き出してきて、私が『アイテムボックス』から出しておいた携帯コンロと調理器具、食器、食材で朝食を作り始めた。

 それにしてもこの二人、女子高生にしては料理が上手だ。

 私もよく自炊するので下手ではないが、同じくらいの腕前かも。

 朝食のメニューは、オニギリと味噌汁、目玉焼きとウィンナー炒めで、二人は協力して手早く作っていた。


「「「いただきます」」」


 三人で朝食をとりながら、昨晩の話をした。


「お墓の骨がスケルトンに? 大規模な霊園とかは大変そうだね。そうでなくても、ゾンビで大変なのに」


「ゾンビを次々となぎ倒していた幸三さんでも、スケルトンには苦戦するんですね」


「レベル不足だからね。それにアンデッドは、実体がない方が強い傾向にあるから」


「さすがは、異世界で魔王を倒した幸三さん。詳しいね」


「世界中にお墓なんていくらでもありますし、富士の樹海のような場所には、過去に亡くなった方の骨も沢山あります。みんながスケルトンになってしまったら、余計に世界中がアンデッドだらけになってしまいますね。実は私の両親は仕事の都合で隣県に住んでいて、私は一人暮らしをしていたんですけど、これでは白井さんと同じく両親を探しに行くには念入りな準備が必要ですね」


「私の両親なんて東京だから余計にね。だから、しばらくはこの村で安全に暮らせるように三人で協力するのか最優先だよ」


「そうだなぁ……」


 全世界の人口のどのくらいがゾンビになってしまったのかわからないし、墓地や葬儀場、戦場や昔の戦場跡、なんなら地面の中などに埋もれて残っているミイラや骨がゾンビやスケルトンになるから、人間は多勢に無勢になるだろう。

 そのうえ、私はレベル1からレベルを上げ直している状態だ。

 現状、ここに安全な拠点を作るので精一杯だろう。


「だから幸三さんは、私たちを避難民キャンプまで送っていこうとか、隣県や東京まで私たちの両親を探しに行こうなんて考えなくていいよ」


「危険ですし、この状況だと最悪の事態も考えています」


「今は自分が生き残るので精一杯だよ」


 二人は、両親がすでに亡くなっている可能性についても考慮しているのか。

 大人だなと思うし、瑠璃さんはご両親との関係が必ずしも良好じゃないってのもあるのか……。

 家族とは仲良くした方がいい、なんて人に偉そうに言えるほど、私も家族との関係が良くないからなぁ……。


「幸三さん、こうなってしまったら、いつ人類が滅ぶかもしれないじゃん。それなら、その日まで可能な限り楽しむのも悪くないと思うんだ」


「……」


 私はすでに人生を見切っているが、若い二人はそうなってほしくない。

 と言えるほど、自分が上等な人間ではないことがわかっていたにしてもだ。


「まだこの世界にゾンビが出現して数日です。日本政府や世界各国が無策のままというわけがないと思うので、まずは生き延びることが大切だと思うんです。この家をもっと住みやすくしましょう」


「それもそうだな」


「坂田さんの言うとおり、今は生きるのが最優先だね」


 朝食を食べ終わると、分担してこの家で生活するための作業を始めた。

 瑠璃さんと楓さんは、家の整理、整頓と掃除を。

 私はこの家の周囲に張った結界の状態を確認してから、村の探索を始めた。

 村内にゾンビとスケルトンがいないか、確認するためだ。


「……結界を破ろうとした痕跡がない。この村の中にいたアンデッドは、墓地にいたスケルトンだけなのかな」


 少なくとも現時点では、だが。


 続けて、『アイテムボックス』から取り出した双眼鏡で空を飛ぶ鳥たちを確認する。

 人間なり、他の動物のゾンビが鳥を襲い、殺された鳥がゾンビになるからだ。

 そして、ゾンビになった鳥ほど厄介な存在はない。

 鳥なのであまり強くないが、上空から人や動物に襲いかかってくるからだ。

 クチバシで突かれたり、爪で引っかかれただけでゾンビになってしまう。

 ただ、まだゾンビなった鳥はいないのか、極端に少ないのだろう。

 少なくとも、この山奥では一羽も発見できなかった。


「さらに結界を張るか……」


 向こうの世界で手に入れた、野営用と拠点用の結界を持ち帰ってきてよかった。

 これを張れば、スケルトンくらいまでなら侵入を防げるからだ。


「まずは、村全体に張らないとな」


 あと、できれば周辺の山々にも結界を張りたい。

 なぜなら、山に住む生き物たちがゾンビになると、繁殖が困難になって絶滅してしまうからだ。

 私は『アイテムボックス』に大量の食料と物資を集めてきたけど、いくらあっても足りるってことはないと思う。

 そこで、できる限りここで自給自給をしてみようと思っていたからだ。

 他にも、狩猟、釣り、採集などができる山野と川、水源も結界で囲んでおきたい。


「本当に怖いのは、ゾンビ化、スケルトン化が他の生物に広がった時だ」


 動物のゾンビはそんなに強くないけど、素早く動いて人や他の生物に噛み付く。

 だからとても厄介なアンデッドだった。


「もっとレベルを上げる必要がある」


 結界にはさらに強力なものもあって、これを用いると実体がないのに強い、レイス系のアンデッドの侵入を防げるようになる。

 今その強力な結界を張らないのは、アイテムはあっても私のレベルが足りないからだ。


「この家と村の整備が進んだら、車で遠征してゾンビやスケルトンを倒してレベルを上げたい。そうすれば、レイスも防げる結界を張れる。レイスは、スケルトンを倒すと必ず発生するからだ」


 ゾンビを倒すと骨が残って、それがじきにスケルトンになる。

 スケルトンを倒すと、骨はボロボロに崩れてなにも残らない。

 だが、魂、霊体は残り、それがレイスになる。


「ただ、レイスの出現はランダムだ。崩れたスケルトンのカスからは発生しない。突然、どこかに出現する」


 そんなレイスだが、普通の人間は数秒間触れるだけで死んでしまい、レイスに触れられた人はやはりゾンビになってしまう。

 実体がないレイスは壁もすり抜けるし、物理攻撃が効かないので今の人類には倒す手段がない。

 だから安全のために、この村にレイスも入れない結界を張るのが当面の目標だ。


「まずは急ぎこの村に、普通の結界を張ろう」


 とりあえず村に結界を張ったので家に戻ると、すでに家の掃除は終わっていた。

 家具や寝具、その他生活に必要なものはすべて新品となっており、これなら快適に暮らせそうだ。

 色々と集めて、『アイテムボックス』に仕舞っておいてよかった。

 掃除は私がやるともう少し雑な気がするので、こういうのは女性の方が得意なのかもしれない。

 

「二人とも家事が上手なんだね」


「私は一人暮らしなので、基本的なことはできます」


「私も高校を卒業したら家を出たかったから、練習はしていたんだ」


 昼食も完成しており、メニューは今朝のオニギリの残りと、豚の生姜焼きだった。

 材料の豚肉はパック詰めのやつで、すべて腐る前に、町の店舗の冷蔵ケースから取ってきたものだ。


「幸三さんの『アイテムボックス』のおかげで、私たちは文明的な生活ができる。こんなに素晴らしいことはないよね」


「もし避難民キャンプに逃げ込めても、食料や水が不足しそうですからね」


「うちの学校、災害に備えて食料、物資、水を保管していたけど、すぐに底をついて、最後は奪い合い寸前だったからね。もしかしたらこれからは、ゾンビに殺される前に、同じ人間に殺される人が出てきそう」


 食料と水がないと、人は生きていけない。

 生きるために、避難民たちが残り少ないそれを奪い合う可能性があった。

 まさに世も末、世紀末というやつだ。


「ますます、そう簡単にここから出られませんね、私たち」


「幸三さん、村の田畑まで結界で覆ったのは、農業をするため?」


「そうだよ。万が一に備えて、極力自給自足体制を作っておいた方がいいから」


「食料がないと、人は死んでしまうからね。私も手伝う」


「私も手伝います」


「まだ十分に食料はあるから少しずつだけど。あとは……」


 午後からは、屋根を含めた追加の家の補強と、照明用の電気が欲しいので、町や店舗で回収したソーラーパネルと蓄電池を家の隣の空き地に設置して、簡単な電気工事を始めた。


「幸三さん、電気工事なんてできるんだ。凄いね」


「昔、そういう会社で働いていたことがあってね。派遣でだけど。正社員登用の可能性があるって聞いていたから懸命に仕事を覚えたし、資格も取ったんだけど……」


 結局それは嘘で、私は契約期間を派遣のまま働かされ、派遣としてなら契約更新するとその会社から言われてしまった。

 このまま非正規で働き続けるのが嫌になって、転職してしまったのだ。


「幸三さん、用務員としてもちゃんとやってたのに……」


 もし私が若者なら、正社員登用もあったはず。

 いくら仕事を覚えても、就職氷河期世代を正社員登用する会社なんて少なかったのだから。


「ええと……。工事は明日には終わるから。家の照明がつくようになるけど、節電をお願いね」


「「わかりました」」


「あとは……。お風呂だ」


「「お風呂!」」


 二人とも、食いつきがいいな。

 私たちはこの真夏に、もう三日以上もお風呂に入っていなかったからだ。

 二人は若い女の子だからまったく臭わない……なんてこともなく、だが私には加齢臭がありそうで……。

 早くシャワーなりお風呂を復旧させよう。


「これも、家の中のガス管をチェックして安全を確認してから、集めてきたプロパンガスのボンベを設置すれば、お風呂も沸かせるはずだ」


「お風呂場の掃除も必要か」


「それはやっておきます」


「久しぶりにお風呂に入れるからね。頑張るよ!」


 こんな状況になってしまったので、お風呂も贅沢品になってしまった。

 私も休日にはスーパー銭湯に行くくらいお風呂好きなので、まずはこの家のお風呂を復旧させよう。


「幸三さん、ガス管やお風呂にも詳しいんですね」


「昔、そういう会社で働いていたことがあってね。契約社員だったけど……」


「「……」」


 まあ、相変わらず非正規だったんだけど。

 なるべく早くお風呂を復旧させるとしよう。

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― 新着の感想 ―
最近の10代は、あまり風呂喜ばないよね。普通に2週間とか入らない娘ザラに居る。まぁ部屋から出ない、身体動かさない、出歩くのは夜中に近くのコンビニのみの生活とかだとわからなくもないがw
電気に加えてガス管工もちかよw 非正規とかありえんてぃ
ゾンビウィルス?がそこまで凄まじい感染力だとすぐさま世界は滅びるんじゃ? 感染が広がる速度と防ぐ速度が全く釣り合っていないと思います。
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