第十話 鬼の首取ったどー!!
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
感想、評価、ブクマを、いつでもお待ちしております。
質問やご意見も大歓迎です!
先の展開に影響の無い範囲で、しっかりとお答えします!
よろしくお願いします。
m(*._.)m
〜 ユーフェミア王国 ケイルーンの町 〜
時刻は宵の口くらい。
多くの商店が扉を閉ざし、しかし酒場はいよいよ賑わいを増す、そんな時間。
俺は、とある豪邸の裏口へと来ていた。
「此処が、【モンドール】って奴の屋敷か。」
デカい。
そして広い。
多分この町の町長の屋敷よりデカいんじゃねえの?
「へ、へい、マナカの旦那。今裏門の番人に話を付けましたんで、じきに中へ入れるはずでさあ。」
そんな返事を寄越すのは、先日とっちめた人攫い組織の1人。
孤児達のお姉ちゃんであるエリザに乱暴しようとして、俺による性転換手術を受けた男(?)、【ゴンツォ】だ。
残念ながら切り落とすだけでは漢女化はしなかった。
今度試しに、コリーちゃんを紹介してみようと思う。
「ふーん。こうアッサリ行くあたり、相当な数熟してるんだな?」
当然だが、コイツらに対する怒りは消えたわけじゃない。
自然と口調もキツくなり、嫌味も混じる。
「だ、旦那ぁ、勘弁してくだせぇよ!命を救ってもらったんすから、もう二度とやりませんって!さぱっと足を洗いますって……!」
まあ、最早おイタは出来ない身体だしな。
因みに、人攫い達の残りの連中は、ギルドのドルチェ預かりとなった。
今回の作戦が無事終わった後は、コイツらは彼女の元で性根を叩き直されることになっている。
作戦会議の場で、そう決まったのだ。
使い物になるようなら、俺の為の情報屋として使う予定だ。
「おい、確認が取れたぞ。入ってよし。」
そんなことを話していると、門番が入邸の許可を伝えに来た。
「あいよ、ごくろうさん。オラ、行くぞ!」
途端粗暴な感じに切り替わるゴンツォ。
今の俺達は、ゴンツォの手引きで商人に紹介してもらう流れの奴隷商って設定だ。
俺は派手過ぎない程度の身形の良い格好をし、容姿を魔法で変えている。
右手には、手枷を嵌めたシュラ――ウズメが鎖で繋がれている。
ウズメは拐かされた商品という設定のため、フードの付いたワンピース姿だ。
勿論、ワンピースの下にはいつもの格好をしている。
誰が無防備な格好でオヤジに会わせるかよ。
先導するゴンツォについて行く俺達。
作戦の第1段階はクリアだ。
屋敷に入ると、薄暗い通路が奥へと延び、一定の間隔で私兵が立って、俺達の行動を観察している。
さて、何処かに良い場所は……お!
俺は長い廊下の様子を伺い、1箇所だけ、隙間を開けているドアを見付ける。
中に明かりは無いし、感知スキルにも反応は無いため、無人のようだ。
『タマモ。もうすぐそこのドアの隙間に飛ばすぞ。後は頼むな。』
俺は鎖を持っていない方の手の中に向けて、念話を飛ばす。
『承知しました。お願いします。』
アザミ――タマモは、固有スキルを使って、現在俺の手の中で蟻に【変幻】している。
俺はタマモが化けた蟻を結界で包み、念動でドアの隙間に放り込む。
『どうだ?』
送り込んだタマモに様子を訊ねる。
『どうやら、数ある応接室のひとつのようです。ソファにテーブル、暖炉と絵画……その程度ですね。ではクレイ様。タマモは予定通り、証拠探索に移ります。』
『ああ。気を付けろよ。』
タマモの潜入成功。
第2段階クリアだな。
ゴンツォに先導されて入った部屋は、明かりが煌々と灯された、広い応接室だった。
調度品は、ちょっとやり過ぎだろってくらいの煌びやかさ。
贅沢に金を使ったか、金箔を貼った、意匠を凝らしたデザインのテーブル。
金糸や銀糸をこれでもかと縫い込んだ、柔らかそうなソファ。
金銀、宝石の鏤められたシャンデリア。
成金趣味ここに極まれりって感じ。
因みに俺達用の椅子は無いようで、ゴンツォと共にソファに向かい合って立ったまま待たされる。
部屋の中にも私兵が2人居て、俺達が怪しい動きをしないように睨んでいる。
待つこと少し。
ドアの向こうから、此方に近付いて来る喧しい足音が聴こえてくる。
足音は部屋の前で止まることも無く、到着と同時にドアが開かれる。
「まったく困るのよね!要らぬ誤解をされるから、不用意に接触するなといつも言ってるのよね!」
そう盛大に文句を言いながら入って来たのは、ぶくぶくと肥太ってケバケバしい衣装を身に纏う、如何にも悪徳商人ですって感じの男だ。
付き人か護衛なのか、1人のローブを纏った男も一緒だ。
「す、すんませんモンドールさん。どうしてもモンドールさんに目玉商品を見せたい、って奴が居まして……」
よしよし。
ゴンツォは打ち合わせ通りにちゃんと話しているな。
「んー?その若造がそうなのよね?後ろに居るのが見せたいって商品なのよね?」
……語尾がうぜええええ!
よねよねよねよね煩いわ!
「そうなんすよ。おい、失礼のないようにな!」
ゴンツォから俺に話を振ってくる。
「いやいや。はじめまして、モンドール様。わたくし、流しで奴隷を扱っております、アキンドと申します。この度この近辺で、とびっきりの娘を手に入れたものですので、是非この町一番のお大尽であるモンドール様にご紹介致したく、彼に繋ぎを依頼した次第です、はい。」
アキンドとは、勿論適当に考えた偽名だ。
【鑑定】持ちが居た時に備えて、当然【欺瞞工作】を使用してステータスも改竄済みだ。
ウズメも同じように改竄してあり、ステータス上の名前はシャロン、Lv20相当までステータスを下げてある。
「アキンドねぇ……胡散臭い名前よね。私に紹介するってのに、商品は1人だけなのよね?」
てめぇに胡散臭いとか言われたかねーよ!?
おっと、耐えるんだ俺!
ツッコんじゃダメだぞ!
「いやいや。勿論他にも商品は取り揃えておりますとも。ですが今晩は、一番の目玉商品を今回だけ!特別に!会って下さった貴方様のみに!ご紹介しようと思いまして、はい。」
喰らうがいい!
テレフォンショッピング直伝!
【如何にもな限定感を醸し出して買わなきゃ損な雰囲気にしてしまうアレ】な攻撃!
「ほっほう!そこまで言っちゃって大丈夫なのよね?言っとくけど、私の目は厳しいのよね!」
よし、乗ってきたな。
「いやいや。もっちろんで御座いますとも!このアキンドの商売人生で、これほどの上玉には、とんとお目にかかったことは御座いませんよ!これは、ここだけのお話なんですがね……?」
そして、溜める!
溜めて、煽る!
唸れ、俺の【詐術】スキル!
「なんなのよね!?さっさと話すのよね!」
焦れてる焦れてる。
さて、爆弾投下だ。
「ここだけのお話ですよぉ?この娘、なんと鬼人族のやんごとなき身分の者でしてね!それはもう大層見目麗しく、男好きのする身体をしておりまして!このわたくしも、何度その色香にやられそうになったことか!」
どうだぁ?
そそられるだろぉ?
『ぬ、主様よ。そのような言われ方をすると、些か面映ゆいのじゃが……』
『悪いが耐えてくれウズメ。少しでも時間を稼ぎつつ、コイツの関心を引かなきゃならないんだからな。それに、お前が美人でスタイル抜群なのは事実だろ?自慢みたいなもんだよ。』
『う、うむぅ……』
念話でウズメからツッコミが入るが、今良いところなんだから。
モンドールの奴も、目の色が変わってきてるぞ?
「ほ、本当なのよね!?嘘だったら、タダじゃおかないのよね!?」
ほーら食い付いた。
「いやいや。このアキンド、商売で嘘は申しませんとも。はい。」
おいこらゴンツォ。
その呆れ返った顔をやめろ!
バレるだろうが!
「は、早く!早く見せてみるのよね!!」
おおう、すげえ前のめりだ。
ちょっと煽り過ぎたかな?
「それでは、ご照覧あれ。」
俺は仰々しく、芝居がかった仕草で、ゆっくりとウズメのフードを脱がせる。
そして、その顔をモンドールに見せてやる。
「!!!!!!」
うむ。
驚いてるな。
目玉が落ちそうなほどに目を見開き、ポカンと口を開けて言葉も無いようだ。
「いやいや。この娘、名はシャロンと云いましてね。鬼人族のさる部族の、れっきとした姫で御座いますよ。はい。」
燃えるような赤い髪に、両額から伸びる艶めく2本の角。
意志の強さが秘められた鋭い目元に、犬歯の覗く瑞々しい唇。
そして極めつけに、ダボッとしたワンピースでも隠し切れない熟れた身体と色気。
普段露出の多い格好ばっかりだから、こういう服装は凄く新鮮ですな。
今度似合いそうな服創ってやろうかな……?
「す、素晴らしいのよね……!確かに、言うだけのことはあるのよね!私も、これほどの娘は見たこと無いのよね!!」
モンドールも興奮して息を荒らげている。
どうやらお眼鏡にかなったみたいだな。
『ううむ、こ奴に褒められてものう……』
『言うな、ウズメ。』
お?
何やらローブの男に目配せをしてるな。
そしてローブの男は、ウズメを見て……モンドールに頷いた。
なるほど。
コイツが【鑑定】持ちか。
モンドールに指示されて、俺の言葉が真実かどうか確かめたんだろう。
「良くやったのよね、アキンド。少し改めても、良いのよね?」
確認を取ったモンドールが、鼻息荒くウズメに躙り寄る。
「いやいや。モンドール様、暫しお待ちを。何しろわたくしの最高の商品で御座いますれば。お手付けはどうか、商談の後にお願いしますよ。はい。」
キモい顔でウズメに寄るんじゃねえよ!
一切触らせる気なんか無ぇからな!?
「むぅ……それもそうなのよね。この娘、勿論処女なのよね?」
先ず訊くのがそれかよ!?
この変態野郎が!
「いやいや。そこは保証致しますとも。流石は鬼人族、といったところでしてね、暴れて確認もひと苦労でしたよ。はい。」
いや、0歳だし。
生娘に決まってるわ、そんなもん。
『お主ら……本人の目の前でようも斯様な下世話な話を……』
『ちょっ!?怒るなって!?しょうがないだろ!?』
念話でウズメを宥める。
というか、言葉と念話と、頭の切り替えが忙しいよ!?
「それは良いのよね!益々気に入ったのよね!」
上機嫌で再びソファに腰を下ろすモンドール。
粘着質な笑みを顔に浮かべ、早くも頭の中はお楽しみのようだ。
くっそ!
滅茶苦茶殴りてぇ!
いやいや。
落ち着け俺。
ここからが本番だ。
上手いこと、更に時間を稼がないとな。
「それじゃあ、本題に入るのよね。単刀直入に、幾らで売るのよね?」
来たか。
ここで下手に値段を言って、即決されても困るしな。
一応ゴンツォからは取り引き価格の、ドルチェからは市場価格の相場を、事前に聞いて予習済みだけど。
「いやいや。そうですねぇ。仮に、モンドール様でしたら、幾らなら手放されますかねぇ?はい。」
予定通り、揺さぶりを掛けてみるかね。
吊り上げるだけ吊り上げてみるか。
「そうよねぇ……大金貨5枚、といったところなのよね。」
コイツ……舐めてやがるな?
「いやいや。意地の悪いことを仰いますねぇ。希少な鬼人族の生娘で御座いますよ?はい。」
大金貨5枚……金貨500枚辺りは、一般の獣人女性辺りの取り引き価格だ。
流石に足元見過ぎだろうよ。
「冗談なのよね。流石に同業なだけあって、相場も頭に入っているようなのよね。」
偉そうに試しやがって。
「希少な種族の生娘で、しかも部族の姫なのよね。大金貨20枚ってとこじゃないのよね?」
金貨で2000枚。
人間の上級貴族の子女の相場だな。
「いやいや。この娘は人間ではなく、鬼人族でございますよ?育て上げれば、一流以上の戦士にも成り得ます。愛玩用兼、護衛戦力とすれば、まだ足りないでしょう?はい。」
まだか、タマモ。
いい加減、ウズメの視線が怖いんだよ!?
「なかなか交渉が上手いのよね!それなら大金貨35枚でどうなのよね?!」
良い具合に熱が上がってきてはいるが、そろそろ吊り上げのネタが厳しいぞ。
「いやいや。実はこの娘ですね、血筋が良いおかげか、固有スキルを3つも所持しているのですよ!これは大変な価値だと思いますがねぇ?はい。」
俺の言葉に、再びローブの男に顔を向けるモンドール。
そんなモンドールに、男は頷きを返す。
やはり【鑑定】で確認しているようだ。
因みにウズメ――シュラの持つ固有スキルは、【怒髪天衝】【鬼化】【呪詛】の3つだ。
【怒髪天衝】は、感情の爆発により、ステータスが大幅にプラスされる強化スキルだ。
スーパー〇イヤ人みたいな感じだな。
【鬼化】は、身体を作り替え、鬼本来の闘争形態に変化する。
これもステータスが大幅に強化される。
フ〇ーザ様の変身だな。
そして【呪詛】だが、これは道連れのスキルだ。
自身の死によって発動し、殺害せしめた相手にも問答無用で死を齎す凶悪なスキル。
おどろおどろしい、如何にも『鬼』といった能力だよな。
「うぬぬぬ、なのよね。確かにそれは、凄まじく希少なのよね……!仕方ないのよね!大金貨50枚――白金貨5枚で買うのよね!!」
『クレイ様、お待たせ致しました!証拠の品と書類は確保しました!』
吊り上げも吊り上げたり白金貨5枚――金貨だと5000枚だよ。
そしてその宣言と同時、タマモからの任務を完遂した報告が入る。
良くやったぞ!
「いやいや。素晴らしいご慧眼ですね。それではわたくしからもうひとつご提案……というか、ご相談なのですがね、はい。」
「なんなのよね?!早く売るのよね!金は今から用意させるのよね!」
急かしてくるモンドールを宥めながら、俺はゆっくりと鞄に手を入れる。
この鞄、勿論魔法鞄です。
護衛の男達が警戒するが、俺は危険は無いことを説明しながら、それを取り出す。
「……?それは、宝珠なのよね?それが何なのよね?」
まあ慌てんなって。
そりゃあ、見た目はただの水晶玉だけどさ。
俺が取り出したのは、ダミーコアだ。
ゆっくりと取り出しながら、コッソリと魔力を注いで操作する。
「いやいや。こちら、なんと今王国で話題沸騰中の迷宮に縁の有る、大変貴重な品でして。生憎とひとつしか用意は御座いませんが、あらゆる貴族が挙って求めること、請け合いです。魔力を少し込めるだけで、如何に遠く離れようとも、かの迷宮へと繋ぎを取ることができる代物で御座いますよ。はい。おっと!まだお手は触れないでくださいませ。はい。」
これ見よがしに見せ付け、勿体つけながらモンドールの正面にそっと置く。
「……どういうつもり、なのよね?」
流石に訝しむモンドール。
俺はそんなモンドールに、極力欲深そうに見えるよう笑みを浮かべながら、言葉を掛ける。
「いやいや。わたくしとしても、今回モンドール様と良い商談が出来ましたのは大変喜ばしくてですね。ついサービスをしたくなってしまったのですよ。はい。」
モンドールは胡乱気な眼差しを向けてくる。
「何を、望むのよね?」
ようやく来たな。
俺の本題はここからだぞ?
「いやいや。簡単なお願いでございますよ。さるお方との、ご縁が欲しく存じます。どなたかは、モンドール様が良くご存知の筈ですよ。はい。」
お、苦い顔になったな?
そりゃそうだよな。
自分の専売路に、1枚噛ませろって言われてるんだもんな。
「なるほどなのよね。最初からそれが目的だったのよね?」
「いやいや。勿論商談も目的でしたよ?ですが、聞くところによると、さるお方……【フーバー=ヨットヒム男爵】様は、更なる立身出世を望まれているとか。この宝珠が有れば、それも叶うかと愚考いたしましてございます。はい。」
場が緊張感で満たされる。
俺の確信を突いた物言いに、モンドールは暫し険しい表情で考え込んでいたが、やがて力を抜き。
「それもそうなのよね。今までも随分助力してきたけど、どうしてもあと一手足りなかったのよね。この宝珠とお前を手土産にすれば、フーバー男爵様は更なる高みへ昇られ、私は益々有用性を示せるということなのよね?」
よし!
本人の口からハッキリと繋がりを証言したな!
もうここらで良いだろう。
俺はダミーコアを手元に戻し、操作する。
すると、ダミーコアから光が漏れ、宙に映像が浮かび上がる。
その映像は。
『今までも随分助力してきたけど、どうしてもあと一手足りなかったのよね。この宝珠とお前を手土産にすれば、フーバー男爵様は更なる高みへ昇られ、私は益々有用性を示せるということなのよね?』
つい先程の、フーバー男爵との繋がりを明言したモンドールの姿だった。
うん。
ダミーコアって、マジで便利だよね。
今作ですが、先日50万文字を突破致しました!
ここまで書き進められましたのも、偏に読者の皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!!
これからも今作【ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う】を、応援してくださいませ!
皆様の琴線に触れることが出来れば、幸いです。
テケリ・リ




