第一話『アーヴィンの再襲撃』
リカルダスたちの上陸をアーヴィンたちは待ち構えていた。
「久しぶりじゃないか~。再起不能から立ち直ったのか?」アーヴィンが嫌味交じりで聞いてきた。
「お陰様で、2年も寝ていたよ」リカルダスは答えた。
「安心しな。今度は5年寝かせてやるよ」犬歯を剥き出しにしながら剣を構えた。
「状態」リカルダスはアーヴィンの能力を探ってみた。
「(ほぅ、レベル61か。窃盗師・狂戦士・武闘家・・・。職業が増えているな)」
「どうした? 俺のレベルアップを見て驚いたか?」アーヴィンが冷やかした。
「状態」アーヴィンがリカルダスの能力を探った。
「何でぇ、剥奪師ってのは? それにお前はまだ、レベル34なのか? 弱いな~」
「上がった分を認知出来ないのか? お前はレベルを奪うだけなのか? 窃盗師は、自分や他の者のレベルを上げることが出来るのだ」
「必要ないね~、そんな能力は。自分だけが強ければ何の問題もないのだ」
「なるほど、窃盗師としても中途半端なままだったか・・・。今、理解した。師匠がお前には教えていなかったのだ」
「ほざけー! 野郎ども、かかれー!」
「おう!」リカルダスに、カバロが飛び掛かって来た。
「わが忠実なる下僕に命ずる。我とともに戦いて、敵を成敗せよ! 召喚!」石製人造人間(lv.34+15)を召喚して、カバロにぶつけた。
「ぐわぁおー!」大猿がエルピーダに突進してきた。
「地震!」大猿の足元を揺らし態勢を崩したところに岩をぶつけた。
「岩! 岩! 岩!」大猿は、岩をぶつけられてすっころんだ。
「召喚! ラクシャス! アスタルを援護してくれ!」
「おう!」ラクシャスが、アスタルの目の前に立ちはだかった。
「つよいねー。われそこそこ苦戦する。全力出すか? ここで? 冗談やめろ。死にはしないが諦める。たぶんてったい。きまり」指をパチンとならした。
「びゅっわっ!」ぶつくさ男の背後から、何かが飛んできて悉くラクシャスに突き刺さった。
「! ぐっざっ!」オリハルコンで出来ているラクシャスに金属製の棘が20本ほど突き刺さった。
「なぁんでえ? これは! 鋭いだけじゃねぇか!」ラクシャスには効かなかった。
「生身で受けていたら致命傷だ! こんどはこちらの番だ! 斬撃の鞭」アスタルの放った斬撃が鞭のようにしなりぶつくさ男を斬りつけた。ぶつくさ男はローブで顔を覆い凌いだ。
アーヴィンがリカルダスに大剣で斬りかかった。
「ガッシュッ!」リカルダスは杖で受け止めた。
「ガッ! ガッ! ガッ!」リカルダスは、アーヴィンの攻撃を悉く受け流した。リカルダスがアーヴィンの体を触ろうと手を伸ばすと、ひょいとバックステップで逃げた。
「窃盗師に体を触らせるほど、間抜けじゃねえよ!」
『まぁ、また戦いなの?』エルデムが現れて、後方支援していたアマールに話しかけた。
『そうなんですの』後方支援で待機していたアマールが言った。
『エルピーダ君と、石のゴーレムは大丈夫そうね。アスタルさんは?』
『相手が立ち止まったままです』
『何か考えているのかしら?』
『さぁ、どうしたのかしら?』
『リカルダスさんと、兄弟子の戦い次第ですね』
『そうみたいです』
『2年前と違うから、手助けは必要ないみたいですね』
『そうなんですか?』
「こちらふり、じかんをかせげ。撤退だ。カバロ弱い。大猿弱点ばれる。アーヴィン勝ち目ない」ぶつくさ、ぶつくさ、独り言を続けた。
「石の雨!」小石をラクシャスとアスタルの頭上に巻き上げ、落ちてくる直前に巨大化させた。
「ドッガ、ドッガ、ドッガ!」ラクシャスはひとつずつ破壊した。
「痛くねえけどよ、めんどくせえよ!」アスタルはぶつくさ男の右側に回り、斬撃の鞭を浴びせた。
「にたいはめんどー。いったいだけなら勝ち。劣勢。やがて負け。時間を稼げ。アーヴィンの納得待ち」
「石の雨!」再び小石をラクシャスとアスタルの頭上に巻き上げ、霧に変え姿を隠した。
『あれ? 消えちゃったの?』
『あそこにいますわよ』
『アスタルさんと、ラクシャスさんには見えていないのかしら?』
『ラクシャスさんは、気付いているみたいですね』
「そこだー!」ラクシャスの正拳付きの勢いで霧が裂け、ぶつくさ男の姿が見えた。
「ばれた。にげれない。かくれんぼ失敗。石男じゃま。斬撃ウザイ」
「石の雨!」再び小石をラクシャスとアスタルの頭上に巻き上げ、落ちてくる直前に5体の熊に変えた。
「また変身か! 本体を打たなければ、これの繰り返しだ!」アスタルは苛ついた。
「本体は攻撃してこねえな、どういうつもりだ?」ラクシャスがアスタルに言った。
「時間稼ぎじゃないか?」
「何故だ?」
「分からん!」二人で熊を撃退した。
レベルが下がっていたカバロは、ストーンゴーレムに嬲られていた。
『撃退! 任務完了! LOST !』カバロは失神したところを、ぶつくさ男に回収された。
「てっしゅう完了。これゴミね。ゴミじゃないよ仲間だよ。仲間じゃないよ、こんなもの。ただのよわすこだよ。よわすこってなに。負け犬ごみかす。むだめしくらい。てっぽうだま。くちかずおおいね。ストレスだよ」
「ぐわごー!」大猿が、巨大な拳で殴りつけてきた。
「どっが、どっが、どっがっ!」勢い余って、地面に穴をあけた。
「(確かに破壊力が凄いけど、動きが遅いなー。まるで単調な攻撃だ。どこかで見たなー)」エルピーダは大猿の攻撃を躱しながら思い出してみた。
「! マイムー!」
「!」大猿がエルピーダの声に反応した。
【召喚獣:マイムー(maimou)】毛が白い手長猿のような見た目だが、胴と足が短く機敏で筋肉が強い。戦いを好まず逃げることに特化している。相手の攻撃を避けるのがうまいので、滅多に有効打にならない。格闘や追いかけっこの練習に最適な召喚獣。
「アーヴィンとの2年間で、こんなに姿が変わってしまったのか?」マイムーは、攻撃の手を止めた。
「うがが、おごご・・・」何かを訴えかけた。
「マイムー! 攻撃を休むな!」アーヴィンの怒鳴り声がした。するとまた、エルピーダへの攻撃を再開した。
「(マイムーが相手じゃ、殺せないなー)」エルピーダは、マイムーを倒す決断ができなかった。
「ぶつくさ男は時間稼ぎ、カバロは倒された。大猿の攻撃は破壊力があるが遅いな。アーヴィン、劣勢だぞ!」リカルダスはアーヴィンを挑発した。
「ほざけー!」大剣を振り回し、攻撃を続けた。
「幻惑!」リカルダスがアーヴィンに術を放った。
「心眼!」アーヴィンは目をつぶって、術を跳ね返した。そしてまた大剣を振り回した。
「剣に頼り過ぎだ!」リカルダスは杖を放り投げて、格闘するように身構えた。
「体術で決着をつけようってのか? 2年前を忘れたのか?」
「それこそが、窃盗師の戦い方だ! 忘れたわけではあるまい」リカルダスは挑発した。
「その手には乗らん!」アーヴィンは大剣を大きく振りかぶった。
「剣がなくなったら、どうする? 錆の昆虫!」アーヴィンの剣に昆虫を放った。昆虫は見る見るアーヴィンの剣を錆びさせ、腐食させた。
「! なんだこれは!」アーヴィンは、使い物にならなくなった剣を放り投げた。
「よかろう、素手で決着をつけてやる」両者が突進して、がっぷり四つで組み合わせた。
「吸収!」先にレベルを吸収したのはアーヴィンだった。
『LOST!』(Lv.49:消失判定当選!)アーヴィンは、リカルダスのレベルを5吸い取った。リカルダスは、本来のLv34に戻った。
「もとより一回吸収されるのは、覚悟の上だ! 吸収!」今度はリカルダスがアーヴィンのレベルを吸い取った。
「ガクン!」アーヴィンのレベルを一気に30吸い取った。アーヴィンはレベルが31まで下がった。
「! 何だこれは!」かつてない感覚にアーヴィンは膝が震え尻餅をついた。味わったことのない恐怖にへたりながら後ずさった。
「これが剝奪師だ! お前のレベルは一晩寝たくらいじゃ元に戻らない! 修行をやり直せ!」アーヴィンを怒鳴りつけた。
後ろからエルピーダが駆け寄り、アーヴィンに触った。
「吸収!」アーヴィンのレベルを5吸い取った。
「ひぎぃやぁー!」アーヴィンが悲鳴を上げた。
「私も2年前に世話になりました。限界突破させて頂きます」それを見ていたぶつくさ男が動き出した。
「しおどきだね。完敗だ。にげるべか。トンズラだ。術を出せ。まかせとけ」ぶつくさ男が印を結ぶと巨大なワシが現れた。リカルダスたちがワシに気を取られている最中に、ぶつくさ男がアーヴィンを回収した。
「マイムーくるのか。くるならこいよ。逃げるなら今だ。じゆうだよ。すきにしな。いけばいい。にげてもいいよ。きてもきぼうはないよ。じぶんできめろ」
マイムーは、エルピーダの顔を見て、無言で別れを告げた。
「(情が湧いちゃったのか・・・)」エルピーダは淋しかった。
ワシは注意を引くだけのものだった。気付いた時には、アーヴィンたちはいなかった。
「戦闘勝利です! おめでとうございます!」アスタルが叫んだ。
「勝ったぜ!」ラクシャスも叫んだ。
「復讐達成です!」エルピーダが言った。
「けが人はいないわね」アマールが言った。
「あのぶつくさ男が、あのパーティーの頭脳だな。アーヴィンは利用されているに過ぎない」リカルダスが分析した。
「私も、そう思います。全力を見せませんでした」アスタルが言った。
「まだまだ、何か隠してるぜぇ。全力を出す素振りが全くなかった。油断しねえこった」ラクシャスが言った。
波止場での戦闘の噂を聞きつけたクロマ将軍が現場へ駆けつけて、リカルダス達を出迎えた。
「ようこそ、ローフル代表の者たちよ。しかし何故、戦闘をしておるのだ?」
「ちょっくら、兄弟子に絡まれてしまいましてね~」リカルダスは軽く答えた。
「内輪もめか・・・」クロマ将軍は呟いただけだった。そしてローフル代表者たちを王城の客室に案内し、自身は歓迎会の準備を再開しに向かった。リカルダス一行は、それぞれに休息をとった。




