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デッド×3  作者: こげパン
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15/16

平穏な朝にも

『7時です! 7時です!みんなおっはよーー!!

防衛施設生活2日目だよ、張り切っていこう!

早速だけど今日は食堂に集合ーー!』

 大音量でスピーカーから流れてきたアイの陽気な放送に、俺は思わず飛び起きた。

「うるせっ……!」

 重い瞼をこすりながら、俺は二段ベッドの梯子を慎重に降りた。

下の段を見ると、真田はすでに身支度を終えて待機していた。

「おはよう」

「ん〜……おはよ……」

 眠たげな返事を返し、俺は軽く鏡の前で髪を整えてから部屋の扉を開けた。

すると、先ほどの放送に叩き起こされた面々が、次々と廊下へと溢れ出してくるところだった。

「いっやー! あんなにふわふわなベッドで寝られたのは初めてだったぜ!」

 小吉が大きく伸びをしながら、朝から元気よく飛び出してくる。

「あれ? 普通のベッドじゃなかった……?」

新田が黒子の布越しに首を傾げる。

「お兄ちゃん…寝癖がついてるよ…」

 心が小声で耳打ちして、慣れた手つきで小吉の跳ねた髪を櫛で優しくとかしてあげていた。

「……非効率的生命体……」

神鳴がひどく不機嫌そうな顔で、壁に寄りかかりながら低く呟く。

「ん? 太一君、なんだか随分と眠そうだねぇ。かわいいなぁ」

小林がどこか楽しそうに声をかけると、その横から友原が目を輝かせて弾丸ライナーのように畳みかけた。

「ねぇねぇ太一君! その眼鏡って度数どれくらい? 太一君の学校って給食だった? お弁当だった? 太一君って唐揚げにレモンかける派? かけない派?」

「答えは沈黙……。…中身のない質問に応答するのは非効率的……」

(どうやら、神鳴の寝不足の原因はアレみたいだな……)

 朝から友原に質問攻めにされている神鳴に、俺は心の中でそっと合掌した。

 一方、別の扉からは女子ふたりが姿を現す。

「女子トーク楽しかったね、御子斗ちゃん!」

「えぇ、まぁそうね……」

 楽しそうにはしゃぐ愛川の横で、上京寺は少し照れたように視線を泳がせていた。

そして唐突に愛川が厳しい視線でビシッとこちらを指差す。

「男子には秘密だからね!いくらあたしたちが可愛いからって勝手に聞き耳たてないでよね!」

「別に興味ねーよ!」

小吉が即座に否定する。

その隣では、羽京が消え入りそうな声で新田に頭を下げていた。

羽京「すもはん……俺なんかと同室なんて嫌やったよな……。やっぱり今日からは別の部屋で寝るから……!」

「いや全然気にしなくて大丈夫だよ!?」

 焦ってフォローする新田。

 さらに廊下の奥では、八幡が大あくびをしながら不満をぶちまけていた。

「あぁー、たくさん部屋開いてるくせに、なーんで同室なんだよ!」

「うぅ…朝からうるさい輩共だな……」

 倉敷が耳を押さえて顔をしかめ、不破はトボトボと歩きながら目をこすっている。

「う〜ん、まだまだ眠たいの〜……」

「マジまだ7時じゃん…だる…二度寝していー…?」

坂東は壁にもたれかかりながら、絞り出した声で呟く。

 こうして、理不尽な共同生活の「2日目」が、相変わらずの賑やかさと騒々しさとともに幕を開けたのだった。

(さて……よく寝たとはいえ、昨日の戦闘の疲労はまだ少し残っているな……)

眠たい目を擦りながら、俺たちは重い足取りで食堂へと向かった。

そして、食堂へ足を踏み入れた――その瞬間。

「おっはよーー!!」

アイが鼓膜を突き破りそうなほどの大音量で、俺たちを出迎えた。

「もっと朝から声の大きさを考えんか!」

倉敷は両耳をピタリと塞ぎ、まるで図書館で大騒ぎする客を叱りつけるような剣幕で怒鳴る。

「昨日は五人ともお疲れ様ーー! 残りの十人も、そろそろ気持ちの整理がついた頃だしさぁ……次の戦いには参加してくれるよね……?」

アイは目を潤ませ、捨てられた子犬のようにあざとく訴えかけてくる。

その仕草は一見可愛らしいものの、無機質な瞳が冷たく光っていた。

「戦わなくたっていいんだろー? それならオレは絶対にノーだぜ!」

八幡はこれまた挑発するように、大きくバッドサインを突きつけてみせた。

「もー、わがままなんだからー!」

アイはまるで、手のかかる我が子の育児に頭を抱える母親のようにため息をつく。

そしてチラチラと残りの十人の顔を順番に品定めするよう窺った。

「まぁ、今すぐとは言わないけれどさぁー…

流石に五人だけじゃ心許ないしせめて、あと二人くらいは次の戦闘に参加してくれたらなーって」

「あの……私は……」

その言葉に心がおずおずと小さく手を挙げかけようとした。

しかし――

「でも、俺たちは戦う必要ねーだろ!」

小吉が満面の笑みを浮かべ、大きな声でそれを遮った。

「え……?」

心が小さく声を漏らし、兄の顔を見はる。

「昨日のおめーらの戦いをモニター越しに見てたけどよー、みんな余裕で勝ってたじゃねーか! 俺らが戦わなくたって、あんな怪物たちやっつけられんだろ!」

小吉は悪びれる様子すらなく、あっけらかんと言ってのけた。

「無理して戦えとは言わないわ……けれど、それはあまりにも他人任せすぎないかしら」

上京寺が腕を組み、冷ややかな視線を向けながら静かに苦言を呈す。

「え? なんで? お前らが代わりに戦ってくれんだろ? それならそれでいいじゃねぇか。俺は別に戦いたくないからなー」

小吉は俺らの疲れなど知る由もなく、不思議そうに首を傾げながら、呑気に頭の後ろに手をやった。

「お兄ちゃん……」

心は哀しそうに表情を曇らせ、か細い声をこぼす。

「別に、俺らだって好き好んで戦ってるわけじゃないんだが……」

流石の俺も思わず口を挟まずにいられない。

険悪な空気がピリピリと張り詰める中

「仲間同士で言い争っていても、何も生まれないよ」

パンッーーと小林が軽く手を叩き、その場をなだめるように微笑んだ。

「ね?」

そう甘い声で付け加え、首をコテンと傾げる。

「自分は運動好きじゃないからー、戦いたくないのー。ちっともメルヘンじゃないしー」

それを合図にするように、不破がいつものマイペースな調子で口を開いた。

「あーしは絶対戦わんしー。マジだるすぎでしょ」

坂東は面倒臭そうに手をパタパタと振り、あっさりと言い切る。

「ごめん……俺は……戦うことはできないんだよ……」

新田は申し訳なさそうにぎゅっと俯きながら答えた。

「何でうちが戦わなくてはいけないんだ……! それに、アイはあからさまに怪しい……! 全っ然信用ならん……!」

倉敷は歯をギリギリと鳴らしながら、食堂の隅からアイを鋭く睨みつけている。

「可愛いあたしが、なんで命懸けで戦わないといけないのよ! ただでさえ、あたしはここから一刻も早く出たくてしょうがないっていうのに!」

愛川は不満をこれでもかと爆発させ、憎まれ口を吐き捨てた。

「俺なんて戦闘に参加したら、みんなの役に立たんどころか……余計な災難をもたらすだけだから……」

羽京は頭を両手で抱え込み、すっかり自信を喪失した様子でブツブツと呟いている。

「オレの答えはシンプルイズザベスト!死にたくねぇ!」

八幡をケラケラと笑いながら指をパチンと鳴らす。

「俺はお前らみたいな非効率的な奴らと、一緒になんか戦わない」

神鳴は冷たく眼鏡のブリッジを押し上げ、バッサリと切り捨てた。

「それがお前たちが戦わない理由か……」

真田は太い腕を組みながら、深く重いため息を吐く。

「でも大丈夫! 話し合えば僕らは絶対協力し合えるさ!」

友原はキランとウインクを決め、眩しい笑顔でグッドポーズを作った。本当にどこまでもポジティブな奴だ。

(……俺だって戦いを強制する気はないし、戦いたくないっていうみんなの気持ちも分かる)

だけど――改めて突きつけられた俺たち5人と、残りの10人の「戦いへの温度差」に、俺は少しだけ胃が重くなるのを感じていた。

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