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第十一話『地下迷宮探検競技(ニュートラル編④イヌ騎士対三つ目巨人)』

第三関門は出口付近だった。直径10mほどの半円形の空間だった。半径5mほど、高さ50㎝ほどの石畳が円形に敷き詰められていた。

「屋外戦が続いたから、拍子抜けで御座る。まるでロープのない、石畳のリングで御座る」

「何が出てくるのかな」ベスタが言った。

「何でも構いませんよ」ベレーザが言った。

「どうせ、戦わないんでしょ?」ベスタが言った。

「トロさんの出番を邪魔しちゃ悪いじゃないですか」

「別にアンタでもいいんだけど」ベスタが言った。

「グロロ、ガロロ・・・」トロはどちらでも良い様子だった。


奥から出てきたのは、身長3mほどの青い鎧を着た巨人だった。鎧にはアラビア文字と、楔形文字で呪文が刻まれていた。直径2mほどの縦に細長い盾と諸刃の剣を装備していた。兜には、三本の細長い筋が横に入っておりそれぞれの筋から目玉がギョロリと睨みをきかせていた。

「身長が敵の半分ほどしかないで御座るな? 大丈夫で御座るか?」

「グロロ・・・」犬騎士(トロ)は、ゆっくりとリングに上がった。トロは身長1.5mで、直径50㎝ほどの小型の盾と刃渡り50㎝ほどの小剣を装備していた。

「体格差は歴然で御座るな。いつでも援護できるように準備しておくで御座る」

「それがいーね」ベスタが言った。

戦いは三つ目巨人の一撃から始まった。三つ目巨人は、剣を振りかざしトロを叩き斬った。

「斬り捨て(コンララ)!」トロは、剣と盾で受け止めたが、剣も盾は真っ二つに切り裂かれた。

「バッギっ! ボッギッ!」トロは叩きのめされた勢いで、地面にぶっ飛ばされた。

「ズッジャッ!」トロはヨロヨロと起き上がり、態勢を立て直した。

「グルル、グロロ・・・ぐわあおぉー!」トロは自らの鎧を筋肉で破壊した。そのまま巨大化し、体長が4mほどに大きくなった。

「! 何で御座るか? トロ殿が巨大化したで御座る!」

「まけずぎらいだねー」

「殴られたままではダメです! やり返しなさい!」

今の体格では勝てないと悟り巨大化したトロは三つ目巨人に一撃を返した。

「ぐわあおぉー!」吠えながら、顔面に拳を叩きつけた。

「べっごっ」金属がひしゃげる音がしたが、三つ目巨人はよろめきもしなかった。

「なぐったの・・・。きかないよ・・・」三つ目巨人は剣を振りかざし、トロの胸元を斬りつけた。

「ざっしゅっ!」トロはぶっ飛ばされ、胸から血が滴った。

「どざーっ!」トロはヨロヨロと起き上がり、態勢を立て直した。

「グロロ・・・、? グルル、グロロ・・・」トロは両手を広げると手のひらに魔力を集中させた。

「はあぁぁーーーっ! 地の底で燃え(たぎ)る、地獄の業火よ! すべての物を焼き尽くせ!」トロの掌に、青白い炎が現れた。

「? 何で御座るか? トロ殿が喋っているで御座る!」

「しゃべっちゃうの?」

「? トロさんは、魔法を使えるのですか?」

「その安っぽい鎧を焼き尽くしたるわー!」トロは両手の炎を三つ目巨人に向かって投げつけた。

「ぼっしゅーん! ごわー! メラメラ・・・」三つ目巨人の鎧が溶け、肉の焼ける臭いが立ち込めた。

「グワーッ!」三つ目巨人の兜が割れて、上半身の鎧が半壊した。割れた兜から、縦に目が三つ並んだ顔が姿を見せた。

「ギョロリ、ぎょろり、ぎょろ~」それぞれに目が動き、辺りを見回した。そして、敵を認識した。

「やいたの・・・。きかないよ・・・」鎧を破壊された三つ目巨人は、一回り大きいトロに向かって呪文を放った。

「雷の斬撃(サンダーブレード)!」二桁に及ぶ、雷の斬撃がトロを襲った。

「ガッシャーん、ざっしゅ、ばっしゅ、しゅぱ~、ごごごご・・・」斬撃は、雷の速度で放たれ悉くトロを襲い掛かりトロの額を、腕を、体中をパックリと切り裂いた。

「グワーッおー!」

「マズイで御座る! 全て喰らったで御座る!」

「ちめいしょうだねー」

「middle cure で間に合うかな? 10%だけ回復してあげましょう。MPが減ってしまいますが・・・」

「ぱりぱり、ぷしゅ、ぷしゅ」トロの身体から湯気が上がり、毛が焼かれる嫌な臭いが立ち込めた。

「どくんっ!」トロの筋肉が収縮し膨張し、体つきが縮んだかと思えば巨大化するのと同時に、イヌの毛皮が縦に二つに破られた。その毛皮を脱ぐように上半身だけ裸になった。尻尾が現れ、背中に鳥の翼が現れた。腰まで伸びた水色の髪の毛の中に、ギラギラ光るエネルギーに満ちた青い瞳があった。

「小賢しい! 斬撃耐性も、雷耐性も手に入れたわ! お前の弱点は火炎耐性だ! これでどうだ!」トロは、両手の指で印を結んだ。人差し指と中指だけ伸ばし、二本の指でお互いを逆の手首にあてた。

四元素魔法(エレメンツ)火蜥蜴(サラマンダー)! 絶望の火炎!」火炎の中から、蜥蜴が現れ三つ目巨人を焼き尽くした。

「ごー! がっがっがっ、ごー!」三つ目巨人は、うめき声をあげた。トロは力をためて、正拳突きを放った。

「ドッズッ!」クソ重い一撃が、三つ目巨人の鳩尾(みぞおち)に突き刺さった。

「ちっ! ダメか」トロは吐き捨てた。二本の指で再び印を結んで、両手を三つ目巨人に向けた。

四元素魔法(エレメンツ)水妖精(ウンディーネ)! 虚空(こくう)の霧!」霧に包まれた三つ目巨人は、静かに姿を消した。


「勝ったで御座るか?」

「かったみたいだねー」

「MPは使わずに済みましたか?」

「あー、めんどくせー」トロは仲間のもとに近づきながら言った。

「てこずってたねー」ベスタが言った。

「こんなところで、全力なんか出せるかよ。お前もだろ?」トロが聞いた。

「ださないよー」ベスタが言った。

「なんと! 全力ではなかったで御座るか!」呀龍が驚いた。

「毛皮を脱いじゃったねー」ベスタが言った。

「しょーがねー。打撃だけだと、倒すのに1万撃かかる。耐性の弱い魔法なら一発よ」トロが答えた。

「トロ殿は、喋れるので御座るか?」

「喋れるよ。面倒くさいから、毛皮を被っていたけどね。最初から何も出来ない振りをしていたのさ。今のところ、あんたらが全員信用できる訳でもないからね」と言って、ベレーザを睨んだ。ベスタもベレーザを睨んだ。睨まれたベレーザはたじろいだ。

「も、もちろん、仲間ですから、イザと言う時は、協力はしますよ。ですが私も、あなた達の手の内が分かりません。ですから容易にこちらの手の内を見せる訳にはいきません!」慌て(なが)ら釈明した。

「なんと! そのようなお考えで御座ったか!」

「だろうねー」

「まぁ、仕方ないね」

「ベスタ殿と、トロ殿は、知り合いなので御座るか?」聞かれてベスタはトロを見た。

「こいつは、妖精界の王族出身だ。それ以上は、本人から聞きな」ベスタの声色は女性のものだった。トロは、ベスタを見て行った。

「こいつは、龍族の出身だ。それ以上は、本人から聞くんだな」ベスタは肯定も否定もしなかった。

「なんと、そうで御座ったか。いや、頼もしいで御座る。仲間でいるうちは、協力しあうで御座る」

「仲間でいるあいだねー」ベスタが言った。

「いーよー。仲間でいるうちだけね」トロが言った。会話に入れずにいたベレーザが言った。

「もちろん、わたくしも協力します」こうして、ニュートラル代表は呀龍たちに決まった。一応リーダーらしく振舞っていたが、呀龍は自分よりもベスタやトロの実力が上であることを悟っていた。三人とも、ベレーザに関しては何一つ分からなかった。


脱落すると見られていた呀龍たちのチームは、一気に大陸探しの筆頭に躍り出た。

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