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【2000PV達成】『レムリア戦記』「失われた6つの大陸」  作者: ヒルキ 将
第四章『メガラニカ大陸編』

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第2話『契約の発動』

悪虫退治から俺たちの修行は始まった。

「一番弱い奴じゃ。それぞれに工夫して退治してみろ!」グーファスが叫ぶと同時に、ダンゴムシのような悪虫(コクシネーラ)が200匹ほど襲ってきた。

「えいっ! こんのやろ~! キリがねえや!」ドプレクスは一匹一匹を踏み潰した。

「よいしょ! こらしょ!」プーパは、背中の巨大ワッペンを外してまとめて叩き潰した。

(なぎ)の舞い!」クロマは、腰を落として地面から高さ3㎝の高さで剣を一閃した。

「ざっしゅっ!」昆虫は一閃で30匹ほど退治出来た。しかし、多勢に無勢だった。数が多すぎたので三人とも膝まで昆虫に覆われた。

「いった~い! この虫嚙みついて来るわ!」クロマが叫んだ。

「爪で肉を引き裂かれるようだ! 危険だ!」ドプレクスが動揺した。

「よじ登ってくる速度が異常でやんす!」プーパも喚き散らした。

「マズイ! 全身を覆われる!」見かねたゾフォスが呪文を唱えた。

静電気(スターティカ)!」微弱な電流だったが、広範囲に術を放った。昆虫相手には有効であるらしく一層できた。

「ありがてぇ!」ドプレクスが言った。

「目標が小さいから、斬りにくいわね」クロマの武器は剣なので攻撃範囲が狭かった。

「アッシは、武器がワッペンしかないでやんす!」プーパは悔しがった。

「お前はまだ、レベル1桁だろう。ワッペンで敵を自由にコントロール出来るレベルじゃないのだ」ゾフォスが言った。

「(あれ? 喘息が治っている?)」クロマは、ゾフォスが咳をしていないことに気付いた。

「さぁさぁ、倒した敵は漏れなく料理するのだ」グーファスは、敵をスプーンで掬うと、手際よく油で揚げて料理を始めた。

「さぁ、出来た。食え!」

「まっずい!」

「美味しくないわ」

「食いたくないでやんす」

「食べなきゃ仕様がないだろう! あー。まっずい!」ドプレクスは鷲づかみで食べた。

「さぁさぁ、お前たちは寝ろ寝ろ。お前たちが起きるまで、リーダーとワシで見張りをしよう」

「ん? 今日の修行はこれで終わりか?」ドプレクスは物足りなそうに、グーファスに急かされて束の間の休息に入った。プーパもついて行った。クロマはじっとゾフォスを見たが、眠りに向かった。


「ぐー、ぐー」ドプレクスは大きな(いびき)をかきながら寝ていた。

「・・・くー、・・・くー・・・」クロマは、プーパが寝たふりをしていることに気付いていた。

「・・・(寝たら襲われる・・・)」クロマも眠りにつこうとしたが、プーパの気配を感じたので眠りにつけなかった。不安で眠れないでいると誰かに話しかけられた。

『(可哀想に、こんなところに落されて・・・。アナタは本来、ここにいるべき人間じゃないわね・・・)』小さな壺を抱えた女神が現れて、心の中に話しかけてきた。その姿は、クロマにしか見えないらしかった。

「(誰?)」

『(お忘れかしら? イリスの方が目立つから、私のことは忘れていても仕方ないわ)』

「(レテさんですか?)」

『(その通りです。オリンポス山の神殿以来ですね)』

「(ご無沙汰しております)」

『(まぁまぁ、堅苦しい挨拶は抜きにして、あなたを助けてあげましょう)』

「(私を助けて下さるのですか?)」

『(任せてください・・・。忘却(オルビド))』グーファス、ゾフォス、ドプレクス、プーパを柔らかな目に見えない光が包みこんだ。

『(これでもう大丈夫よ。アナタのまわりの人たちから、アナタが女性だという記憶を消しておきました。この大陸を抜けるまで有効です。しばらく襲われることはないから安心して寝てください。今はこれしか出来ませんの。許してください)』

「(いいえ、そんなことはありません。ありがとうございます!)」

『(アナタには、していただかなければいけないことがありますの)』

「(はい! 私で出来ることがあれば、お手伝いします!)」

『(ふふふ・・・。またどこかでお会いしましょう)』レテは、すうっと消えて行った。

「ぐー、ぐー・・・」プーパの鼾が聞こえてきた。クロマは安心して眠りについた。


グーファスとゾフォスは見張りをしていたが、悪虫や死獣が襲って来る気配は感じられなかった。

「倒したい敵と言うのは、どんな奴なんだ?」ゾフォスは、グーファスに聞いてみた。

「この大陸を仕切っているボスだ・・・。この大陸の生きものたちは、全て奴の意志で動かされている・・・」グーファスは落ち着いて答えた。

「強いのか?」

「べらぼうにな!」

「・・・」ゾフォスは、会話をやめた。


毎日、毎日、起きると悪虫退治の日が続いた。

「? 術の威力が上がっているな! 微弱電気(デビリス)!」その日のゾフォスは、まとまって襲ってきた200匹を一撃で仕留めることが出来た。

「! すっごーい! ゾフォスの術の威力が上がったね!」クロマが言った。

「お前、レベルアップしたのか?」ドプレクスが聞いてきた。

「いや、分からないが、いつもよりも術に手応えがあった」ゾフォスも不思議だった。

「兎に角、簡単に片付いたでやんす」プーパは未だに何も出来なかった。

そしてその日、ゾフォスは昆虫の味を不味くは感じなくなった。

「あれ? いつものクソ不味い味じゃなくなっている」ゾフォスが言った。

「ダンナぁ、本当でげすか? クソ不味いでげす」

「俺も、不味いままだ。やはりお前だけレベルが上がったのだろう」

「あたしも、美味しくないわ」

「術を使って積極的に悪虫(コクシネーラ)を退治し続けたからな。悪虫相手でのレベル上げの上限に達したのかも知れん」

「(ふぇっへっへ。まず、コイツか・・・。思ったよりも早かったわ・・・レベル30到達だ・・・)」グーファスは心の中で歓喜した。

「(状態(シーツアシオン)を使えれば、ハッキリするんだが・・・。リカルダスに剥奪されたから何も分からん・・・)」ゾフォスは歯痒かった。


その翌日から、体長2mほどの死獣(カニス)が現れるようになった。初日に出くわしたプーパを飲み込んだ奴より小さかった。6匹の死獣が群れをなして襲ってきたが、ドプレクスは先頭の一匹を正拳突きで倒した。ドプレクスを避けるように襲ってきた二匹目と三匹目はクロマが退治した。

「お? 雷撃矢(ライトニングアロー)!」ゾフォスは残りの三匹を仕留めた。

「懐かしいな。リカルダスに奪われた術だが、習得し直したよ」

「これで、戦い方が少し変わるわね」クロマが言った。

「戦闘の幅が広がったな」ドプレクスが言った。

「へへっ、ダンナ方の連携は見事でげす」プーパは未だに蚊帳の外だった。

「プーパは、戦力になるまで大人しくしていろ。レベル1に下げられたら面倒だ」ゾフォスはプーパを戦力としてあてにしていなかった。

死獣を倒す日が続いて、三日目か四日目のことだった。

「あら? 死獣は美味しくないけど、悪虫は味がしないわ」クロマが言った。

「俺もそうだ。悪虫の味がしなくなった」ドプレクスも味覚が変わっていた。

「これで三人が、レベル30を突破したのじゃ」グーファスが言った。

「確実に強くなっているんだな!」ゾフォスはやる気が出てきた。


いつ敵に襲われるか分からないので、プーパ以外が交代で寝ることにした。その日は、ドプレクスとグーファスが見張りで起きていた。プーパが眠りにつくと、夢の中で誰かに話しかけられた。

『(ふふふ・・・。アナタだけ蚊帳の外ですか・・・。お可哀想に・・・)』艶やかな服装の女神が目の前に現れた。

「(誰でげす?)」プーパは訊ねた。

『(『神々の試練』でアナタと契約した踊りの神『テルプシコラ』ですよ。お忘れですか?)』

「(あぁ、そんなことがあった気がするでげす)」

『(アナタは今、レベル12の状態です。悪虫ならばコントロールできるレベルですね・・・)』

「(まだ、そんなレベルでげすか?)」

『(初心に戻ってください。踊りとは、人を魅了したり、心を落ち着かせたり、仲間を鼓舞することも出来るものです。アナタは他人を利用しようとする考えが強すぎます。『舞い』とは、そんなものではありませんよ。アナタの可能性は、まだまだ広がりますわよ・・・。成長してごらんなさい・・・。ふふふ・・・)』何処からかとり出した鳥の羽で優しくプーパを撫でると消えてしまった。

「(? なんでげすか?・・・)」目を覚ましたプーパには、まだ頭の中がぼやけていた。


その朝、死獣が襲ってきた。体長5mもある初日に自分を飲み込んだ奴だった。

「! コイツは手ごわいな。レベルアップしたが、まるで効いていない!」ゾフォスが雷撃矢を浴びせながら言った。

「軟体甲殻拳!」ドプレクスも打撃を浴びせたが、歯が立たなかった。

旋風撃(トルベリーノ)!」クロマはレベルアップして使えるようになった斬撃を浴びせた。しかし、まるで効かなかった。

「手は貸さんぞ! お前らで切り抜けろ!」グーファスは後ろでニヤニヤしながら見ていた。

「・・・」ドプレクスは、死獣の前足の攻撃を受け続けながら隙を伺っていた。

「アッシの出番でげすか?」とことこプーパがしゃしゃり出てきた。

「下がってろ! 喰われるぞ!」ゾフォスが怒鳴った。

「さあ、さあ! こっちでげす!」プーパは背中の巨大ワッペンを取ると、大きく両手を広げ死獣の注意を引いた。

「ぐるる・・・」死獣がプーパに躍りかかる寸前だった。腰を中心にして体を時計まわりに回転させるドサクサで、ワッペンを死獣の前に落とした。

「ぽてっ」

「どさっ」死獣がひっくり返った。

「今だ! 集中攻撃だ!」ゾフォスの一声でドプレクスとクロマが一斉攻撃を浴びせた。

「軟体甲殻拳! 特盛!」ドプレクスが会心の一撃を放った。

雷撃槍(ランザ)!」ゾフォスが特大の雷撃槍を突き刺した。

「旋風撃!」クロマもたて続けに斬撃を浴びせた。

「どっずーん!」死獣が泡を吹いて痙攣した。

「勝ったー!」ゾフォスたちは歓喜した。


その夜、焚き火を囲んで、みんなで死獣の肉を喰らった。

「! ついに味がしなくなったぞ!」ゾフォスが歓喜した。

「俺もだ。不味くはないが、不味さが薄まった感じだ」ドプレクスが言った。

「私もそうね。以前ほど美味しくないとは思わなくなったわ」クロマが言った。

「アッシはまだ、不味いでやんす」プーパが言った。

「焦るなよ!」ゾフォスが言った。

「今日は、頑張ったわよ!」クロマが労った。

「今日の殊勲者はプーパだ!」ドプレクスが言った。

「恥ずかしいでやんす」プーパは照れた。

「(ふふふ・・・。予定よりも少し早いが、いいだろう・・・)」グーファスはニヤケたままだった。

だった。

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