夢の欠片
それはきっと、大切な欠片
私がまだ小学生の頃。学校で、イジメがあった。
目の色が左右で違うのが不気味だとか、影が薄いとか、そんな理由だったと思う。
私にはその娘は凄く綺麗な目をしてる娘に見えた。
影が薄いなんて、自分の意見よりも他人の意見を尊重出来る、協調性のある優しい人だからなのに……
どうしてそんな酷いことが言えるんだろう……。
私には理解が出来なかった。だから、私はその娘とは普通に接していた。
「私と関わると、良いことないから……無理しなくていいんだよ……」
私が話しかける度に、少し悲しそうに、その子は言っていた。
自分の無力さに、私まで悲しくなった。
そんなある日、私はイジメの現場に遭遇した。
殴られて、蹴られて……可愛い服の所々が破けていた。
考えるより早く、私は彼女の元へと駆け出して、庇うように立ち塞がっていた。
イジメなんて良くない。
格好悪いよ?
私の言葉が紡がれる前に
私の身体は地に伏していた。
口に土が入り込んで、ジャリジャリして気持ちが悪かった。
「邪魔すんなよ」
「お前からイジメてもいいんだぞ?」
威圧的な態度に、少しだけ緊張する。
だけど、怖がるな。アズマちゃんを見習え。
アズマちゃんは、いつだってこんな場面で真っ先に矢面に立つ人だ。
私は、クラスの中でも小さい方で、体力だって、多分人並み以下だけど。
それでも、こんな卑劣な奴らに負けられない。
イジメられている女の子の方を見て、笑顔で
「大丈夫」
そう言って私は立ち上がる。
イジメられている娘は、表情一つ変えていない。
その目を見るだけで、それが、この娘なりの唯一の意地なんだって伝わってきた。
大丈夫。
もう一度、心の中で唱えて、私は立ち上がる。
イジメっ子の主犯格らしき人物に向かって全力で体当たりをした。
何回も転ばされた。口の中に錆びた鉄みたいな味が広がったけど、泣かなかった。
それくらい、許せなかった。
だけど、それでも私の想いとは裏腹に身体がついてこなくて
何回目かに思い切り突き飛ばされた時に、私は気を失ってしまった。
……そして、気がついた時にはあの娘はもう居なくて
代わりにアズマちゃんが立っていた。
イジメっ子達は、全員地に付していた。
「あんたらさ、自分より弱い者をイジメて、そんなに楽しいなら
あたしがコレからお前らをイジメても、文句ないよな?」
アズマちゃんらしいなってちょっとだけ笑ってしまった。
アズマちゃんの事だ。私がまた無茶してるのを何処かで知って、駆け付けてくれたんだろう。
アズマちゃんの、ほんのり赤い髪に、汗が流れている事に気付いた。
私が目を覚ました事に気付くと、アズマちゃんは手を差し伸べて
「喧嘩ならあたしに任せろっていつも言ってるじゃんか」
そう言って笑ってくれた。
クラスで一番運動神経があって、空手を習ってる女の子。
強くて、優しい私の憧れの女の子。
私みたいな、なんの取り柄もないような子とも仲良くしてくれる、心からの親友。
アズマちゃんみたいに、なりたいな。
お家に帰ってから、私はお姉ちゃんに聞いてみた。
アズマちゃんみたいな強さが欲しいって
お姉ちゃんは笑って私の頭を撫で、その問いかけに答えてくれた。
「ラーナは強い娘だよ
それは腕っぷしの強さじゃない。喧嘩なんていくら強くても
ラーナの強さには叶わない」
お姉ちゃんの言うことは小学生の……いや、成人した今でも理解は出来なかった。
「いつか、ラーナにもわかる日が来るさ」
よくわからない答えで、上手くはぐらかされたような気がしたけれど
でも、お姉ちゃんの手は暖かくて、優しくて安心出来た。
…………これは多分、私が作り出した幻想の記憶。
私には妹しかいない。だから、幻想のお姉ちゃんの思い出。
きっと私が弱くて、情けなくて、それでも認めて欲しかったから
そんな私の弱さが作り出してしまっただけの
私にとって都合の良いだけの記憶
セピア色の夢の記憶
でも、もしお姉ちゃんがこんな人だったら……
私は恵まれてたんだろうな。なんて……




