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17 総力戦

ブックマークありがとうございます。

主人公は遂に本気を出します。

 17 総力戦



 ――李舜臣side


 大将軍李舜臣は顎に手をやり、豊臣軍の動きを探っていた。

 豊臣軍左翼の要であった前田利長軍、島津義弘軍が、盟友柳成龍の暗殺部隊により撤退した。

 だが、新たなる将、豪姫の出現により、戦局は再び、膠着状態にあった。


「報告! 敵将豪姫により、各戦線の部隊が壊滅!」


 その物見の報告を聞いた李舜臣は見張り台から地上を眺めると、豊臣軍が完全包囲していた。

 その光景を見た李舜臣はゴクリと唾を飲み込み、両隣に立つ盟友、柳成龍と総大将直江兼続を見やると彼らは震えを催していた。

 万が一にも会津釜山城が抜かれれば、王都『景勝』は危うい。

 いや、最早、この現状は詰んでいるのではないか?と李舜臣は考える。


「直江殿! 王都から至急援軍を!」


「直江殿!」


 周囲の者たちも総大将、直江兼続の顔色を窺っていた。

 しかし、直江兼続は渋い、苦しんだ顔で目を瞑る。それが何なのか、李舜臣は察した。


「国力が違いすぎる。初めから我々には勝ち目がなかった。十八万の豊臣軍には歯が立たない。

 ですが、我らは最早一蓮托生。それにここには我ら会津王国軍の精鋭が集まっている。

 まだ勝ち筋は残っているはずです。柳成龍殿は何か意見はありますか?」


 直江兼続の言葉で、李舜臣を含む全ての者が、古の諸葛亮孔明に匹敵すると言われる柳成龍に注目する。

 窮地に追い込まれた今、皆が知恵を出し合って窮地を乗り切ろうと心を一つにしている。

 全ては国の為……大王上杉景勝は褒められた御仁ではないが、一度は忠誠を誓った主君である。

 主君が栄耀栄華、酒池肉林を堪能するためには豊臣軍をここで挫くしかない。


「確かに直江殿の申す通り、我々は苦しい。だが、私の暗殺部隊と最強と謳われる李舜臣殿の武力があれば持ち直せる。

 もし、この会津釜山城が抜かれた時の保険の為に直江殿、本庄繁長殿、元均殿は王都で軍備増強に努めることです」


 柳成龍の言葉に皆の者は感化され、奮い立つ。それだけ最強の武を誇る李舜臣は信頼されていた。

 それに盟友である柳成龍と共に戦場を駆けることに高揚を覚えずにはいられなかった。

 直江兼続殿には王都圏、いや、会津釜山城の後方に陣取る砦まで後退してもらい、二重の防衛ラインを築く。

 李舜臣は賢しい頭で計算を巡らす。敵方十八万とはいえ、列国を震え上がらせた大将軍、李舜臣。

 彼がいれば兵の士気は爆発し、幾万の敵を容赦なく屠る。それが大将軍の矜持だ。


「宜しい……直江殿達は砦まで後退せよ。李如松将軍の慈悲にすがるのだ。

 幸い、公主様はお優しい人柄だと聞き及んでいる。上杉景勝とは違ってな……。

 豊臣軍十八万はこの李舜臣と我が盟友、柳成龍、そしてテイハツと共に豊臣軍を迎え撃つぞ! 出陣!」


 その天を貫かんとする轟雷の激に全ての将兵の士気は最高潮に高まり、上杉軍三万は会津釜山城から出撃。

 莫大な士気が高まる全軍を以てして豊臣軍を迎え撃つのである。それを前後して直江兼続と側近たちは砦へと向かった。



 ――真柴side


 会津釜山城を発した李舜臣軍三万は付近の平原で、豊臣軍十八万と相対した。

 転生してから本気を出し、努力して馬に乗ることに成功した真柴と李舜臣は両軍を挟んで対面を果たした。

 まだ年端もいかない若造であるのに闇を抱えたような人ならざる者……。

 それもそのはず、豊臣秀頼の皮を被った未来人なのだから。


「我の名は李舜臣。お前が豊臣軍総大将、豊臣秀頼か?」


「如何にも、余が天下人豊臣秀頼だ。逆賊上杉景勝の手下よ。たった三万の兵力で何が出来る。

 正気の沙汰とは思えん。我が絶大なる力を誇る十八万の兵力で踏みつぶしてくれるわ」


 真柴は初めて相対する大将軍李舜臣の迫力に押されながらも傲慢な態度と声音で李舜臣を嘲笑した。

 それを小馬鹿にはせず李舜臣は動じずに真っすぐに受け止める度量を見せる。

 李舜臣は事ここに及んで冷静だ。列国を震え上がらせた大将軍の矜持。李舜臣は間違いなく歴史に名前を刻むであろう。

 元々、豪胆な性格の彼は時には勇猛で、冷静に成るべき時には勝利の方程式を頭の中に構築する。


「戦は兵力だけで決まるものではない。手始めにそれを証明してくれるわ。

 我が副将テイハツよ! お主が先陣を切り、秀頼の小僧の首を取れ!」


 李舜臣の激に応じた副将のテイハツが手勢を率いて真柴に襲い掛かった。

 その形相は憤怒に満ちており、これまでの鬱憤を晴らすかの如く、縦横無尽に戦場を駆ける。


「愚かなる李舜臣よ! お前の相手は……福島正則! 君に決めた!」


 真柴は腹心の譜代家臣、賤ケ岳七本槍、福島正則を挙げて、出撃させた。

 福島正則……豊臣譜代の勇猛果敢な歴戦の将だ。福島正則の母は秀吉の叔母だという。

 かなり血縁関係が濃いために真柴は彼を重用している。

 自分が相手をするまでもないと、対する李舜臣は持ち前の観察眼で福島の技量を看破し、副将テイハツを繰り出した。


「御意! 秀頼様のお望み通り、敵将は某が討ち取ってご覧に入れましょう」


 テイハツと福島正則は馬を走らせ、矛を交える。何合も打ち合うが、決着はつかない。

 それが呼び水となり、豊臣軍と上杉軍は交戦状態に突入。李舜臣も自ら方天戟を振るい、敵兵を薙ぎ倒す。

 李舜臣は乱戦になりつつも、冷静に状況を分析していた。勝利するには真柴の首を取るだけでいい。

 それが彼には自ずと分かっているのだ。真柴も当然、それを看破している。

 真柴とて、為政者の端くれ……それぐらいは読める程度には成長している。

 何もせず安穏と戦国時代にいるだけではない。真柴は今度こそ、本気を出して生き抜いて行こうと努力に努力を重ねているのだ。

 大名衆の前では尊大な態度で振る舞いながらも、陰で必死に努力してきた。

 天下人としての重圧に圧し潰されそうになりながらも真柴は本気出すと決めたのだ。

 成長した真柴ならば読める……李舜臣の思惑は如何に大柄な体格と言えど、真柴は未だ少年。

 体が出来上がっていない。よって自らの敵ではないと考えるだろうと。

 将来性は高い若者だが、老練巧みな李舜臣とは経験値の差が違うと考えていることが今の真柴ならば容易に読み取れる。

 李舜臣は列国を震え上がらせた大将軍の矜持を持つ。覇を唱えた戦神だ。

 そうと決まれば早かった。直属の兵四千の戟兵と共に中心部にいる真柴に迫った。

 高貴な身分を現すかのような金文字で彩られた豊臣の旗印が乱立しているために特定は早かった。

 真柴の親衛隊は三千人。だが散らばっているので、少し守りが些か弱い。

 その隙に乗じて真柴の首を取れば、あわよくば上杉の天下も望める。

 新たなる主、大王上杉景勝様の栄耀栄華を築き上げると、李舜臣が考えているのを先読みしていた。

 真柴は転生してから、相手の考えをある程度、見据える力が芽生えていた。


「何だ!? お前たちは!? ここには天下人豊臣秀頼様がおられるのだぞ!」


「曲者め! よりにもよって秀頼様を脅かすとは!」


 流石に真柴を守る親衛隊は強い精鋭部隊だ。一人一人が武将級の実力を持つ。

 太閤秀吉が、幼き我が子を守るために組織された最強の親衛隊の筈だった。

 だが、それを一笑に付すかの如く圧倒的な武力を誇る李舜臣は方天戟の一振りで十人の親衛隊を薙ぎ倒す。

 正に鬼神の如くなり。李舜臣は極限状態に置かれ、更なる飛躍をし、その武勇は天下に名を轟かせる。


「秀頼様お逃げを! この片桐且元が李舜臣を止めて見せます!」


「且元! すまぬ!」


 精強な親衛隊を束ねる真柴の直臣、片桐且元が涙を流す真柴を守ろうと、割って入り、李舜臣に立ち向かおうとする。

 慌てふためいた真柴は命辛々逃げるのがやっとであったが、その代わり、李舜臣は気迫を込めて片桐且元を一刀両断した。

 体が無残にも両断され、絶命。精鋭であり、最も真柴が信頼する片桐且元は馬上から転落して敢え無く討ち死にした。


「李舜臣! 何という圧倒的な武力! 秀頼様……お逃げを」


 最後まで真柴の身を案じ、片桐且元の視界は真っ暗に染まる。

 意識は刈り取られ、その叫びが断末魔となり、全ての戦場に鳴り響いた。

今回はここまで。

読んでくださりありがとうございます。

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