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ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う  作者: テケリ・リ
五章 冒険者パーティー【揺籃の守り人】
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第九話 煮ても焼いても喰えなさそう。

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


よろしければ、評価、感想、ブクマをお待ちしております。


Twitterでも感想待ってます٩(。•ω•。)و


よろしくお願いします。


m(*._.)m



〜 ユーフェミア王国 ケイルーンの町 〜



さて。

やっと戻って来たぞ、ケイルーン。


時刻は既に夕方。


ダンジョンにモーラやラッカ、エリザ達孤児と、人攫い共に捕まっていた貴族の娘アグネス、冒険者のオルテを送った後、俺とタマモ、ウズメは残る2人、メイリーンとラキアを、彼女達の故郷の家へと送り帰した。


勿論、空高くを飛んでの結界輸送でだ。


本来ならパパッと済ませるつもりだったが、彼女達の両親にエラく感謝されてしまい、引き止められていたのだ。


メイリーンの両親は雑貨商を営んでおり、家の買い物に出たまま戻らない娘を、酷く心配していた。


街の警備隊は勿論のこと、冒険者ギルドにも捜索依頼を出し、自身らも街中を歩き回り、聞き回りと動き詰めだったそうだ。


おかげで店は開店休業状態で、利益もどん底まで落ち込んでいた。


娘が行方知れずになって1週間が経ってしまい、いい加減疲弊し、現実に負けそうになっていたところへ、俺が連れ帰ったというわけだ。


そりゃあ、やれ飯を食えだの、婿にどうだだのと、諸手を挙げての大歓迎ムード。


終いにはご近所さん達も聞き付けて集まって来て、街の雑貨屋の看板娘の帰還に、お祭り騒ぎにまで発展してしまった。


俺達は兎も角、同行していたラキアなんかは人見知りもあったから、目を回して混乱しちゃってたな。


埒が明かなかったため、俺は孤児院へのお土産と言い訳して、雑貨屋の商品から日用品や金物をあれもこれもと買い漁り、金貨を数枚押し付けてから、逃げるように店を出た。


去り際に、メイリーンに手を握られ、涙を零しながら、それでも笑顔でお礼を言われたことが印象的だったな。


次に訪れたのは、メイリーンの住む街よりも更に山に向かって行った麓の村。


森に寄り添うように、ひっそりと佇む長閑そうな小さな村だった。


ラキアの家族の居る村であり、彼女は、薬の生成の練習のための薬草を求め、1人で森に入ったところを狙われた。


そんな彼女を連れて村へ入った俺を出迎えたのは、村人達の敵意に満ちた視線だった。


あれか。


田舎あるあるで警戒心剥き出しってことか。


そう思っていた俺の耳に、怒鳴り声が飛び込んで来たんだ。


『この拐かしが!!自分のモノにした俺の娘を、態々見せびらかしに来たのか!!??』


手に鉈を持った、30代前半くらいのヒョロっとした男が、エラい剣幕で詰め寄って来る。


そう。

なんと、俺がラキアを拐かした人攫いだと、誤解されたのだ。


ラキアが間に立ち塞がり俺を庇ってくれても、それも火に油で。


『俺の娘を盾にするなんて、どこまでも非道な野郎だ!!奴隷にでもして、無理矢理命令しやがったな!?どうせ後ろの姉ちゃん達も、同じように拐かした奴隷なんだろ!!』


うん。


田舎あるあるその②。


頑固で話が通じない。


それから俺達は必死に説得し、誤解だと説明し、キレたラキアが父親と殴り合いを始めて、両者体力が尽きたところでようやく収まった。


ラキアはなかなか良いパンチを持っていたな。


胸を撫で下ろした俺だったが、今度は怒涛の謝罪が押し寄せる。


うん。

この世界にも、土下座って在るんだな。


『誤解して済まねぇ!!もう娘は戻らねえもんだと、諦めてたからよう……!あんた、良かったら娘を嫁に貰ってくれ!!』


いや、なんでそうなるのかと。

なにゆえ、折角戻った娘をまた手放そうとするのかと。


『ん。それも、悪くない。むしろ、望むところ。』


とか娘さんが言い出しちゃってたけどね!


なんとかそれも説得し、家族の時間を取り戻して欲しいと頼み込み、家を出る。


そしたらそこの去り際でも。


『お兄さん。今度は、お兄さんが、攫いに来てね。』


とか言いながら抱き着いてきよった。


俺はなんとか誤魔化すように。


『10年早えよ、マセガキ。』


とかキザなこと口走っちゃって恥ずかしくて、ここでも逃げるように、空へと飛び上がった。


『ん。10年くらい、すぐ。待ってるから。』


俺の背中に届いた、そんな言葉を残して。




「いやあ…………大変だったな。これから大一番なのに……」


「そうですね。なんとも、個性豊かなご家族でしたね。」


「10年早い、のう?まったく、どの口が言っておるのかのう?」


ってめ!シュ……ウズメ!?

俺の繊細な心を踏み躙る気か!?


「確かに、タマモもそう思いましたね。未だ我らの誰も、お情けを頂いていないというのに……」


タマモまで!?


もうやめて!

そこはもう触れないで!?


「それはもう良いだろ!?咄嗟に出ちまったんだから、しょうがないだろ!!それよりも、本番だ、本番!」


気持ちを切り替えろ、俺!


俺達はこれから、この街で本来の目的を果たすのだ。


まずはギルドへ行き、延ばし延ばしになってた盗賊関連の手続きの仕上げと、情報収集。


集める情報は、盗賊達から何か聞き出せたかということと、この町の裏組織について。


盗賊の尋問も既にしてあり、裏組織も既に潰しはしたが、聴き逃しや見落とし、新たな事実も出て来るかもしれない。


それに、複数の視点からの情報の擦り合わせも重要だ。


そんなわけで、俺達は冒険者ギルドの扉を潜る。


仲間2人に注目を集めるのも最早慣れたものだ。


俺達は、まとわりつく視線を無視して、空いている窓口へと足を向ける。


「ちょっと良いかな。数日前に、【黒縄蛇】っていう盗賊達を討伐した、【揺籃の守り人】なんだけど。あ、俺はパーティーリーダーのクレイだ。ほい、ギルドカード。」


そう問い合せた瞬間、受付嬢のお姉さんの営業スマイルが凍り付く。


俺達に無遠慮な視線を送っていた野次馬達からも、どよめきが上がる。


「し、少々お待ち下さい!確認して参ります!!」


慌てて俺のカードを持って、奥の通路に姿を消した受付嬢のお姉さん。


取り残された俺達。


さて、どうするべ?


「おいおい。お前らが【黒縄蛇】を討伐しただあ?!吹かしこいてんじゃねえぞ!?」


おや。

筋骨隆々なドデカいオッサンが絡んで来ました。


「事実だよ。証人も居るし、このギルドにもちゃんと受理されてる。」


俺は務めて冷静に対応する。


こんなオッサンに拘らっている暇は無いんだから。


「んなわけあるかよ!?噂じゃあ負け無し失敗無しの、100人以上の大盗賊団だぞ!?てめえみてぇなヒョロガキや、こんな細っこい姉ちゃん達に、やれるわけねえだろうがよ!!」


あー。

めんどくさい。


またウズメにでも叩きのめしてもらおうかと考えていた、その時。


「そこまで。彼の言っていることは真実よ。複数のパーティーの生き残り達の証言もあるわ。」


カウンターの奥の通路から、木の床をコツコツとヒールで鳴らして、妙齢の女性が現れた。


眼光は鋭く、佇まいにも隙が無い。


「私が間に合って良かったわね?彼らはCランクだけれど、実力は間違いなくAランク以上よ。【破壊神】のお気に入りでもあるしね。アナタ、命拾いしたわね?」


言葉だけで、自身の倍はあろうかという体格の冒険者を退かせる。


「待ってたわよ、クレイ。私はこのケイルーン支部の支部長、【ドルチェ】よ。話が有るから、支部長室まで来てくれないかしら?」


そう言って、意味深げな眼差しを投げて寄越すドルチェ。


俺は肩を竦めて。


「支部長室に筋骨隆々な漢女(おとめ)が居ないっていうんなら、応じるよ。」


甦るトラウマに背筋を震わせつつ、そう答えを返す。


「コルソンのこと?ああ、彼に気に入られちゃったものね、アナタ。私にも手紙で態々報せて来たわよ。『カワイイ新人くんが入ったのよぉ♡』って。」


げんなりするわ。


「やる気が削がれた。帰る。」


思わず踵を返す俺だったが、その足を止める一言を、耳が拾った。


「あら、私には()()()()()は見せてくれないのかしら?」


…………コリーちゃんめ、そういうことかよ。


「分かったよ。お茶と、菓子を忘れんなよ?」


仕方ないかと、溜息混じりに振り向いて。

俺達は、ギルドの奥へと入って行ったのだ。




「さて、改めて自己紹介するわね。当支部の支部長、元Aランク冒険者のドルチェよ。現役の頃は斥候と中衛をやってたわね。コリーちゃんことコルソンとは、現役時代からの友人よ。」


「……マナカだ。」


「アザミです。」


「シュラじゃ。」


やっぱりね。


俺の疑念は、支部長室に入って、ドルチェが遮音の術具を起動したことで確信に変わった。


だから、今はこうして隠蔽魔法も解いているし、本名で自己紹介中なのだ。


切っ掛けは、俺の言葉に即座にコルソンを連想したことと、彼と情報を共有していると言い、俺の正体を示唆した台詞。


つまり、コリーちゃんが信頼し話す相手で、且つ俺の協力者に成り得る人物なんじゃないかってこと。


「先ずはお礼を言わせてもらうわ。【黒縄蛇】とこの町の人攫い組織の撲滅、ありがとう。これでココ周辺の治安は上向くわ。」


人攫いの方も把握済みか。

元斥候と言うし、独自に育てた情報員でも居るのかね?


「礼を言われるためにやったんじゃないよ。飽くまで俺の目的のためだ。」


「そう?孤児や移民を集めるためだったかしら?それと、迷宮の支配ね。その様子だと、この町での目的は終えたのかしら?」


やはり全て伝えられている。

まあ、コリーちゃんが信用して話したなら、否やはないけど。


「まだだな。近場の迷宮【狼牙王国】は支配して、既に俺の迷宮と繋いで活用してる。この町の孤児達や、盗賊や人攫い達に捕まっていた人達も、既に希望者は郷に帰して、それ以外は俺の迷宮で暮らしている。でも、まだやる事がある。」


鼬ごっこにしかならなくても、臭いの元を断つ。


「仕事早いわねぇ。やる事っていうと、人攫いの元締めにして、【黒縄蛇】の取り引き相手の商人ね?」


「いや、もう一個上までいく。」


臭いの元。


裏稼業に手を染める輩も。

それを種に利益を貪る商人も。


それらを囲い、己の欲望を満たしている奴らも。


「呆れた。領主を狙うの?いえ、それだけの仕事ぶりなら、既に繋がる糸は手繰っているのね?」


当然ながら、ドルチェも裏事情に明るい様子だ。


伊達に元Aランク冒険者から、ギルドの支部長に抜擢された訳じゃないってことか。


「細い糸だけどな。人攫い共のアジトから、商人までは手繰れる。今晩仕掛ける予定だったんだよ。」


人攫い達のアジトを襲い、商人とのやり取りの証拠は得ている。


そこで、それを足掛かりに外堀を埋めるつもりだ。


先ずは商人の邸宅に入り込み、本人の確保と、その先に繋がる証拠集めだ。


「それは、行方を眩ませた人攫い達の残党と、関係が有るのかしら?」


そこまで把握してるなら、話は早いな。


「ああ。アイツらに渡りを付けさせて、懐に入り込む。頃合いを見て、一網打尽だ。」


具体的には、シュラを商品と偽って売り込みに行き、屋敷内で【変幻】したアザミを解き放つ。


俺は会話で商人を繋ぎ止めて、その間に証拠を探すという計画だ。


「それ、手は足りるの?作戦としては悪くないと思うけど……」


心配はごもっともだな。


それだけの仕事を3人でやるなんて、普通なら正気を疑うだろう。


「逃走予防に屋敷の周囲は結界で遮断する。制圧力を気にしてるなら、全く問題無いよ。懸念が有るとすれば、隠し通路とかの脱出経路だな。」


「それじゃあ、そこは私と直属の部下で押さえてあげるわ。貸し借り無しのイーブンな取り引きだけど、どう?」


それが狙いね。

恐らくは、元々ドルチェも機会を伺っていたんだろう。


そこに俺という要素が、目立つ手法で乱入してきたから、上手く利用しようって魂胆だろう。


「イーブンじゃねえよ。元々やるつもりだったんだろ?まあ商人についてはそうだろうけど、盗賊と人攫いとで、まだ俺の方が2つ先行してるぞ?」


そう抗議する俺に対し、妖艶な笑みを浮かべながら肩を竦める。


「まだまだよ。コルソンに聴いてた通りの甘ちゃんね。今回の協力でひとつ。盗賊はアナタの情報に対する守秘義務。人攫いは今後のできる限りの協力よ。」


勝ち誇ったように指を三本立てるドルチェ。


喰えねぇ奴だな……


こいつ、端から協力するつもりだったのを、借りを帳消しにするために敢えて言い出さなかったのか。


貸しだとか借りだとかに拘った俺の負けだわ。


「分かったよ。それでいい。善意だけよりは、よっぽど信用できる。あ、でもそれとは別に、ちゃんと盗賊の分の報酬は寄越せよ?」


「あら、迷宮の主ともあろう者が、意外とみみっちいのね?」


「喧しいわ。迷宮ならいざ知らず、外では金が必要だろうが。有って困るもんじゃないんだからな。」


「はいはい。残念ねぇ。報奨金丸儲けとは、いかなかったわね。」


コノヤロウ……

あわよくばそこもチョロまかすつもりだったのかよ!?


「はぁ……この女狐め。」


「あら。キツネはアナタのお仲間でしょう?私はダークエルフよ。」


……コイツと口で争うのは不毛だな。


俺は気持ちを切り替えて、今夜の作戦を、仲間達やドルチェと共に煮詰めていった。





漢女「はっ!?」


フィ「どうかしましたか、支部長?」


漢女「マナカきゅんに呼ばれた気がするわん!!」


フィ「……は?」


漢女「こうしちゃいられないわあっ!本部の辞令なんて、後から持って来させればいいのよぉ!!フィーアちゃん!アタシ、先に行くからねぇん!」


フィ「ちょっ……!?後任人事とか引き継ぎとかはどうするんですかぁっ!!??」


漢女「まかせるわあああああああああぁぁぁぁ……………」


フィ「は?ちょ……ええぇぇ…………」



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