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33 正体を明かす

 33 正体を明かす



 茶々の輿入れを見送った後のとある日。真柴は徳川秀忠に釣りに誘われた。

 彼だけは江戸には帰る予定を遅らせたのだ。

 朝早くから起こされて真柴と秀忠は大坂城を出た。

 彼曰く、大坂滞在中に秘密の釣りスポットを見つけたらしい。

 僅かな供回りを連れて、戦国時代の防波堤で釣りを始めた。良く釣れるらしい。

 潮風が心地よく、海の景色を一望できる。潮風に当てられて真柴は眠気が晴れるのを感じた。

 釣りを始めて幾らか経過した後、真柴と秀忠は意気投合した。


「前世では釣りは釣り堀でしか経験していないから新鮮な体験であるな」


「前世……?」


 真柴は思わず油断して口を滑らした。この際、転生者であることを明かしてしまうか……。

 温和な秀忠ならば大丈夫だと、真柴は思い立ち、隣で釣りをする秀忠に意を決して口を開く。


「そうだ。余は転生者だ。前世は今から四百年未来で生きていた負け組の無職の青年だった。

 そして徳川秀忠殿は後世に名を残しているので全て存じておる」


 真柴は観念して白状した。僅かな供回りは遠ざけているので話は聞こえない。


「関白殿下に対する違和感もこれで説明が付きますな。

 兄……結城秀康はどうなります? 茶々様も年の離れた兄に輿入れして本当に大丈夫なのですか?」


 秀忠は兄である結城秀康たちのことを案じているようだ。

 その点についても真柴は考えに考えを巡らせている。


「実をいうところ……結城秀康の本来の寿命は後、五年余りしかない」


「!?」


 秀忠は初めて驚きを露にする。それもそのはず。五年と言えば茶々は十二歳だからだ。

 だが、真柴は結城秀康に輿入れ前に亡き秀吉用に用意した健康食品を大量に送っている。

 寿命はかなり延びるはずだ。秀康はこれまでの食生活が余りにも悪すぎた。

 茶々が成人するのもあと八年。それまで長生きしてほしいのだが……。


「だが、安心するがいい。健康食品を大量に輿入れ前に送っているのでな。

 後は生活習慣を見直すためにきつく言っているので長生きをするだろう。多分……」


「それならばいいのですが。それに兄は上昇志向の高い人間。気を付ける事です」


 徳川秀忠は真柴に忠告した。真柴とて、結城秀康の本性に気付いている。

 しかし、それぐらいの気概がなければ戦国の世を生き抜くことは出来ない。

 結城秀康を真柴は誰よりも買っていた。それ故に妹である茶々を託したのだ。


「忠告は有難く受けとっておこう……。

 だが、結城秀康が余に刃を向けたとしても、絶対に余の喉元に届くことはない。絶対に」


 真柴は不敵な笑みを浮かべて、秀忠にそう宣言した。

 既に結城秀康には彼が知らぬところで数々の布石を打っている。

 天下人として覚醒した自分に敵うとは真柴は微塵も思っていなかった。

 様々な思惑が交差した息抜きで始めた釣りは日没を迎える前に終えて秀忠と別れた。

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