第十四話『地下迷宮探検競技(カオティック編③第二関門・敵は誰だ?)』
「俺の分は終わったからね」と言って、ドプレクスは休憩しに行ってしまった。
プーパは、ヴィズの戦いの様子を見てみた。二足歩行の龍魔人は、貴族にも見える立派な赤いマントを身に着け、諸刃の剣を持っていた。何十年も着たであろうボロボロの衣装が、龍魔人の斬撃により更にボロボロに切り裂かれた。
「いくらでもおぉぉ、斬り裂けぇぇぇえ、いたくなどおぉぉお! ないわあぁぁあぁ・・・」
「ざっしゅ、ばっしゅ、すぱすぱ、すっぱり!」龍魔人は、ヴィズの右腕を斬り落とした。
「ぼとっ」すると龍魔人の右腕も斬り落とされた。
「ぐぎゃあぁーーー!」龍魔人は痛さで喚き散らした。
「いってえぇえぇぇえー。痛くねぇけどおおぉ、いちおううぅう、いっとくわあぁぁあ! それがれいぎだぁぁあぁ」斬り落とされた右腕を拾わず、龍魔人の右腕を装着した。
「トカゲからあぁぁ、りゅうにいいいぃ、格上げだあぁぁあ!」何とも不気味な戦いだった。
「(何だ、コイツの戦い方は、まるっきり攻撃しないじゃないか・・・)」プーパは、呆れかえった。ヤケクソになった龍魔人は、リザードナイトと同じ攻撃をしてしまった。ヴィズの首を叩き斬ってしまった。
「ぼとっ」ヴィズの首が落ちると同時に龍魔人の首も落ちた。
「! 何が起こった!」プーパは、意味が分からなかった。ヴィズは、自分の首を拾わずに龍魔人の首を装着した。
「またしてもおぉぉお! 龍の首にいいぃ、格上げだぁぁぁあ!」ついでに龍魔人のマントと剣も頂いた。
「戦利品だあぁぁあ! 頂くよおおぉ!」
「(コイツは、使いようでどうにでもなる・・・、ふっふっふ)」プーパは、ほくそ笑んだ。
「(アイツらは、何をしているんだ?)ゲホゲホ」ゾフォスは、プーパとヴィズを見ていた。リッチが攻撃魔法の波状攻撃をして来たので、究極魔法防御で結界をはって身を守っていた。
「(何の考えもなく、ひたすらに生命を奪う魔法をかけてくる・・・。死体だから仕方ないか・・・)」リッチの本能に同情した。
「(ドプレクスの一撃には、何か意味があるに違いない。一撃で三体を葬ったわけではない。攻撃を当てさえすれば、自分が受けたダメージを増幅して相手に返す仕組みかも知れない・・・)」冷静に観察して分析をしていた。
「斬撃雷撃!」
「火炎衝撃!」
「岩石打撃!」
「氷結天国!」MPを無駄に減らしながらも、リッチは攻撃魔法を唱え続けた。
「(防御魔法をかけているのを見破れないのかなぁ・・・)」ゾフォスはただ、リッチのMPが減り続けるのを待っていた。プーパは、防戦一方のゾフォスの身を案じていた。
「(敵の魔法を受け続けているだけでやんす・・・。反撃できないんでやんすか?)」プーパに見られていることを意識したゾフォスは、反撃に転じるタイミングを見ていた。
「(プーパは、何一つしていない。他の者たちの行動を観察しているだけだ・・・。アイツの能力は何なのだろうか・・・?)げっほ」ついにリッチのMPが切れて、殴りかかって来た。ゾフォスは、リッチの攻撃を杖で受け止めた。
「吸収!」リッチのレベルを吸い取った。
「(レベル52か・・・。結構持ってるね。26頂いたよ)」ガクンとリッチの膝が折れた。
「(殴りかかった拳を杖で受け止めただけなのに、骸骨の司祭がダメージを受けた?)」プーパは、状況を理解できなかった。
「火の矢!」レベルを一気に下げられたリッチは、最も基本的な火の魔法で倒された。リッチの身体を漁ったが、目ぼしい魔法は持っていなかった。
「(どの魔法も今一つレベルが低いな。非生命体だから、命もないし・・・)げほ」ゾフォスは戦い損であると感じていた。
「(なぁんだ、初級者用の火の矢の魔法じゃねぇか。骸骨の司祭は弱かったんだ・・・)」とプーパは勘違いした。そそくさと、ゾフォスに駆け寄り誉めたてた。
「みなさん、お強うございやす。アッシたちの完勝でやんす!」次の関門に向けてゾフォスが歩き出すと、ドプレクスもヴィズもついて行った。プーパも小走りでついて行った。
「お前だけ、何もしていないな」ドプレクスがプーパに言った。プーパは焦りながら弁解した。
「アッシは、弱いでやんす。戦いは、ダンナさんたちに任せるでやんす」もみ手をしながら、媚びへつらった。
「それは、嘘だね。げほっ。俺が昨夜、対戦相手のうちの一組を襲撃した際、お前は、もう一チームを襲撃していた。弱いはずがない。げほ」ゾフォスが言った。
「なにい! そんなことがあったから、対戦相手が出場しなかったのか!」ドプレクスが驚いた。
「すげえぇぇえ! たのもしいぃぃいなかまだあぁあ」ヴィズも驚いた。
「へぇへぇ・・・、偶然でやんす・・・」プーパはしらばっくれた。
「お前が何かを隠しているなら、こちらも手の内を隠すまでだ」ゾフォスが言った。
「そんなぁ、ダンナは人を疑い過ぎでやんす・・・」
「俺たちは、自己中心的なカオティックチームだ。最初から、他人を信用している奴はこの中にはいない。ゲホゲホ」とゾフォスが言い放った。しかし、ヴィズがニュートラルであることを見抜いていた。
「・・・」ドプレクスが黙り込んだ。
「・・・」ヴィズも何も言わなかった。
「ダンナぁ・・・」プーパはすがるような声を出した。
「次の戦いは、プーパの番だ」ドプレクスが提案した。
「そうぅ、しろおぉお」ヴィズも同意した。
「・・・それならば、いい。何も出来ない振りは通用しないよ」ゾフォスも同意した。
「アッシでも、構いませんよ。しかし、相手次第でさぁ・・・」プーパは自分が戦うことに消極的だった。
「死んでも、構わないよ。ゴールまで生き残っていたものが勝ちだ。弱い奴はいらない。ゲホ」ゾフォスが言った。
「それは、そうよ。俺らは根っからの仲間じゃない」ドプレクスが言った。
「そくせきにいいい、つくられたああぁぁ、チームだぁぁぁあ」
ふと、ゾフォスが足を止めた。
「第二関門が始まる前に、それぞれに確認しておこう」三人は足を止めて、ゾフォスの話を聞いた。
「三つの関門を突破すれば、アテネへの招待券が手に入る。俺は興味がないが、レムリア大陸・アトランティス大陸・ムー大陸の三つの大陸探しが始まるという。プーパはそこに行きたいらしい。ドプレクスも、ヴィズもそこに行きたいのか?」
「おれは、大陸探しに参加するつもりだ」ドプレクスが言った。
「おれもおぉぉお、さんかするううぅ」ヴィズが言った。
「アッシも、大陸探しに参加するでやんす」
「そうか・・・。俺は、大陸探しなどに興味はない。王都アテネへ行くまでは同行するが、パーティーを組むのはそれまでだ」三人の意思を聞いて、ゾフォスが言った。
「王都アテネで、何をする気だ?」ゾフォスの言葉に、ドプレクスが質問した。
「そこにやってくるであろう、二人の兄弟子を殺すのさ・・・」ゾフォスが冷たく笑いながら言った。狂気に満ちた微笑みだった。
「(マズイ! コイツは正気じゃない!)」ドプレクスは、ゾフォスと距離を取ることを決めた。
「・・・」ヴィズは無言だった。
「あっしは(王都アテネに行ければ)構わないでやんす・・・」四人の目的は、王都アテネ行きだけで繋がっていた。
入り口から300mほどの地点だった。半径30mほどの無駄に広い空間だった。二体の鎧を着た騎士が待ち構えていた。
「さぁ、プーパ。キミの出番だ」ドプレクスに促された。
「敵が二体もいるでやんす・・・」プーパは尻込みをした。
「敵の四人のパーティーを倒したキミだ。問題なかろう」ゾフォスが言った。
「・・・(見られちまったからなぁ・・・)」反論もせずに、プーパは仕方なく戦いの準備をした。
「(操り人形ぐらい、見られてもいいか・・・)」プーパは観念した。
プーパは、徐に水晶玉を取り出すと、両手で弄び始めた。水晶玉に注意を寄せて、左手で右腕の二の腕の星型のワッペンを取り、右手で左腕の二の腕のワッペンをさりげなく取った。
「(あ!)」ゾフォスは見逃さなかった。
「(水晶玉に意識を集中させたのは、ワッペンを取ったのを悟られない為か?)」ゾフォスは、ワッペンが一つずつ無くなっていることに気付いた。プーパは水晶玉を鎧の騎士に向かって放り投げたが、騎士の手前で地面に落ちて割れてしまった。
「ぱりん!」割れた欠片の中に、ワッペンが二枚下敷きになって隠れていた。
「さぁ、踊れ!」プーパは、両手の甲を宙に向け、ピアノでも弾くように指を動かし始めた。
「!」鎧の騎士の同士討ちが始まった。
「なんだ? なんだ? 同士討ちが始まったぞ!」ドプレクスが不思議がった。
「てきをおぉぉ、まちがえているぞおぉぉ」
「(ワッペンが地面に落ちた途端に術が発動するのか・・・)」ゾフォスが推理した。
「ばっきっ!」
「ドッガっ!」
「がきーん!」
「どっずっ!」数十分も戦い続け、見る見る動きが鈍くなっていった。
「えーい、まどろっこしい! 雷!」見かねたゾフォスがとどめを刺した。
「なるほどね。戦わずに勝つのか」ドプレクスが感心した。
「ツイてやした」
「自分の手は汚さずに済むが、決定打に欠けるな」プーパは、ドキリとした。
「そこが、アッシの弱点なのでげす・・・」プーパは、取り繕った。
そして再び歩き始め、第三関門に向かった。
「ゾクリ!」ゾフォスに悪寒が走った。
「(マズイ! 最後の関門には、想像も出来ない強敵がいる・・・。コイツらを信用してよいものか・・・)ゲホ」仕方なく行動に移した。
「命!」プーパに仕方なく、魔法をかけた。
「ん? ダンナ、なんでやんす?」
「まぁ、おまじないだな。気にするな」ドプレクスにも魔法をかけた。
「命!」
「これには、何か意味があるのか?」
「気休めだよ」
「ふ~ん」
「命!」しかし、ヴィズには魔法がかからなかった。
「ん? おかしいな。キミは非生命体か?」
「じしんはぁあ、ないがぁあ、いきてはいるうぅぅぅ」
「(生きてんのか、死んでんのか、分からないな。まぁ、いいか・・・)」気にしないことにした。
「ラスボスは、一筋縄ではいかん。気を引き締めた方がいいよ」
「おう!」
「了解でやんす」
「わかったあぁぁあぁ!」
「上昇! Lv+15」ゾフォスのレベルが62に上がった。
「命!」ゾフォスが自分の命に保険をかけた。




