第6話『絶望の龍』
グーファスたちVs絶望の龍の戦いを、少し離れたところで見ていた一味がいた。
「くっくっく、グーファスの奴は死んでおらなかったか・・・」黒いローブをまとった、銀色の長寿眉を持つ皺だらけの男が言った。
「そのようですな。よりによってこんなところに飛ばされておりました・・・」カブトガニの仮面をかぶり、茶色のローブを着た将軍が言った。
「凶鳥や死獣はともかく、グーファスの奴は双頭双尾黒龍を数体倒しております。使えるかも知れませんな・・・」兜に数十本の角が生えた赤いマントの将軍が言った。
「ローフルチームやニュートラルチームを寝返らせた方が早いのではないか?」ムアコックが言った。
「それはそうですが、寝返りますかどうか・・・」マキア将軍が言った。
「ローフルチームはレムリア大陸に、ニュートラルチームはマウリティア大陸に飛ばされております」デバスタド将軍が言った。
「面倒くさいのぅ・・・」ムアコックが呟いた。
「そうですな・・・」マキア将軍は同意した。
「・・・」デバスタド将軍は無言だった。
「状態!」ゾフォスはディジスポアの能力を探った。
属性:Chaotic・self。
Lv.:計測不能(4桁)
能力:火炎(射程50m)
魔術:雷撃系
耐性:打撃・斬撃・火炎・雷撃
「(参ったな・・・。何も効かないじゃないか・・・)」ゾフォスはため息をついた。
「ゾフォス! 何か弱点は見つかったか?」グーファスが叫んだ。
「弱点は無い! 打撃・斬撃・火炎・雷撃に耐性がある! 火炎の射程は50mだ! 迂闊に近づくな!」ゾフォスが叫んだ。
「耐性が多すぎだ。それに火炎の射程が50mもあるんじゃ、近づけないじゃないか!」ドプレクスが叫んだ。
「転倒は有効でやんすか?」プーパがたずねた。
「有効かもしれん・・・」グーファスが答えた。
「私には斬撃しかない・・・。だけど近づけないわ・・・」クロマは顔を曇らせた。
「暴風障壁!」ゾフォスが術を唱えると風向きが追い風に変わった。
「気休めだ! くれぐれも火炎の直撃に気をつけろ!」ゾフォスが叫んだ。
「分かった!」グーファスは、スプーン・フォークを回転させながらジリジリとディジスポアに近づいた。
「気迫貫通撃!」ドプレクスは10mほど離れたディジスポアに1ダースほどの打撃を与えたが、大した効き目がなかった。
「まるで手応えがない! 硬すぎる!」ドプレクスは叫んだ。
「虹霧(二エラ・アルコイリス)!」クロマは、剣を振り下ろしディジスポアの視界を奪った。
「効いたかな?」全員がディジスポアの様子をうかがった。
「がおおおぅ!」ヤケクソになったディジスポアが大きく息を吸い込んだ。
「マズイ! 火炎が来るぞ!」グーファスが言った。
「転倒の舞い!」プーパがワッペンを落とすとディジスポアがよろけた。
「態勢が崩れたでやんす!」
「今だー! 攻撃させるなー!」グーファスが叫んだ。グーファスは、喉元にナイフを突き刺した。少しだけ手応えがあった。
「気迫連撃! 脳震盪でも起こしやがれ!」ドプレクスは顔面に連撃を叩きこんだ。
「竜巻斬!」クロマは腹に斬撃を浴びせた。
「巨石!」ゾフォスが半径3mほどもある巨石をディジスポアの脳天に叩き落した。
ディジスポアは地面に崩れ落ちた。
「捕縛!」プーパは、ディジスポアを地面に縛り付けた。
『雷!』突っ伏したディジスポアは苦し紛れで術を唱えた。
「ドガっ!」
「ズっシャーン!」
「バリバリ―!」10ほどの雷が、空から降って来た。
全員が攻撃の手を緩めた。幸いなことに直撃を受けた者はいなかった。
「雷の術まで使えるのか・・・」グーファスが少し怯んだ。
「今のは、龍の術でやんすか・・・?」プーパはビビった。
「誰もケガはない?」クロマは確認した。
「あぁ、大丈夫だ・・・」ドプレクスは返事をした。
「次が来るぞ・・・」ゾフォスはディジスポアから目を離さなかった。
「一撃でも喰らうなよ! 喰らったら、即死だ!」グーファスが叫んだ。
「分かってるよ、そんなこと!」ドプレクスは叫びながらディジスポアに突っ込んだ。
「バッシ―!」ディジスポアの尻尾がドプレクスを弾き飛ばした。
「(貰った!)」ドプレクスは岩に叩きつけられた。倒れたドプレクスは受けたダメージを攻撃力に変換し始めた。
ディジスポアがドプレクスにとどめを刺そうとしたので、プーパはディジスポアを挑発し始めた。
「挑発の舞い」ディジスポアの目の前で大袈裟に踊り始めた。
ディジスポアは向きを変えプーパめがけて突進した。
「転倒の舞い!」プーパがワッペンを落とすとディジスポアがよろけた。
「今だ!」グーファスが叫ぶと、総攻撃が始まった。
「岩! 岩! 岩!」ゾフォスは半径1mほどもある岩をディジスポアに叩きつけ注意を引いた。
グーファスは、右往左往するディジスポアに斬撃を浴びせた。
「幻惑!」クロマは、ディジスポアに幻惑の術をかけ、三半規管を麻痺させた。
「魂の一撃!」ドプレクスは、ディジスポアに特大の一撃を叩きこんだ。
「ぐぎゃあおぅ!」ディジスポアは崩れ落ちた。
「・・・たいして効いておらぬのぅ・・・」グーファスが残念そうに言った。
「あぁ、HPの1%も削れていない・・・」ゾフォスが呟いた。
「これを、100回繰り返すでやんすか?」プーパは震えながら言った。
「倒せぬならば、繰り返すしかないな・・・」ドプレクスは覚悟を決めた。
「私たちに、勝ち目はあるのかしら・・・?」クロマは、心が折れそうだった。
「連携は見事だが、まるで相手になっていおらんな。弱すぎるわ!」ムアコックが吐き捨てるように言った。
「ディジスポア相手に2ターンも堪えられたら、良い方です」マキア将軍が言った。
「・・・別の作戦を考えましょう・・・(プーパの野郎も用無しか・・・)」デバスタド将軍が言った。
「次で終わりだ・・・。ディジスポアが本気を出すぞ」ムアコックが言った。
「アレが来ますか・・・」マキア将軍が言った。
「耐えた者はおらんからな・・・」デバスタド将軍が言った。
「ぐぐぐ・・・」ディジスポアが喉を鳴らした。
大地が震えた。
空気が重くなった。
全員が嫌な予感がした。
「くる!」グーファスが叫んだ。
「雷か!」ゾフォスが身構えた。
「怒雷炎!」ディジスポアは、目の前のグーファス、ゾフォス、ドプレクスに向かって火炎を吐いた。
少し離れていた、プーパ、クロマには数本の雷が降り注いだ。ディジスポアの半径20m以内の全員が必ず攻撃を受ける位置だった。
ドプレクスが火炎にまみれる直前だった。俄かに時間が緩やかになった。
「・・・」ゾフォスは時が止まったと思ったが、ミリ単位で動いていた。
「? 時が止まったのか? ディジスポアが止まっておるが?」ムアコックが不思議に思った。
「奇跡が起きたのかも知れません」マキア将軍が言った。
「神々の降臨で良くある状況です」デバスタド将軍が言った。
「神の降臨だとぉー?」
「小僧・・・。2ターン堪えたか。上出来だ!」ゾフォスの目の前にゼウスがいた。
「・・・」ゾフォスは無言だった。
「ディジスポアのこの攻撃は、神でも避けられん。時を止める以外はな・・・」ゼウスは人差し指でグーファスを指さしディジスポアから少し離れたところに移動した。ドプレクス、クロマ、プーパも同様に移動した。
「? (超能力か?)」ゾフォスは何が起きたか分からなかった。
「お前は歩けるだろう」と言って、ゾフォスに移動を促した。
ゾフォスはゼウスの後をついて行った。
「俺は、どうすればいい?」ゾフォスはゼウスに質問した。
ゼウスは静かに答えた。
「メガラニカ大陸から出る方法は、この絶望の龍を倒す以外にはない。しかし残念なことに、コイツを倒せたものはいない」
「・・・」
「他に、ディジスポアに攻撃そのものを諦めさせる方法がある」
と言って、ゼウスはゾフォスをチラリと見た。
「どうすればいい?」
「すでに事態は動き出しておる。黒幕が心変わりしたようだ・・・」と言って、チラリとムアコックを見た。
遠巻きに、自分たちの戦いを見ていた一味を発見した。
「! アイツは! 『地下迷宮探検競技』の会場にいた奴だ!」
「奴が、黒幕だ。我ら神々の力を利用しようと企んでおる」
「え? 一体何のことだ?」
「じきに分かるだろう。ここを抜け出したら、ムー大陸に来い。新しい冒険が始まるだろう。お前がやりたいこともできるはずだ」
「どうやったらいけるんだ?」
「ここに来たときと同じだ。『異界の門』をくぐればよい。そして、ムー大陸行きを望むのだ。そこでワシのために働くのだ。その代わりこの場はお前を助けよう」
「分かった!」ゾフォスはゼウスのために働くことを約束した。
「アイツらは仲間か?」ゼウスはグーファス達を見た。グーファスたちはミリ単位で動いていた。
「・・・仲間ではない」
ゼウスはゾフォスを見た。
「助け合っているんだろう?」
「お互い利用し合っているだけだ」ゾフォスは迷いなく言った。
「・・・まぁ、よかろう」ゼウスはゾフォスとの会話をやめた。
「なぜ、アイツがゼウスと連んでおる!」ムアコックが激昂した。
「さ、さぁ、何故でしょう?」マキア将軍が狼狽えた。
「私にも、分かりません!」デバスタド将軍も混乱していた。
「アイツらは、全員『神々の試練』を受けたのだろう? 何故、誰がどの神々の加護を受けたか調べておかないのだ! それがお前らの仕事だろう!」ムアコックの興奮は冷めなかった。
「(まさか、ゼウスを引き当てた奴がいたとは!)、体調不良で休んでいました・・・」マキア将軍が弁解した。
「(面倒くさくって、見てねーよ)、アテネ軍の仕事が忙しくて手が回りませんでした・・・」デバスタド将軍も言い訳をした。
ムアコックがニヤケ出した。
「くっくっく、まぁ、良かろう。ローフルチームやニュートラルチームを利用するのは止めだ。アイツらを利用する!」




