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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は恋も運命も乗り越えます!  作者: 栗栖 龍


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おじい様のお膝元でのひと時2

※BL表現というか男性同士のカップルがばれます。

 フィオラは転移前のドラクとのやり取りを皆に説明したうえでリュドに質問を投げかけた。


「というわけでドラクが役立たずだったから、男にも女にもモテてるリュドに聞いてみようかって話になって。恋と愛の違いとか、恋愛の仕方とか、教えてもらえない?」


 その質問にはリュドだけでなく、エリサも答えを返してきた。


「確かにもてますが、領内どころか、この国一番の恋愛鈍ちんと呼ばれる私に聞きますか?」

「リュドに聞いても無駄だと思われます」

「秋波を向けられても一切気づかないこいつに聞いても無意味かと……」


 ガルシオも畳みかけてきたので、本当に鈍いんだなと思いつつも、フィオラには少し引っかかることがあった。以前にパートナーはいると聞いたことがあった覚えがあったのにと。


「リュドは恋愛に興味が無いの?でもパートナーはいるのよね?」

「はい。幼馴染と付き合っているので、他を受け付けないだけです」

「え!リュドの恋人って幼馴染なの!?誰?」


 その瞬間、なぜかこの場に緊張が走った。それを察したフィオラはびっくりしてきょろきょろと周りを見回してしまった。


「やはりフィオラ様も本当に鈍いのですね」

「デマロ様……確かにフィオラ様も鈍いですが」

「え?」


 その場にいる皆は、いまだにきょろきょろとしているフィオラを見てからリュドに目を向けた。


「知らないのならしょうがありません。私リュドルクと、エリサの兄のカルスと、フィオラ様の三人が、ドラゴメサ城三大恋愛朴念仁と呼ばれております」

「ええええっ!」

「朴念仁の度合いは、名前を挙げた順で強くなると言われています」

「私が一番上って事……よね」

「はい。私は恋人がいるから三番目というだけで、団栗の背比べと言われています。私の恋人のことは城内で知らぬ者はいません。それが誰かまでは街では知られておりませんが……恋人がいることを隠しているつもりはありませんが、そうでなくとも分かり易いようです」

「そうなの?それで、誰??」


 リュドは、自分の隣で北の酒のフルーツジュース割りを楽しんでいたユルの肩を抱いてから、その疑問に答えた。


「……あなたの料理番です」

「え????ユル???」

「気づいてないのは、フィオラ様とカルスさんくらいですよ」


 口を開けっ放しで驚いているフィオラは、そのままカルスの方も見た。

 名指しされたカルスも、フィオラと同じように驚愕と言った表情を顔に浮かべていた。


「兄は自分の恋愛にも、他人の恋愛にも興味が無さすぎるので」

「マジで!?」

「……マジです」


 普段なら淑女らしからぬ言葉ということで止めるエリサも、無礼講というのもあって、フィオラの発した言葉をそのまま返していた。

 そしてフィオラはまさかのBL展開に動揺を隠せないながらも、色々聞きたくなっていた。


(前世では若干腐ってたから……がっつりだと付いていけないことも多かったけど、ブロマンスからの萌は最高だし……と、それは今はどうでもよくって)

「でも付き合ってるってことは、申し込んだか、申し込まれたかしたのよね?付き合いをOKしたってことは、その時は好きって思ってた……のよね?」

「ええ、まあ……」

「なんかごまかそうとしてる?」

「……ユルから他の人間から告白されたと言われた瞬間、自分のものにしたいという欲求がわきまして、それで自覚したというか」

「なるほど」


 その時、普段なら主従の会話に入り込まず聞いているだけのフォルトの従者のオヴィディオが、酔っているからか素直な疑問を投げかけてしまった。


「そういえば、いきなり抱きしめて俺と付き合ってくれって告白したって本当?」

「なんでそれを……ユルから聞いたのか?」

「え、オヴィってば疑ってたの?」

「本当なんだ。ユルが大げさに言ってただけかと思ってた」

「ああ、本当だ」

「ふふ~ん、情熱的でいいでしょ~♪」

「やめてくれ」


 真っ赤になってユルの口をふさぐリュドと、まあまあととりなしているオヴィディオの横でフィオラは何か考えていた。そして答えが出たのか、ぼそぼそと本音を口に出した。


「でも、大司教様が他の人と婚約されたとしてって考えても、別に何とも思わないというか…よくわからないというか……」

「それは目の前に迫った危機じゃないからじゃないの?」


 普段からフィオラ達に気楽な口調で語りかけるユルが鋭い指摘をしてきた。


「え?」

「確かに。実際に目の前で奪われそうにならないと自覚できないのでは?」

「……変なフラグを立てられた気分だわ」

「フラグ?」

「物語に出てくるフラグ?えーと悪い予言というか、幸せになるはずのことを言うと、実際には悪い事が起きるってやつ?」

「ああ、戦いの前に告白すると死ぬって、以前フィオラ様が仰ってたあれですか」

「その通りなんだけど、確認するのは止めて……本当になりそうじゃない」

「それはそれは」

「失礼しました♪」

「フィオラ様もこちらをどうぞ」


 オヴィディオがフィオラに、ユルが飲んでいたのと同じものを出してくれたので、水魔法でさらに冷やしながらゆっくり飲み始めた。すると側に居たシアとトリアがフィオラに質問をしてきた。


「私たちが気になったことを聞いても宜しいですか?」

「ん?いいけど」

「フィオラ様は今まで男性にときめいたとか、いいなと思ったことは一切ないのでしょうか?」

「かっこいいなとか素敵だな程度でいいんですけど……」

「ん、ん~……なくは、ないかも?」

「例えは?」

「リュドの強さやガルシオの素早さにカッコいいって思ったり、アレクの力強さやデマロの美しさにうっかりときめいたことがあったって言えばあったけど」

「恋愛感情ではないと」

「たぶん?それも小さい頃の話だし」

「幼い頃からいいものを見すぎると、基準が上がるとか?」

「私は(ガルシオ)をカッコいいって思ったことがないんだけど」

「それは年齢差もあるんじゃないかしら?シアとガルシオさんは二歳差だけど、フィオラ様とは十一歳も差があるから」


 そんな風に自分のことを分析されているとフィオラはむずがゆくなってきた。それが嫌だったのと、情報は重要だと思ったので、フィオラは逆に質問を返してみた。


「シアは(ロゲル)に学生時代から好かれててそれがきっかけで付き合ったって知ってるけど、トリアは領城で知り合ったのよね?どうやって、その、付き合ったって言うか、付き合い始めたきっかけとか、好きになったきっかけとかってなんだったのかなあって?」


 質問し終わった瞬間にトリアの顔が一気に赤くなった。そして友人のシアとぼそぼそ話し合った末に、シアがきっかけを教えてくれた。

 トリアと領城の公認会計士の一人であるパウロは、王立高等学園でクラスが一緒だったことはあるが、文官と騎士ということでコースがかけ離れていたため、学生時代はほとんど面識がなかった。

 自分達に送れること二年後にパウロがドラコメサに就職したことで同僚程度の付き合いはあったが、特に仲がいいということはなかった。

 そんな二人に聖竜様のいたずらか、ある転機が訪れた。

 領城には温泉が引かれており、男女別の大浴場のほかにも個室がいくつか用意されているのだが……。

 ある日、魔獣を打倒したはいいが頭も鎧も血肉で汚れたトリアは、全部一緒に洗いたいからと空いている個室を利用した。だがその時に、使用中の札をかけ忘れた上に、着替えも脱衣室でなく浴室に持ってきてしまった。

 そのために「空室」と信じで一人のんびり湯につかろうと思っていたパウロがそこの浴室に入ってしまい、そこで彼が目にしたのは、入浴用の衣服である「湯浴み着」をこれから着用しようとしているトリアの素っ裸だった。


「それがきっかけだそうです」

「え?どこからどうしたら好きになるの?」

「それは……」


 ここまで真っ赤になった顔を両手で隠して俯いていた本人が、その先は教えてくれた。

 その時慌てて浴室を出ようとしたパウロが滑って転んでしまい、驚いたトリアは湯浴み着を素早く着つけると彼の側に駆け寄った。

 幸い頭は打っておらず、痛そうにしている腕や腰を確かめようとしていたら、彼はなぜか真っ赤になって手で肩を押し返してきた。どうしたと思っているとか細い声で「お願いだから、タオルを巻いてくれ」とお願いされたと。

 何故と思って自分を見て見れば湯浴み着が濡れた体に張り付いて、ボディラインどころか、バストの形も細部までしっかり分かる状態になっていた。

 元々トリアは彼の上司で「ドラコメサの金庫番」と呼ばれるリナルドに恋したことがあるくらいに、細身で知的な男が理想のタイプで……そんな男が目の前で恥じらっている姿が可愛いなと意識したのが、恋の始まりいうことだった。

 もともとパウロも同い年で美人系のトリアのことは気になっていた所にこの事件で、「裸を見た責任を取らせてください」から始まった付き合いではあったが、「君の強さと優しさにどんどん惹かれていった」とプロポーズされたということだった。


「夫婦同士で飲んでいる時に、パウロが腰つきも好みだったとうっかり漏らしたので、トリアが体で落としたと思っているんですが」

「闘って叩き落したシアには言われたくない」


 シアの夫婦はビアたちと似ている。どちらも騎士で、良く闘っていた相手だった。

 違うのはシアとロゲルは学園で平民出身の騎士科の生徒同士として出会い、ロゲルが自分より強いシアに突っかかっていくうちに好きになった。どうしても落としたかったが負けた相手に告白するなんてとプライドが許さず、無謀な賭けを仕掛けては叩き潰されていた話は、ドラコメサでは有名だ。

 賭けにまけた代償でドラコメサの騎士団に入ったと言われているが、そうでなくとも追いかける気は満々で、そこで兄のガルシオにも叩きのめされた上に「あいつを落としたかったら、まずは俺を倒せ」というセリフを聞いてシアは初めてロゲルが自分を好いていると知ったそうだ。

 そしてストレートに告白されて受け入れたと。


「どっちも体で落としたことには間違いないのかも?」

「そうでしょうか?」

「そうよ」


 そんな話を女性三人でキャッキャと話していたら、後ろの方では何か歓声というよりはたくさんのうめき声が上がっていた。

 どうしたんだろうとフィオラは振り返った。


「ああ、賭けと言えば」

「結果が出たものね」

「え?何の話?」

「フィオラ様がいつリュド先輩カップルのことに気づくか皆で賭けていました」

「一つの括りが、フィオラ様が卒業するまでだったので、私もトリアも負けが確定していましたが」

「卒業後や状況で賭けていた方が負けてうめいているのだと」

「何、それ!」

 

 一体何のことかと中心にいるデマロに聞いてみると、フィオラが学園に通う前に「フィオラ様がリュドとユルが付き合っていることに気づいていない」というのが判明してから、いつ気付くかが賭けの対象になっていたとのことだった。

 “成人する十六歳の誕生日までに”の様に時間で区切る者や、“二人のデートを目撃した時に”のように状況で判断する者に分かれたが、各々自由に賭けたそうだ。一人一回銀貨一枚のみという制約で。

 結果として“何らかの事情で本人がばらした時”に賭けたリュドとエリサが賞金を山分けすることが決定したという事だった。


「“キスとかの確実な行為を見られてバレる”に賭けてたのにな~。この騒ぎが無かったら勝ってたと思うのに」

「否定できない自分が辛いわ」

「しょうがないよ、フィオラ様。でも大丈夫。リュドもそういうタイプだから」

「それって慰めになるの!?」

「何気に俺も貶められてる気がするんだが」

「気のせい気のせいw」


 ユルたちと話していると、その横でフォルトがなんとなくがっかりしているのに気が付いた。


「フォルも賭けてたの?」

「賭けていないのは姉さまとカルスくらいです。僕は“結婚するまでに”に賭けていましたが、婚約時にしておけば……それでも違うと胴元(デマロ)にはじかれそうですね」

「教えてくれればよかったのに」

「まさか気付いていないとは思いませんでした。そして賭けの話が出てきたので、以後黙っておくことに決めました」

「……あの二人ってそんなにあからさまだったの?」

「……なんで気づけないのかが不思議なくらいに」

「そう?」

「はい。だから姉さまも恋愛面はポンコツなんだなと」

「酷くない!?」

「事実です。というか、誰よりもあの二人の側に居たのに、本人から申告(バラ)されるまで気づけないってどういうことですか?どんな目をしているのですか」

「こんな目」

「造形の話ではありません」

「だって、本当にわかんなかったんだもん」


 姉弟でわちゃわちゃと楽しく会話をしていると、ドラクがそんな二人を暖かい目で見ているのに気が付いた。


「何、ドラク」

「なんですか、ドラク」


 同じタイミングでそう聞いてきた姉弟にガハハと笑ってから、ドラクは二人の頭を優しくなでてきた。


「「え?」」

「お主たちの仲がいい(さま)が楽しくてな。それに二人の魂は双子のようにそっくりで、面白い」

「……そこまで似ていると言われると複雑です」

「そこまで似てなくない?」

「性格の話ではなく、魔力の話だな」

「ああ、確かに」


 横から参加してきたのはリュドだった。


「お二人の魔力の波紋は瓜二つなので」

「魔力の波紋って、そこまで見えてたの?」


 この世界には魔力を感知できる人間がいる。それも二種類。魔力を「感じる」者と「見る」者。

 耳の良いものが魔力の波を感じることができ、目の良いものが魔力を色として見ることができる。リュドもその一人で魔力を目で見ることができるのは知っていたが、一人一人違うと言われている波紋まで見えているとは驚きだった。


「フィオラ様の言われるところの隠し芸の一つです」

「流石、私たちの兄代わりだけあるわ」

「リュドが兄か。では我はどうだ?」


 いきなり振られた質問にフィオラは一瞬考え、フォルトを見てから回答をしたが、


「「近所のおじさん」って感じ」


前半がフォルトと声が重なった。


「はっはっは。本当に仲が良いのう。だが父ではないのか?」

「だってお父さんとかおじいさんって言うよりも、近くにいて見守ってもくれるけど、基本的に私達の成長を見て楽しんでるだけって感じがするもん」

「とすると、竜都にいる昔馴染みのおじさんと達と同じだと思います」

「なるほどのう」


 カラカラと笑いながらドラクは再び二人の頭を優しくなでた。


「本当に良き姉弟だ。いつまでも仲良くするのだぞ」


 その後、いつも通りアレクがドラクに飲み比べを持ち掛け、それを見ながら皆飲みすぎ、リュドの水魔法でアルコールを抜いてもらうといういつも通りの楽しい宴会が日が変わるころまで続いたのだった。



そして今晩、フラグは確実に立ち上がっていた。

※銀貨一枚=千円くらい。延べ500人位賭けているので、リュドとエリサは25万程の臨時収入を得ますw


お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

リアクションの方もよろしくお願いします!

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。



リュドは城外では相手がだれかばれていないと思い込んでいますが、実はバレています。

リュドがユルと出かけていると、どう考えてもカップルのデートにしか見えないのでバレバレです。

ただし、フィオラが恋愛に関して鈍いことも皆知っているので、「フィオラ様が自力で気づくまでは」と知らぬふりをしてくれているだけです。

でも結局、超恋愛朴念仁なので気づけませんでしたw


トリアが個室でも湯浴み着を着ようとしていたのは、彼女が貴族家の娘で体を洗った後は湯浴み着を着るのが習慣になっているからです。貴族は慎み深い人が多いので。


隠し芸という表現はこちらの世界にはありませんが、フィオラがリュドの特殊能力を知る度に「隠し芸が増えた」というので、リュドもその表現を覚えました。



これを上げる最終チェックをしている時に熊本地震の情報が入りました。九州の皆様は大丈夫でしたでしょうか?

これを読んでくださっている皆様は無事でありますようにと祈ります。

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