閑話その3〜千葉一華〜
部長に連れられて累先輩が部室から出ていった。
『一華くんは揺衣くんとお喋りでもしていてくれ。』
さて、大井先輩、私とのお喋りタイムですよ。
「大井先輩。」
「……どうしたの?」
「累先輩は『失敗』しましたね。」
「……。」
「大井先輩の気持ち全然伝わってなかったじゃないですか。」
「……うん。累の中の私ってさ、そんなに小さいかな。」
「まあ小さいと言うよりは無いんじゃないですか?」
「無い?そこまでなの?」
「ええ、無いです。」
「……。」
「以前、先輩たちは幼なじみで昔からずっと一緒にいるって言ってましたよね。」
「そうだね。」
「だから、累先輩の中で大井先輩の存在って当たり前で、累先輩における自分自身という枠の中に大井先輩がすっぽり入っちゃってるんです。」
「自分自身という枠の中に?」
「ええ、だから変わっていくものの中に大井先輩が無いんです。」
「……私たちだって卒業するのに。」
「累先輩がそこまで考えてる訳ないですよ。」
「……確かに。」
「大井先輩、『失敗』って存在するんでしょうか。」
「……?」
「そもそも『失敗』ってなんだと思います?」
「……成功しないことかな?」
「ええ、そうですね。辞書にあるような意味で答えますと、行為や判断が当初の目的から外れることを『失敗』と言います。」
「それがどうかしたの?」
「果たして『失敗』というものは存在するんでしょうか。」
「いやいや、実際にある……いや、どうなんだろう。」
そうです、賢い大井先輩なら気づいてくれると思いましたよ。
「そう、『失敗』とは『成功』……当初の目的があるからこそ定義されるんです。」
「……。」
「累先輩は『失敗』しました。大井先輩にとって。」
「『失敗』……。私が累に期待をしていたから。」
「そして累先輩は自分が『失敗』したことだけは分かっています。」
「でも累は『成功』が何かを知らない。教えられてない。」
「そうです、大井先輩。『失敗』はそれを観測した人の中にだけあります。『成功』を知らない人にとってはただの『事実』なのです。」
「……私が悪かったな。ちゃんと累に謝らないと。」
「累先輩も悪い所はありますよ。」
「……?」
「『察し』です。」
正直、直接伝えていなかっただけで大井先輩の言葉ってそんなに不足していたようには感じませんでしたし……。まあ、これを言ってしまうと先程までの話がよく分からなくなりそうなので言いませんが。




