第十話『地下迷宮探検競技(ニュートラル編③黒龍王(ブラックドラゴンキング))』
第二関門は、地下迷宮の真ん中あたりだった。「地下迷宮」のハズなのに、一行は峡谷に立っていた。一本道なので、つり橋を渡って向こうの山に行かなければいけなかった。
「第二関門は、屋外戦で御座るか?」呀龍が言った。
「第一関門も、屋外戦だったけどね」ベスタ(♂)が言った。
「怪我をしたら言ってください。治療はしませんけど」ベレーザが言った。
「だったら、いちいち喋んないでよ!」ベスタ(♀)が苛つきながら言った。
「様子を見てくるで御座る・・・」と言って、呀龍がつり橋を真ん中まで渡ると、飛龍が二匹飛んできた。体長は、7mほどもあった。
「ギャオーッス!」
「グゥワオーッス!」呀龍は肝を冷やして逃げ帰って来た。
「各々方! 危険で御座る!」
「倒さないと、進めないね」ベスタが言った。
「さぁ誰か、退治してきてください」ベレーザが言った。
「ボクの番だね」「アタシの番ね」ベスタが言った。
「龍変化」ベスタは体長10mもある赤龍に変身して宙を舞った。
飛龍は、空中で旋回し赤龍に体当たりを繰り返した。
「どっごっ!」
「ドッガっ!」赤龍はバランスを崩し、よろけながら飛び続けた。
「(体当たりだけ?)」「(何さ、大したことないわね!)」苛ついたベスタは、旋回し飛行速度を上げた。
「くるり、ぎゅっいーーーーん!」一体の飛龍に体当たりをしてみた。
「ドッズッ!」
「ぐわおー!」体当たりされた飛龍は、苦し紛れで赤龍に噛みついた。
「バッグッ!」
「ぐわおー!」当然痛がる赤龍は、右手の指の一本一本が大剣の如き鋭い爪に変わり、飛龍を引き裂いた。
「バッリッ! シュッパー!」飛龍の右腕と、尻尾を切り取った。
「ぐわおー!」飛龍はバランスを崩し、谷底に落ちて行った。
「(いってー)」「(簡単に嚙まれないでよ! 痛いじゃない!)」
「(もう一匹いたね)」「(次は、噛まれないでよ!)」
跳びながら噛みついて来る飛龍に、赤龍は口から青白い火を吐き出した。
「殲滅獄炎」飛龍は、焼き尽くされ谷底に落ちて行った。
「これで終わり?」ベスタが言った。
「! 向こうから何か来るで御座る!」呀龍が叫んだ。
つり橋の向こう側から現れたのは、屍龍だった。
「(あー、次の敵か)」「(まだいるの!)」ベスタは、一応つり橋上を空中停止飛行した。つり橋を渡って、味方の方へ歩み寄るゾンビへの威嚇として吼えた。
「ぐわおー!」
「グワッシュ!」ゾンビも威嚇し返した。ドラゴンゾンビは、右手の手のひらを上に向けると魔力を集中させ始めた。
「(呪文が来るね)」「(火球かしら? 雷かしら?)」
「霜霧!」あたりに霧が立ち込めた。
「(! 霜だ!)」「(霧は何でもないけど、霜は苦手だわ!)」
「(あちらさんは、ゾンビだからね)」「(死の世界の住人だから、温度が低くても平気なの? 何とかして!)」
赤龍は、力をためて魔力を集中させた。
「・・・ぐわ、ぐわわ、ごー・・・」赤龍の身体の色が黒色に変化した。
「龍の王! 黒龍!」体長が15mほどに巨大化した。翼を羽ばたかせ、一面の霧を吹き飛ばした。
「氷玉!」ドラゴンゾンビは、何十もの氷の塊を黒龍に放った。
「ドガドガドガ・・・」
「(そこそこ、痛いね)」「(あー、もぅ! 鬱陶しいわ!)」
黒龍は、両掌を胸の前で合わせた。光の小さな玉が産まれ、すぐに直径1mほどの巨大な光の玉に育った。黒龍は、光の玉をドラゴンゾンビにぶつけた。
「浄化玉」「殲滅獄炎」光の玉と、青白い炎でドラゴンゾンビを葬り去った。
「(浄化しろ!)」「(楽になりなさい!)」
「いや~、見事で御座る!」
「さすがですね~。怪我はありませんよね?」ベレーザが言った。
「噛まれたわよ!」ベスタが言った。
「あら、そうでしたか? チョットだけ治しましょう。small cure」ベスタのHPが2%回復した。
「(コイツ、せこい)」「(マジで、ムカつく!)」
一部始終を、別室で三人の紳士が見ていた。競技場のあちこちに鳥を飛ばし、「千里眼」の魔術で映像を送らせていた。映像は壁の白い板に映し出されたが、音声はなかった。
「彼らは、協力し合わないのか?」ローフル担当のリヴィングストンが言った。
「彼らの属性は、ニュートラルだ。協力したり、しなかったりは、その時の状況と気分による」ニュートラル担当のジャクソンが言った。
「いかにも、ニュートラルらしい打算的な戦いだ。特に、この司祭は自己中心的だ。戦いが始まると一番後ろに隠れてしまう。決して敵の攻撃が届かないところへ。彼の属性は、カオティックではないのか?」カオティック担当の黒いローブをまとった老紳士が言った。眼鏡をかけ口髭を蓄えていた。
「ムアコック(Moorcook)よ。それは違う。一応彼は、ニュートラル・セルフらしい」ジャクソンが言った。
「信用できないね」ムアコックは吐き捨てた。
「ローフル代表の清々しさを、真似できないものかね。大陸探しは、チームワークが重要だ」ムアコックが言った。
「まぁまぁ、属性別に分けたのだから、こんなもんだろう」リヴィングストンが言った。
「ニュートラル代表は、このチームで決まりかな? 他は全滅だろう」ムアコックがたずねた。
「まぁ、全滅でもいい。弱いパーティーは必要ない」ジャクソンが言った。
「一応、頭数は欲しいところだがね」リヴィングストンが言った。
「イヌの騎士と、司祭は戦っていないだろう。出番はあるのかな?」ムアコックが聞いた。
「おそらく、一人一回の出番にしているのかもしれない。最後は、イヌ騎士と司祭が担当するかも知れないね」ジャクソンが言った。
「最後の敵は、何を用意したんだい?」リヴィングストンが聞いた。
「鎧巨人だよ。打撃に滅法強い。ほぼ、魔法でしか倒せない。獣が出てくると思い込んでいる参加者には気の毒だが、ここで負けてもらう」ジャクソンが言った。
「このパーティーで、勝てるとは思わないね。ニュートラル代表は全滅だ」ムアコックが言った。
「それならば、それでいい。ローフル代表に託そう」ジャクソンが言った。
「このパーティーには、魔術を使えるものはいないだろう。酷な話だ」リヴィングストンが言った。
「龍の騎士が、多少魔法を使ったが、魔法と言うほどでもなかった。体力勝負のパーティーの限界だろう」ジャクソンが言った。
「忍者と同じく、東洋から来たというサムライは、参加していないのか?」フェーザ将軍が聞いた。
「何でも病気だという話だ。今回競技には参加していない。しかし紛れもなく、このパーティー所属だ」スクートム将軍が言った。
「ヤツは、魔法を使うのか?」
「何でも、召喚術に長けているらしい」
「このチームには、やはり魔法を使えるものがいないのだな」
「おそらく、いないのだろう・・・」




