37 最後の戦い
37 最後の戦い
大坂城近郊。
真柴率いる豊臣軍五千は完全武装の騎馬隊。
そして常日頃『天空竜』と謳われる最強の槍使い豪姫に鍛え上げられている為、精強。
真柴は駿馬に跨り、自ら槍を振るい、敵兵を薙ぎ払う。
豊臣軍が勝ちを拾うためには総大将の徳川家康を地獄に送らなければならない。
その為に兵力を密集させて一点突破で突撃した。しかし、思いもよらぬ強敵が出現した。
「我こそは徳川四天王本多忠勝なり!」
トンボ切りと言う名槍を手にした眼光鋭き大男が目の前に立ちふさがる。
本多平八郎忠勝……徳川四天王の筆頭であり、家康に過ぎたるものと謳われた傑人である。
「余が天下人秀頼だ! 本多忠勝は余が討ち取る!」
真柴は怯まずに槍を振るう。何合も本多忠勝と槍の応酬を行うも決着は中々付かなかった。
真柴は運動不足が祟り、少しずつ後退する。それに勢いづいた本多忠勝は攻め続ける。
それに割って入ったのが、豪姫……豪姫はこのままでは真柴が危ういと思ったのだろう。
「小娘!」
しかし、本多忠勝は無防備に入ってきた豪姫の心臓を一突きにした。
遂に『天空竜』とまで称された豪姫はその命を散らせた。
「豪姫!」
「秀頼様……今までお仕え出来て光栄でした。どうか、少しでも長く生きてください」
血を吐いて地面へと這いつくばる豪姫。それを見て真柴は覚醒する。
「何だ! 秀頼の小僧の雰囲気が変わる!」
覚醒した真柴は槍の連続攻撃で本多忠勝を追い詰める。
本多忠勝も動揺しながらも槍を振るうが、真柴は全て捌いて、本多忠勝の体を貫いた。
真柴は最強に限りなく近い武将を自らの手で討ち取ったのだ。
本多忠勝の討ち死にを目にした連合軍は慌てふためく。落ちこぼれの無職の強さではないと……。
この機を逃さす徳川家康本陣へと突撃をぶちかます。葵の紋の旗印が乱立している本陣で家康が怯えていた。
「秀頼の小僧……! 己! 無職の分際でここまで攻め上がるとは!」
家康も軍配を捨てて刀を抜く。それにも構わず覚醒した真柴は槍を手に徳川家康に突撃。
しかし、その快進撃もそこまでであった。鉄砲隊が真柴に襲い掛かる。
徳川の鉄砲隊による銃撃により、傍らで奮戦していた側近、宇喜多秀家は致命的な傷を負い倒れる。
「秀頼様……お仕え出来て嬉しゅうございました。
ここまで心躍らせてくれる主に恵まれて幸せでございました」
宇喜多秀家は物言わぬ骸となり、それを見た真柴は目を瞑り、その死を悼んだ。
再び目を開けた真柴は家康を狙い、槍を手に奮戦する。正に獅子奮迅である。
「徳川家康! 覚悟!」
「己!」
真柴が放つ槍の穂先が徳川家康の心臓に迫る……その刹那、またも鉄砲隊の銃撃が豊臣軍を襲う。
一人、また一人と真柴を護衛する騎馬隊がその命を散らせ、遂に真柴に銃撃が当たる。
狙い撃ちにされる真柴……。真柴の右目と左腕に銃撃が当たるも真柴は怯まない。
「こやつ! あれだけの銃撃を浴びながら、生きているとは本当に人間か!?」
家康は真柴の耐久力に驚嘆しながらも、刀で応戦する。
「家康! 無職を舐めるな!」
真柴の咆哮が……真柴の悲痛な叫びが辺りに響き渡る。家康の刀が真柴の持つ槍を切り落とした。
その衝撃で真柴は遂に事切れる。真柴は悟った……自らの敗北を。
短い人生だった。三十三歳で転生して、天下人となった。悪い人生ではない。
良き家臣に恵まれ、それなりに楽しかった。ここまで頑張って行けて真柴はそれが誇らしかった。
――さらば、戦国……僕はこの時代に来れて良かったよ。
真柴は最後にそう呟きながら、ゆっくりと崩れ落ちた。




