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27.静けさは訪れず

「累〜。」


「ねえ、累。」


「累?聞いてる?」


「累〜?」

「累先輩、呼ばれてますよ。」

「え、何?」

「うわ!最悪だ!累って私のことは無視するのに一華ちゃんなら1発で返事するんだ!!」

「いや、だって席隣じゃん。」

「いやいやだとしてもじゃない?」

「まあ累先輩集中してましたもんね。」

「そうなんだよ、意外と集中してるもんだから。」

「それで、どうしたんですか?大井先輩。」

「『ユニバース25』って結局人類の問題になると思う?」

「『ユニバース25』ですか?」

「あー、豆先……俺らの担任が朝礼で話してたんだよ。まあだだっ広くて十分な餌がある空間にネズミを放して、その数の変化と生活……まあ社会性について調べるってやつだな。」

「……なるほど?それでどうなったんですか?」

「まあ数が増えてからの話がメインだからそこをかなり省略して話すと、十分なスペースがあるのにネズミ達は1箇所に集まるようになったんだよ。ネズミ内の富裕層って認識でいい。逆に外にいるのが貧困層。」

「タワーマンションみたいなものでしょうか?」

「そんな感じだな。富裕層は餌を独占、ほかのネズミが来たら追い出すようになった。メスはそんなオスから逃げるように巣にこもった。それからオスが子孫を残すことに興味を失って一部は凶暴化、メスは子育てを放棄した。自分の子供達を追い出したり攻撃した。最終的に子供が育たなくなって高齢化が進んで滅びた。」

「……。」

「まあ確かに人類との共通点ってのは感じるよな。」

「今だって少子高齢化の社会だし、草食系男子とかもいるわけで。」

「でもさ、ネズミはネズミ、人は人だろ。」

「だとしてもさ、同じ生き物として本能っていうものがある訳だよ。」

「それに関しては逆のように感じます。」

「逆?」

「生き物としての本能とは生殖行為……子孫繁栄にあると思います。それが失われていくということは、本能が退化していくということではないでしょうか。」

「あ〜。確かにね、本能が退化していくことで無気力が広がっていったのか。」

「まあでもネズミと人間だとな、本能以外が違いすぎるだろ。ネズミって法律もなければ知識を伝える術もないからな。」

「法律はわかるけど……知識?」

「そう、知識。最後の方だとオスがメスに求愛する手段が分からなくなってたんだよ、ストーカーになるオスとか出てきたりしてたろ?それに子育てだってやってもらわなきゃ分からんもんだろ。子育てを教える学校も教科書もないんだから。」

「なるほどね。確かに、知識か……。」

「累先輩の割には的を得ているような気がしますね。」

「ググッたからな。」

「は?」

「はい?」

「ググッた」

「それ以上言わなくていいから。」

「潰しますよ?」

「まあでもありがとう。」

「おう。」

「それで、どうして急にそんな話を?」

「SF作品に挑戦してみようかなって前から思ってたんだけどさ。」

「いいじゃん。」

「SFですか?大井先輩といえばミステリーのイメージがあったので意外です。」

「もともと好きなジャンルではあったんだよ。それで未来の人類について考えてたんだけど、」

「都合よく『ユニバース25』のことを知ったと。」

「そうそう、そういうこと。」

「極端には感じますが、イメージとしてはかなり良さそうですね。」

「そうだな、少し整理したら十分人間に当てはめてもいけると思うぞ。」

「未来のことについて書きたいんでしたらオススメの本ありますよ。」

「そうなの?教えて欲しいな。」

「『マン・アフター・マン』という本なんですけど。」

「え、初耳。」

「おいそれ伝説の奇書じゃねえか!!」

「!?!?」

「はい。ですが未来の人類について考察するなら読んで損はないと思いますよ?」

「……そうなの?」

「500万年後の環境が激変した地球で暮らす、進化した人類についての本です。」

「……。」

「多分だがSFには未来すぎると思う。あれって生物学的に面白い本であって、創作としては読者から遠すぎるから。」

「でも人類についての本ですよ。誰もが興味あるんじゃないですか。」

「だとしたら奇書って言われてねえと思う。」

「……。」

「まあ一応読んでみるよ。」

「いいんですか!でしたら私ちょうど持ってるんで貸しますよ!!」

「ちょうど持ってる???」

「いいの?ありがとう。じゃあ借りるね。」

「どうぞ。」

「うわ、すっごいビジュ。」

「まあなかなかインパクトあるよな。」

「うわ、すっごいビジュ。」

「お前今俺に向かって言ったよなあ!!!!」

「いや、なんか出てきたから……。妖怪の仲間?」

「誰がじゃ!!というかSFだったらもしかしたら『死への羽ばたき』について調べてもいいかもしれんぞ。」

「累先輩知ってるんですか?」

「もしかして千葉も知ってる?」

「ええ。なんというか知的好奇心の罪深さのようなものを感じますよね。」

「そうだな、だからこそSFとは相性いいと思うが。」

「累先輩の言う通りですね。大井先輩、『死への羽ばたき』についても調べてみるといいかもしれません。蛾の写真が出てくるのが大丈夫でしたらですが。」

「ああ、うん。写真なら大丈夫だよ。じゃあ調べてみるね。」

「俺的にもオススメ。」

「というか、累と一華ちゃんって趣味結構合うの?」

「どうなんだろな。俺としては千葉の読む本の幅が広いだけって気もするけど。」

「どうなんでしょう。……ですがあまり趣味が合う人がいない本に限っては累先輩が読んでたり知っていたりすることが多い気がします。」

「累って逆張りオタクだからね。」

「いや、違う違う。逆ばってるつもりはねえから!」


 ほんとにそんなつもりないんだよ?雑学とか好きなだけで……。

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