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翠憶を求めて  作者: ラーナ
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凛とした憧れの記憶

その強さは、もう一人の少女を強くさせる

見た目のせいか、並みの男の子より運動神経があるせいか。私は良く男の子に間違えられてきた。

そして、その事をよく同級生の男共にからかわれていた。


少しイラッとするが、そんな人達に何を言い返しても無駄だから、私はいつも無視を貫いていた。


「凛ちゃんの事好きだから、そんな風にいじめて楽しんでるんですよね? そう言うの果てしなくダサいと思わないんですか?」


ある日、私をからかっていた男子達に、そんなキツい言葉を浴びせる女の子と出会った。


見た目は、凄く可愛らしい女の子だ。

だけど見た目と裏腹に、その子の口調は同級生とは思えない程に理路整然としていて……


男子達が立ち去ったあとに頭を抱えて


「全く、男子と話すのは頭痛が痛いのです」


と深くため息を吐くする姿は、理論的な癖にギャップがあって、そんな所も凄く可愛いと思った。


「それ、意味被ってるんじゃない?」

「被るほど頭が痛いから敢えて使うんです」


なんだかそんな姿が面白くて、私は気づいたらその子と親友になってた。


彼女の名前は、リーノ・リャグーシカ。


両親を早いうちに亡くし、今は姉と二人暮らしだと聞いた。


毒舌かと思えば、優しい面もちゃんと持っていてしっかり者な所はお姉さん譲りなんだろうな。


…………なんて考えてた時期が私にもありました。


それはたまたまリーノちゃんの家で遊ぶ機会があった時の事。


私はリーノちゃんの姉、ラーナさんと出会った。


「あれぇ? リーノが友達を連れてくるなんて珍しいねー」


なんだか、ふわふわとしていて、人懐っこそうな女性。

それが、リーノちゃんのお姉さんに対する第一印象。


「まるで私には友達がいないみたいな言い方は辞めてほしいのです……」


ラーナさんの言葉に、大きくため息を吐くリーノちゃん。

なんとなく、このやり取りだけでリーノちゃんがこういう性格になった家庭環境が垣間見えて

少し可笑しくて、小さく笑ってしまった。


「だってぇ……初めて家に連れてくる友達がまさか男の子なんて、お姉ちゃん先を越された気分だよー?」


続けて発せられたラーナさんの言葉に、私は反射的に突っ込んでいた。


「私は女ですっ!!」

「凛ちゃんは女の子です」


ほぼ、同時。リーノちゃんまでも呆れて頭を抱えて突っ込んでいた。

いや、うん。よく男に間違えられるから今更ではあるんだけど……


「えええっ!? うわぁ! うわぁ! 凄くカッコいいから男の子かと思っちゃったよー……ご、ごめんね? えっと……」


隣で小さく、コレでもラーナお姉ちゃんは褒め言葉だと思ってるんです。

とリーノちゃんが呆れて呟いてるのが聞こえた。


でも、言われなくてもわかるくらいにラーナさんのソレは

他の人に言われるような言葉とは違う、一切の嫌味のない、むしろ尊敬とも取れるような言い方で……


「あ、ご、ごめんなさい! 赤山凛です。リーノちゃんのクラスメイトです」


男に間違われた相手に謝り返したのなんて、どれくらいぶりだろう。


リーノちゃんのお姉ちゃんだからとか、多分そう言う理由も少しはあったのだろうけど、不思議な力のある人だと思った。


「あ、うん! 改めまして、可愛い可愛いリーノの頼れるお姉さん! ラーナだよ! よろしくねー」


「一ミリも頼りになってませんし、私はそんなに可愛くもないのです……」


まるで自分の新しい友達と言うくらい人懐っこく私の手を握ってブンブンと振るラーナさん。

そんなラーナさんの言葉に、もうツッコミ疲れた。と言う風にリーノちゃんは頭を抱えて、繋げていた。


ついでに言うと、フォローじゃないけど、リーノちゃんはかなり可愛い部類だと思う。

こっそり男子達の間でファンクラブみたいなのがあるって聞いた事あるし……。


私をからかうとリーノちゃんに嫌われるから、からかわないって心に決めてる男子がいるとかいないとか、そんな噂も耳にする。


多分言ったところで変に頑固なリーノちゃんだから、認めないだろうけれど……。


「あ、あはは……こちらこそ、よろしくお願いします」


私は一人っ子だから、そんな二人の関係がなんだか微笑ましくて

目の前で私の手を握るラーナさんに軽く頭を下げた。


「そんな事より、ラーナお姉ちゃん、今日はアズマさんと約束があるって言ってませんでした?」


リーノは馴れ馴れし過ぎると言った感じで、私とラーナさんの手を軽くペンペンと叩きながら、ラーナさんへと訪ねる。


「あ、そうなの! リーノも凛ちゃんも見てみてー! アズマちゃん、すっごい可愛い子見付けたから遅れるって連絡来ちゃって……」


リーノちゃんの言葉に、ラーナさんはパッと私の手を放すと今度はワタワタと持っていたバッグの中から、携帯電話を取り出して

私達にその画面を見せた。


「可愛い子見付けたから遅れるって……アズマさんはチャラ男か何かなのですか……」


相変わらず頭に手を抑えているリーノちゃんと共に、私もラーナさんの携帯電話の画面を覗き込む。


そこには、少し赤みがかった色をした髪の活発そうな女性と、真っ白な髪の大人しそうな女の子が写っていた。


「えっと、可愛い子って言うのは……どっちですか?」


私は思わず、ラーナさんに問いかける。


どちらも、ジャンルは違えど美人だったから。


……ただ、私の目は活発そうな女性の方しか見ていなかったと思う。


写真だけでも伝わる、凛とした雰囲気……

凄くカッコよくて……私もこんな風になれたらと心から思わせるような人だった。


「あっ、ごめんー! 凛ちゃんが大人になったような感じの子がアズマちゃんで、もう一人の子が、アズマちゃんが捕まえた女の子だよー!」


だから、その不意打ちの言葉に、私は顔を真っ赤にしてしまった。


「あれ、この人……うーん、いや、まさかですよね……」


だから、リーノちゃんの意味深な発言も私の耳には入って来なかった。


わ、私が大人になったらこんな美人に……?

いや、でも社交辞令って言葉もあるし、でもラーナさんって社交辞令とか言わないようなタイプだし

でもでも……


「あ、もう近くまで来てるみたいだから、私も行ってくるね! またねー! 凛ちゃん!」


「車に体当りしないように気を付けて行ってらっしゃいですー」


パタパタと忙しそうに走り去るラーナさん。

そんな姿を見ながら、何か言わなきゃいけないのに、私の脳はオーバーヒートしていて……


「えっと……凛ちゃん? 生きてます?」


リーノちゃんにペチンと頭を引っ叩かれるまで、完全に正気を失っていた。


「うん、多分数秒間くらい死んでた……」


「今度、凛ちゃんにアズマさん紹介しますね」


お見通しとばかりに、クスクスと悪戯な笑みを浮かべるリーノちゃん。


なんだか、この姉妹には敵わない。そんな事を感じつつ

アズマさんと出会えるその時を楽しみにしてしまう私がいた。

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