第5話『魔術師系・窃盗師ゾフォス』
『ぐわぎゃぁあおー・・・・! ぐごぉぉぉーっ! ぎゃーもーっ・・・!』
再びドラゴンが咆哮した。先ほどよりも悲痛で切実な雄たけびだった。
『ぎゃもー!』
『ぐぎゃぁあおー!』
『ぐぎゃぐぎゃおー!』ドラゴンの雄たけびが共鳴しだした。鳥が騒ぎ出し、緊張感が走った。空気が重くなり、全員が嫌な予感がした。
「何やら、嫌な予感がするのぉ・・・」グーファスが静かに言った。
「あぁ、良くない兆候だ・・・」ゾフォスは辺りを警戒した。
「何か来るでやんすか?」プーパはワッペンを拾った。
「仲間を呼んだのかしら?」クロマは剣を構えた。
「たぶん、そうかも知れん・・・」ドプレクスも警戒し始めた。
「索敵。辺りを捜索しよう」ゾフォスは黒いカラスを十数羽放った。
「わしらは、ドラゴンを倒そう!」グーファスがスプーン・フォークを構えた。
「押忍!」
「分かったわ!」
「しょうちしたでやんす」ゾフォス以外は、ドラゴンと戦闘を再開した。
プーパが、二本の尻尾攻撃を封じ、クロマがドラゴンの爪攻撃を受け止め、グーファスが火炎攻撃を受け流し、スキをついてドプレクスが有効打を放った。
「(うむ、見事な連携だ! 地図作成を急がねば・・・)」ゾフォスはカラスに半径200mの捜索をさせた。数分後、偵察を終えたカラスが帰って来た。
「地図」ゾフォスはカラスを白い羊皮紙の地図に変えた。地図を見てゾフォスは衝撃が走った。
「! コイツと同じドラゴンが三体迫ってくる!」ゾフォスは急いで、戦闘に参戦した。
「三分以内に、三体の仲間がやってくる! 急いでコイツから倒すんだ!」ゾフォスは叫んだ。
「なぁにー! 分かった!」グーファスが答えた。
「えらいことでやんす!」プーパは焦った。
「時間内に倒せるかしら?」クロマが疑問に思った。
「三分あれば、充分だ!」ドプレクスが叫んだ。
「俺は、ドラゴンの懐に飛び込む! 援護を頼む! 状態(このドラゴンは、レベル763か・・・。どうりで強い訳だ・・・)」ゾフォスの捨て身の行動だった。
「了解!」グーファスが叫んだ。
「任せとけ!」ドプレクスが叫んだ。
「分かったわ!」クロマが叫んだ。
ゾフォスは、尻尾・二つの首・二本の腕からの爪攻撃を封じられたドラゴンの腹部に両手を合わせた。「吸収! (お! 大漁だ!)」ゾフォスは、ドラゴンのレベルを100吸い取った。一気にレベルを吸い取られたドラゴンは全身の力が抜けた。ドラゴンが膝から崩れ落ちる隙に、ゾフォスはグーファスのもとに近寄った。
「上昇!」グーファスのレベルを50あげた。
「不思議な術を使うものじゃ! 力が漲ってきたわ!」
「(状態! レベル916か・・・。自己申告よりも上がっている・・・。それに、属性はLawful・Neutoralか・・・。リカルダスと同じだな・・・)」ゾフォスは、グーファスが三体のドラゴン退治の切り札になることを確信した。
「(よし! 次は、ドプレクスとクロマだ!)グーファス! もう一度レベルを吸い取ったら、止めを刺してくれ!」ゾフォスは再びドラゴンの懐に潜り込んだ。ドラゴンはよろけながら立ち上がった。
「分かった!」グーファスは、スプーンを鞘のように抜き、中から剣を取り出した。
「切り札『ナイフ』じゃ!」
「吸収! (二度目はボーナスだ! これで、このドラゴンはスッカラカンだ!)」ゾフォスはドラゴンのレベルを150吸い取った。
「いい戦いじゃった! 斬頭斬(スバイ―)!」グーファスはドラゴンを斬り捨てた。グーファスは崩れ落ちるドラゴンを見ていたら、あることに気付いた。
「おや? レベル900を超えたスキルボーナスじゃ。自動料理」ナイフの先から、炎を出しそのままドラゴンを料理した。
「ドプレクス! クロマ! 来い!」ゾフォスは近づいてきたドプレクスとクロマのレベルを50ずつ上げた。
「上昇!」ドプレクスはLv.182になった。
「上昇!」クロマはLv.161になった。
ゾフォスはLv.203になった。
「(お! 習得した! レベルアップボーナスだ!)」ゾフォスは忘れていた術を幾つか思い出した。そしてドプレクスとクロマとプーパに話しかけた。
「グーファスのオッサンのレベルを上げた。オッサンなら一人でドラゴンを退治できるレベルだが、俺たちは四人まとまってやっと一体退治できるレベルだ。あと三体もいる。過信するな!」ゾフォスは三人に言った。
「分かった!」
「分かったわ!」
「承知したでやんす」
「プーパ! 前には出るな! 援護だけしてくれ!」ゾフォスはプーパに指示を出した。
「わかったでやんすー」
ドラゴンを退治して、料理したグーファスが近づいてきた。
「そろそろ、仲間がやって来るじゃろ。お前ら、これを食べろ!」料理が終わったドラゴンを差し出された。
「まっずい」
「ぐえ~、なんだこれ~」
「美味しくないわ~」
「苦いでやんす~」
そして一人ひとりに肉切れを渡した。
「ここには、回復役がいない。万が一の時はこれを喰え」
それぞれに肉切れを受け取った。そしてそこに、三体のドラゴンが突進してきた。
「ぐっぎゃー!」
「ぐぅわおー!」
「ぎゃーーーっす!」
「束の間の休憩の終わりじゃ」グーファスがスプーン・フォーク・ナイフを構えた。
「アイツらは、翼があるのに飛べないらしい」ゾフォスは術を唱えた。
「三体同時は厄介だ。時間を稼ごう。禁断の秘術・掘削( エクスカバシオン)!」突進してくるドラゴンたちの目の前に穴を掘った。二体が穴に吸い込まれた。
「あの一体は、ワシに任せろ!」グーファスは戦闘態勢に入った。
「二体は飛ばした! グーファスを援護しろ!」ゾフォスは叫んだ。
すると、一体だけ突進してきたドラゴンの背後の空中に穴が開いて、そこから落ちてきた。
「ぎゃーーーっす!」
「! 何だよ! 奈落の底って、ここ(メガラニカ大陸)のことかよ!」
「一体減っただけでやんす!」
「気迫連撃!」ドプレクスは、突っ込んで来るドラゴンの両方の首に1ダースほどの打撃を叩きこんだ。
「転倒の舞い」プーパはワッペンをドラゴンの目の前に落した。ドラゴンは足を滑らせてすっころんだ。
「虹霧(二エラ・アルコイリス)!」クロマは、虹の光を剣先から出し、転倒しているドラゴンの視界を奪った。
「レベルアップして、便利なものを覚えたわ! グーファスの援護もしましょう」グーファスのドラゴンに近寄って、ドラゴンの視界を奪った。
「虹霧(二エラ・アルコイリス)!」ドラゴンは視界を奪われた。
「ぐぎゃー!」ドラゴンは敵を見失い、動揺した。
「ありがとう! 戦いやすくなったわ!」グーファスがお礼を言った。クロマはゾフォスたちのもとに戻った。
「吸収!」ゾフォスが転倒しているドラゴンのレベルを奪おうとしたが出来なかった。
「ちっ! このドラゴンから奪えるレベルは天井だ!」ゾフォスが叫んだ。
「風障壁!」ゾフォスはその場で全員に術をかけた。
「火炎からある程度は耐えられる! 直撃だけ気をつけろ!」ゾフォスは叫んだ。
「少し楽になったわ!」
「おう!」
「分かったわ!」
「承知したでやんす!」
視界を奪われ焼けくそになったドラゴンは、グーファスに火炎を吐いたが、失敗に終わった。
「さっきよりも楽じゃ! 斬頭斬(スバイ―)!」グーファスがドラゴンに止めを刺した。
「自動料理」そして料理を作った。
ドプレクス、クロマ、ゾフォスの連続攻撃でドラゴンを撃退した。
「やったでやんす!」苦労の末に二体のドラゴンを退治した。グーファスが料理を持ってきた。
「すぐにもう一体来るかもしれん。とっとと食ってしまえ!」ドラゴンの肉を全員に渡した。
「味がしないな」ゾフォスはレベルアップを確信した。
「俺もだ。弱いドラゴンだったのかな」
「私も、味が薄く感じるわ」
「苦いだけでやんす」
食事が終わった頃、あたりの空気が一気に重くなった。目の前に現れるまで、誰も気づかなかった。20mほどもある巨大な龍が飛びながら現れた。口には、先ほど飛ばした龍を咥えていた。
「ばりっ!」口に加えていた龍の首を噛み切った。
「ぼとっ!」咥えていた龍の身体が地面に落ちた。
「ばぁり、ぼぉり、ごくっ!」咥えていたドラゴンを一口で呑み込んだ。
「ちっ! 来てしまったか・・・」グーファスが震えながら舌打ちをした。
「こいつか? グーファスが倒したいのは?」ゾフォスが聞いた。
「あぁ、・・・」グーファスは冷汗をかいた。
「でかい・・・」ドプレクスは肝を冷やした。
「こんなのに、勝てるの?」クロマは背筋が凍った。
「アッシには無理でやんす~」プーパは逃げる準備をした。
「やはり、グーファスか・・・」ホバリングしながら、ドラゴンが話しかけてきた。
「来たな! 絶望龍!」グーファスがナイフ・フォークを構えた。
『グーファスよ、コソコソ逃げ回っていたが、ここにいたか・・・』ディジスポアが話しかけてきた。
「逃げるも作戦のひとつなのでな・・・」
『一体ずつおびき寄せて倒す・・・。そしてまた逃げる・・・。いつまでそんなことを繰り返すつもりだ・・・?』
「何百年でも続けるさ・・・。お前を倒すまではな!」
『周りのそいつらは、雑魚だな・・・』ディジスポアは、大きく息を吸い込むと全身に力を漲らせた。
「ばりぃ! ばり! ばりぃ!」空気が引き裂かれる音がした。
「ゴロゴロ・・・。ドッシャーン!」雷鳴が轟き、幾つかが地面に落ちた。
「ゴオォォォ・・・」風が強く吹いてきた。
「ざあぁぁぁーっ!」雨が降って来た。
『ぐっぎゃー!』雄たけびをあげると、全員を睨みつけた。
『雑魚どもよ・・・。死ぬ準備はいいか・・・?』
「逃げられん! 戦うまでだ!」グーファスはスプーン・フォークを構えた。
「なるほど・・・。風の障壁や雷撃の攻撃は効きそうにもないな・・・。絶望龍とは、良く言ったものだ・・・」




