第三話『旅の仲間・液体ゴーレム』
「きゅ~」エルデムは人間の姿だったが、リスの時のように液体ゴーレムに話しかけた。エルデムの姿を見た途端に落ち着きを取り戻した液体ゴーレムを、三人は不思議そうに見ていた。
「(さっきとは、まるで別人だな・・・)」
「そうそう。お前さんは、精神世界の住人だ。俺は物質世界の住人だ。懐かしいな~」
「きゅ~」
「いや、恨んでなんかいないよ。俺もお前さんも被害者だ。どちらも悪くないさ・・・。いや、どちらの大陸も悪くはない・・・」
「きゅ~」
「それを探しているんだが、どこをどう探していいか、分からねぇのさ・・・。世の中、苛つくことばかりだ・・・」
「きゅ~」
「何だって? コイツが連れて行ってくれるだって?」
「きゅ~」
「コイツに、そんな能力があるの? 俺には分からねぇぜ・・・」
「きゅ~」
「何だって? お前さんには見えるって?」
「きゅ~」
「いやいや。お前さんは、精神世界の住人だからな。疑っていないよ・・・」
「きゅ~」
「そうか。最近、礼儀正しくなったのか。人前でおならをしなくなったのか。そいつは感心だ。はっはっは・・・」リカルダスは、自分が話題にされていることに気付いた。エルピーダは笑っていた。アスタルは何となく会話の内容を理解していた。
「きゅ~」
「それもそうだな。俺たちは、この世界を荒らしまわってはいけない。中立の中の中立だ・・・」
「きゅ~」
「考えてみれば、悪いことだらけだ。反省するよ・・・」
「きゅ~」
「う~ん。そうか・・・。どうすればいい?」液体ゴーレムが落ち着いてきたので、エルデムがリカルダスに引き継いだ。
「きゅ~」
「話がまとまったの? このゴーレムさんに、仲間になってついて来て欲しいんだよ」それを聞いてゴーレムが答えた。
「お前とは、話が出来るんだよ。通訳はいらねぇ」
「そういえば、そうか・・・」お互いが冷静に話し始めた。
「あなたの言う通りかもしれない。こちらの世界では、肉体が亡びればすべてお終いなのです」
「だが、ウチの世界では違う。肉体さえ残っていればな・・・。物質さえ残っていればいいのが俺の世界で、精神さえ残っていればいいのが、そちらさん(エルデム)の世界だ」
「(! ・・・この怪物は、何を言っているんだ?)」エルピーダは訝しがった。
「(? ・・・肉体さえ残っていれば大丈夫なんて、どんな世界の住人だ!)」アスタルは、液体ゴーレムの発言の一つ一つが不思議だった。
「(よし! 彼に償わせよう!)」リカルダスの考えがまとまった。
「アナタの望む世界に帰れるように努力しましょう。その代わり、トロルの命を戻せますか?」
「簡単だ。よし、トロルに詫びを入れよう」と言って、ゴーレムは自分の腕を一本叩き折った。
「べっぎッ!」それを拾い上げ、トロルの子どもに渡した。
「持てるか? 重いぞ。しっかり受け取れ、オリハルコンだ。この世には存在しない金属だ。売って、お金にすると良い」トロルの子どもは恐々(こわごわ)と受け取った。液体ゴーレムは体を液体化し、金属化させた。すると先ほどよりも体が一回り小さくなった。
「また、鍛え(レベルを)上げれば元に戻るぜ」
「(何という便利な体なんだろう・・・)」エルピーダが不思議に思った。
「これをミスティックのしおりさんを通じて、お金に変えよう」リカルダスは、そう言って死にかけのトロル近づいた。
「上昇!」トロルのレベルを上げた。
「これで少しは、回復も早まるだろう」そして、子どものトロルの状態を見て回った。
「状態」子どものトロルは五体ほどいた。
「上昇!」そして、一番能力の高い子のレベルを上げた。
「すまない。今はこれしか出来ない。自立してくれ。余裕が出来たら、様子を見に来るよ」そして、液体ゴーレムに向き直った。
「キミの名は、何という?」
「ラクシャス(Raakshas)だ。失われた大陸『物質文明世界』の住人だ。この世界ではアトランティス大陸と呼ばれている」
「話が少しずつ見えてきましたね」エルピーダが言った。
「話が壮大になってきました」アスタルも興奮していた。
「キミは、【神々の試練】では、サイクロプスと闘って、アキレスのご加護を授かったね?」リカルダスが聞いた。
「何でぇ、知ってんのか」
「え? 彼も試練をうけたのですか? 通りで強いはずだ・・・。しかもアキレスのご加護とは・・・。無敵の防御だ」アスタルは驚いた。
「レムリア大陸も、アトランティス大陸も、ムー大陸も神々の怒りを受けて滅んだんだ。なぜ神々を怒らせたのかは分からねぇ。俺は、その原因と大陸への戻り方を探している。あんたらの仲間のエルデムも同じだろう」
「失われた大陸へ行く方法があるのだろうか?」リカルダスは聞いた。
「エルデムの話では、アンタが連れて行ってくれるらしい。だから、ついて行くよ」
「よろしい。それでは、契約をしよう。報酬は、あなたを失われた大陸に連れて行くこと。その代わり我々は、キミに戦闘での援助を求める。それでいいかな?」
「良いだろう。全力で、アンタたちを守ってやるよ」こうして、液体ゴーレム・ラクシャスは仲間になった。そして、トロルに向き直ると言った。
「死んだトロルたちの死体は腐らすな。俺の世界で、そいつらの魂を探してくるよ」エルピーダはそれを聞いて術を使った。
「永久凍土!」トロルたちの身体が氷の棺に包まれた。
「これで大丈夫でしょう」リカルダスを見た。
「うむ。これでいい」リカルダスは液体ゴーレムに向き直ると伝えた。
「道中は、移動が大変だろうから、私の召喚獣になるといい」
「それは、有り難ぇ。いろいろと苛つかないで済むぜ」
トロルたちの棺を洞窟の奥へ移動させた。
「さて、それでは次の旅に行くことにしよう」リカルダスが言った。
「次は、トロイアですね」エルピーダが言った。
「私もペラ遺跡でそう言われましたが、トロイアで何かあるのですか?」アスタルが聞いた。
「トロイアで『地下迷宮探検競技』があるそうです。そこで仲間が出来るという話でした」エルピーダが説明した。
「仲間ですか?」
「そうです。トロイアへ行く前にアスタルさんが、仲間になりました。ラクシャスさんも」
「次々に仲間が出来るのは嬉しいんだが、お膳立てが出来過ぎているんだよ。そこが気持ち悪い」リカルダスが言った。
「何か、大きな力が働いているのでしょうか?」アスタルが言った。
「意外と『神々の試練』を受けた連中が関係しているのかも知れないな。この数年で十数人受けたらしい」
「そんなに受けたんですか! 私の時は、私と『東洋の侍』だけでした」
「! あの他にも居たのか!」
「シントリスタに聞けばよかったですね」
「まぁ、オッサンは忘れてたから無理だろう」
「彼は、どんな勝ち方をしましたか?」エルピーダが聞いた。
「私は、別室で待たされていました。ただ、戦いが終わった後は、神殿が半壊していました。侍もぼろ雑巾のように転がっていました。死んでいたのかも知れません。それ以上は詳しく分かりません」アスタルは神妙な顔で言った。
「ふむぅ・・・。敵の情報を知らないことが一番怖いな」リカルダスは重々しく言った。
「シントリスタが、『他にもいたなぁ・・・』と言っていましたから。これから旅を続ければ分かるかも知れません」
「そうだな。一端『東洋の侍』の件は置いておこう。まずは、トロイアを向かおう」
「はい!」「ハイ!」
オリハルコンを換金しにミスティックのもとを訪れた。
「あれまぁ、そんなことになったか。分かったよ。このオリハルコンを換金しよう。あとで、トロルの住処に結界もはっておくよ」
「ありがとうございます」リカルダスは礼を言った。こうしてトロルたちは、しばらく大人しく暮らせる状況が整った。
「それはそうと、お前さんたちはレベルが上がってるね。いくつか使える術も増えているから、用意すると良い」
「そうします」リカルダスはLv.33に上がっていた。エルピーダは、Lv.28に上がっていた。アスタルはLv.55に上がっていた。
「何か、最近死んでからレベルアップしてばっかりだな」リカルダスはうんざりした。
「戦いの度に死ぬのは、困りますが心強い仲間が出来ました」エルピーダが言った。
「Lv999に勝ったんです。これは奇跡です」アスタルは前向きだった。
「それも、そうだな。今度は死なないように、治癒力を持つ仲間が必要だな」
「トロイアの仲間は、誰でしょうか?」エルピーダがしおりに質問した。
「とびっきりの美女だよ」と言ったが、三人とも反応が薄かった。
「か弱いなら、足手まといになるかも知れないな・・・」リカルダスは冷静だった。
「強さや能力次第ですね・・・」エルピーダも冷静だった。
「しおりさん、もう少し詳しく教えてくれますか?」アスタルは聞いてみた。
「それは、出来んの。先入観は、冷静で正確な判断を狂わすもんじゃ・・・」取り合わなかった。
「まぁ、話してみれば分かるだろう」リカルダスは、結論を出さなかった。
「アスタルさんや、ラクシャスさんの例だと悪くないかもしれません」エルピーダが言った。
「それも、そうですね。まだ、相手を何も理解してはいません」アスタルも同意した。
「『地下迷宮探検競技』の会場に着いたら、向こうから話しかけてくるじゃろう。一番目立つ娘さんじゃ。向こうは既にお前たちの仲間になる気が満々じゃ」
「なんか、うまく話が転がり続けているな~」リカルダスは気味悪がった。
「何も苦労がありませんが、話が出来過ぎています」エルピーダが言った。
「彼女も『神々の試練』と関係ありますか?」アスタルはしおりに質問した。
「あぁ、あるとも。戦わずに勝ったのは、彼女だけじゃ」
「! 何という逸材だ!」三人は驚いた。




