19 秀頼の身を案じる集い(宇喜多秀家)
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遂に豊臣家は大将軍李舜臣を下し、後は会津王国王都圏に雪崩れ込むだけとなりました。
19 秀頼の身を案じる集い(宇喜多秀家)
会津平原で激突した豊臣家と会津王国軍の戦いは豊臣家の勝利で幕を閉じた。
敵将李舜臣を豊臣軍先鋒、豪姫が討ち取り、会津王国軍の頭脳と言われた柳成龍は捕らえた。
第一功は李舜臣を自ら討ち取った豪姫。第二功はそれを補佐したもう一人の先鋒、小早川秀秋。
臨時ではあるが、論功行賞が行われた日の夜、宇喜多秀家は配下を労った後、豪姫と小早川秀秋と話し合いの為に集まった。
豪姫は太閤殿下の養女。小早川秀秋は一度、太閤殿下の養子となったが、その後、小早川家の養子に。
秀家は豪姫を正室としている為、豊臣一門である。そう、集まった面々は豊臣一門衆である。
何故、集まったのかは明白。真柴……つまり、秀頼様の身を案じるための集いだ。
戦場に朽ち果てた骸を烏がついばみ、日が傾き闇夜に支配される夕刻――。
宇喜多秀家本陣の天幕に秀家、小早川秀秋、豪姫が集い。労をねぎらう。
「良くぞ集まってくれた。それにしても流石だな、二人とも。
あの李朝最強の武を誇る李舜臣を討ち取るとは……私にもそれだけの武力があれば良いのだがな」
まず言葉を発したのは二人を招いた秀家。秀家は豪姫と小早川秀秋に酒を振舞った。
「いえ、某は酒を断っております。秀頼様が上杉を滅ぼすまでは……」
「なら私が頂きます。それより私たちを集めたのは酒を振舞うだけではないでしょう?」
豪姫が手渡された酒をグイっと飲み、口火を切った。
「そうだ。二人を集めたのは他でもない、秀頼様の事だ。
秀頼様は大変利発だ。子供とは思えぬ物腰、佇まいだと言える。
そして、尊大に振舞いつつも、側仕えや大名衆が誕生した日を覚えていて、贈り物も頂いている。
毎朝の挨拶もキッチリとしており、身分の下の者へも分け隔てなく優しく接する。
そして何より、あのお年でこれだけの軍勢を統率している。正に神懸かりの神童だ。
だが、危うい面もある。我々はこの戦いで会津王国軍の要である李舜臣と柳成龍を破った。
最早、上杉家は風前の灯……我々は明日から陥落させた会津釜山城を発ち、王都『景勝』を攻める。
一気に王都圏に十八万の軍勢で雪崩れ込むのだ。その意味が分かるか?」
秀家は顔色の伺えぬ表情で二人に問う。その問いに一早く敏い豪姫が言葉を開く。
「分かっています。上杉景勝を始め、王族を全滅させるということでしょう?」
豪姫が表情を変えずに言い切った。豪姫は普段は優しいが、時に誰よりも残酷になる。
「……王族だけではない。私は王族だけではなく、会津の有力者一族の絶滅を視野に入れている。
秀頼様への復讐をさせぬためにだ。根切りにしなければならない。全ては秀頼様の為に」
その夫である秀家も残酷な一面があった。だが、それも全ては我が主君、秀頼様の為。
覚悟を決めて心を鬼にしなければならない。そして、その矢面になるのは自分だ。
自分が、秀頼様への非難の盾となる。秀家は既に腹は決まっている。
「どういう方法で根切りにするのですか?」
小早川秀秋は唖然呆然と言った表情で秀家に迫った。
「会津の上流階級以上の民を……いや、それ以上はこの場では言わない。自分で考えろ、小早川殿」
その覚悟を悟った豪姫は滂沱の涙を流し、夫である秀家に縋りつく。
「秀家殿、貴方は春秋戦国時代の白起となるおつもりですね。
白起がその後、どうなったのかも知っている筈なのに……!」
豪姫はいつしか号泣していた。それほどまでに秀家の事を大事に思っている。
「宇喜多殿……貴方は秀頼様の為に捨て石になるおつもりか! それだったら某が!」
気付いたら小早川秀秋も涙を流していた。それなのに、秀家は感情が揺れ動かない。
――そうだった。私は感情が揺れ動かない。我が右腕であった明石全登を失った時でさえもそれ程……。
この役目は自分にしかできないだろう。豊臣一門で豊臣軍全体の副将である自分だけだ。
「私は豊臣軍全体の副将として全責任を負う。秀頼様の事は二人に任せたぞ」
そうして、三人の集いは終わった。
夜が明けた頃、豊臣軍十八万は会津王国王都『景勝』に向かって進撃するのである。
今回はここまで。
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キリが良いところまで話を進めたので、また書き貯めようかなと思います。




