第32話《運命の再開》
「あの建物の中から強烈な殺気のぶつかり合いを感じる」
「侑ちゃん、手を握っててもいいですか?」
「ああ、僕から離れるなよ」
建物の外からでも分かる威圧感。麻衣の手は汗が滲み、震えている。侑也は再び麻衣に問いかける。
「やはり外で待っているか?」
「ううん。麻衣は一人は嫌です。絶対に嫌です。侑ちゃんの近くにいたいんです。だから、あなたに私はずっと付いていきます」
「そうか。じゃあ行くぞ!僕から絶対離れるなよ」
「はい!絶対に離れません」
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「ん?誰か来るナ!この気配ハ……南の殺人凶カ!?クカカ、これはオモシロクナル」
「どうしたんじゃ。そんな楽しい顔をして。もしかしてそこに閉じ込めている娘が関係しているのかのー」
ミル・サターナは牢に閉じ込められている中原美沙をチラリと見た。
「なるほどナ!ジジィ、南の殺人凶とあの暗殺者の娘の関係に気づいてるナ」
「ふん、そんなのとっくに気がついているわい」
「やっぱりナ。ふ、なるほど。貴様の本当の目的はあの暗殺者の救出だナ」
「南の殺人凶の実の姉ということも知っとるわい」
「ちょっと!どういう事よ!ねえ、おじいちゃん。生存している私の家族ってもしかして!?」
二人の会話を聞いていた中原美沙は牢に手をかけ大声で叫ぶ。
「………」
その必死な声を聞きながら黙りこむミル・サターナ。
「ちょっと!なんで黙っているのよ!ねえ、口を開いてよ」
「キャハ!コタエテヤレばいいじゃねーか。お前の家族の一人ハ俺と同じ殺人凶だってヨー」
北の殺人凶はある方向に目を向けた。ミル・サターナの後ろへ見える二人の姿を見つめている。
「久しぶりじゃのー、南の殺人凶」
「なぜ、貴様がここにいる、クソジジィ」
「あ、この声!私を助けてくれたおじいさんだね!……でもその先に……もう一人、不気味な気配の人がいる」
麻衣は見えない目をあけ、必死に瞳に焼きつけようとする。
「麻衣、退いていろ。どうやら僕の敵はその不気味な男らしい」
「キャハハハ、久しぶりダナ。南の殺人凶!」
「久しぶりだな、北の殺人凶。僕がお前に姉の捜索を依頼した時と比べると随分と人柄が変わったな」
「ヒヒヒ。人というのはガラリと変わるものダヨ。それに安心しろ、前の話の件ハすでに終わっているからナ」
北の殺人凶は牢に囚われている美沙のもとへゆっくりと近づく。
「さて問題ダ。この女、誰か分かるカ?答えてみろ、南の殺人凶」
「は?知らない顔だな。その女がどうかしたのか?」
「クハハ、分からないのカ!知らないのカ!オイ、残念だったな中原美沙。弟はお前の顔など知らないだとヨ。あ、そういえば貴様も弟の顔を知らなかったんだナ。キャハハハ、愉快な姉弟ダ!」
中原美沙は顔を地面に向け、言葉を失っていた。一方の中原侑也もその言葉に体が固まっていた。
「この女の名前ハ中原美沙。暗殺者にして、シン・ハザードのパートナーだ。そして南の殺人凶、お前の実の姉だヨ」
「僕の姉……。姉貴なのか!?本当に僕の家族なのか!?」
「私に……私に家族なんかいないわ!私の家族は全員死んだと聞かされた!私は孤独な暗殺者よ。しかも私の家族が殺人凶なんて信じないわ!」
「ヒャハ!せっかくの運命的な再開ヲ果たしたのに冷たい姉ちゃんだナ。クハハハハハハハハ!笑いが止まらないヨ」
「姉貴、僕はずっと捜していたよ。小さい時からずっと……。顔は覚えていないけれど一時だって頭から消えたことはない」
「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!私にもう家族はいないんだ!私に家族はいない……そう、いないのよ!そう思っていたのに……なんで……あなたは目から涙を流してるのよ……そんな目で私を見ないでよ……この私まで……私まで……涙が出るじゃないの……バカ……私に……家族がいたんだ」
中原侑也から自然と涙が出ていた。それは今までの思いが込み上げた瞬間だった。美沙による否定の言葉はもう耳には入っていなかった。なぜなら、家族だから分かる何かを感じてしまったから。その涙に美沙も知ってしまった。目の前にいるこの殺人凶こそが本当の弟なのだと。
「侑ちゃん、泣いてるの……」
「…………バカが。僕が泣くかよ………」
麻衣には分かっていた。そこには確かに家族としての絆が結ばれている事に。
「さーて、サーテ、感動ノ再開はここまでダ!オレはさっさとお前らを処分して、女々の涙をいただきたいんだがナ。幸運として今、オレの前に内田麻衣がいる。これは神の奇跡か?それとも神のイタズラか?どちらにせヨ、貴様らを殺してから内田麻衣ヲ捕獲するとしようカ!」
「おい、ミル・サターナ」
「なんじゃ?」
「ここは僕に任せてくれないか……」
「ふん、悪弟子が言うようになったわい」
「麻衣。ジジィの側を離れるなよ」
「はい、分かりました。ねえ、侑ちゃん」
「何だ?」
「負けないでね!麻衣は後ろからあなたを見守りますから」
「ああ、心配するな。僕は負けないよ。なぜなら僕は南の殺人凶だからな」
その言葉と同時に麻衣はとっさに中原侑也の背中に抱きついて心の中で祈り続ける。
侑ちゃん、あと少しだよ。あと少しで家族に手が届くよ。
ずっと、ずっと、ずっと、捜していた人に………
私は祈ります。
この闘いがハッピーエンドで終われるように。
私は祈ります。
この争いの最後にはみんなが笑顔になれるように。
私は祈り叫び続けます。
「頑張れええええ!侑ちゃああああん!」




