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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は恋も運命も乗り越えます!  作者: 栗栖 龍


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大司教奪還作戦1

「出られません!」


 その声が領城に響いたのは、リュドたちが再び装備を整え、玄関ホールに集まり始めた時だった。

 何事かと思っていると、出入り口に居たノドフォルモントの騎士の一人が報告のためにこちらに駆けてきた。


「外を警戒していた騎士たちが息苦しさを感じ始めたので、急いで城内に退避させました。そして外の確認に再度出ようとしたのですが、見えない何かにはじかれるように外に出られなくなりました」


 どういうことかと扉に向かうと、数人の騎士たちが外に手をかざそうとして、見えない壁にはじかれるように手を先に内側に倒れるということを繰り返していた。


「いったい何が起きている」

「外に出られないだって?」


 リュドとガルシオも確認しようと、開け放たれた扉の向こう側に手を差し出した瞬間だった。


「ぐぁっ!」

「ガルシオ!?」


 ガルシオが領兵同様弾き飛ばされたが、リュドは全く何ともないという状況だった。


「どういうことかしら」


 そう呟きながら手を差し出したフィオラも平気だった。


「私は何ともないわ」

「へー、何だろうね」


 それを見ていた好奇心旺盛なユルが同じく手を差し出した。すると、


「うにゃっ! なんか、ピリピリする!」


と叫びながらも弾き飛ばされることはなく、扉から一歩外に出て戻ることができた。

 いったい何が起きているのかと、皆が目を皿のようにして驚いていると、モノクルを付けてその様子を観察していたジャドがユルに何かを告げた後にとんでもないことを言い始めた。


「アグネス嬢。貴方も試して頂けませんか?」

「え?」

「ジャド先生、アグネスに何をさせる気ですか!?」

「まあまあ、フォルト様。私の推測が正しければ、アグネス嬢も平気だと思われますよ」


 そんな会話をしている間に、ユルはフォルトの従者のオヴィディオの手を引いて再度外に出ていった。そして二人で戻ってくるとオヴィディオがフォルトに「出られないことはありませんが、何らかの抵抗を感じて動きづらかったです」と報告した。

 それを聞いてからフォルトがグネスをエスコートしながら外に出てみたが、二人ともやはり何も感じなかったとのことだった。


「ユル、君とオヴィディオ君は小さな祝福を受けているよね」

「うん」

「はい」

「そうか。聖竜様の祝福以上を受けている者は動けるが、小さな祝福では抵抗を感じ、それすらない者は出ていくことも出来ないということか」

「たぶんね。リュド達が外に出たとたん、光の幕が体を覆っているのが分かったし、ユルたちの場合はそれが薄かったからね」


 モノクルは魔力の波動を見るだけでなく魔力鑑定の精度も上げる。モノクルを通してみた彼らの体は、赤い光に包まれていたということだった。


「魔王の魔力が満ちているのかもしれないな」

「なるほど、これが黒属性の魔力なんだね。黒く禍々(まがまが)しい歪(ゆが)んだ波が見えるよ。確かに人の魔力だとしたら、遺跡からここまでの空間を満たすとなると、どれほどに人数がいるかわからないからねえ。魔王の魔力を込めた魔石を持っていて、その力を解放したと言ったところかな」


 そう分析しながら手を扉の向こうに出そうとするジャドを、リュドが襟首をつかんで離すことで止めていた。その横でフォルトがこれからどうするかを考えていた。


「リュドを一人を行かせるわけにいかないので、僕も行くとして」

「私も行くわ」

「……と言いますよね」


 リュド達からすれば二人とも、特にフィオラには安全なところで待機していて欲しいが、性格的に一緒に行くだろうとは推測していた。だがここで、思わぬ声も上がってそこに居た皆が驚いた。


「わたくしも、ご一緒します」

「え、グネス?」

「何を言っているんだ、アグー(アグネス)!!」

「この状況ではお勧めできません」

「……エンツアスモ嬢、どうして付いて行かれたいのですか?」

「敵が、魔王の配下なら、浄化の力が、必要かもしれません」

「確かにグネスの浄化の力は私の数倍凄いけど……」

「それに、大司教様に、お怪我があった場合、治療も致しませんと。その為に、どうか」

「あー、頑固グネスが出てきた」


 グネスは清楚でたおやかで、教会の聖女の称号にふさわしい女性だ。儚(はかな)げでゆっくりした話し方から気弱な性格に見られやすいが、その反面とても頑固な一面も持っている。

 こうと決めたら一歩も引かない強さが、今まさに表に現れていた。


「……時間が惜しいので四人で行きましょう。ここからは俺がリーダーだ。いいな」

「もちろんよ、リュド先生。それでどうするの?」

「現状、馬での移動も無理だろうから、俺と坊で二人を担いで駆け抜ける」

「分かりました。アグー、我々から絶対に離れないように」

「はい」


 リュドがフィオラを、フォルトがグネスを腕に抱え上げた。


「こちらの守りはジャドとガルシオに頼む」

「オッケー」

「ああ。そっちこそ頼むぞ、リュド」


 リュドは頷いて答えると、自分が行くべき方向を確認してから四人に軽減魔法をかけた。「ついて来てください」とフォルトに告げて、リュドは火属性の、フォルトは風属性の加速魔法を使いながら、行くべき場所へと駆け出した。



 休みを挟みつつも走ること数時間、ジャドが教えてくれた遺跡の入口付近に着いた。そこでリュドたちは体力回復のポーションを飲むと、リュドを先頭に隊列を組んだ。

 そしてリュドが中を伺う為に手を入れようとした。

 しかし見えない壁があるかのように、扉の無い入口の先に手を入れることは出来なかった。


「これは……」


 入口の前に立って手のひらで空間をしっかり押すと、柔らかいクッションのような物でふさがれている感じの反動が返ってきた。

 リュドのすぐ後ろにいたフィオラも手を入れようとしてみたが、リュドが言うのと同じ感覚を味わった。

 ところがフォルトが手をかざすと普通に通り抜け、一緒にいたグネスが手を入れようとすると、やはり拒絶されているのか入れられなかった。


「これって、どういうこと?」

「坊にあって我々にないモノと言えば?」

「……闇属性ですか?」

「たぶんな。闇属性の魔力を持っていないと入れない可能性が高い」

「そんな……」


 フォルトを一人で行かせるという選択肢はないためどうすればいいかと思案している時に、いきなりフィオラが「フォル、お手」と言いながら右手を差し出した。

 フォルトは「なぜ今」と文句を言いながらも反射的にそれに従ってしまい、恥ずかしさから手を放そうとしたが、フィオラにしっかりと握られていたためそれは無理だった。


「姉さま、魔力をなじませようとしていますか?」

「うん……これくらいでいいかな?」


 次の瞬間フィオラが入口に手を差し出すと、先ほどとは違ってするりと入口より向こうに手が通った。


「やっぱり。リュド、私ならフォルと一緒なら中に入れるわ」

「待て、お嬢。その場合、手はつなぎっぱなしになるんじゃないか?」

「なるけど、まあ魔法だけで戦えば何とかなるんじゃないかしら?」

「それは危険だ」

「でも、フォルを一人ではいかせられないわ」

「……姉さまも頑固ですからね。右手が自由なら剣は扱(あつか)えるので、それで何とかなるでしょう」

「だか」

「あなたの弟子を信じてよ、リュド先生♪」

「姉さまに盾役をしてもらいながら、僕が攻撃すればいいだけなので」

「……分かった。だが少し待て」


 リュドはその場で手をつくと「『サーチ』」と呟いて地面の中を探り始めた。


「ここから降りると二度ほど折れ曲がり、二十m程下に床面がある。高さは十mちょっと、広さは二十m四方くらいの空間だ」

「そんなに広くなさそうね」

「……さっきドラクに聞いた。あいつがこの辺りに居たのは、生贄の魔方陣を感じたからだと」

「ではここにありそうですね」

「十分気を付けるように。命の危険を感じたら、何があっても引き返せ」

「ふふ、その時は岩盤をぶち破って逃げるから、上から助けてね、先生」

「……分かった」

「ルト様、フィオ様、お気を付けください」

「ああ」

「うん。じゃあ行ってきます」


 神妙な面持ちのフォルトと笑顔を絶やさないフィオラを見送ると、リュドはグネスに指示を出すことにした。


「アグネス嬢。先ほどのフィオラ様のお言葉を覚えておられますか?」

「先ほど……まさか、岩盤をぶち破って、と言うお言葉、ですか?」

「はい。フィオラ様ならやりかねません」


 今立っている場所は、通路が掘られているだけで、それ以外は強固な岩盤の上だった。そしてここから先十数メートルのところに地下遺跡は存在している。

 遺跡の上の岩盤はここ同様とても固いが、この程度の厚みならフィオラの魔力で壊すことは容易だとリュドは判断していた。


「確かに……フィオ様は、大胆不敵、ですから」

「もしもそうなった時、私は岩盤を浮かべます。その時にはアグネス嬢の浄化の力を、穴に蓋をするようにかけることは可能ですか?」

「それは……出来ると、思います」

「ではその時には、お願いします」

「はい」


 リュドの提案を聞き、グネスは浄化の魔法を布のように広げるイメージを心の中で作り出していた。

 その間リュドは、魔力探査の魔法を空や地上だけでなく地下にも、フィオラとフォルトの動向が見えるように準備をした。

※大胆不敵(だいてんふてき)=度胸があって、恐れを知らないこと。

――――――――――

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

リアクションの方もよろしくお願いします!

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


短いですが今回はここまでで。

区切りを考えたらここでというのと、続きが出来上がっていないのでorz

頭の中にあるものを言葉にして打ち出す作業に難儀していますが、頑張ります。

というか、この作業を難なくできる人が羨ましいです(´・ω・`)


って書いていて思い出しましたけど、来週はシルバーウィークですね。

旅行の予定は入れていませんが、もしかしたら更新が遅れるかもしれませんorz

その時はごめんなさいTT

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