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翠憶を求めて  作者: ラーナ
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照れ隠しの記憶

いずれ慣れる為に

「ちょっと話が飛び過ぎてて頭痛が痛いのです……」


ラーナお姉ちゃんを連れ出してくれた蒼ちゃんに感謝しつつ。


そして入れ違いのように現れた夏妃さんと涼子さんに呪いと呪詛返しの説明を受けて。


私はいつもの言葉を使うくらいに頭を抱えてしまっていた。


あまりに突拍子もない話で……でも、私が求める世界に行く為に避けては通れない話。


「……あたしも良く理解は出来てないけど、要するに涼子がその呪詛返しってのをする間、クランと一緒に邪魔するようなヤツを倒せば良いって事だろ? いいよ。あたしが行く」


アズマさんはアズマさんらしく、自分が出来る仕事なら、そしてラーナお姉ちゃんを助ける事に繋がるならと

理解は出来てなくても、二人の話の要点だけを捉えて、そんな言葉を発していた。


「あん? ヴャクトかアズマって話で、まだどっちかなんて決めてねぇぞ?」


涼子さんはやる気になってるアズマさんに対して、そんな事を言い返していた。


ラーナお姉ちゃんにかけられた呪いを返す為に雨宮の地に行く必要があるから、ヴャクト姉さんかアズマさん。どちらかの力を借りたい。

確かに涼子さんの説明はそんなモノだった。


「いえ、ヴャクト姉さんは行かせちゃダメだと思うのです。怒ると一番手をつけられないのはヴャクト姉さんなのですよ」


正直、私には理解に苦しむ程に非現実な話だけれども。

それでも、その説明を受けている間、ずっとヴャクト姉さんは拳を強く握っていたのは見えていた。


ラーナお姉ちゃんを傷付けて、呪いまでかけたような相手。


その感情を持ったまま雨宮の地に向かえば、ヴャクト姉さんはその人に対しての怒りを抑えきれないような気がした。


「……全く、リーノには敵わんな」


「何年妹をやってると思っているのですか」


考えを見抜かれていたとばかりに呟くヴャクト姉さんに、私は呆れてため息を吐いてしまう。


アズマさんも似たり寄ったりな思考ではあるけれど、

アズマさんはラーナお姉ちゃんを傷付けた相手よりも、それを守れなかった自分を強く後悔していた人だから


ヴャクト姉さんより、変な事はしないと信用出来る。


「しかし、よく一人でそこまで辿り着いたものだな……流石は戸野のご令嬢と言うべきか」


諦めたように、ヴャクト姉さんはその役目をアズマさんに譲り

夏妃さんに向けてそんな事を言って微笑んでいた。


「私よりも、ヴャクトの助手に向いてるかも」


白さんもそこは同じようで、素直に夏妃さんに感心している。


「もう、二人とも茶化さないで。私が辿り着いたと言うよりは、巫女の子が全部知っていただけなんだから」


「でも、一番動いてるのは事実、夏妃さんです!」


照れたように笑う夏妃さんに、凛ちゃんがそんな事を言っていた。


言われてみれば、確かに不思議なくらいに。


雨宮の件で忙しい中、夏妃さんはラーナお姉ちゃんや私達の為にいつも頑張ってくれている。


過去にラーナお姉ちゃんに助けてもらった事がある。

そして、ラーナお姉ちゃんに憧れて今がある。


そんな話は確かに聞いたけれど……


「もうちょっと夏妃さんはラーナお姉ちゃんと仲良くしてもバチが当たらないと思うのです」


なんとなく、影で頑張るその姿はヴャクト姉さんと被ってしまって

ラーナお姉ちゃんと話したい事も沢山あるだろうに、それをしない夏妃さんの姿に

思わずそんな事を呟いてしまう。


「あ、あはは……言われてみれば、ラーナよりヴャクトと良くお話してる気がするわね」


「夏妃はお姉さんと同じレベルの頭脳を持っているからな。気が合うのだろう」


ヴャクト姉さんが何故かそんな夏妃さんの言葉に胸を張っていて

また小さなため息を吐いてしまう。


確かに、ヴャクト姉さんと話しているとラーナお姉ちゃんとは違う安心感があるけど……。


夏妃さんも本心ではラーナお姉ちゃんともっと話したい筈だと。

それくらいヴャクト姉さんの観察力ならわかる筈なのに。


「……いや、姫さんまだラーナと二人きりで話すの緊張してるだけだから気にすんな」


「う、うるさいなぁ!」


だけど、私のそんな考えを数秒で壊したのは涼子さんだった。


涼子さんの言葉は図星みたいで、初めてラーナお姉ちゃんと会った時みたいに夏妃さんは顔を赤くして、涼子さんに怒っていた。


……そして、なんとなく夏妃さんとヴャクト姉さんが良く話しているイメージが強いその理由を理解してしまって。


「ヴャクト姉さん、どんまいなのです」


トントンと。思わずヴャクト姉さんの背中を叩いてあげていた。


「ち、違うからねっ!? ヴャクトで練習しようなんて考えてないからね!?」


「……姫さん、めっちゃ自爆だぞ。それ」


「リーノ、そんな事は言ってない」


涼子さんと白が、夏妃さんの言葉に小さく返していた。


……本当に。ヴャクト姉さんと言い夏妃さんと言い。

やけに完璧っぽい人の方が何処か間抜けな感じが強いのはどうしてなのかと。


本日二度目の頭痛に悩まされてしまう。


「ラーナの代用品扱いだったとは、久々に傷付いたよ。お姉さん……」


「ううぅ、違うんだってばぁ……」


わざとらしく落ち込むヴャクト姉さんに、珍しく慌てている夏妃さんの姿が面白くて、皆もそんな夏妃さんを見て笑っていた。


「ま、まぁ……とにかく。あたしと涼子が雨宮の所に乗り込むって事でいいんだよな?」


話をまとめるように、そして夏妃さんをフォローするようにアズマさんが口を開くと、夏妃さんは小さく咳払いをして

その表情を引き締めて


「ええ。でも、アズマは武器は使わないのよね……」


アズマさんが棒で人形をなぎ倒していた姿を見ているから、私にはそんな不安は無かったけれど


夏妃さんは少し不安げに。そして、その表情は凛ちゃんも同じだった。


「アズマ姉さんの技術は私も知ってますから言えます。武器を使うと、アズマ姉さんは少し弱くなると」


「アズマ、何処まで強いの……」


凛ちゃんの言葉に、白さんが小さくため息を吐いていて。


「あ、あはは……でも、割と事実なんだよなぁ、それ。どうにもあたしには武器は性に合わなくて」


「お姉さんは一通り武器は使った事があるが……ふむ。相手が人形だろうと、人間だろうと、雨宮の本拠地に乗り込むのに丸腰は危険かも知れんな」


まさかの、ここに来ての難関に思わず皆が少し悩む仕草を見せていた。


「ったく。喧嘩は教えたってのによ……あたしですらある程度武器は使えるんだぞ」


「涼子の場合、どんな武器でも振り回すだけだからあまり宛てにならないわよ……。仕方無いわね。一度戸野の屋敷まで行きましょう……護衛達用に一通りの武器は揃ってるから、身体に合うの見付けるのが一番早いでしょう」


流石は、雨宮に負けない力を持つ護衛を何人も持つ一族。

もちろん、その力で雨宮みたいな事はしてこなかったのだろうけれど。

一応一通りの武器を使いこなせるのは戸野の一族も同じらしい。


「うむ。アズマのセンスならば半日もあれば馴染む武器を見付ければある程度使いこなせるだろう。練習相手はお姉さんが努めよう。少しは役に立ちたいからな」


「武器使っていいなら、あたしもソコソコ戦えると思うぜ」


「わ、私も! 武器は使ったこと無いですけど練習相手って事なら!」


「また脳筋達がやる気になっているのです……」


別方面でやる気を見せだした三人に頭を抱えてしまう。


「私とリーノはお留守番。ラーナと蒼が戻ってきた時に誰も居ないと不審がられる」


白さんの言葉に、私もどうせ武器を使って戦った所でアズマさんの役に立つことは出来ないだろうから素直に頷いて。


「決行は早い方がいいだろ。アズマがある程度武器に慣れたら、さっさと雨宮の所乗り込んで、さっさと帰ってくるからよ」


善は急げとばかりに、夏妃さんとヴャクト姉さん、アズマさんと凛ちゃんを引き連れて

去り際に、涼子さんが私達に向けてそう言っていた。


「涼子さん、ラーナお姉ちゃんの言葉、胸に刻んでおいてくださいなのです。涼子さんが居なくなっても、私が求めてるその世界には行けないのですから」


その言葉に、嫌な決意を感じさせられたから、私はそう言葉を紡いでいた。


「あたしだって、ウェルと鉢合わせなんてするつもりねーよ」


私の言葉に、小さく笑って涼子さんは手をひらひらと振って事務所を後にする。


そうやって、私と白さんだけが事務所に残されて……


「リーノ、ごめん。少し任せてもいい?」


「はい?」


皆が居なくなったのを確認してから言おうと、予め考えていたように。

白さんが口を開いていた。


「呪いを解く方法がない。夏妃はそう説明してた。でも……」


それはずっと白さんが話を聞きながら考えていた事のようで


「雨宮を崩壊させる力を持つ穢れた血。……私にしか出来ない事がある気がする」


「例の巫女さんに会うつもりなのですね」


この場を任せたい。そんな事を言われたから、白さんの取る行動はなんとなく理解出来た。


「無理だけはしないで欲しいのです。もしも夏妃さんが隠すとしたら、それは多分隠すだけの理由があった筈なのです」


止めても、きっと白さんは動く。

それ程までに、ラーナお姉ちゃんやヴャクト姉さんの記憶を取り戻したいと強く想う人。


だから、私はその言葉だけを白さんにも向ける。


「本当、この色には敵わない」


少し呆れたように。そして考えを見抜かれたと言わんばかりに。

白さんは小さく呟いて、そして笑っていた。


「私も、この世界の先は見たいから。大丈夫」


本当に、ラーナお姉ちゃんは愛されている人だと。


ラーナお姉ちゃんの為に、命を賭けても良いと涼子さんも白さんもそんな決意を見せている。


もちろん、そんな未来はラーナお姉ちゃんも私も、誰も望まないから、私も言える事は言うけれど。

きっとラーナお姉ちゃん程綺麗にその説得は出来ない。


「だけど、まさか本当に呪いだったなんて、未だに信じられないのです」


いつか呪いみたいなモノだと喩えた事はあるけれど。


沼地の件があったとは言っても、あれは例外扱いで。

私の変な現実主義がその事を認められなくて、それでもそれが真実だと皆が判断するのなら間違いは無くて。


現実離れし過ぎた事が起きすぎていて、思わず一つ、大きなため息をはいてしまう。

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