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翠憶を求めて  作者: ラーナ
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蘇る一つの記憶

誰かがいるから。緋色はその先を目指す

姫さんがチビ二人を連れて戻ってくるのを確認して

さっきの話をしてくれと頼まれ、チビ達にもその噂の話をする。


「や、やっぱり調べようとした事怒ってたんだ……」


蒼がその話を聞いて、納得したように項垂れていた。


「そんな話があったんですね。記憶を奪うってそんな理由が……」


凛はラーナが向かった事も納得したように、少し悲しそうに項垂れて。


「ラーナと関係があるかもって動いてくれたのは嬉しいから。気にしないで。無事で良かった」


迷惑をかけてしまったと力無く項垂れる二人を白は優しく撫でていた。


「だけど、あの筋肉達磨まで向かわせて大丈夫だったのか?」


蒼の事を見張ってた使いが、鈴と名乗るソイツを見かけて

ソイツを追い掛けている最中に、幽霊に襲われて倒れたと。


そんな話を姫さんから聞かされて。


クランと名乗った女に踏み付けられて目を回していた使いに

姫さんは何処だと聞かれたから、森に向かったと言ったら

ソイツまで森まで駆け出していたから、どうしたものかと聞いてみたら


幽霊に襲われて倒れた使いを迎えに行かせたと言う姫さんに、思わずそんな事を聞いていた。


「一応武器も持たせてくれたし、戸野の使いの中では腕も立つ方だから大丈夫だと……でも最近ラーナラーナって少し壊れてるのよね。あの人」


少し呆れたように。でも腕が立つのは事実だからと姫さんは苦笑いで説明してくれる。


確かに図体は大きかったし、姫さんの付き人とは違って、そう言う護衛向きの人間だとは、あたしも思ったけど。


「でもよ、蒼に付けてた護衛ってのもソコソコ腕が立つヤツじゃねぇのか?」


その護衛が、やられているのに、大丈夫なのかと。


「ええ。皆に付けてる人達は、雨宮と渡り合える程度の力は全員持ってるわ。でも、彼は別格。最近こそ壊れちゃってるけれど、元々は父さんの護衛をしてたくらいだから」


姫さんの言葉に、あたしの考えは杞憂なのだと理解した。


戸野当主を守る存在なら、確かにアズマや姫さん並みか、それ以上の力は持ってるだろう。


「本当は白に付ける予定だったんだけれど、父さんが彼はラーナに付けるべきだなんて言っちゃって」


「雨宮に正々堂々と勝負を挑んだから。ある意味、戸野一族よりもラーナの方が厄介って捉えられかねない」


その判断は正しいと。白はそんな事を言っていた。


確かに、敵に回すと一番厄介なのはラーナなのかも知れないと。

なんとなく、その気持ちはあたしでも理解出来た。


そんな会話をしていると、姫さんの携帯が鳴る。


「クラン。どうかした?」


スピーカーにして、あたし達にも聞こえるように、姫さんはその電話に出る。

着信は、その筋肉達磨を簡単に熨した、雨宮の使いと名乗ったクランからだったようで……


『夏妃様、件の少女、木原鈴を発見致しました。如何致しましょう』


「ラーナがその子は何か知ってるって言うような口振りだったから、その子もラーナの元まで連れて行ってあげて」


『承知致しました。鈴様を連れて、ラーナ様の元へ急ぎます』


本当に雨宮の使いとは思えないくらいに、クランの判断能力と行動力には驚かされる。


「敵だったら、一番厄介だったのはクランだったかも知れねぇな」


電話を切る姫さんに向けて、そんな事を口にすると、姫さんもその意見には同意なようで、小さく笑っていた。


「雨宮との勝負にクランを賭けたのは正解ね。ここまで私の指示を的確に守れる人なんて、私の使いには居ないもの」


そう言いながら、姫さんは刀を持ってきてくれて、待機していた付き人を呆れたように睨んでいた。


あたしと姫さんの付き合いを辞めさせようと、一人動いた事のあるその紳士。


「私のクビが飛ぶ日も近いかも知れません……」


姫さんの言葉に、深く項垂れるその仕草には、皆が可笑しそうに笑っていた。


「その時は、私達の使いとして欲しいかもだよっ! ね、白姉!」


「私は他人を使うの苦手だから……それに今はもう雨宮抜けてるんだから、私達にそんな力もお金も無い」


「無給で使ってもいいわよ? 貴方も文句ないでしょう?」


クランが夏妃の付き人となって、今の付き人は白達の使いになる。

わりと簡単に想像出来るその光景には、あたしも思わず少し笑ってしまっていた。


無給は流石に憐れだと思うけど。


「じょ、冗談ですよね? お嬢様」


「ちょっと最近うちの使い達がどんどんアホになっていくから、この際だし父さんに相談してみようかしら」


アズマとあたしはいい護衛になりそうだと。

そんな事まで言い出す姫さんに、その紳士は深く項垂れてしまっていた。


「あたしが姫さんの付き人か。悪くねぇかもな」


少し悪ノリしてやると、


「あ、貴女様はなりません! 付き人ならば、まずはその口使いと服装を……」


益々慌てふためく紳士。最初にあった頃より、随分とイメージが違って、本当に可笑しくなってしまう。


「私もこんな服、本当は動きにくくて嫌なんだけれど、こんな風に言われて無理矢理着せられてるのよ……」


「え? そうなの? 夏妃さんの服、可愛いと思うけどなぁ」


呆れたように呟く姫さんに、蒼がそんな事を言っていた。


「うん! 夏妃さんっぽくは無いけど、可愛いよね」


それに乗るように、凛もそんな事を言う。

確かに大きく結んだポニーテールには似合う服だと、なんとなくそれはあたしも思う。


「夏妃の付き人、ゴスロリ好き?」


だけど、そんな白の辛辣な言葉に、あたし達の意見は吹き飛んで。


「似合うのは否定しないけど、無理矢理そう言うの着せるのはちょっと……」


「わ、私達の付き人になったら私達もこんな服着させられるの!?」


凛と蒼が軽蔑の目を紳士に向けていた。


「い、いえそんな……私はただお嬢様として相応しい服だと……」


「ごめん、そこまで考えた事なかった。涼子、この件が終わったら服買いに行きましょう」


「お嬢様、そんな……」


白の言う事があながち外れてもいないと、ショックを受ける紳士の態度を見てあたしもなんとなく理解してしまっていた。


「夏妃様! 戸野の恥をお連れしました!」


そんな中、大きな声と共に巨漢の姿。意識を失っている恐らく森に入っていった一人の男を背負いながら、こちらに向かって手を振って近づいて来て。


「流石ね。少し見直したわ」


姫さんとその付き人が気を取り直すように、その男を迎えていた。


「それでは、私もラーナ様の元へ……」


『こちらも片付いた。今から戻るが……その前に、木原鈴という少女はこの世には存在しないものだったとだけ伝えてくれ』


男が言い切る前に、白の無線から、そんな声が響いていた。


「……と言う訳だから。残念だけど、貴方の出番は無いみたい」


「この恥のせいで私はっ! 私はっ……!」


姫さんの言葉が、とどめだったようで。地に付して、地面に頭をガンガンと叩き付ける男。


そんな姿を見て、凜が呆れたように


「蒼ちゃん、励ましてあげて……」


「え、えっと……お疲れ様っ! ケープさん! ケープさんが居てくれたから、クランさんも動けたんだよっ!」


凛に頼まれた蒼は、そう言って、その男。ケープの肩を叩いていた。


「蒼様! 貴女様もラーナ様もご無事で何よりです! 貴女様からこの武器をお借りしなければ、私も人形達にやられてしまう所でした!」


蒼の手を握り、何故か途端に元気になるケープ。


その姿を見て、姫さんは大きなため息。


「夏妃、この人、ロリコン……?」


そして白はそんなケープの姿に軽い危機感を覚えたように、そんな事を姫さんに問い掛けていた。


「リーノじゃないけど、私まで頭痛が痛くなってきちゃった……」


どことなくラーナと雰囲気が似てる蒼だし、ラーナに骨を抜かれたならある意味仕方無いとは思うけど。


大男が、まだ少女の蒼の手を握るその姿は確かに

少しヤバい光景に見える。


『それと、アズマが私の事を思い出した。リーノとクランが説得してくれたお陰で、大事にはならなかったが』


「……思い出したって言うのは、その、ラーナの」


少し口籠る白。近くでラーナが聞いているのかも知れないと、そこまで考えているみたいで

本当に、コイツもコイツで大したヤツだと改めて感じる。


『ラーナはリーノやアズマと話している。距離も多少取っているから問題はない』


「うん。ヴャクトがラーナのお姉さんって事を知られたって事?」


『元々ラーナの事故の際に一度顔は見られていたからな。瑠璃と鈴の言葉がきっかけだったのだろう。しかし、アズマも強くなったモノだな。お姉さんの考えは杞憂だったよ』


瑠璃と言う名前は初めて聞いたけれど。そんな事よりもアズマが簡単に立ち直った事にあたしも驚きを覚えていた。


思い出してしまったら、アズマは益々自分を責めると。

ただでさえラーナを傷付けた事を深く後悔して、未だに自分を許せないようなヤツだから

そう思ってアズマには伝えないようにしていた。


だけど、アズマはそれを乗り越えてみせた。


「やっぱり、皆が力を合わせれば、皆が同じ想いなら、大丈夫なんですよっ!」


嬉しそうに、話を聞いていた凛があたしに向けてそんな事を言っていた。


「……そうみてぇだな」


凛に返しながら。


でも、多分。


いくらリーノとクランの説得があったとは言え、アイツは頑固なヤツだ。


自分を許せるきっかけを与えたのは、きっとアズマを慕い、アズマの気持ちに寄り添い続けたコイツが居たからに違いないと。


なんとなく、それは確信に近いモノで。


「凛はアズマより強いかもしれねぇな」


だから、その言葉は自然とあたしの口から出てきていた。

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