21 真柴の過去
ブックマークありがとうございます。
遂に主人公の過去が明かされます。
21 真柴の過去
真柴は董卓の末裔、董白との語らいを切り上げて、席を立とうとする。
それに董白が待ったをかけた。真柴は訝しるが、澄んだ目で董白は真柴を見据える。
「董白殿、私に何か言いたいことでも?」
「ええ。単刀直入に言いますが、秀頼殿は転生者ではないですか?」
董白はいきなり爆弾発言を投下した。見過ごせない発言だ。
何故、自分が転生者だと見抜かれたのだ。真柴は一転して動揺して窮地に追い込まれる。
万が一にも転生者だとバレたら全てが破綻するからだ。
真柴はこれまで神懸かりの神童としての振る舞いを続けていた。
もし、転生者だと豪姫たちに知られれば問答無用で切り捨てられるかもしれない。
見捨てられるかもしれない。真柴は怯える。その反応に豪姫たちも、騒めき立つ。
――もう終わりだ……おしまいだ。
真柴は目を瞑り観念して、
「……そうだ。余は……いや、僕は転生者だ。何故、僕が転生者だと気付いたんですか?」
振るえるような声音で言った。
「私の祖先……董白が転生者だったのです。
転生者だからこそ臨機応変に立ち回り、生き延びて子孫を残せたのです。
だから、直感で秀頼殿が転生者だと気付いてしまいました」
董白は祖先の事を思い返すように言葉を返した。
そうか。転生者であったから、董卓の孫娘は生き延びることが出来たのか。
やはり、成るべくしてなっている。白状するしかない。
真柴秀政の全てを包み隠さず話して、命だけは助かるように縋るしか道はないのだ。
「全部……お話しします。僕の本名は真柴秀政。四百年後の未来で生きた負け組の無職です。
僕は天下人の息子でも何でもない。無職の青年。宇喜多殿、豪姫殿、小早川殿……ごめんなさい」
真柴は平身低頭。豪姫たちに深々と頭を下げて謝罪した。
「秀頼様、そんな……!」
誰よりも真柴に忠誠を掲げていた豪姫は狼狽える。
「ほう。秀頼様は転生者であったのか。成程な」
宇喜多秀家は思い当たる節があるのか、成程と頷く。
「………」
一転して、小早川秀秋は動揺しつつも、何か思い付いたのか思案を巡らしている。
真柴は、小早川秀秋が考えていることを容易に読み取る。
真柴が秀頼ではなくなれば、あわよくば自分こそが豊臣一門の当主に成れると考えているのか。
「僕は幼い頃から、人より劣っていたのです。学校の成績も振るわず。友達にも苛められていた。
周りの環境の悪さも相まって駄目人間となりました。
中学は卓球部に所属していましたが、やはり苛められていました。
そして不登校になりました。高校に進学してもダメでした。卓球部の合宿所での苛めは壮絶でした。
高校を辞めた僕は引きこもりつつも、カードゲームの大会に何度も出ていました。
やはり、地頭の悪さでカードゲームでも勝てませんでした」
真柴は幼少期を思い返しながら、言葉を切り出した。
「カードゲームとは何ですか?」
小早川秀秋が興味津々で質問する。
「カードゲームとは四百年後の未来の娯楽です。
市販されている一パック五枚入りのカードを買って自由に組み合わせて遊ぶのです。
ちなみに大人気の娯楽で世界大会までありました」
真柴は説明した。そういえば沢山集めていたな、と思い出を振り返る。
一枚数千円するカードも何枚も持っていた。
「カードゲームの大会に出ていた時期も終わりをつげ、紆余曲折を経て成人した僕は作業所で働いていました。
ボールペンを組み立てる作業をしていました。でも、集中力が続かず、サボっていました。
サボった時間を小説の執筆に当てていました。それでも作業所の小さな腕相撲大会で優勝しました。
唯一の成功体験でした。ただそれだけ……これが僕の全てです。
がっかりしたと思いますが、命だけは助けてください」
真柴は絶望したような顔をして己の全てを包み隠さず、豪姫たちに話した。
「秀頼様、変わらず忠誠をお誓いいたします。
貴方の過去がどうであれ今の豊臣家を率いて来たのは貴方様なのですから」
「私も豪姫に同意です。会津王国をここまで追い詰めた手腕は天下人の実力です」
「某も同意いたします」
豪姫たちと真柴は正体を明かしても主従の結束は揺るがなかった。
それに自信を持った真柴は今度こそ話を切り上げて席を立とうとする。
「秀頼殿、御武運を……」
「有難く」
董白の言葉に真柴は頷いて席を立ち、十八万の軍勢を従えて会津王国『景勝』へと向かった。




