↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翠憶を求めて  作者: ラーナ
PR
12/71

笑顔の魔法

それは大切な記憶の魔法

「笑顔の魔法って知ってます?」


初対面の人に、こんな話をするとは思っても見なかった。


それは、記憶が抜け落ちてしまったラーナお姉ちゃんが

何故か唯一覚えていた記憶。


それくらい、多分ラーナお姉ちゃんの性格に影響を与えていた記憶。


小さな頃、両親が事故で亡くなった。


当たり前の日常が消えていった。


それは、まだ小さかった私には大きなショックだった。


私は、何処に行っても無愛想で無表情な子になっていた。


ラーナお姉ちゃんも、ヴャクト姉さんも大きなショックだっただろうに

あの二人は笑顔を絶やすことは無かった。


小さい私はそれがなんだかとても腹立たしくて、二人に向かって泣きながら怒ったことがある。


お父さんもお母さんも居なくなっちゃったのに、どうして二人は笑っていられるの。


どうして、当たり前の日常を繰り返せるの?


「笑顔の魔法だよっ!」


ラーナお姉ちゃんが、私を抱きしめて言ってくれた。


ヴャクト姉さんは、ずいぶんと懐かしい事を覚えているな。なんてラーナお姉ちゃんの言葉にクスクスと笑っていた。


「お姉ちゃんの口癖だったくせにー!」


そんなヴャクト姉さんに、むぅっと頬を膨らませてラーナお姉ちゃんは言い返して、続けてくれた。


「リーノは、どういう時に笑う?」


ラーナお姉ちゃんの言葉に、私は楽しいとき。と答えてみる。


「違うんだよ。リーノ……楽しいから笑うんじゃないの。笑うから、楽しくなれるんだよ?」


そう言って、私の頭をポンポンと優しく叩いて、ラーナお姉ちゃんはクスクス笑う。


「どんなに楽しい事があっても、誰も笑っていないと、それは楽しくない事になるの」


そして、それは逆も然り。


どんなにツラい事があっても、笑顔さえ絶やさなければ、それは楽しい思い出に変えられる。


そして、一人が笑顔でいれば、その笑顔は皆を笑顔に出来る。


皆が笑顔になれば、私も自然な笑顔になる。


だから、最初は無理してでも、笑顔を作るの。


大丈夫って自分に言い聞かせて。


そうやってたら、本当に大丈夫になって、皆笑顔になってくれるの。


皆が笑顔でいたら、私も笑顔になれるから。


だから、リーノも忘れないで。


リーノが笑顔だと、私もお姉ちゃんも、死んじゃったお父さんもお母さんも、皆笑顔になれるんだよ?


ね? 魔法みたいじゃない?


ラーナお姉ちゃんは、言い切ってから、優しい笑みを見せた。


「えへへ、実はこれ、全部お姉ちゃんからの受け売りなんだけどね……」


その付け足しが無ければ、少しは尊敬できたかも知れないのに。


でも、なんだかそれが本当にラーナお姉ちゃんらしくて


「ラーナお姉ちゃんはやっぱり究極の馬鹿なのです」


随分と久々に、笑えた気がした。


……ヴャクト姉さんがこの家からいなくなった時も。


私の心情なんて理解はしてない筈なのに。

ヴャクト姉さんの記憶は全部抜け落ちている筈なのに。


「リーノ、また笑顔、忘れてきちゃったの?」


退院したラーナお姉ちゃんは、早々にそう言って同じ話をしてくれた。


ただ、一つだけ。


「昔、誰かにそんな事を言われたの」


最後の言葉だけが違うのが悲しかったけれど。


ただ、その記憶はラーナお姉ちゃんの一番大切なモノだから……

私は何も言わないで、頷いて、笑ってみせた。


失ってる筈なのに、消えない記憶。


本当に、魔法みたいだなって思えた。


いつだって、ラーナお姉ちゃんは笑顔を絶やさない。


だから、私も呆れて笑う。


この記憶がラーナお姉ちゃんに残ってる奇跡を胸に秘めて。

その奇跡は、きっと……いつか、必ずヴャクト姉さんとラーナお姉ちゃんを繋げるものだと信じて。


これは、誰も悪くない偽りの記憶。


その後、ヴャクト姉さんの事は、私に良くしてくれた探偵さんとしてラーナお姉ちゃんに改めて紹介した。


アズマさんはアズマさんで病院で出会った時に混乱していたから、ヴャクト姉さんのことは忘れていたみたいで


ヴャクト姉さんはそれも秘密として抱えた。



アズマさんが、無茶な鍛え方をしてるのを知った。

責任感の強い人だから、止めたって聞かないだろう。


誰も悪くないのに、ラーナお姉ちゃんの事故で、皆が皆自分を責めているのを知った。


それくらいラーナお姉ちゃんが沢山の人に愛されていたんだと、私は知った。


それはきっと、ラーナお姉ちゃんの笑顔の魔法の力。


だから、私は……


もしも私にもヴャクト姉さんやラーナお姉ちゃんみたいな魔法が使えるなら


皆が自分を責めない世界を祈って。

そして欲を言うのなら……ラーナお姉ちゃんの記憶が戻る事を祈って


私も笑顔の魔法を使う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。