第七話『地下迷宮探検競技(ローフル編③)Vs.カバロ』
一本道の洞窟の入り口から700mほどの地点だった。半径が10mほどの半円形の広間になっていた。洞窟の出口の方から、体長5mほどのドラゴンが姿を現した。前方の緑ドラゴン、後方のカバロ(Caballo)。リカルダスたちは挟まれた。
「ラクシャスを呼ぶと、身動きが取れなくなる。この4人で戦うぞ!」リカルダスが檄を飛ばした。
「はい!」「了解!」「い~よ!」三人はそれぞれに返事をした。
先手を打ったのは、カバロだった。
「蝙蝠」洞窟の奥から、三十匹ほどのコウモリが飛んできた。
「きゃ~!」普段のベルダッドからは、想像できない反応だった。
「(よし、石化封じ!)」カバロがほくそ笑んだ。
そのカバロに斬りかかろうとするアスタルに、リカルダスが命じた。
「ダメだ! アスタル。ドラゴンの炎から、ベルダッドたちを守れ! そいつは、俺が引き受けた!」
「! 了解!」アスタルはドラゴンに向き直った。口から吐き出された炎を盾で防いだ。
「昆虫100匹!」リカルダスがベルダッドの1m左に向かって術を放った。昆虫が100匹召喚され、コウモリたちが捕食に向かった。ほとんどのコウモリが昆虫に殺到した。ベルダッドの周りのコウモリを追っ払っていたエルピーダが、スキを見て呪文を唱えた。
「岩! 岩! 岩!」
「ドガ、ドガ、ドガ!」ドラゴンに岩を叩きつけ、注意を引いた。ドラゴンが炎を止めて、エルピーダににじり寄ると、アスタルが斬りかかった。
「雷速の斬撃!」
「ザッシュッ! ビッシュッ! ガガッシュッ!」数回の斬撃をドラゴンに叩きこんだ。ドラゴンは、アスタルに気を取られ、アスタルににじり寄った。エルピーダが岩を叩きつけ、ドラゴンの注意を自分に向けさせた。背後からアスタルが斬りかかった。ドラゴンは右往左往した。
「(よし! 向こうはナイスコンビネーションだ!)」リカルダスは、カバロに向き直った。
「あ~ん、もう~っ、うっとーしー!」ベルダッドが引っ込んだ。
『落ち着いて、ベルダッド』出てきたのは、冷静なアマールだった。
「(青いオーラが強い。たぶん、アスタルさんを気に入っているというお姉さまだ! 不死だから、もう大丈夫だ!)」エルピーダが瞬時に状況を判断した。
「ぐぅわおぉー!」ドラゴンが吼えてアスタルを威嚇した。ドラゴンの顔に盾を向けて、炎を防ごうとすると。脇から尻尾攻撃が飛んできた。
「どっずっ!」アスタルは叩きのめされた。剣を杖代わりにして立ち上がると再びドラゴンの尻尾が飛んできた。
「アスタル! 右から尻尾攻撃だー!」エルピーダが叫んだ。
「岩! 岩! 岩!」ドラゴンの背中に岩の塊をぶつけた。
「ドガ、ドガ、ドガ!」ドラゴンは、岩をぶつけられても平気だった。
「効かないか!」エルピーダが焦った。
「!」無防備の右から尻尾攻撃が飛んできたので、アスタルはたじろいだ。当たるのを覚悟して身を固くした瞬間に、ドラゴンの尻尾攻撃が止まった。
「捕縛!」アマールが、一瞬だけドラゴンの動きを捕えた。
「今だ!」エルピーダが岩の塊をドラゴンの頭部めがけて悉く叩き込んだ。
「失神剣!」アスタルがドラゴンの顎に打撃を叩きこみ、脳を揺らして失神させた。
「殺すまでもない・・・、ふっ」ドラゴンとの戦いを終えた。
『きゃ~~~~!』アマールが、興奮し始めたところで、フィリアが出てきた。
『アマール、落ち着いて~。怪我人がでたら、私の出番よ』
『きゃ~・・・!』アマールが引っ込んだ。フィリアは、治療の術をアスタルにかけた。
リカルダスは、コウモリを飛ばしてスキが出来たカバロに飛び掛かった。
「ドッカッ!」リカルダスの杖の攻撃を、カバロは棍棒で受け止めた。
「ほう、たかが杖で俺に戦いを挑むとはいい度胸だ」
「俺は最強なんでねぇ」リカルダスは不敵に笑った。
「ほざけ!」リカルダスを力で吹き飛ばした。リカルダスは、転ぶ瞬間に術を放った。
「火!」カバロの周辺に、20個ほどのバレーボールほどの大きさの火の玉を漂わせた。
「どっちへ動いても、火の玉の餌食だ!」カバロは、静止して力をためた。
「屁でもねー!」棍棒を一閃して、火の玉を吹き飛ばした。
「なんて奴だ、熱くないのか?」リカルダスは、驚いた。
カバロの連続攻撃が始まった。
「ドッガッ、ドッガッ、ドッガッ!」棍棒を振り下ろし、振り上げ、振り回してリカルダスを追い詰めた。リカルダスは岩の壁を背にした。
「くぅらえー!」カバロが棍棒を振り下ろした。リカルダスは脇へ避けると同時に術を放った。
「蜘蛛の糸( ヒロデアランニャ)!」カバロを蜘蛛の糸が包んで、レベルを吸い取ろうとしたが引きちぎられた。
「ぶっちっ!」あまりに速さに、何も吸い取れなかった。
「ふっ。全く、屁でもねぇ」カバロは全く疲れていなかった。
「なんてぇ、化け物だ・・・。かくなる上は、・・・」リカルダスは杖を放した。杖は地面に転がった。そして、格闘技のように相手と取っ組み合う態勢をとった。
「何の真似だ? 俺が棍棒を捨てて、お前と取っ組み合うとでも思っているのか?」
「好きにしな」
「好きにするさ! 脳天を叩き潰す!」カバロが棍棒を振り下ろした。リカルダスはそれを躱し、地面に叩きつけさせた。
「ドッガッ!」地面に叩き付けられた棍棒を、リカルダスは踏んづけた。同時にカバロの手首をつかんだ。
「!」カバロはイヤな予感がした。
「剥奪!」リカルダスはカバロのレベルを剥奪した。
「ちっ、少ねぇな! たったの30かよ」(カバロ:Lv62 → 32)カバロのレベルは、一気に減った。
「ガクン!」急激にレベルを吸い取られたカバロは、膝がガクガク震えた。
「! 何をしやがった!」カバロはリカルダスを睨みつけた。
「レベルを剥奪したのさ。お前はもう、俺には勝てない。大人しく帰るんだな・・・」リカルダスは冷たい目でカバロを見つめた。
「んなこと、出来るかー!」さきほどより遅く、棍棒を振り回し始めた。落ち着いて棍棒を躱し、両手でカバロの肩を掴んだ。
「剥奪!」カバロのスキルとレベルを剥奪した(カバロ:Lv32 → 28)。急激にレベルが半分以下にされたカバロは失神した。
「ん~、コウモリを呼ぶスキルか~。一応、頂いとくけど使えんな~」
失神したドラゴンとカバロを置いて、四人は洞窟を出た。
「三人ともレベルが上がっているな」リカルダスはLv34になっていた。エルピーダはLv29になっていた。アスタルはLv56になっていた。
「コウモリ除けだよ。ベルダッドちゃんいるかい?」リカルダスが、ベルダッドに術を渡そうとした。
「あれ? おかしいな、あげることが出来ない」
「? 何しようとしてんの?」
「キミに、術を幾つかあげようと思ったんだけど、出来ないわ」
「コウモリや昆虫を呼ぶ術なんて、いらないわよ」
「そう・・・、それならエルピーダにあげよう」リカルダスは、「蝙蝠召喚」と「昆虫召喚」をエルピーダに渡した。
「ありがとうございます。使えるときに使います」
「うむ。俺は、召喚獣を呼んで接近戦で戦うことが多くなるだろう。戦闘の援護や、攻撃の補助を頼む」
「承知しました」
-表彰式-
「優勝は、リカルダスチームです!」リヴィングストンが高らかに宣言した。負傷して地下迷宮探検競技を断念した冒険者たちが表彰式を見学し、リカルダスチームに惜しみない賛辞の拍手を贈った。
「諸君らは、善属性チームの代表です。混乱した世界に平和をもたらす使者になってくれることを信じます。あなたたちは、中立属性や悪属性とは主張や考え方が異なるでしょうが、誰しも戦争が好きなハズはありません。アテネとスパルタの戦争が長引いているが、いつまでもこんなことをしていても仕方がありません。すぐにやめさせなければいけません。そして、公平で公正なルールを作り、乱れた世の中を正しい方向へ導くことを期待します。次世代、そしてその次の世代の繁栄を願うことは当たり前のことです。ローフルである皆さんが、率先してその役割を担いましょう」そして、リカルダスを向いて言った。
「リカルダスくん、お願いしますよ」
「はい、分かりました」リカルダスは快諾した。優勝賞金が与えられ、王都アテネへの招待券を獲得した。
「皇帝に謁見したら、何がしかの任務が任されるかもしれません。それが、キミたちの新しい冒険が始まりになるだろう。大きな仕事を成し遂げることを期待しています」と、リヴィングストンが言った。
「出来るだけ、期待に応えられるように頑張ります!」と、リカルダスが言った。
無傷で洞窟を出てきたのは、リカルダスのチームだけだった。半分のチームは、ブリキ騎士に勝てなかった。残りのチームは、鬼狐火に酷い火傷を負わされた。従って、傷魔人と闘ったものは居なかった。
「(傷魔人は温存だ。まだ手の内を全部出すわけにはいかない・・・)」サロスが呟いた。
「? サロマ、何か言ったか?」クロマが聞いた。
「何でもねぇよ・・・」サロスが言った。
「ベルダッドが言われたことが、悉く変更されているな。何かの陰謀かも知れん。慎重に行動しよう」リカルダスが言った。
「アテネ六将軍同士で、内紛が勃発したのかも知れないわ」ベルダッドが言った。
「あの女性将軍のクロマさんと、サロスさんは仲が良いのでしょうか?」エルピーダが疑問に思った。
「手柄争いをしているようだし、お互いに信用していないかもね」アスタルが言った。
「結局、地下迷宮探検競技では、あまり活躍できなかったわ。私が、あなたたちの水先案内人なのは、ここまでかも知れないわ。さぁ、今度はあなたたちが、私が行きたい所へ連れて行ってちょうだい!」ベルダッドが言った。
「あぁ、約束は守るよ!」リカルダスが言った。
【エンペラドール暦615年】王都アテネに、ローフル、ニュートラル、カオティックチームが参上し、本格的な大陸探しが始まった。




