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翠憶を求めて  作者: ラーナ
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どこまでも続く蒼

青い空は、翠と出会う

「かんっぜんにやらかしましたぁあ!」


周囲に人気がないのを良い事に私は大声で叫ぶ。


勢いで家を追い出されて、白姉の所へ向かうと手紙を出して

それから電車に揺られて、バスに揺られて

ちょっと道中で観光を楽しんでみたりして。


そして辿り着いた白姉が住む家のある最寄り駅から

歩いて歩いて歩いて歩いて……


私は完全な迷子になっていた。


住所はわかっているんだからなんとかなるって、飛び出すまでは良かった。


けれど……


「地図も携帯も持ってなかったよぉ! 私のバカぁ!」


私みたいな子に携帯は早いと、携帯を貰っていなかった。

いや、貰っていたとしても一族を追い出されているんだから、多分解約されていただろう。


とにかく、白姉が住む家のある最寄りの駅まではなんとか来れたものの、この先が見事にわからない。


しかも、最寄り駅につけたテンションで思わずウキウキで歩き続けてたせいで、最早最寄り駅までの戻り方すらわからなくなっている始末。


少しは考えて行動して。


……昔、白姉にそんな注意を受けていた筈なのに。


「だ、大丈夫! 地球は丸いからいつか着くもんっ!」


虚勢で、そんな事を叫んでみる。いや、どこまで歩くつもりなんだ私。

セルフツッコミをしてしまうくらい、テンションが崩壊してしまっていた。


「ラーナお姉ちゃん並みの馬鹿を見かけてしまったのです……」


そんな時だった。とんでもなく酷い言葉と共に、その娘と出会ったのは。


「ひ、人だぁ……助かったよぉ」


酷い言葉を浴びせられた事より、人に出会えた嬉しさのほうが勝っていた。


「いえ、私は人じゃなくて妖かしの類いなので、どうぞお気になさらず叫んで彷徨って地球一周してきてください……」


けれど、その子は明らかにヤバい人を見る目で私と距離を置いて、スタスタと立去ろうとする。


「妖かしでも幻でもお化けでもなんでも良いから助けてぇ!」


ここで、せっかく会えた人に逃げられたら今日は確実に野宿コース。

しかも人気が無いから、多分ご飯も何もありつけない。


必死で駆け寄って、その子の腕を取って、私は泣きついていた。


「流石に冗談だったんですけど……」


そう言って困ったように笑って、その子は立ち止まって私の方へと向き直ってくれた。


うん。わかってる。どんな状況でも流石の私も化け物に助けは求めない……多分。

それに、こんな可愛らしい化け物なんて居ないと思う。


「うーん、私も可愛さには自信あったんだけど……私より可愛いなぁ」


ビー玉のように大きな瞳。青とも緑とも取れるような髪の色。ポニーテールに大きなリボンがすごく可愛い。

背丈は同じくらいだし、年齢も同じくらいだとは思う。


「すみません。少しでも優しさを見せた私が馬鹿でした。さようなら」


私の発言に気を悪くしてしまったのか、また立ち去ろうとするその子に私は再び必死にしがみつく。


「わぁあ! 褒めただけで嫌われたぁ!」


「……初対面でここまで頭痛を痛くされたのは初めてです」


大きくため息を吐いて、その子は改めてもう一度私を見据えた。


やっぱり可愛い。そう言いたくなるけど、次は本気で逃げられそうなのでその言葉は飲み込んでおく。


「えっと、迷子さんですよね? めちゃくちゃ叫んでましたし」


「迷子さんじゃなくて、雨宮蒼さんだよ! よろしくね! えっと、何さん?」


「本物のお馬鹿さんですか!?」


自己紹介は大切って聞いてたんだけど、何か間違ったかな……。

私がキョトンとしているのを見て、その子は自分を納得させるように小さく深呼吸をしていた。


「リーノ・リャグーシカです。……ちょっと蒼さんのペースで話すと私の体力と知力が削られそうなので、私からの質問形式で大丈夫ですか? ダメなら帰ります。彷徨って下さい」


「問答無用片道切符!」


自分でも訳のわからない言葉でツッコんでいた。


「うーん、蒼さんなんて他人行儀な呼び方はちょっと嫌だから、そこだけ変えてくれたら、大丈夫っ!」


散々言う割には、私を助けようとしてくれる優しい子だし、前の街では雨宮の一族ってだけで

距離を置かれて友達なんて居なかったから、この子とは仲良くなりたくて、思わずそう言ってしまう。


また逃げられたらどうしようって不安はあったけど、

考えるより先に言葉が出てしまうのは私のクセだから仕方ない。


そのせいで白姉には色々迷惑掛けてる気がするけど……。


「それでは、蒼ちゃんで。私の事は好きに呼んでください」


私の性格を見抜いたような、少し呆れたような、優しい笑みを浮かべて、リーノは手を差し出してきた。


「じゃあ、りーのん! よろしくねっ」

「ごめんなさい。私が悪かったです。素直にリーノと呼んでください」


差し出された手を握ろうとしたら、スッと引き戻された。


りーのん……可愛いと思うんだけど駄目なのかなぁ。


「立ち話で長くなって暗くなると家族も心配すると思いますし、とりあえず駅まで向かいますね」


りーのんはそう言って、私の手を握るとゆっくりと歩き出した。


駄目って言われても、そう呼んでやるんだから。

こっそりと心に誓ってから、私はりーのんの言葉に返す。


「家族っ! そうなの! りーのん聞いてよー」


「次にその呼び方したら、本気でぶん殴りますよ」


怖い事を言われたけど、聞かなかったふりをして、りーのんに私は今までの話をする。


一族を飛び出した事。

従姉妹である白姉を訪ねて、ここまで来たこと。


全てを話し終えた頃には、駅の灯りが、遠く見えてきていた。


りーのんはずっと黙って私の話を最後まで聞いたあとにたった一言。


「蒼ちゃんはどこまでも真っ直ぐなんですね」


凄く優しい声で、凄く優しい笑顔で、そう言ってくれた。


「あ、あれ……りーのんの事だから本気で本当の大きな馬さん鹿さんとか言ってくると思ったよ……」


「一応、その意味も含まれてます」


私の言葉にガックリと肩を下げた後にりーのんは呟いていた。


「え、えへへー……あうぅ、白姉にめちゃくちゃ怒られそうだぁ」


りーのんですら、やっぱり私が馬鹿な事をしたと言う認識はあるんだ。

歳上で当事者の白姉は余計そう考えるんじゃないか。


なんだか、少し不安になってくる。


「蒼ちゃんらしくないですよ? その顔」


私が悩んでいると、りーのんは少し可笑しそうに笑って、続けた。


「笑顔の魔法って知ってます?」


その言葉を発したりーのんに、私は思わず見惚れていた。


遠くを見るような、懐かしいものを見つけたような。

同年代の子がこんな表情できるんだってくらい複雑な表情。


白姉と何処か被る、少し影のある微笑みだった。


「白姉って人か確信はないですけど、似てる人知ってますから、その人の所に案内しますね」


そして、一筋の光明。


もうすぐ、白姉に会えるかもしれない。


私の胸は、大きな期待と、ほんの少しだけ小さな不安で。


でも、大丈夫。だって私だもんっ!


根拠のない自信とともに。私はりーのんの背中を追った。

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