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第12話 VSスケルトン集団

「ケケケッ」


「カタカタ」


「やはり復活していたか……」



 青白い月光の色が移った骨で構成されたスケルトンの群れは、ある種の美しさを私に魅せつけていた。

 この村というか地区には、当然だが墓地があった。

 普段ならなんの害もないが、この世界がゾンビ溢れる世界になったため、そうなると異世界のように墓地からアンデッドが湧き出てくる可能性が高くなる。


「この地区は土葬じゃないから、湧き出ると思ったらスケルトンだと思ってたけど……」


 私の予想は、見事に当たったようだ。

 この地区にあった十数軒ほどの家の住民が眠る墓が立つ墓地の中から、数十体のスケルトンが墓を破壊しながら出現、墓地内を彷徨っていた。


「相変わらず謎が多いよなぁ……」


 火葬と長い年月が経ってほとんど骨が残っていなくても、スケルトンは必ず全身を保った状態で発生した。

 ゾンビを倒したあとも、スケルトンは残った骨の状態に関係なく必ず全身を保った状態で復活する。

 向こうの世界で倒したゾンビがスケルトンになるのを防ぐために色々と試したが、すべて徒労に終わったことを思い出した。

 異世界で謎に思ったことがあるが、スケルトンはいったいどこから失った体(骨)を補ったのか?

 そしてゾンビが長年活動を続けても、体は腐って腐臭を漂わせるが、倒されなければ決してその身が朽ち果てることはない。

 異世界では、数百年活動しているゾンビにも遭遇したことがあった。

 完全に物理法則から外れた存在であるアンデッドは、倒されなければ永遠に活動できる厄介な存在であったのだ。


「大昔に火葬した骨なんてボロボロに崩れているはずなのに……」


 やはりこの世界のスケルトンも、ちゃんと全身が揃っていた。

 まるで理科室の骨格標本みたいだが、ゾンビよりも強いので注意しないと。


「どのみちこいつらを全部倒さなければ、ここを拠点にできない」


 瑠璃さんと楓さんが、家から一歩も出られなくなってしまう。

 今後、家に張ったアンデッド避けの封印を村やその周辺にまで広げるつもりだけど、そのためにはレベルも上げないといけない。


「どれが祖父さんと祖母さんの骨かわからないのが救いか。いくぞ!」


 まずは、両手に構えていた大型の水鉄砲で聖水をスケルトンたちに発射していく。


「カタカタカタカタ」


 すると、聖水を浴びたスケルトンたちが白い煙を吐きながら動きを止めてしまった。


「一応効果ありだな」


 ゾンビみたいに皮膚と肉が焼け落ち、地面に倒れてのたうち回る、なんてことはないようだ。

 だけど……。


「これで十分さ」


 すでに私は銀の剣を構え、動きを止めたスケルトンに斬りかかった。


「はたして、俺のレベルは足りているのかな?」


 いくら私に五年間の豊富な戦闘経験があるにしても、少なくともレベル一桁ではスケルトンに勝てない。

 だが私の計算では、もうそろそろスケルトンに勝てるはずだ。


「はぁーーーっ!」


 すぐさま、聖水で動きが止まったスケルトンに斬りかかる。

 すると、白い煙をあげながらボロボロに崩れ落ちてしまった。


「やった!」


 今のレベルなら、スケルトンにも勝てるようでよかった。

 これも、多くのゾンビを倒してレベルを上げたおかげだろう。


「おっと!」


 ただ、スケルトンは素早い。

 早速一撃を胸の部分に食らってしまい、レザーアーマー越しにもかかわらず一瞬息が詰まってしまった。


「ゲホッ! 骨しかないのに、もの凄い攻撃力だな……」


 もっとレベルを上げて、金属製の鎧を装備できるようにならないと。

 私が攻撃を受けて怯んだ隙に、聖水攻撃で動きを止めていたスケルトンたちが次々と襲いかかってくる。


「打撃は問題ないけど、指の骨で引っかかれることだけは避けないと……」


 スケルトンに引っかかれてからちゃんと処置しないと、やはりゾンビになってしまうからだ。

 だが打撃なら問題ないと思いつつも、私は数発スケルトンから殴られて肋骨を折ってしまったらしい。


「胸と脇腹が痛むな……」


 急ぎ『ヒール』をかけながらスケルトンからの攻撃をかわし、その素早さに目と体を慣らしていく。

 この世界の創作物だとゾンビもスケルトンも動きが遅いが、現実はまったくそうではなかった。

 むしろ生きた人間なら体を壊さないようリミッターがかかるが、アンデッドにはそれがないからだ。

 異世界のアンデッドは、一部の強力な個体を除き、そこまで強くない。

 強くて中級といったところだ。

 だが数が多くて増殖するし、せっかく倒しても、ゾンビ→スケルトン→レイスへと進化してしまう。

 人口の多いこの世界において、アンデッドは災厄クラスの脅威であった。


「このスピードに慣れておかないと……」


 隙を見せたスケルトンから倒していき、その攻撃を可能な限りかわし続け、受けたダメージを『ヒール』で回復していく。

 徐々にスケルトンの数が減っていくが、長時間の戦闘になってしまったので疲労感が凄かった。

 魔王討伐直前の時にはレベルも高く、長く戦ってもスタミナが尽きなかったというのに、これもレベル1に戻った弊害だろう。

 アンデッドだけでは簡単にレベルを上げられず、先が思いやられる。

 生き残るためにも、継続的なレベルアップは必須であった。


「はぁ……。はぁ……。私も弱くなったなぁ……」

 

 今後もレベル上げは続けていかないと。

 スケルトンも倒せるようになったけど、この世界に発生したアンデッドの数を考えるとまったく安心できない。

 さらに今後、特別個体ボスが出現する可能性も高いのだから。


「パーティは組めないしなぁ……」


 この世界で私以外に、レベルが上がって魔法や特技を使える人間なんて、現時点では一人も見つかっていないのだから。

 ゾンビは焼き払えば倒せるけど、普通の人たちがやるには大きな労力がかかり、危険なんてものじゃなかった。


「下手にゾンビに噛まれ、スケルトンに引っかかれると、討伐対象が増えてしまうかなぁ……」


 一般人に無理強いはできないし、かといって私一人に世界を救えと言われたら堪ったものではない。

 なぜなら私は、この世界にはなにも期待していない、期待されていない就職氷河期なのだから。


「(私は自分を優先して生きていきたい)なにより、これからは他人に気を使えなくなるはずだ」


 世界中にゾンビが溢れているのだ。

 他人を助ける余力があるかどうか。

 この廃村まで逃げて来る人もいなさそうだし。

 そんなことを考えつつ、疲労感と戦いながら少しずつスケルトンを倒していく。

 残念ながら銀の剣ではすでに威力不足で、聖水の水鉄砲と、複数にかけられる治癒魔法『ヒールズ』が使えるようになったので、それでスケルトンを弱らせながら戦っていた。


「はぁ……。はぁ……」


 戦闘中にレベルが上がってステータスが上がったようだが、『ヒール』で体力を回復させても疲労感が増す一方だ。

 いくら高レベルになっても、人間は長時間戦うと疲れる。

 精神的な疲労は、治癒魔法や回復薬では完全に回復させることができず、休憩と睡眠を取らなければ体力が残っていても動けなくなってしまう。 

 なぜなら私は人間で、魔王でも、魔族でも、アンデッドでもないからだ。

 

「(それでも、スケルトンの討伐を今日は休んで明日にしていたら、この村にスケルトンが彷徨くようになっていたはずだ)」


 だから今日中に、すべて倒す必要があった。


「最後の一体!」


 ようやく墓地にいたすべてのスケルトンを倒すことに成功した私のレベルは、17まで上がっていた。

 この世界でも、ゾンビより経験値が多いようだ。


「もうヘトヘトだ。家に戻ろう」


 もしスケルトンの残りがいたとしても少数だし、家には結界を張ったからスケルトンなら入ってこれない。

 残敵掃討は明日やることにして、完全に崩れさったスケルトンのあとに残った魔石を回収してから、私は家に戻る。


「明日からは、この村で暮らすために必要なことをやっていこう」


 二人にも手伝ってもらって、まずは安心して暮らせる場所を作るのが優先だ。

 

「ただいま」


「お帰りぃ!」


「幸三さん、もの凄く疲れた表情をしていますよ」


「疲れたからもう寝るよ」


 家には布団もあったので、私は急ぎ押し入れから敷いた布団の上に寝転がる。

 今は真夏なので掛布団は必要ない。

 長年干してなかったので掛布団は埃臭かったが、その対策は明日以降だと思いながら、私は深く寝入ってしまうのであった。

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― 新着の感想 ―
湿気ってカビてるかダニの巣だと思うけど、気にしなくて良いかw 布団保存真空パックで保存してたんだろう。 なんでおれはこんなこと気にしてんだ?w
スケルトンは物理法則を超えて、人間はスタミナ切れあり・・・きつすぎる!
もしかしたら実際の骨から作られているのではなく、骨を媒介にして別世界から召喚されているのかもしれない
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