表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/225

閑話 世界の狭間から親しみと少しの希望を込めて

閑話その⑥です。


今話をもちまして、間章は閉幕となります。


明日からは、新章がスタートいたします。


どうぞ、ご期待くださいませ。


m(*_ _)m



〜 転生神ククルシュカーの神域 スナック【女神のオアシス】 〜


《転生神ククルシュカー視点》



「ちょっとククルシュカー!居るんでしょ?!開けなさいよ!!」


ああー、ひまだわー。


なんか面白いことないかしらねー。


「ちょっと!?明かり点いてるし、居留守とかバレバレだから!?開けなさいったら!!」


カラオケも正直、歌い尽くした感があるのよねー。


まあ、演歌・歌謡曲にはあんまり手は出してないけどー。


「ねえったら!?どうしてそんな意地悪するのよ!?泣くわよ!?開けてくれないと、泣いちゃうからね!?」


あーもう。


さっきからうるさいわねー。


まだ開店時間じゃないのよー!


ウチは20時〜LASTなんだからねー?


まだ18時半だってのにー。


「はいはいー。どちらさまですかー?」


お店の二重扉の鍵を念じて開ける。


まあ誰かなんてー、最初から分かってるんだけどねー。


「ああもう!やっと開いた!!ちょっとアンタねえ!折角訪ねて来たってのに、あんまりじゃない!?」


ドアベルをけたたましく鳴らしながら店内に入って来たのは、思った通り、【アストラーゼ】という世界の主神、ユタだった。


【アストラーゼ】とは、最近地球の日本出身の男性、【六合真日(りくごうまなか)】さんが転生して行った、剣が振るわれ魔法が飛び交う、王道ファンタジー世界だ。


「なによー、ユタ。今日はアンタ1柱(ひとり)なのー?」


主神とは言うものの、結局は創造神様が、ひとつの世界を管理させるために創り出した、1柱の神でしかない。


世界の管理者として、その世界の理を維持、発展、昇華させるのが、役割だ。


「そんなこと言ってる場合じゃないのよ!大変なんだから!あ、とりあえず生で!」


大変って言ってる割には酒は飲むんかーい!?


まあ、GP(ゴッドポイント)はキッチリ払ってもらうから、別に良いんだけどー。


「なによー。ひとつの世界の主神様ともあろうお方が、随分慌ててるのねー?」


バーテンホムンクルスが、ユタの前に冷えた生ビールと、お通しを差し出す。


今日のお通しは……ポテトサラダ、キュウリのナムル、サイコロステーキねー。


よし、私も頼もー。


バーテン、私も生ちょうだいー。


「それでー?何が大変なのー?んくっんくっ……」


生ビールのジョッキを受け取って、冷たいビールを喉に流す。


んんー♪

やっぱり1杯目は、生よねー♪


「ぷはーっ!!生き返ったー!生きてないけど!」


……なんかイラッとするなー。


何今のー?

ジョークのつもりー?


「用が無いならお引き取り願うわよー?」


要件とやらを急かしてやる。


まあ、思考を読めば一発なんだけどー、神同士で無闇に読心するのって割とタブーなのよねー。


「あ、ああ、そうだったそうだった!もうっ!お酒飲んでスッキリしてる場合じゃないんだってば!!」


先に飲み出したのはアンタでしょー!?

何私が悪いみたいに言ってるのよー!


「あのね!【勇者】が居たの!!」


へ?

何の話ー?


「あのねユタ、要約し過ぎよー。ちゃんと詳しく話してー。」


そりゃ勇者くらいそこら中に掃いて捨てるほど居るでしょー。


「あーもう!だから、()()()勇者が居たの!知らない内に召喚されてたの!!」


な、なんだってーーー!!??


で?


「それでどうしてそんなに慌ててるのよー?っていうか勇者ってどんなよー?俺TUEEEE系?無自覚無双系?今地球で流行りの騙され復讐系?」


「人類最終兵器型魔族絶対殺すマン系。」


え…………


「えええええええええええええ!!??」


ちょっ……!?


何それ何それー!?


「それがね、召喚先は北の大陸の帝国で、首謀者は勿論皇帝と皇女。それと皇室筆頭魔導士ね。で、帝国は人間至上主義の典型で、更には過去の転生者の影響で、科学文明が混じってるの。」


ええ……

何なのその厄介を絵に描いたような帝国は!?


「もうひとつオマケに、皇帝は【扇動】スキル持ちで、皇女は【魅了】持ち。で、筆頭魔導士は【洗脳】持ち。」


大・三・元じゃん!!??

なんてことなの!?


「ちょ……!?そもそも勇者召喚だなんて、そんなの伝わってたの!?なんで気付かないのよー?!」


「しょーがないじゃない!?アタシだって地上の総てを四六時中監視してる訳じゃないし、その帝国の聖堂地下が召喚場所なんだけど、転生者の故郷の科学文明と独自に組み合わせた結界が張られてて、全く引っ掛からなかったのよぉ!!」


不味い不味いっ!?


まだ北の大陸ってことだけは救いだけど、もし南の、真日さんの居る大陸に手を伸ばされたら……!


「それで、その帝国と勇者の動向は?」


ぶっちゃけ真日さんの周囲しか観察してなかったから、【アストラーゼ】の他の国とか大陸とか知らないのよ。


「北の大陸の8割は既に帝国の手の中よ。獣人の国とドワーフの国、それと魔族の国が連合を組んで、抵抗してるわ。」


うっそー!?

既にそんなことになってるの!?


「そんなになるまで気付かなかったの!?」


明らかにバランス崩れてるじゃん!?


「ついこの間、連合の盟主だった魔族の国の、そこの魔王が勇者に討ち取られたの。それで勇者のリソースが急激に上昇したから、それで気付けたのよ。」


魔王討伐はある意味お約束だけど、問題はその勇者が帝国の傀儡に近い形で囲われてるってことね。


既に、帝国の都合の良い兵器に成り下がってるってわけか。


「戦火は、遠からず南の大陸――あの子の居る大陸に届くわよ。どうするの?理を覆した勇者召喚もそうだけど、現在その勇者に対抗できる可能性が有る転生者は、彼しか居ないわよ?」


現地民は当然として、真日さん以外の転生者でも歯が立たないってことなの?


「因みに、他の転生者はどんな感じなの?」


たとえ1人じゃ無理でも、徒党を組めばなんとか……


「えーと、農民になってスローライフしてるのと、悪役令嬢になって死亡フラグを折りまくってるのと、冒険者パーティーから追放されてから成功してざまぁしてるのと、産まれたてのドラゴンの赤ちゃんやってるのと……魔王の娘ね。」


ダメダメじゃん!?

って、魔王の娘って転生者なの!?

今まさに亡国の姫プレイ中!?


「一応、参考までに訊くけど……その魔王の娘って、いくつ?」


「8歳ね。」


戦力外通告!!!!


まともな赤ちゃん転生で8歳とか、現役最終兵器な勇者に勝てるわけないじゃん!!


しかもその子の親殺して超絶レベルアップしてるんでしょ!?


「え、なにその地獄絵図。ユタ、管理責任問われるんじゃない?」


「ちょっと、不吉なこと言わないでよ!?アタシだって何とかしようとしてるけど、相手はたとえ理に反して召喚されたと言っても、曲り形にも勇者だし、しかも手引きをしてるヤツが――んぐっ!?」


突然、ユタが息を詰まらせ、言葉を継げなくなる。


両手で喉を抑えて、苦悶の表情を浮かべている。


「ちょっ、ユタ!?何よ、何の干渉受けてるの!?」


嘘でしょ!?

こんなんでも彼女は、ひとつの世界を任された管理者なのよ!?


そんな彼女に、しかも私の神域で干渉するなんて……!?


〘おやおやぁ。お喋りな口はコレかなぁ?〙


なにこれ……


私の神域が、侵食されている……!?


「あ、アンタ……アンタいったいなんなの!?」


私はその、侵食された空間に空いた虚から、ユタに手を伸ばしている()()を睨む。


〘神域を侵食されてるのに、随分元気なんだねぇ。たかが転生神のくせにさぁ。〙


不味い……!

コイツ、私の権能じゃ情報が読み取れない!?


ユタは……駄目か。

完全に権能を掌握されちゃってる。


他の神域へのアクセスも遮断されてるし、抗う術が、無い……


〘おやぁ?諦めちゃったのかなぁ?まあいいかぁ。変なちょっかい出されるとイラッとするしぃ。〙


()()は、酷く億劫そうに手を伸ばし、ユタの首を掴んで、虚へと引き摺り込もうとする。


「ユタ!!」


駄目だ。

私とは神格が余りにも違い過ぎる。


それでいてこの、息の詰まるような神威(プレッシャー)は……


「アンタ……【堕とし子】ね……?」


「ユタ!?」


絞り出すように、ユタがそう言い放つ。


【堕とし子】ですって?!


創造神様から創られたのではなく、神格の高いお后様との間にもうけられた、真なる神の子。


その恵まれた神子が、父たる創造神様に逆らって堕とされた存在。


つまりは、【邪神】。


そんなヤツが、どうして……


〘へぇ。ボクを識っているの。まあ、だからなんだって話だけどねぇ。どうしてこんなことするのかって?遊びだよ、遊び。やっと創造神(アイツ)に堕とされた深淵(アビス)から抜け出せたんだ。そこら辺に転がってる玩具(オモチャ)を使って、遊ぼうと思っただけだよぉ。〙


何を言っているの。


玩具(オモチャ)?遊ぶ?


「それが……アタシの世界ってことか……!!」


〘神核を掌握されてるってのに、随分元気だねぇ!流石は管理者ってとこかな。でもボクが今やってるゲームを、邪魔されたくないんだよねぇ。だからさぁ、消滅して(居なくなって)よ?〙


不味い、ユタが消されちゃう!!


でも何もできない!

神域すら掌握されて、権能も働かない……!


ユタ……!


《ククルシュカー、ごめんね。彼に、伝えてあげて。それと……託しても、いいかなぁ……?》


何言ってんのよ……!


権能振り絞って私に直通思念飛ばす暇が有ったら、ちょっとは抵抗しなさいよ!!


《ごめん、それ無理。でも、コイツの情報はちょっとは読み取れたよ。アタシの権能と情報、渡すからさ。ねえ……頼むよ。》


……馬鹿じゃないの。


私みたいな木っ端な転生神に、堕とし子に抗えって言うの?


《ほんと、ごめんねぇ。このままじゃ、アタシの世界は滅茶苦茶にされちゃう。アタシの子達を……ううん。彼を、護ってあげて。》


…………分かったわよ。


やってやるわよ。

でも失敗しても恨まないでよね!?


〘んん?何をコソコソしてるんだい?余計なことはしないでほしいなぁ。〙


《お願いね?あーあ、折角仲良くなれたのになぁ……ごめ――――》


ユタから圧縮隠蔽された権能(ちから)と情報が、塊で私の神核に注入される。


それと同時に、ユタは空間に空いた虚に、飲み込まれていった。


「ユタあああああっ!!!!」


力なく伸ばした私の手は、何も掴むことなく彷徨うだけ。


〘これで当面の邪魔者は居なくなったねぇ。そうだ。寂しくないように、キミもこの神域ごと消してあげるよぉ。存在の塵になっても、仲良くすればいいよぉ。〙


堕とし子による侵食の速度が上がる。


私の神域は、既にその殆どが塵になって、虚へと飲み込まれてしまっている。


〘それじゃあ、さよならだねぇ。残り僅かな時間、この神域で思い出にでも耽ってなよぉ。〙


そう言い残し、堕とし子はこの神域を去って行った。


後に残されたのは、崩壊する私の神域と、私だけ。


たった今、お気に入りだったスナックも、消滅してしまった。


「なんてもん託してくれてるのよ……ユタのバカ……」


託されてしまった。


願われてしまった。


ユタが権能を私に譲渡したことは、隠蔽のおかげでバレてはいない。


これを使って、【アストラーゼ】を護らなくてはならない。


だけど、神域が堕とし子によって封鎖されてしまっているため、ユタの神域まで跳ぶことができない。


こうなったら……!!


私はその場に腰を下ろして、貯めに貯めたGPの、特典を選び始めた。





急転直下の展開となりました。


ククルシュカーはどうするのか。


アストラーゼはどうなって、真日達は何に巻き込まれるのか。


新章は、明日よりスタートです。


お楽しみに!



評価、感想、ブクマ登録を、いつでもお待ちしております。


これからも、どうぞよろしくお付き合いくださいませ。


テケリ・リ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 子供達が元気になって良かった~泣 ミラたちも定住か~ 皆が幸せなっていくさまが実に良いです ユウリス君も頑張ってるしマナカに再会したらドヤるんだろうなぁ(笑) コリーちゃん良いですね 個人…
[一言] あくまで邪神は世界をゲームとして観測したいんですかね? であるなえらば地上は少しの間だけなら大丈夫でしょうけど。 マナカさんが【時空魔法】的なノリで死んだ神様を別時間軸から呼び寄せることは…
[一言] えぇええ、なんで最初からこんなラスボス級の敵が!?まだ地盤も固まってない状況なのに!?こんな登場のさせ方しちゃったら敵は速攻仕掛けてくる性格になっちゃってるじゃん!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ