10.あの頃は
なんと過去編に突入
「まあ、あの時は頑張ってたんだけどな。」
「あの時?」
俺たちが中学3年生の時……
「決めた!!」
「なんだ急に。」
「私累と同じ高校に行く!!」
「マジ?無理あるぜ?」
「偏差値60くらいいけるいける!」
「お前42だろ。」
「たかが18でしょ?」
「お前受験なめんなよ!?!?」
「やだやだやだやだ!!!!同じ高校行きたい!!!!」
「なんでだよ。普通にテニスの強豪校とかあんだろ?そこ行けよ。」
「だって偏差値めっちゃ低いじゃん!!バカしかいないよ!!!!」
「お前がそのバカなんだよ!!!!」
「揺衣も何とか言ってよ!!!!」
「えぇ……?」
「厳しくね?」
「めっちゃ厳しい。」
「まあ勉強させてみなきゃわかんねえかなぁ?」
「見通し甘くない?……まあそうだね。一旦やらせてみようか。勉強するにこしたことはないし。」
「任せてよ!!!!なんとかなるっしょ!!」
1ヶ月後……
「なりませんでした!!!!」
「まあそうだろな。偏差値いくつだったん?」
「45」
「ちゃんと伸びてるから哀れむしかできねえな。どう?」
「まあひとりでよく頑張ったと思うよ。」
「ん〜!!(涙目)」
飛跳としては本気で頑張ったんだろう。そう思うと心が苦しいが、足りないのは本人の実力だ。
「スポーツ推薦狙えば行けるんじゃない?」
揺衣が提案した。たしかに県上位レベルだしいけるかも。
「たしかに行けるかもな。」
「え!ほんと!?!?」
「というかなんで今まで思いつかなかったんだろな。」
「いやあ、私は内申メインの推薦だし、累は一般だからさ、関係ないから忘れてた。」
「強豪校は普通に飛跳でも入れるレベルだったしな。」
「私でも累の高校入れるの?」
「約束はできんが結構部がよさそうだぞ?」
「私勉強しなくてもいいの!?!?」
「いや、にしても点が低いだろ。」
「うわぁぁぁぁ!」
「私は小論とかメインだし、勉強は面倒見てあげるよ。」
「揺衣〜!!!!」
「むしろ今までよく頑張ったね、偉い偉い。」
揺衣に頭を撫でられながら飛跳はニシシと笑った。
そこから飛跳は専属教師揺衣の下で点数アップに励んだ。……その結果
「どうだった?」
「50いった!!!!」
「高校生の2分の1がこいつに負けたって恐ろしいな。」
「ふふん!これが私の力だよ、めっちゃ頑張ったでしょ。」
「ああ、頑張ったな!!揺衣が。」
「はぁ……はぁ……。任せてよ。」
「俺の点を抜かさない程度に頼む。」
「はっはっは!!余裕でぶち抜いたるわ!!」
「お前が自慢げにするのはちげえからな?」
それ以降飛跳の勉強は揺衣がみることになった。
「まあだから揺衣に任せとけば問題ないだろ。」
「それって大丈夫なの!?大井さんが!!!!」
「まあまあ、いけるいける。」
「そこ2人静かにしてくれない?」
「「ごめんなさい」」
バツが悪い思いでノートに目を落とし、ちゃんと勉強することにした。
そんなこんなで昼の勉強会が終わり放課後。僕、橘勇気は教室での居残り勉強会に参加することになった。
「乗りかかった船だし、テストまで付き合うけど……。」
正直僕は教えるのに向いてないし、いる意味はそんなにない。
「私一人だと飛跳が逃げた時に大変だから。」
「それで大井さん……?これは一体……。」
「私はブラキオサウルス……私はブラキオサウルス……。」
「あはは……飛跳がこんなになっちゃった。」
「私はブラキオサウルス、学校を踏み潰す。」
「馬鹿なこと言ってないで勉強。」
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「賑やかだなあ……。」
ちなみに、重くんは
「勉強の邪魔になるから帰って。」
「わーお、すっごくちべたい(冷たい)」
帰らされた。
「甘やかすし、そもそも累も自分の勉強があるでしょ。」
「そういう大井さんは?」
「もう反芻して落とし込むだけだから、今は教えることが一番の勉強かな。」
「さすが大井さんって感じだね。」
「……橘くんに言われてもね。」
「勉強時間が違うから。」
「ふぅん?自信満々だね。」
「そこは自信もって学級委員長やってるからね!!!!」
「ひゅー!かっちょいいねえ。」
「僕はミスター委員長になる男だからね!」
「すごいね、よく分かんないけど。」
ガリ勉メガネとしてのプライドがあるのだ。
「揺衣〜これわかんない……。」
「あ〜、ここか。これはね……」
それにしても、大井さんは本当に凄いな。なんというか風花さんが疑問に思いそうなことがわかっているかのように滑らかに教えている。すごく尊敬だ。
でもそれでいいのか?という気持ちも湧いてくる。僕もただ自分の勉強をするだけじゃなくて成長する必要があるのではないだろうか。
「大井さん。風花さん。僕が勉強を教えてもいいですか。」
「いいけれど、風向きでも変わった?」
「男心も秋の空ということでね。」
「私は誰だとしても嫌です!!!!」
「飛跳に拒否権ないから。」
「んふぅんんんんぁあ!!」
風花さんの咽び泣きを置き去りに大井さんと席を交換する。
「今度こそ分かりやすく教えるからさ。よろしくね?」
軽く頭を下げて風花さんにお願いする。
「よい、面をあげよ。」
「……。」
切り替えが早すぎて怖い。
「……ありがとう。じゃあ勉強しようか。」
2分後
「橘〜ここわかんない。」
「ここね、えっとバーッとしてヒューン!だよ!!」
「分かった!バーッとして!」
風花さんが荷物をカバンに乱雑に詰め込んで勢いよく立ち上がった。
「ヒューン!!!!」
風花さんがそのまま教室の外まで走って飛び出した。
「……。(唖然)」
「……。(呆然)」
ゆっくりと大井さんの方を振り向き、目を見合わせる。……すごい表情をしている。多分僕も同じ表情をしているんだろうな……。なぜかそんなことを考える妙な余裕があった。
だんだん停止していた思考が動き始めてきた。……肩が震える、冷や汗もすごい。
「「あいつ逃げた!!!!」」
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