↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翠憶を求めて  作者: ラーナ
PR
5/71

遠い夏の記憶

一人の少女は翠を追い掛ける

やっと……やっと見付けた!!


街でたまたま、その娘を見付けた。

忘れようもない、翡翠のように綺麗な髪。


もうあの娘は覚えていないかも知れない。

古い記憶。


だけど、私にとって忘れる事の出来ない、大切な記憶。


「姫さん、何処行くんだよ?」


「ずっと、涼子には話してた例の女の子、見付けたかも知れない!!」


「マジか!」


小さな頃、私はよくイジメられていた。

オッドアイだから、目立っていたんだと思う。

だから、可能な限りは目立たないようにと立ち振る舞っていたのだけれど


イジメというのは本当に理不尽で……


慣れる事は無かった。でも、反応をするとアイツらは面白がるから……

どんなに酷い事をされても、私は無表情を貫く事を覚えていった。 


その日も、いつもの様に呼び出されて

だけど、その日は少しだけ違って……


「こいつ、全然反応しねぇんだよ」


そう言って、イジメっ子の一人が、私の服を思い切り引っ張って……


服が破けた。


殴られたり、モノを隠されたり、そう言うイジメは我慢出来た。


だけど……


「やだっ!」


その行為には、思わず反応してしまった。


咄嗟に近くにあった棒切れを、イジメっ子の一人に投げ付けてしまうくらい

動揺してしまった。


それがアイツらの被虐心を昂らせる事だと、わかっていた筈なのに。


それから先は言う事も無い。いつもより何倍も痛い暴力。


もう、疲れ切っていた。

このまま殺されても良いかな。なんて、考えていた。


その娘が現れたのは、そんな時だった。


「やめなよ……格好悪いよ。それ」


私とイジメっ子達の前に立ち塞がってくれた娘。


その娘は、ヒーローとは全然違う姿で。

とても小さな身体で、イジメっ子の一人が軽く小突いただけで転んでしまうくらいに弱々しくて。


それでも何度も立ち上がっては、イジメっ子達に立ち向かって行った。


決して折れない心で、私よりもボロボロになって……

突き飛ばされる度に、私の方を見ては……


『大丈夫。絶対に負けないから』


そんな事が伝わってくる瞳で、私に笑顔を振りまいてくれていた。


力無き正義は、意味を成さない。


いつか、何処かで聞いた言葉。


だけど、その娘の力無き正義は、意味を成していた。


「うちの可愛いラーナをイジメやがって!」


その娘が気を失うまで、立ち向かってくれたから、もう一人の正義が現れてくれた。


もう一人のヒーローは、数秒で数人を簡単に倒してしまうくらい、強い女の子だった。


「相変わらず無茶するヤツだなぁ……」


少しだけ頭を抱えるような素振りを見せて、私の方へと手を差し伸べてくれる。


「立てるか?」


私はコクリと頷いて、彼女の手を取った。


「あたしの体操服で良ければ、貸してやるからさ。随分とボロボロだし、そのままじゃ帰れないだろ」


「うん……」


そんな事よりも、気を失って倒れているラーナと呼ばれる子の方が心配で……

もう一人のヒーローの言葉は耳に入って来なかった。


私の目線が、ラーナへと向かっていることに気付いたのか、ヒーローは少し笑って


「見た感じ大きな怪我もしてないし、大丈夫だと思う。あたしが目を覚ますまで一緒にいるから、此処はあたしに任せて、アンタは先に帰りなよ」


自身の胸をトンっと叩いてから、そう言った。


…………その瞳には、ここから先、私には見せたくないものがあると。

そう暗に伝えてくるような怒りを感じられた。


それは、多分……ラーナが傷付けられた事に対する怒り。


「ほ、程々に……」


思わず私も竦んで、その娘から体操服を受け取ると、逃げるようにその場から立ち去ってしまった。


その後、着替えてる最中にイジメっ子達の悲痛な声が聞こえてきたけど

私には、もう一度その現場に戻る勇気は無かった。


それから、数日後に私は転校して、ずっと……ずっと探してた。


貴方のお陰で、私も強くなれたんだ。


暴力に耐える強さじゃない。

暴力を振るう強さでもない。

どんな相手だろうと間違えていたら止める。勝てないとわかっていても、立ち向かう強さと、勇気を教えてもらったんだ。


ずっと目標にしてた。

ありがとうって言葉を伝えられなかったのがずっと悔しかった。


その相手が、今……目の前にいる。


伝えよう。今度こそ。


「うげっ……」


ラーナに声をかけるタイミングを見計らっていると、涼子が変な声を上げた。


「ひ、姫さん……また今度にしねぇか?」


「ええ……なんか涼子らしくないけれど、どうかしたの?」


私の事を姫と呼んで仲良くしてくれているこの娘は、街で悪い人達に絡まれている所を

私がたまたま通りかかって、それこそあの時のラーナみたいな行動を取って

仲良くなった女の子だ。


私の名前に妃と言う文字があるから、姫なんて、随分と大袈裟だし

見た目もちょっと不良っぽいけど、決して悪い子じゃない。


ラーナとトラブルがあったなんて事は考えづらい。


モゴモゴと暫くあーだこーだ独り言を繰り返す涼子。


どうしよう、ここで声をかけられなかったら、もう二度と出会えないかも知れない。


私だけでも飛び出そうか。


「…………なんだよ」


そう考えていると、涼子がようやく、小さな声で理由を告げてきた。


「へ?」


我ながら、随分と間抜けな声で、涼子にもう一度、話してもらう。


「あのラーナとか言うヤツの隣りにいるの、アタシの従姉妹なんだよぉ! アイツと会うとロクな事にならねぇ!!! 嫌だ!! アイツと顔を合わせるくらいならアタシは死ぬっ!」


「ほえぇ!?」


涼子に無理やり手を引っ張られて、せっかく縮めたラーナとの距離がどんどんと離れて行く。


「頼む。頼むからアタシのタイミングで行かせてくれ……姫さんが話してた女の子が、まさかアイツの親友と同一人物だったなんて……だあぁ!!クソぉ!」


…………灯台下暗し、と言うヤツなのだろうか。

涼子の混乱具合は理解出来ないけれど、

そうだったんだ。

それなら、涼子が落ち着いた時に……


今日はお話できなかったけど、いつか、いっぱいラーナと話したいな。

その日が来るのを、私は楽しみにしてるから。




……あと、どうでもいいけれど腕が千切れそうだから、涼子、そろそろ離してくれないかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。