↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は恋も運命も乗り越えます!  作者: 栗栖 龍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

大司教奪還作戦3

 広い空間は岩盤をくりぬいて作ったのか、壁と天井を支える柱の色や雰囲気が、地層の違いによる色の変わり目なども全く同じだった。天井も同じ素材のようだが、何か模様が描かれており、床にいたっては大理石のようにすべすべな色違いの石が文字や模様を表すように配されていた。

 ただ、光源が天井に数個埋め込まれた魔石と前方に設置されているロウソクや松明の明かりだけなので、フィオラ達の居る付近は仄暗かった。


「古い神殿のようね」

「そうですね。奥に祭壇がありそうですし」

「祭壇?」


 入口は部屋の真ん中より左にずれていたらしく、フィオラが右の奥の方を覗き見ると柱の合間から奥の壁の中央付近を見ることができた。たしかに、神が降りる場とでも言おうか、柱で支えられた屋根のある奥行きの浅い神殿をかたどったような祭壇らしきものがあった。

 そしてもっと目を凝らしてみれば、その最奥の壁には何か模様が――魔方陣らしきものが描かれており、その中央には誰かが貼り付けにされていた。

 フィオラは悲鳴を上げそうになるのを左手で口をふさいで飲み込んだ。

 貼り付けになっている人物の顔は見えないが、ベージュブロンドの髪に緋色のポンチョという服装に、そこに居るのが大司教であると確信が持てた。

 助けに行かなければと焦るフィオラを落ち着かせるように、フォルトが姉の肩を右手で優しく叩き、小さな声で提案を告げた。


「彼らが話している隙に、しゃがみながらゆっくり、少しでも前方に進みましょう」

「わかったわ」


 灯(ともしび)のあるあたりは床のタイルが光を反射していて明るいが、後ろや隅の方までは光が届いていないためそこそこ暗く、ゆっくり進めばかなり祭壇に近い所まで行けそうだった。

 二人はゆっくり進みながら、祭壇前にいる数人が話している言葉に耳を傾けた。

 誰も来られないと踏んでいるからか、巡回する者もおらず、7人位が固まって話し合っていた。漏れ聞こえるのは魔王の名前(マルキュモンマエル)と、聖竜と女神と生贄とあれといった言葉だった。


「……がほん……マルキュ……エル様……覚め……」

「当たり前だ!女神と聖竜の力を……」

「……生贄の……尽きた……か?」

「もう一人……連れて……つなぎにあれを……」

「あれは……相手をさせ……はずでは?」


 「生贄の」「尽きた」の言葉にフィオラは焦りそうになったが、それに気づいたのかフォルトがつないでいた手に力を入れて、落ち着けと伝えてくれたので、フィオラはフォルトの先導に従うようにゆるゆると歩みを勧めた。

 最奥まであと5メートルくらいのところでフォルトが祭壇の壁を指さした。

 貼り付けられ、俯いている大司教は薄目を開けて、魔王の使徒たちを睨みつけているのに気が付けて、姉弟はほっとすることができた。

 その視線につられて使徒たちを見ると、その中にはあの破落戸(ゴロツキ)が、マルサクラウォ元侯爵家の三男フランクがいた。先ほどまでは黒いローブの男たちしかいなかったので、今しがた合流したのだろう。


「彼も闇属性の持ち主なのかしら?」

「どうでしょう……あの魔石で何とかしているのかもしれません」


 破落戸フランクの首には小ぶりだが漆黒の石で作られたペンダントが下がっていた。あれが魔石なら闇の繭か何かを発動させて身を守っているのかもしれない。

 さてどうするかと思っていると、いらいらしたフランクの声が耳に飛び込んできた。


「まだなのか!?」

「あと30分もすれば真夜中になる」

「本当にその一瞬しか機会はないのか?」

「闇の力が一番増す真夜中の一瞬しか、魔王様と魔方陣が繋がることは出来ない」

「まったく、その一瞬がどれくらいいるというのだ」

「魔王様が力をとりもどすまでずっと、としか言えぬ」

「ええい、早く力を取り戻してもらわねば、私が力を得ることが出来んではないか!」

「しばし待て。一瞬とは言え、女神と聖竜の力を送ることができれば、魔王様の復活も夢ではないのだ」

「私はもうこれに掛けるしかないのだぞ。家も取り潰され、経済的にも追い詰められている今、頼みの綱はお前たちの主なのだからな!」

「分かっているとも。今までの働きに感謝して、こうして貴君を招待しているのだ。もう少しだけ待て」

「ちっ」


 フランクはぶつぶつと文句を言いながらも、祭壇の前に置かれた長椅子に腰掛け、大司教を睨み返しながらタンタンとリズムを刻むようにつま先で床を叩いていた。

 その足音のおかげで姉弟は相談がしやすくなった。


「真夜中まで時間が無いわね」

「はい。何とかあの魔方陣を壊しませんと」

「大司教様を下ろすだけじゃダメなの?」

「たぶんですが、魔方陣の力で大司教様のお身体が貼り付けられていると言いますか」

「え?……ほんとだ、なんか魔力が流れてる感じがする」

「もしかすると、いったん魔方陣に力を蓄えて、真夜中に魔王とつながった瞬間にその力が送られるのでは?」

「じゃあ、壊さないとだめそうね……どうする?」

「光や闇の魔力は吸い取られそうなので、お互いの第二魔法属性である火と水で攻撃しましょう」

「わかったわ。3,2,1、発動でいい?」

「はい」


 姉弟はそれぞれ第二魔法属性の得意な攻撃魔法を思い浮かべて、準備を終えた。


「いくわよ。3,2,1,『氷の槍!』」

「『業火の槍!』」


 二つの力強い槍は同時に魔方陣に当たったものの、吸い込まれるように消えてしまった。

 その瞬間、魔王の使徒たちが騒然となった。そして「なんだ!?」「だれだ!?」と叫びながら姉弟の方を見た。

 そうなればフィオラのやることはただ一つ。


「あらあら、間抜けな使徒たちと違って面倒くさそうな魔方陣ですこと」


 全力で使徒たちを煽ることだった。

 フォルトは半ば呆れていたが、数名は確実につられていた。


「ま、間抜けだと!」

「我らを愚弄するか!」

「あら、その魔方陣は、昔の偉人の作品ではありませんの?だとしたら、知恵は全て過去の偉人だよりで、貴方方は設置しただけではありませんの?そもそも……」


 ハンター服を着ているフィオラは残念ながら扇を持ち合わせていなかったので、左手の指の甲にキスするような感じで口元を隠した。


「貴方方は本当にこの魔方陣を理解されているのかしら?」


 その口元に嘲笑が浮かんでいるのは、見えていない使徒たちにも伝わっていた。


「理解できていない物を使う馬鹿だと思ったか!?」

「やめろ!」

「この男の祝福と加護を使い女神と聖竜とのつながりを作り、魔王様に二柱の力送るための魔方陣だ」

「その程度のことは、見ればわかりますわ。古い魔法用語で書かれておりますもの」


 実際、フィオラには魔方陣に書かれている文字が読めた。小難しい表現が多い上に大司教の体で隠されてしまっているが、力を送るための呪文は見えるところに書かれていた。


「それだけで理解していると言われても……ねえ」


 フォルトに同意を取るように「ふふっ」と笑いかけると、フォルトは無言でうなずいた。

 そうすれば血気盛んな使徒が、相手に情報を与えるのを止めようとした仲間を押さえつけてまで、さらに反論してきた。


「この魔法陣はなあ、6属性全てを同時にぶつけでもしない限り、壊れないほどの優れものだ」

「その改良をしたのは我らだ!」

「昔からのままでは、魔法をぶつけられただけで壊れてしまうものだったからな」


その後も「繊細な魔方陣にさらに強化を付与するのは大変だった」等、自分たちがいかに有能な人間かを騙り続けていた。

 それを聞きながら姉弟は小さな声で雑談をしていた。


「……これがフラグというやつですか?」

「……フラグは聖竜さまの言葉な気がするけど」

「複数人で心を合わせてという方法もあるが無理だろうな。心を一つにすることなど常人には無理だからな」

「ね?」

「ではこれらは?」

「墓穴掘りかなあ」

「なるほど」


 両方の言葉を聞いている者がいたら、なんてちぐはぐな会話だと思った事だろう。

 そろそろ押さえつけられている男が馬鹿を振り払って止めそうだなと思ったフィオラは、手のつなぎ方を互いの指を絡め合う方法に変え、そしてフォルトに自分の3つの魔力を流し始めた。

 その意をくんだフォルトからも、自分のとは別の3つの魔力が返ってきた。

 そうして魔力をなじませ合い、心を共鳴させるために、二人は祝詞にも似た言葉を述べ始めた。


「我々はドラコサを継ぐもの」

「我々の理念は守ること」

「領地を守り」

「領民を守り」

「そして聖竜様を守る」

「それがドラゴメサを継ぐ者の理念」


 唱えることで心も魔力も共鳴させられた。何を放てばいいか、自然と魔法のイメージが湧いて出た。


「『全属性魔法』」

「『力の矢』」


 その声と共に、それぞれの属性の六本の矢が、魔方陣に向かって放たれた。

 当たった時、一瞬吸い込まれそうな感覚はあったが、吸い込め切れず魔方陣自体にひびが入った。その瞬間、大司教が剥がれ落ちた、


「……『軽減』……『加速』」


 大司教は自分の体に軽量と加速の魔法をかけると、姉弟の足元に滑り落ちた。


「だ、セティオ様!『活性』」

「大丈夫ですか、大司教様」

「大丈夫ですよ。フィオラ嬢も、もう充分です。ありがとうございます」


 敵が騒然とする中、フォルトが闇魔法と風魔法の複合魔法の闇の旋風を放つと、敵は後方に飛ばされた。


「わーお」

「やはり闇と親和性の高い黒の魔力が満ちているところでは、闇魔法の威力が上がりますね」

「セティオ様は大丈夫ですか?」

「まあボロボロですがまだ何とか、それよりも……」


 大司教はひびの入った魔方陣を見上げると、そのままフィオラに次にやることの指示を出した。


「フィオラ、私が女神さまへの、あなたが聖竜様への祝詞を唱え、それぞれの力を光の矢に乗せて魔法陣を砕きますよ」

「私はまだ魔力が残っていますが、セティオ様は大丈夫なんですか?」

「ええ。どちらかとえば私を通じて、聖竜様と女神様の力が吸収されていたようで、私自身の魔力はまだ残っています」

「分かりました。フォル」

「はい。防御は任せてください『守りの壁』」


 フォルトは自分たち三人以外がこちらに近寄れないのをイメージしたうえで、魔方陣より向こう側から自分たちの後方の壁と天井を覆うように闇の魔力で守りの壁を張った。

 大司教とフィオラはそれを見てから祝詞を唱え始めた。


「【御心は我が声と 共に寄り添い 闇に惑いし幼子を 御許へと委ねよ 惑わせし悪しきもの 追い払いたもう 幼子の行く先の 標に光よ、あれ】」

「【聖竜様。御身が愛いとし子らの願いを聞き給え。この世界を、愛しき子供たちを守るために、いと尊き聖なる光の力をお貸しください】」

「「『光の矢!』」」


 二人が祝詞を唱え終わった後に放った光の矢は無数に別れて魔方陣を貫いた。

 矢は魔方陣のひび割れをさらにえぐり、広げ、壁ごと崩壊させていったが、その反動で祭壇の壁だけでなく天井にも大きなひび割れが出来た。


「結局こうなるんですね。【聖竜様、私にさらなる守りの力を】『守りの壁!』」

「私の所為じゃないもん。でもチャンスだわ。リュド!信じてるから!!」


 フィオラは柱に手をつくと、天井を見上げて、その上の岩盤全てを崩すイメージを浮かべた。


「『崩落!』」


 すると天井が大きな音を上げて裂け、次いで崩れ落ち始めた。フォルトの守りの壁のおかげでフィオラ達の居るところの崩落は緩やかになっていたが、全て落ちてくるのは時間の問題のようだった。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

リアクションの方もよろしくお願いします!

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


少し遅れましたが今週中にアップできました。

そして次の三連休は予定が詰まってるので……また遅れるかもorz

でもできれば週一ペースでアップしたいと思っているので頑張ります。


というか、なんとなくですが、面白いシーンがないと進みが悪くなるような気がしてきました……。

フィオラの高笑いを入れたら続きが浮かんだので^^;

やはり笑いは重要です(`・ω・´)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。