13 暗殺部隊(宇喜多秀家)
13 暗殺部隊(宇喜多秀家)
宇喜多秀家は自らの懐刀ともいえる明石全登が、惰弱な宰相直江兼続に敗れたのを見て呆然とした。
驚きのあまり、放心し、体が硬直してしまった。
「大殿! 明石全登様が討ち取られてしまい一体我らはどうすれば?」
側近からの声掛けにも暫く反応しないほどに宇喜多秀家は狼狽していた。
だが、宇喜多秀家は暗愚ではない。部下の声掛けを聞き、思考を巡らせる。
「大殿! まさか『宇喜多三人衆』の頭である明石全登殿が討ち取られるとは、思いもよりませぬな!」
軽口を放つのは宇喜多一族で『宇喜多三人衆』の宇喜多直盛であった。
宇喜多直盛……老け顔の髭が特徴の無骨な男だ。
「ふざけるのも大概にしろ直盛! それより、今後我らはどう動くべきでございましょうか?」
真面目な顔で言い放つのはもう一人の『宇喜多三人衆』花房正成であった。
両名ともかなりの腕利きで有能者だ。しかし、それでも明石全登のほうが遥かに格上。
明石全登を失った余波と、絶望……初めての屈辱だった。
豊臣一族として輝く栄光の道へと突き進んでいった秀家。
だが、初めて挫折を覚える。直江兼続は化け物だ。知も武も秀家の想像を遥か上をいく。
「直盛、正成。敵の暗殺部隊に気を付けろ。柳成龍……奴は李朝軍の中で最も厄介な暗殺部隊を指揮している。
直江兼続も怪物だが、それ以上に恐ろしいのは会津王国軍の頭脳である柳成龍だ。
そろそろ暗殺部隊が、我らを含む武将が暗殺されていく頃だ。私の読みではな」
秀家は冷静さを取り繕い、左翼の大将として、自軍の将兵に伝える。
実際、秀家の読みは当たる。前田利長と島津義弘が暗殺されてしまうのだ。
これには秀家とその将も血の気が引いていくのが分かった。
あれだけの勇名を轟かせた両名が、僅かな隙を見せたのちに討ち取られた。
これによって前田軍と島津軍は一旦戦場から離れ、それにより、宇喜多軍は孤立無援となった。
「馬鹿な……! 前田殿も島津殿さえも暗殺部隊にやられるとはな。
そろそろ、この宇喜多本陣にも暗殺部隊が送り込まれる。皆の者! 警戒を怠るな!」
秀家は明らかに焦りの表情を浮かべていた。これに側近たちも慌てふためく。
いつ暗殺部隊が襲ってくるのか分からないからだ。
柳成龍……李朝の宰相であり、その手腕は古の諸葛亮孔明にも匹敵するであろうと天下にその名を知らしめている。
中でも暗殺部隊は李朝軍の最大戦力であり、極めて狡猾だが、勝てば官軍という理念を掲げている。
秀家は気を引き締めて軍を統率していたが、孤立無援の残存兵力9千では心許ない。
開戦初日で豊臣軍左翼は窮地に陥っていた。
今回はここまで。
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