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闇の暗殺者と幼き少女。  作者: 博多っ子
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第14話《静かな決着》

暗殺者、殺人凶にはそれぞれ決まった武器を持っている者が多い。ナイフを扱う者、ワイヤーを扱う者、銃を扱う者。その中でこの少女が使用する武器はまた異質である。黒く輝くその死神が持つような鎌は東を尊重する武器でもある。その武器に名はないが少女はこう言っている。


死花しにばな…と》






千夏は無表情のまま北の殺人凶に歩み寄る。殺気を放つその異質な姿はまさしく死神と言える。


「あなたは邪魔…私…あなた嫌い」


そう静かに言い放ち千夏はスーと姿を消す。


「消えた!!これは死歩じゃないな」



北の殺人凶は気配を探るが全く彼女の位置が分からない。先程も彼女のスピードについて来られなかった!そしてまた…


「あなたは…ここで…」


そっと死神の声が囁いた瞬間…


彼女の冷たい鎌が北の殺人凶の喉元にひんやりと当たる。


「死んで下さい」


その死の声を聞いた瞬間、北の殺人凶はその驚異的な身体の反射でかろうじて避ける。



その一瞬、北の殺人凶は初めて何かを感じた。今まで感じた事がない何かを確かに感じていたのだ。


「ふふふ、これが恐怖というものか!まさか、自分にこの感情が芽生えるとはな」


体から汗が止まらない。前会ったリリーブラッドとはまた違う威圧感だ!それ以上にこの女の心の中には悲痛しかない。その叫びが女の瞳を通してこの北の殺人凶に流れこむのがよくわかる。


「よほど最悪な人生だったんだな、哀れな死神よ。ここまで黒く染まるのも凄いがそれでも心の中のどこかで救いを求めているお前の姿が見えるねー」



その言葉を聞いた千夏の表情が…



言葉では表現出来ないほど…


……歪んでいた……


「あなたは本当にうるさい」


その死神はゆっくり歩く。


「うるさくて!!うるさくて!!」


この死神は声をあげながら。


「非常に不愉快な人」


その死神はそっと顔をあげる。


「私は…私はただ…」


あの死神は…


「普通の女の子でいたかっただけ」


涙で頬を濡らしていた。


この廃墟のビルに千夏の悲しみが溢れ出す。周りの柱がギシギシと異音をたてる。まるでこのビルが千夏の心を感じているように聞こえる。その死神の涙を見た美沙は息をするのも忘れるくらいであった。


「あの娘!ヤバいわ。完全に自分を否定している。闇に入っていった人間はいっぱい見てきたけどあの娘は異常を通りこしている」


美沙は死を覚悟していた。もしこの闘いであの娘が勝ったら確実に私が標的になる。


「シン…助けて」








美沙が頭を抱えている時、千夏は涙を拭い北の殺人凶を睨み付けていた。そして彼女は呟いた。



「もういいや、あなたは死んで!そのよく喋る口に蓋をします」


何かふりきれたように千夏は北の殺人凶に突進し鎌を振り上げる。


「この北の殺人凶に真っ正面から挑むなんてバカな死神だねー」


北の殺人凶はその卓越した反射神経で千夏の攻撃を素早く避け、右手の短剣で彼女の胸をえぐるようにして刺した。


「チェックメイトだ。哀れな死神」


だがその異変はすぐに気付いた!!


短剣で貫いた感覚がないのだ!!



「ハズレです。北の殺人凶」


その声を聞いた瞬間、北の殺人凶の上半身がズルズルとずれはじめる。


背後には真っ赤に染まった鎌を持つ千夏の姿があった。


「まさか…この私が…この殺人凶の私が…ふふふ、速さによる幻影か…全く気が付かなかった…斬られた事すらも」


ゆっくりとずり落ちていく上半身を両手で必死に支えるが…


《ズバ!!》


その音を聞いた瞬間、北の殺人凶の首が宙を舞っていた。


「さようなら」


そう言い残し千夏はくるりと向きを変えた。


その光景を見ていた美沙はただただ絶句するのみである。あの北の殺人凶が殺されたのだ!!無理もないだろう。


「次はそこの暗殺者さん。痛くしないから死んで下さい」


「ひ!こっちに来るな精神異常者」


美沙は逃げ出そうとするがその頑丈な牢はびくともしない。


不気味な笑顔を美沙に向けゆっくりと歩み寄る。


「ふふふ、ふふふ、ふふふ、」


笑顔を見せながら千夏は何か呟きはじめた。




…私の記憶を返して下さい。


…私の幸せを返して下さい。


…私の感情を返して下さい。


私の…全てを返して…お願い。



顔は笑っている。しかし瞳からは大量の涙が溢れていた。その涙はひたすら地面に落ちていく。


千夏の頭の中ではもうすでに人格が崩壊しつつあった。


美沙もその姿がまるで最後の悲鳴のようにも聞こえてきた。


「この娘、もう自分が何者なのかすらも分からないんだわ」


何かを決断したのかゆっくり近づく千夏に対して美沙はスッと目を合わせた。




ーーー私は笑ってしまいました


ーーー私は泣いてしまいました


ーーー私は叫んでしまいました


ーーーでも感じません


ーーー何も感じないんです


思い出せないんです。残らないんです。


神様は私の全てを奪い満足ですか?


こんなに叫んでるのに満足ですか?


この矛盾で出来た世界が満足ですか?



私は…もう何を信じたらいいの!


何を…繰り返せばいいの!



まだ涙が流れるうちにその真実が知りたいです。


まだ笑顔があるうちにその偽りを知りたいです。


私がまだ…人であるうちに。

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